とにかく曇る天才女優の幼馴染!   作:サニキ リオ

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第91話 脳破壊される側視点 パート13

 収録が終わったのは、夜の九時を回った頃だった。

 出演者用の控室を出て、廊下を歩きながらスマホを確認する。

 メッセージの通知が溜まっていた。

 

 事務所からの連絡、スケジュールの確認、いくつかのSNSの通知。

 その中に、ナイトプロのグループRINEの通知が混じっていた。

 開くより先に、マネージャーの愛夏姉さんが隣に並んできた。

 

「朝香。少し話せる?」

 

 声のトーンが、いつもと違った。

 収録を終えた後の疲れた顔ではなく、何かを測っている顔だった。

 

「ええ。大丈夫よ」

「ルナちゃんのこと、聞いた?」

 

 あたしは足を止めた。

 

「何かあったの?」

「SNSで騒ぎになってるわ。アンチらしき裏垢で、すっぴん写真が晒されたみたいなの」

 

 愛夏姉さんは言葉を選んでから続けた。

 

「その、書き込みがかなりひどい内容で」

「……スターメイクは動いてるの」

「公式はまだ様子見ってところ」

 

 ルナが人並み以上にすっぴんを見られることを嫌っているのは、よく知っている。

 これでも、ベビーカーの頃からの付き合いだ。

 あの子の素顔を知った誰かの嫉妬による嫌がらせだろう。

 

 芸能人ならよくある話だ。

 

 ルナの顔はすっぴんでも可愛い。

 荒れているというのも、それを晒した人間への批判だろう。

 お母さん譲りの三白眼とソバカスは、あたしに言わせてみればチャーミングポイントでしかない。

 

 むしろ、メイクして隠すのがもったいないくらいである。 

 まあ、可愛すぎるのも考え物だし、正しい判断だったのかもしれない。

 

「ルナの様子は?」

「斎藤先輩に聞いたけど、家では普通にしてるみたい。ただ無理をしてるのはわかるって言ってた」

 

 あたしの両親と同じで、愛夏姉さんもルナのお父さんとは同じ高校に通っていた。

 こういうとき、家族ぐるみの幼馴染ネットワークは便利だ。

 

「朝香。今度会いに行ってあげて」

「えー……そんな大袈裟な」

 

 実際のところ、あたしとルナは仲が良いわけじゃない。

 幼馴染としてあたしの隣に立ち続けたルナは、いつだってあたしと比較をされてきた。

 

 だから、飄々とした態度をとりながら、いつもあたしを睨んできていた。

 あたしがやったことはすぐに真似して、あたしが持っているものは何でも欲しがった。

 それは対抗心から来るものだったのだろう。

 

「そんなことないでしょ。あの子、昔から朝香のこと大好きだもの」

「はぁ……わかった。とりあえず、今度のオフにでも顔を出すわ」 

 

 愛夏姉さんにはそう告げて、スマホを開いて調べてみる。

 どうせ、大したことじゃない。

 そう思って開いたルナ関連の投稿を見て、あたしは絶句した。

 

[ぶっさ、ファンクラブ抜けるわ]

[所詮メイク落としたらアイドルなんてこんなもん]

[メイクしたところで大して可愛くはなかったろ]

[運営のお気に入りでごり押しされてたもんな]

[実力ないブスが出しゃばるなよ]

[これは枕やってなきゃ仕事取れないわ]

[こんなのに金注ぎ込むキモオタwwwww]

 

 言葉の質が全部同じだった。

 ただ叩きたいだけのファンですらない外野の人間。

 碌な人生を送っていない暇人共が、ルナへ向かって言葉の暴力を振るっていた。

 

「み゛」

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