とにかく曇る天才女優の幼馴染!   作:サニキ リオ

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第54話 とある子役から見た二人

 ボクには好きな人がいる。

 テレビですごいお芝居をする天才子役の羽田朝香。

 彼女みたいになりたくて、追いかけるように劇団に入った。

 

 別に女優になりたかったわけじゃない。

 朝香が通っているから、ボクも行きたかっただけ。

 少しでも、彼女に近づきたかった。

 お父さんにお願いして味方になってもらってお母さんを説得した。

 

「おう、思う存分やってこい!」

「はぁ……しょうがないわね。あなたはこの人に似て、一度決めたことは曲げないものね」

 

 大好きな両親に送り出されてボクはオーディションに受かり、劇団クロッカスに所属した。

 昔から朝香の真似だけは得意だった。

 それがオーディションのときは、うまくはまったのだ。

 

「よーし、すぐに追いつくぞー!」

 

 ボクは必死に頑張った。

 オーディションを受かったことも自信に繋がっていた。

 だけど、稽古を重ねるうちに、わかってきたことがある。

 

 ボクには、演技の才能がない。

 台詞を覚えることはできる。動きを真似することもできる。

 

 でも、何かが足りなかった。

 先生に言われた通りにやっているのに、朝香との差が埋まらない。

 それどころか、あっという間に引き離されていく。

 

 朝香の演技は、見ていると息が止まりそうになる。

 台詞を言っているのに、台詞に聞こえない。

 その人がそこにいる感じがする。

 

 ボクにはそれができなかった。

 近くにいるのに、遠くなっていく感覚だった。

 

「はぁ……はぁ……まだ……」

 

 必死に稽古して、ボクは同期の中では群を抜いて演技ができるようになっていた。

 それだけが、辛うじて自分を見失わないでいられた理由だった。

 だけど、いつまでたっても仕事がもらえない。

 

 当然だ。

 同じ世代に羽田朝香がいる。

 その意味がわからないほど、ボクはバカじゃなかった。

 

 それにボクの同年代は、黄金世代と呼ばれる子役がひしめき合っている。

 稽古を頑張っているのは大前提。

 そこから光るものがあるかは、まったく別の話だ。

 

 最初こそ、同期より群を抜いてうまかったはずのボクは、いつしか売れない子役の一人になっていた。

 同期の子たちの中には、仕事をもらって活躍している子も出てきた。

 

 中でも、狂気的な執着心で演技をしている子がいた。

 彼の稽古する様子を、ボクはなんとなく目で追っていた。

 何週間か経った頃、その子の台詞が変わった。

 

 先生が一度だけ頷いた。

 その子は気づいていない様子で、また次の台詞を言っていた。

 

 稽古が終わって、ボクが荷物を片付けていると、朝香がその子の方を見ていた。

 じっと見ていた。

 いつも他の子役なんて視界にすら入らない朝香が、誰かをそうやって見ているのを、ボクは初めて見た気がした。

 

 その恋する表情を見た瞬間、ボクの中で何かが壊れた。

 

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