私の名前は株地由羽。
お嬢様キャラから一転、捕鯨ゴリラと呼ばれるようになったVtuberだ。
あの西遊記同時視聴から、チャンネル登録者数は右肩上がりを続けている。
そして、今日は正月特番、格付けチェックお正月スペシャルの同時視聴企画である。
「皆様、あけましておめでとうございますわ。本日は格付けチェックの同時視聴を行いますの」
[あけおめですわ~]
[新年早々ゴリラが見れて嬉しい]
[出演者的にドラミング不可避]
「あら、失礼な。わたくし、そこまで単純ではありませんわ」
そう言い切った五分後、テレビ画面には見覚えのある顔がずらりと並んでいた。
プライベートAIチーム、エコドルチーム、声優チーム、そして大御所チーム。
どうやら今年も、彼は別室で個人連勝記録を伸ばすようだ。
なんて私得な出演者なのだろう。
というか、本当にセミブレードで私、この人たちと共演するの?
心臓がもたないんだけど。
「ご、豪華ですわね……」
[声震えてて草]
[プライベートAIチームは特別ドラマの宣伝か]
[特別ドラマは翼君主演だから楽しみ]
番組は順調に進み、ワイン、バイオリン、ローストビーフと問題が消化されていく。
「ぎゃはははは! 朝香ちゃん、マジか!? もうこれ第二の千三郎さんじゃん!」
[清楚が終わるの、はえーよ]
[新年早々捕鯨ゴリラ]
[い つ も の]
それにしても、朝香ちゃんってこんなにポンコツだったっけ?
いや、去年も消えてたけど、あのときはもっとこう……知性があった気がする。
間違えても仕方ない場面で間違えていたり、共演者が間違えていた場面もあったので、戦犯という印象はなかったのだ。
「くくっ……ふぅ、それにしても、千三郎様は今年も死神っぷりを発揮してんねぇ!」
[みんな大好きうんちく死神おじさん]
[おもしろおじさんに見えるだろ? この人、日本一の俳優なんだぜ?]
[芝居は格好良くて、素がこれだから好きなんだよなぁ]
[自分のU-Tubeチャンネルでセミブレードのランクマ配信してるの若々しくてすこ]
日本を代表する俳優である両賀千三郎。
彼がバラエティー番組で見せるお茶目な一面は、苛烈で威厳ある芝居とのギャップから人気が高い。
『この番組は御覧のスポンサーの提供でお送りします』
「あら、CMですわね。休憩しましょうか」
CMの間、場を繋ぐためにトークをしようと思ったときだ。
『暑っちなぁ……』
流れてきたビールのCMに、井田さんが映っていて、ついそっちに気を取られてしまった。
『くぅぅぅ……!』
砂漠の中心で、井田さんが渋い顔でグラスを傾けている。
『やっぱ、ビールはドライだろ!』
『砂漠の乾きに勝つドライ……まさに、スーパードラァァァイ!』
シンプルなCMだった。
あの低い声と満足そうな表情だけで、画面からうまさが伝わってくる。
「ごくっ……これは、ズルい……カシュ」
[おい、絶対缶ビール空けたろ]
[新年早々飛ばしてんな]
[突然のビールテロ]
続いて流れてきたのは、旅行代理店のCMだった。
和風のBGMが流れ、京都の景色が映し出される。
画面には見覚えのある四人。
翼君、朝香ちゃん、いもっちゃん、そしてルナぴが、旅行鞄を手に並んで立っている。
『いざ、京都へー!』
『ちょっと待ちなさいって!』
『おっ、競争? 負けないよー』
『コラコラ、走ったら危ないよ』
仲良さそうに走っていく四人から段々カメラが引いていき、京都の街並みが映し出される。
『いざ、京都へ行こう』
な、なんて尊い光景……ああ、脳が震える……!
「ほげぇぇぇぇぇ!?」
[新年初捕鯨]
[汚っねぇ声で草]
[まさかCMで捕鯨するとは、このリハクの目をもってしても読めなかった]
[さっきから全然休憩になってない件について]
余韻に浸る間もなく、次のCMへと移っていく。
次に映ったのは、見慣れたロゴ。
斬鉄飛翔セミブレードのアニメロゴが、画面いっぱいに躍った。
『毎週土曜、夕方六時放送! 斬鉄飛翔セミブレード!』
テンポの良いBGMに乗せて、主人公である民吾とムラセミが画面を駆け抜けていく。
「子供向けアニメと侮ることなかれ、大人が見ても熱いですのよ、セミブレード」
[わかる、脚本家がガチだもの]
[主人公ペアの声優さんの演技も神]
[今度の劇場版も楽しみ]
劇場版の話題に、思わず口元が緩みそうになる。
実のところ、私にもあの映画への出演オファーが来ている。
まだ発表前の情報のため、口が裂けても言うわけにはいかないけど。
「さあ、皆さま。そろそろ本編に戻りますわよ」