とにかく曇る天才女優の幼馴染!   作:サニキ リオ

202 / 202
第202話 炎上するセミブレード

 登校前に日課の自主稽古目的で事務所を訪れると、既に朝香がいた。

 しかし、朝香は稽古もせずに険しい顔でスマホを眺めていた。

 

「……翼、これ見て」

 

 朝香がスマホを突き出してくる。

 劇場版のキャスト解禁から二日。

 トレンドには〝セミブレード〟と並んで〝Vtuber起用〟〝株地由羽〟〝両賀千三郎〟の文字があった。

 

[話題作りでVtuber使うのやめろ]

[誰得案件]

[棲み分けしてんのに、勝手にこっちにこないでほしい]

 

 最初の内は、そんなありふれたアンチの書き込みだった。

 だが、段々と内容は変わっていった。

 

[これが芸能界の闇]

[大御所芸能人が絵に大金落としてて草]

[いい歳してバチャ豚とかキモすぎwww]

 

 そこには〝てぇてカラス〟というアカウントが株地さんの配信で行ったスーパーチャットのスクリーンショットが貼り付けられていた。

 

「このてぇてカラスって……」

「師匠の推し活アカウントよ」

 

 最初はVtuberを声優に起用するのはどうなのか、という話題だったのに、現在はVtuberに金をつぎ込むおじさんがキモいという話題にすり替わっていた。

 

「でも、これだけじゃ本人ってわからないんじゃ……」

「SNSの方のアカウントで撮ってる写真に写ってる手や景色、顔の反射で特定されたっぽいわ」

「特定厨こっわ」

 

 一体何が彼らをそこまで駆り立てるのだろうか。

 

「でも、これ千三郎さんは変な文章送ってるわけじゃないだろ」

 

 取り沙汰されているスパチャは、〝いつも応援しています〟や〝元気をもらっています〟などの簡素な感謝の言葉であり、配信中のコメントも配信内容にあったツッコミや〝草〟に留まっている。

 とてもじゃないが、千三郎さんのコメントマナーが悪いとは思えない。

 

「問題は金額よ」

「あー、言われてみれば赤スパが多いな」

 

 一万円以上のスーパーチャットはコメントが赤くなることから通称〝赤スパ〟と呼ばれている。

 千三郎さんはこの割合が多いのだ。

 ……別に稼いでる人なんだから、趣味にいくら使ったって良いだろうとしか思わないけど。

 

[【悲報】大物俳優、劇場版共演のVtuberに多額の金を貢いでいたと判明]

[権力使って推しと共演した説あるだろこれ]

[この絵畜生も大御所に目つけられて逃げられなかったんじゃね]

 

「なっ……」

 

 朝香が、絶句したまま画面を凝視していた。

 だが、本当に厄介なのはここからだった。

 

[当時モデルだった奥さん、ドラマ共演がきっかけだったけど、あれ千三郎が制作に圧かけて共演させたらしい]

[当時の現場にいたけど、あの人の現場での振る舞い、ほんとヤバかった]

[昔から立場使って好き勝手やってた人だよ]

 

「……待て。この〝現場にいた〟って人、アカウント作ったの最近で怪しいぞ」

「それでも、見た人は信じるわよ。もっともらしい語り口だもの」

 

 朝香が唇を噛む。

 さらに、一つの記事がトレンドを駆け上がってきた。

 

〝両賀千三郎の息子・灰瀬優二、新宿の居酒屋で暴露「俺は親父のコネでしか仕事をもらえないダメ役者だよ!」〟

 

「あのクソバカ放蕩息子……!」

「酔ってる姿をすっぱ抜かれたのか。確かに、千三郎さんを切り崩そうと思ったら、優二さんは狙われるよな……」

 

 実際は、優二さんを起用した現場の人間が、千三郎さんに世話になった恩返しのつもりで声をかけただけだ。

 千三郎さん自身は、何もしていない。

 

 しかし、事実は面白くない。

 そこへ、炎上系U-tuberの動画まで投下された。

 

〝【暴露】両賀千三郎の闇 テレビで見せるお茶目は嘘だった〟

 

 サムネイルには、千三郎さんの顔が派手な赤文字と矢印で加工されている。

 

「ひどい切り取り方……」

「再生数、もう三十万か。こういうのは伸びるよな」

 

