最初は、感情ない機械的な平坦さだった。
人工的に生み出された存在らしい抑揚のない声。
キャプテン・ゼアミの野望を叶えるためだけに作られたセミブレード、セミオートマタ。
株地さんは、それを完璧に表現していた。
「クハハ、プランBだ! セミオートマタ。シガラティの魂を吸収しろ!」
千三郎さんが、余裕を保ったまま笑いながら命令する。
「了解しました」
モニターの中、機械の翼を持つセミオートマタが、暴走するシガラティへと躙り寄っていく。
「目標補足」
「み゛ぃぃぃ……ぃぃ……ん……」
朝香の鳴き声が、それまでとは違う質の苦しみを帯び始めた。
「対象:シガラティ。魂源同調開始」
セミオートマタが平坦な声で告げるのと同時に、キャプテン・ゼアミの哄笑が響き渡る。
「クハハ……これで〝蒼空の紅剣〟の力は俺様のものだァ!」
千三郎さんの哄笑が、途中でぴたりと止まった。
「……何だ、何が起きている?」
台本上、ここは想定外の展開が起きる場面だ。
「エラー、エラー……解析中にノイズを検知……」
「おい、どうした、セミオートマタ!」
「わ、たし……」
声が、揺れた。
機械的な平坦さの中に、初めて何かが混ざる。
「くる、しい……だれ、か……」
感情の輪郭が、たった一言ごとにくっきりと像を結んでいく。
「チッ、余計なものを取り込んじまったみてぇだな……セミオートマタ、応答しろ!」
「だ、まれ……貴様のせいで、貴様のせいでぇ!」
感情という機能を持たなかったはずのセミオートマタが、初めて憎悪の感情を剥き出しにする。
「〝
「ぬわぁぁぁ!?」
セミオートマタは感情のままに技を発動させ、巨大要塞ごとキャプテン・ゼアミを薙ぎ払った。
千三郎さんは迫真の断末魔を上げると、自然と後ろに下がってフェードアウトしていく。
「なぜ、み……凪世弥!」
ついにハッキリとした口調でセミオートマタが凪世弥の名前を呼んだ。
力と共に取り込まれた意識の欠片が、凪世弥の名前を呼んでいたのだ。
その芝居は、朝香が積み上げてきたシガラティの感情を丸ごと下地にしていた。
「命令、中断……エラー、命令の中止はできません。」
シガラティの感情とセミオートマタの無機質なコマンドが繰り返される。
一瞬でここまで感情の制御ができるなんて、とんでもないバケモノだ。
「お願い、凪世弥……わたしを斬って!」
『――OKです』
音響監督の声が響いたときには、全員がしばらく動けずにいた。
収録が終わり、ブースを出た瞬間、俺の膝から力が抜けた。
「……あれでゲスト声優とか嘘だろ」
「……レベルが違い過ぎるでしょ」
朝香も、ソファに崩れ落ちるように座り込んでいる。
「……それはそうだよ」
萌絵まで、いつものオタク口調を保つ気力すら残っていないようだった。
ずっと追いかけていたはずの背中に、ようやく並びかけたと思った矢先。
ゴール直前で、一気に追い抜かれた感覚だった。
「あの人は