不死身の男   作:ななし

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戦闘描写って難しい。


第5話

 

 

 

最初に気づいたのは誰だったか。

破軍学園、その敷地の中にいた生徒たちは一様にして顔を上げた。

 

「……ん?なんか爆発した?」

「揺れた?地震?」

「今の銃声?また誰か喧嘩でもしてるのー?」

 

呑気な会話。

またどこかでトラブル事かと、平凡な生活の中にあるちょっとした騒ぎに呆れるもの、野次馬根性を発揮するもの、先生を呼びに行くもの……それぞれの反応を示した。

 

どうせすぐ治まる、そんなことを皆が思っていた。

そんな、次の瞬間だった。

 

 

 

──バゴォーンッ!!

 

 

 

校舎の一角が弾け飛び、土埃が舞う。

その中から現れるのは2人の影。1人は軍帽を被った少年。もう1人は小柄な着物を着た女性だった。

 

「オイオイオイ…!なんだお前、めちゃくちゃおもしれぇ奴だなァ!」

「………」

 

笑顔の女性と睨む少年。

《夜叉姫》西京寧音と《不死身》船坂佑二だ。

埃まみれの夜叉姫に、血を流している不死身。周りの生徒らは先程から感じていた騒ぎの元凶が誰なのか、この時はっきりと理解した。

 

 

 

 

 

「え、え?西京先生…?」

「ふ、不死身だ!不死身の船坂だ!」

「なんであの2人が…!?」

「ち、ちょ…!理事長呼んできて!誰かー!!」

 

 

 

 

 

「あーあー、くーちゃんとこ行ったやついんなあ。こりゃお開きまで時間がねえなあ。おいおま──」

 

そこまで言って夜叉姫は口を止めた。

目の前に迫っていた不死身の歩兵銃。投擲による遠距離攻撃。

先端には当然銃剣がつけられておりその先端は最早目と鼻の先だ。

 

それを夜叉姫は能力を使って地面へ落とす。

 

地面にめり込む不死身の固有霊装。

それを無視しながら不死身は即座に駆け寄り夜叉姫の胸ぐらへと腕を走らせた。

 

「──っておい、淑女の胸元にってのは躾がなってねえんじゃねえの?」

 

体を横へ、腕をすり抜けるように移動。

すれ違いざまに鉄扇による殴打を顔面へ。

 

それに対して不死身は真っ向から夜叉姫の攻撃に頭突きをかましてきた。

 

「おっ…!?」

 

少しの驚きとまさかの動きに一瞬体が硬直、その隙を不死身は逃すことはない。

すぐさま攻撃をするために伸ばされた腕を掴みあげ、体を反転。そのまま腕を引き、夜叉姫をぶん投げるように……所謂、柔道の一本背負いだ。

 

投げられながら、空中で体制を整え足からの着地。と、同時に能力を不死身に対して使用。動きを止めようとしてみたのだが、

 

「うぐっ…!」

 

直後、顔面へと入った不死身の頭突き。

 

「にゃろ……!」

 

よろけた体を構え直し、再度攻撃を仕掛けようと夜叉姫は動くが──

 

「──っ!?危ね…!」

「……チッ」

 

地面に落ちた歩兵銃。

それのスリングに足をかけ、蹴りあげることで銃剣を夜叉姫の突っ込みに合わせようとした不死身だが……奇襲は失敗。

お互い距離を開け仕切り直しとなった。

 

「くっそー、やっぱ"効きが甘い"かあ」

「……ああ、くそ。重い…」

 

鼻血を拭う夜叉姫に、気だるそうに悪態をつく不死身。

 

「……にしても最っ高ぉだなお前…!もうちっとギア上げてもお前ならついてこれるか…!?」

「………」

 

そう言って、夜叉姫は開いた鉄扇を再度勢いよく閉めた。

バチンッと音がなれば、その鉄扇を中心に何かオーラのような力場が纏わりつき、やがて剣の形へと変形した。

 

不死身の男は直感で感じた。

 

──かすり一つで致命的……ってとこか

 

歩兵銃を両手で構え直し、血を拭う。

そのまま口元にほほえみを浮かべ彼は口を開いた。

 

「こいよ…、俺は不死身の船坂だ…!」

「あー、お前のこと嫌いだったけど……好きになりそうだわ」

 

両者その言葉を最後に同時に駆け出す。

互いに振り上げる固有霊装。大きな2つの力がぶつかろうと……そんな瞬間だった。

 

 

 

「止まれこのバカ共がッ!!」

 

「「っ!?」」

 

 

 

突如聞こえた怒号に両者互いに動きを止める。

同時に目線は声のした方へ。そこに立っていたのは怒りの表情を浮かべた破軍学園理事長、新宮寺黒乃だった。

 

 

 

▶▶▶

 

 

 

「「「………」」」

 

気まずい。

ここは理事長室。現在、理事長に連れられ西京寧音と俺はこの場所へ連れてこられて正座をさせられていた。

当然の成り行きだな、ほんと。

理事長さんの机の上の灰皿。そこに積まれたタバコの数が彼女の今の心境を物語っている。

 

「……ふぅー、さて、何か言うことはあるか?」

「こいつのせいです」

「……すいませんでした」

 

間髪入れずにこっちを指さしながら西京寧音はあっけらかんと言う横で頭を下げる。とりあえず西京寧音は後でしばく。

 

「あらかた予想はできる。そのバカが船坂にちょっかいかけたんだろ?」

「うぐぅ……」

「……いや、自分が自制しなかったところもあります。すいませんでした」

 

