セミブレード公式チャンネルの更新通知が表示された。
タイトルは〝【公式】セミオートマタのセミブレード講座〟。
デフォルメされた公式素材を組み合わせた、短いショート動画だ。
概要欄には、はっきりと〝CV:株地由羽〟の文字がある。
「……大丈夫かしら」
朝香がクッションを抱えたまま呟いた。
「その辺は心配してないぞ。変なコメントは運営対応で消せるからな」
『セミオートマタ、アウェクン。ご命令をお願いします』
人工生命体らしい平坦で温度のない声が流れる。
この時点で、普段の発狂する捕鯨ゴリラを知っている人は驚くことだろう。
『セミブレードとは? 承知いたしました、ご説明します。セミブレードとは、羽が刃へと進化したセミをベースとした特殊生物です。過去には戦争に使われた歴史がありますが、昨今ではセミブレード取扱説明免許を得たブリーダー〝セミブレーダー〟たちがお互いに育てたセミブレードを戦わせて競い合っています』
「早口なのにすごい聞き取りやすいわね」
朝香が感心したように目を丸くした。
『必殺技〝斬鉄閃〟の再現をしてほしい? 承知いたしました……同調、セミブレーダー〝宇津瀬民吾〟セミブレード〝ムラセミ〟』
次の瞬間、声が切り替わった。
『再現完了……ムラセミィ! 真正面からブチ破るぞ! 〝斬鉄閃!!!〟』
『ビッビビィ!』
萌絵や秋毫さんの声を真似ているだけではない。
声の芯を外さないまま、株地さんなりの二人を演じているのだ。
「感情のスイッチを一瞬で切り替えてたな……」
「このレベルの人が消えるのは……まあ、割とよくある話か」
朝香はうーんと唸ったあとに、一人で納得していた。
彼女の言う通り、芝居がどれだけうまくても、付随するものがなければ売れるのは難しい。
株地さんの場合は、それが配信というコンテンツと噛み合ったからこそバズったのだと思う。
「とにかく、これで株地さんの演技力は見せられたから、制作陣が彼女をキャストした理由が演技力だってことは多くの人に伝わっただろ」
「でも、炎上させにくる連中って、どうあがいても難癖付けてくるんじゃないの?」
「そういう連中はしょせんノイジーマイノリティだ。無言を貫くサイレントマジョリティーを味方にしていくのが目的だ」
芸能人である俺がこんなことを言うのもなんだが、人は意外と、他人に興味がない。
ゴシップ好きも、他者そのものへの興味ではなく、情報収集の一環にすぎない。
人の失敗そのものよりも、その失敗に対して周囲がどう反応するのか。
人はむしろ、それを見ているのである。
だから、こういう地道な積み重ねは大切なのだ。
[いや、待って。普通に上手くない?]
[民吾の声、一瞬本人かと思った]
[一人で全部やってるってマジ?]
「感触は悪くないわね」
「そりゃ荒らしコメントはすぐに削除してもらってるからな」
ゴミが溜まる場所にはゴミが捨てられやすい。
だからこそ、綺麗に保つことで周囲の反応は好意的なものとなるのだ。