とにかく曇る天才女優の幼馴染!   作:サニキ リオ

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第21話 元子役のコミュニケーション指導

「どうやったら、うまく――」

「お待たせいたしました」

 

 タイミングよく俺のパスタが運ばれてきた。

 

「あう……」

 

 言葉を遮られて俯く帆林を他所に、店員がミートソースパスタを置いていく。

 

「とりあえず、食べながら説明するよ」

 

 フォークを手に取って、パスタを巻き取った。

 一口食べる。味はわからない。

 味覚障害だから、何を食べても同じだ。

 ただ、おいしそうに食べる演技はできる。

 

 一瞬、目を見開いて口角を上げる。それから一度パスタを見て、帆林に視線を合わせながらまた目を見開く。食レポの神様、麻呂彦さん直伝のテクニック〝B級グルメは目を開く〟である。

 

「えっ、うま……えぇ!? うま!」

「そ、そんなにおいしいんですか、そのパスタ」

 

 ごくり、と唾を呑み込む音が聞こえた。

 

「麺はモチモチで濃厚なホワイトソ―スとよく絡んでる……これ、めっちゃくちゃうまいぞ」

「さっきパスタ食べたのに……見てるだけで、お腹、空いちゃいます」

 

 帆林は物欲しそうな顔で俺のパスタを見ている。ここまで食いしん坊とは思わなかったが、概ね狙い通りだ。

 

「帆林、食べてみるか?」

「……え?」

「俺のパスタ。一口、分けてやるよ」

「い、いいんですか」

「ああ。どうぞ」

 

 帆林は少し考えてから、小さく頷いた。

 

「……じゃあ、お願い、します」

 

 パスタの皿を帆林へと渡すと、帆林はフォークでパスタを巻き取って口に運ぶ。

 

「すっごく、おいしい、です……!」

 

 頬に手を当てて、帆林は嬉しそうに笑った。

 

「凪野君が、おいしそうに食べてたから、余計においしく感じますね」

 

 その表情が、さっきより少し明るい。

 

「……あ」

 

 しばらく食事を続けていると、帆林が小さく呟いた。

 

「どうした?」

「か、かか、間接キス……!」

 

 帆林は真っ赤になっている。

 

「間接キス?」

「だって、だって……! 私、凪野君のフォークで、パスタ、食べちゃったから!」

「そんなの気にするの、中学生までだぞ」

「で、でも」

「気にするな。ただの食事だ」

 

 話題が変な方に転がる前に軌道修正する。

 

「そんなことよりも、パスタうまかったろ」

「はい。すごく」

 

 俺はタイミングを見計らって告げる。

 

「実は俺、味覚障害で味なんてわからないんだ」

「……え? えぇ? 味、覚、障害?」

 

 帆林は驚いたように目を見開いた。

 

「つまり、今のは全部演技ってわけだ」

「演技……って、今のが?」

「あれはおいしそうに見えるように、表情を作ってたってだけだ」

 

 帆林は信じられないという顔をしている。

 

「……で、でも! すごく、おいしそうでしたよ?」

「それが、演技の力だ。こう見えて、元子役だからな」

「元子役って、あの羽田朝香みたいな?」

「あいつは現役だろ。俺のは昔の話。ほら、ぼくんち冒険たいなら知ってるだろ。あれ、歌ってんの俺だ」

 

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