とにかく曇る天才女優の幼馴染!   作:サニキ リオ

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第197話 セミオートマタ

 最初は、感情ない機械的な平坦さだった。

 人工的に生み出された存在らしい抑揚のない声。

 キャプテン・ゼアミの野望を叶えるためだけに作られたセミブレード、セミオートマタ。

 

 株地さんは、それを完璧に表現していた。

 

「クハハ、プランBだ! セミオートマタ。シガラティの魂を吸収しろ!」

 

 千三郎さんが、余裕を保ったまま笑いながら命令する。

 

「了解しました」

 

 モニターの中、機械の翼を持つセミオートマタが、暴走するシガラティへと躙り寄っていく。

 

「目標補足」

「み゛ぃぃぃ……ぃぃ……ん……」

 

 朝香の鳴き声が、それまでとは違う質の苦しみを帯び始めた。

 

「対象:シガラティ。魂源同調開始」

 

 セミオートマタが平坦な声で告げるのと同時に、キャプテン・ゼアミの哄笑が響き渡る。

 

「クハハ……これで〝蒼空の紅剣〟の力は俺様のものだァ!」

 

 千三郎さんの哄笑が、途中でぴたりと止まった。

 

「……何だ、何が起きている?」

 

 台本上、ここは想定外の展開が起きる場面だ。

 

「エラー、エラー……解析中にノイズを検知……」

「おい、どうした、セミオートマタ!」

「わ、たし……」

 

 声が、揺れた。

 機械的な平坦さの中に、初めて何かが混ざる。

 

「くる、しい……だれ、か……」

 

 感情の輪郭が、たった一言ごとにくっきりと像を結んでいく。

 

「チッ、余計なものを取り込んじまったみてぇだな……セミオートマタ、応答しろ!」

「だ、まれ……貴様のせいで、貴様のせいでぇ!」

 

 感情という機能を持たなかったはずのセミオートマタが、初めて憎悪の感情を剥き出しにする。

 

「〝天光・日輪聖剣(ルミナスソルド・ガラティーン)!!!〟」

「ぬわぁぁぁ!?」

 

 セミオートマタは感情のままに技を発動させ、巨大要塞ごとキャプテン・ゼアミを薙ぎ払った。

 千三郎さんは迫真の断末魔を上げると、自然と後ろに下がってフェードアウトしていく。

 

「なぜ、み……凪世弥!」

 

 ついにハッキリとした口調でセミオートマタが凪世弥の名前を呼んだ。

 力と共に取り込まれた意識の欠片が、凪世弥の名前を呼んでいたのだ。

 

 その芝居は、朝香が積み上げてきたシガラティの感情を丸ごと下地にしていた。

 

「命令、中断……エラー、命令の中止はできません。」

 

 シガラティの感情とセミオートマタの無機質なコマンドが繰り返される。

 一瞬でここまで感情の制御ができるなんて、とんでもないバケモノだ。

 

「お願い、凪世弥……わたしを斬って!」

 

『――OKです』

 

 音響監督の声が響いたときには、全員がしばらく動けずにいた。

 収録が終わり、ブースを出た瞬間、俺の膝から力が抜けた。

 

「……あれでゲスト声優とか嘘だろ」

「……レベルが違い過ぎるでしょ」

 

 朝香も、ソファに崩れ落ちるように座り込んでいる。

 

「……それはそうだよ」

 

 萌絵まで、いつものオタク口調を保つ気力すら残っていないようだった。

 ずっと追いかけていたはずの背中に、ようやく並びかけたと思った矢先。

 ゴール直前で、一気に追い抜かれた感覚だった。

 

「あの人は千野辺万華(ちのべまか)。ノノさんの養成所時代の同期で、私の元先輩だよ」

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