 投稿者は、過去の些細な話を寄せ集めて、悪印象になるように並べ直しているだけだった。

 それでも、見出しの強さだけで人は集まる。

 

「千三郎さんが、権力を使って好き勝手やってきた人だって印象操作されてる」

「この手の連中、本当に事実なんてどうでもいいのね」

 

 どうでもいい、というより、事実は不要なのだろう。

 SNSでこういった投稿をしている連中は収益化をしている人間たちだ。

 叩くことが、そのまま金になる仕組み。

 バトルSNSと化したこの場所では、攻撃的な発言が歓迎され、擁護派との殴り合いが始まってしまうのだ。

 

「株地さんへの叩きは、これで収まったかもしれない。けど……」

「今度は、千三郎さんと制作陣が矢面に立たされてる」

 

 俺たちが言い終わるより早く、朝香のスマホが震えた。

 画面には〝師匠〟の二文字。

 

「……千三郎さん?」

『朝香、翼と一緒だな。放課後にちょいと時間くれねぇか?』

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

病弱貴族になった俺、治癒魔法をかけながら戦えばいいことが判明する(※血反吐付き)(作者:池崎)(オリジナル:ファンタジー/戦記)

突如として前世の記憶を思い出し、自身が病弱貴族になってしまったことを悟った主人公は、とある出来事をきっかけに──「治癒魔法をかけ続けたら戦えるのでは??」と気づき、おっさん治癒術師を巻き込んで修練に励む。▼その結果──確率で血反吐を吐きながら拳で戦うHENTAIスタイルになってしまう。▼「だ、大丈夫! すごく痛いけどすぐ治るから!!」▼


総合評価:3409/評価:8.25/連載:14話/更新日時:2026年08月12日(水) 12:39 小説情報

曇りゆく勇者へ捧ぐ闇堕ちの美学(旧:勇者に勝ちたいだけなのに、魔王の剣が闇堕ちした宿敵ムーブを強要してくるせいで周りが曇り始めた。)(作者:黒雪ゆきは)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

▼ ──少年は、勇者に勝ちたいだけだった。▼ 女神の祝福が女性にしか宿らないエウリア聖王国で、男は守られる存在とされている。▼ 少年ユリス・アステルは、そんな世界で、幼馴染であり勇者候補でもある少女アリアに何度敗れても剣を握り続けていた。▼ 守られる側で終わりたくない。▼ 一人の戦士として、勇者の前に立ちたい。▼ その願いに応えたのは──眠っていた魔王の剣だ…


総合評価:6366/評価:8.59/連載:20話/更新日時:2026年09月19日(土) 22:00 小説情報

ヤンデレに監禁されるわけwww(作者:むにゃ枕)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

ヤンデレから逃げようと思ってる。▼ヤンデレのみんなには悪いけど抜け駆けで▼ヤンデレは逃走とかされたことないから、びっくりするかもしれないけど、もう逃げたい気持ちを我慢できないから▼


総合評価:3851/評価:8.1/連載:15話/更新日時:2026年09月28日(月) 21:16 小説情報

ロマン職は異世界から帰りたい(作者:庶民ザウルス三世)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

これが絶対浪漫の力だ!▼人は夢を見る。▼そして、効率よりも自分の“好き”を信じて、浪漫を追いかける者たちがいる。▼ソロ専、人見知り。▼だけど、クリティカルが決まった時の一撃だけは誰よりも重い。▼そんな趣味全開のロマン職キャラを愛した男は、課金帰りの事故をきっかけに、ゲームで使っていた女性キャラ――ラシア・ラ・シーラとして異世界で目を覚ます。▼しかも、レベルも…


総合評価:7215/評価:8.46/連載:226話/更新日時:2026年10月12日(月) 07:08 小説情報

そいつの開発者、俺なんだが(作者:束田せんたっき)(オリジナル:SF/コメディ)

なんか学生時代の黒歴史が、未来でディストピアの管理AIをやってたんですけど。国家ぐるみのストーキングやめてね。▼《真面目なあらすじ》▼高城之男へ一致せよ。▼タカギニアでは、すべての人間が、三百年前に死んだ偉人・高城之男とどれだけ似ているかで評価される。似ている者には栄光を、似ていない者には屈辱を。▼管理番号11-F-283-D503、平野平人。彼は一致度0.…


総合評価:7956/評価:8.25/完結:51話/更新日時:2026年10月11日(日) 19:15 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>