とにかく曇る天才女優の幼馴染!   作:サニキ リオ

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第151話 文化祭デート その3

 三年生のフロアに出ると、廊下の奥が急に賑やかになった。

 若干音質の悪い祭り祭囃子が聞こえてくる。

 どうやらここは、縁日コーナーらしい。

 

「射的、やってみるか」

「やったことないけど、難しいのかしら」

「俺もやったことないからなぁ」

 

 屋台に近づくと、棚にぬいぐるみや駄菓子が並んでいた。

 一番奥の段に、見覚えのあるシルエットが見える。

 

 セミブレードのキャラクターグッズだ。

 主人公、宇津瀬民吾(うつせみんご)の相棒である〝ムラセミ〟のぬいぐるみが、棚の端にちょこんと座っていた。

 

 係の三年生からコルク銃を受け取った朝香が、的に向かって構える。

 姿勢だけは様になっていたが、弾は的の右端をかすって棚の土台に当たった。

 

「もう一回」

 

 二発目は的の上を越えた。

 

「もう一回!」

 

 三発目は、的の手前の床へ落ちた。

 

 朝香は銃を持ったまま、棚をじっと睨んでいた。

 負けを認める気が一切ない顔である。

 

「もう一回……もう一回やるわ!」

「向いてないんじゃないか」

「向き不向きの問題じゃないわ、慣れの問題よ」

 

 財布を出しながら、朝香は唇をきゅっと結んだ。

 四発目は的に当たったが、倒れなかった。

 五発目は惜しくも外れた。

 六発目、的が揺れてそのまま戻った。

 

「くっ、マタギの役さえやっていれば……!」

「マタギの女子高生ってどんなドラマだよ」

「脚本次第でなんとでもなるわよ。高杉さんとか、書いてそうじゃない」

 

 俺もせっかくなので、係の先輩に金を渡してコルク銃を手に取った。

 銃身の重さを確かめてから、銃を構える。

 

「まあ、こんなもんか」

 

 コルクの初速と重さ、飛び方を逆算して、的を狙うと一発で的が倒れた。

 

「み゛⁉︎」

 

 ギョッとした顔の朝香が、棚と俺を交互に見た。

 

「もう一発、ほいっと」

 

 また倒れた。

 それを見た朝香の目が、みるみる据わってきた。

 

「な、なんで」

「距離と重さを計算すれば簡単だったよ」

「……相変わらずバケモノみたいな技術ね」

 

 そうこうしている内に、係の三年生がぬいぐるみを持ってきてくれた。

 手のひらに乗るくらいの大きさで、くりくりとした丸い目がついている。

 

「なんか朝香に似てるな、こいつ」

「はっ倒すわよ」

「悪い悪い、ほら。やるよ」

 

 俺はムラセミのぬいぐるみを朝香へと渡す。

 

「セミブレードねぇ……」

 

 朝香は複雑そうな顔でムラセミをチラリと見てからポケットにしまった。

 

「まあ、受け取っておくわ」

「おう」

 

 あれ、よく考えたらこれ俺が初めて朝香にプレゼントしたものがセミブレードのぬいぐるみってことになるのか?

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