撮影が始まって、二週間が経った。
台本も最終話までの全てが揃った。
第一話
第二話
第三話
第四話
第五話
第六話
第七話
第八話
第九話
第十話
第十一話 天竺~映すは己の恐怖、仲間と共に未来へ~
台本に目を通してみたが、なかなか面白い。
さすがは高杉さん、腕がいいな。
西遊記は、中国を舞台とした冒険譚だ。
必然的に、撮影場所は中国っぽい景色や、自然が多い場所になる。
ドラマの撮影は物語通りに進むわけではない。
俺を除いて豪華なキャストが揃っているということは、それだけスケジュールの調整が難しいということでもある。
可能な限り一度で撮れるカットは、まとめて撮らなければいけない。
ロケの行き先は鳥取砂丘だった。
移動に時間がかかる分、撮影はまとめて行う。
エンディングのカット、旅の象徴になる歩きのシーン、砂漠を舞台にしたエピソード。
それを俺たち学生組のスケジュールが抑えやすい夏休みを使って押さえていく段取りだ。
初日の朝。
砂丘の頂上に近いあたりに四人が並んだ。
三蔵法師、孫悟空、猪八戒、沙悟浄。
今は私服だが、衣装を着て砂の上に立つと、それだけで見た目の絵が変わることだろう。
地平線まで続く砂の斜面と、突き抜けるような青空。
どんな大道具よりも、ここに立つだけで画になった。
「いやぁ、砂丘って広いねぇ」
伊本さんが感慨深そうに言った。
「本物の砂漠みたーい」
ガチガチに日焼け対策したルナが、サングラスをかけたまま周りを見回す。
「……早く終わらせましょ。スケジュールにそこまで余裕はないわ」
朝香は既に三蔵法師の顔をしていた。
役にはまだ入りきっていないが、エンジンはかけている。
そんな状態だろう。
「いいな、このスケール感! 走り回りたいくらいだ!」
「走ったら死ぬわよ」
「孫悟空が砂丘で死ぬかよ」
「熱中症ならあり得るの。水分補給はちゃんとしなさいよ」
「……わかってる」
「よろしい」
三蔵法師の顔のまま言ったので、台詞のやり取りみたいに聞こえた。
「はっはっは、お師匠さんには敵いませんなぁ!」
伊本さんがそれを見て、声を上げて笑った。
現場の空気が、身体の中に入ってくる。
砂の匂い、風の冷たさ、衣装の重さ。
全部が悟空を呼び起こす材料だった。
今日もここで、孫悟空として立つ。
それだけ考えれば、あとはどうにでもなる。