とにかく曇る天才女優の幼馴染!   作:サニキ リオ

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第74話 鳥取砂丘でのロケ

 撮影が始まって、二週間が経った。

 台本も最終話までの全てが揃った。

 

第一話 積雷山(せきらいざん)~堕ちた兄弟、悟空の離反!?~

第二話 滅法国(めっぽうこく)~壊れた友情、八戒の過去~

第三話 盤糸洞(ばんしどう)~悟空に惚れた!? 悟浄のアピール~

第四話 白虎嶺(びゃっこれい)白骨精(はっこつせい)の罠、三蔵法師の危機~

第五話 瀑布泉(ばくふせん)~忍び寄る霊感大王(れいかんだいおう)、八戒の一計~

第六話 破児洞(はじどう)~如意棒が壊れた!? 如意真仙(にょいしんせん)の試練~

第七話 火焔山(かえんざん)芭蕉扇(ばしょうせん)を巡る戦い、羅刹女(らせつじょ)の涙~

第八話 獅駝嶺(しだれい)混天大聖(こんてんたいせい)鵬魔王(ほうまおう)、動き出す妖怪大国~

第九話 流沙河(りゅうさが)覆海大聖(ふっかいたいせい)蛟魔王(こうまおう)、悟浄の裏切り~

第十話 碧水潭(へきすいたん)~仲間を傷つける奴は兄弟だろうと許さない、悟空の怒り~

第十一話 天竺~映すは己の恐怖、仲間と共に未来へ~

 

 台本に目を通してみたが、なかなか面白い。

 さすがは高杉さん、腕がいいな。

 

 西遊記は、中国を舞台とした冒険譚だ。

 必然的に、撮影場所は中国っぽい景色や、自然が多い場所になる。

 

 ドラマの撮影は物語通りに進むわけではない。

 俺を除いて豪華なキャストが揃っているということは、それだけスケジュールの調整が難しいということでもある。

 可能な限り一度で撮れるカットは、まとめて撮らなければいけない。

 

 ロケの行き先は鳥取砂丘だった。

 移動に時間がかかる分、撮影はまとめて行う。

 

 エンディングのカット、旅の象徴になる歩きのシーン、砂漠を舞台にしたエピソード。

 

 それを俺たち学生組のスケジュールが抑えやすい夏休みを使って押さえていく段取りだ。

 

 初日の朝。

 砂丘の頂上に近いあたりに四人が並んだ。

 三蔵法師、孫悟空、猪八戒、沙悟浄。

 今は私服だが、衣装を着て砂の上に立つと、それだけで見た目の絵が変わることだろう。

 

 地平線まで続く砂の斜面と、突き抜けるような青空。

 どんな大道具よりも、ここに立つだけで画になった。

 

「いやぁ、砂丘って広いねぇ」

 

 伊本さんが感慨深そうに言った。

 

「本物の砂漠みたーい」

 

 ガチガチに日焼け対策したルナが、サングラスをかけたまま周りを見回す。

 

「……早く終わらせましょ。スケジュールにそこまで余裕はないわ」

 

 朝香は既に三蔵法師の顔をしていた。

 役にはまだ入りきっていないが、エンジンはかけている。

 そんな状態だろう。

 

「いいな、このスケール感! 走り回りたいくらいだ!」

「走ったら死ぬわよ」

「孫悟空が砂丘で死ぬかよ」

「熱中症ならあり得るの。水分補給はちゃんとしなさいよ」

「……わかってる」

「よろしい」

 

 三蔵法師の顔のまま言ったので、台詞のやり取りみたいに聞こえた。

 

「はっはっは、お師匠さんには敵いませんなぁ!」

 

 伊本さんがそれを見て、声を上げて笑った。

 

 現場の空気が、身体の中に入ってくる。

 砂の匂い、風の冷たさ、衣装の重さ。

 全部が悟空を呼び起こす材料だった。

 

 今日もここで、孫悟空として立つ。

 それだけ考えれば、あとはどうにでもなる。

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