やる必要のないことをやったし、理事長も忙しいのに迷惑かけた。どっちが先とか関係なく謝罪は当然だ。

 

「はぁ……寧音、生徒がこうも素直に謝ってるのにお前は何もなしか?」

「ううううう……まあくーちゃんに迷惑かけたのは事実だし、校舎も壊したからそれは素直に謝るけどさあ」

「まったく……まあ私も船坂みたいな生徒がいればお前が興味を持つことは予想できてた。あらかじめ釘を刺さなかったのも悪いか」

 

そんなことないと思います。

不用意に喧嘩を売る西京寧音とそれを安く買った俺が全面的に悪いです。

 

「よし!じゃあ話終わり!船坂!飯食いに行くぞ飯!まだ食ってないよな!」

「え?あ、ちょ…!」

「おい!待てまだ話は──」

 

腕を引かれ、超特急で部屋を出る西京寧音と腕を引かれる俺。

理事長の静止の声に西京寧音は小さく"逃げろー"なんて言っていた。こいつほんとに……歳だけ重ねた子供かよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

1人取り残された新宮寺黒乃。

胸ポケットからタバコを取り出し火をつける。

 

「……アイツも厄介なやつに好かれたもんだ」

 

そういいながら紫煙を吐き出す。

手元には1枚の紙。

それは引き継ぎ書類の中にあった生徒名簿、その中の一枚だった。

 

 

 

 

 

《船坂 佑二》破軍学園 2年2組

 

二つ名:不死身

伐刀者ランク:D

 

  攻撃力:D

  防御力:B

  魔力量:E

 魔力制御:E

 身体能力:A

    運:C

 

《人物概要》

特別招集参加回数31回、任務達成率100%

 

物腰柔らかく、気さくな少年といった印象を受ける。

特別招集に自ら志願するに値するような戦績を収めており連盟からの評価も高い。

学業に関しても最低限の知力を有してることから、あまり気にすることなく任務を与えても良い。連盟から要請があった時は優先的に参加をさせるように。

 

《能力》

船坂佑二は2つの能力を有している。

"治癒能力の倍加"と"ダメージの弱体化"の2つ。まさしく戦場において真価を発揮するような能力である。直接的な攻撃力はないが、彼が不死身と呼ばれるようになった要因の力。

学園に置いておいてもあまり意味のないため、積極的に特別招集には参加させるように。

 

 

 

 

 

そこまで読んで新宮寺黒乃は手に力を込め紙にシワを作る。

加えたタバコは力任せに灰皿へ押付け火を消す。

その後、頭を抑え深呼吸をひとつ。自身を落ち着かせるように、感情を沈めるように。

 

「……まったく、去年の教師陣はクソの塊だな」

 

そんなことを言いながら再度タバコを取り出した。

学生の青春を己の利の為に潰す。

確かに特別招集に自ら志願したのは船坂自身だ。だが、親の治療のための金稼ぎ。その親も船坂が活動してまもなく帰らぬ人となった。

悲しむ暇もなく戦場送り。

もはや行く意味もなくなった船坂だが、それでもどす黒い大人たちの道具にされていたという事実。

本人は気にしている素振りはないが、それでも……彼女は憤りを感じていた。

 

「せめて残った2年間は、だな」

 

遅れた分のアオハル。

それを存分に謳歌して欲しいと心の底から願っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──んじゃ!存分に食えー!」

「…………」

 

ここはファミレス。

西京寧音に連れられ昼ごはんをご馳走になる展開になっていた。

 

……ん、んん?なんでこうなった…?

喧嘩してたよな?これが河川敷理論ってやつなのか?

 

「ほらほら、遠慮すんなー?若けぇんだから食え食え。おねーさん金ならあっからよ」

「……んじゃこれ」

「足りんのかー?足りねーだろ」

「……こっからここまで」

「よし来た!店員ー!」

 

そう言って元気よく店員さんを呼び出す西京寧音。

怖い、なんか怖い。なんでこんなテンション高いのこの人。おかしいよ。

 

「なんだ船坂おまえ。レディーに金出してもらうのは男としてとか考えてんのか?」

「いや、別に」

「おいおいそこは嘘でもそうですって言っとけ。モテねえぞ」

「モテたいとか別にないし」

「モテなさそうだもんなあ」

「うっせ…!」

 

向かいに座ってたのに、注文を終えれば馴れ馴れしく隣に触ってそんなふうにからかってきた。

何この人、距離感近。怖。

 

「そんなんじゃ友達も全然だろ」

「いるし、俺にもいるし。黒鉄とか」

「その黒坊も狩人倒して人気爆発。今じゃ学園中のやつらが剣術やらなんやら教わりにいってんだろ?黒鉄一輝教室的な?取られたな!」

「…………」

「寂しいんだろ?」

「別に!」

 

寂しくねえし!俺一人には慣れてるし!

理事長とかとも仲良いし!

 

「しゃーねーな。うちが一緒にいてやるよ」

「頼んでねえよ…!」

「照れんなよー」

 

そう言って背中をバシバシと叩いてくる。

なんなんだこいつはさっきから。

 

「……何が目的だよ」

「おいおい待てって。別になんもねえよ。そんな警戒して殺気出してくんなよ。くーちゃんに怒られた手前、騒ぎなんて起こす気ねえってのにそんなんされたら……こっちも疼いちまうだろ」

「………」

 

獰猛な笑顔。

なるほど、この西京寧音ってやつは戦闘狂ってやつか。

なんでこんなやつ教師にしたんですか理事長。

 

「ま、本音言えばお前と仲良くなりてーって話だよ」

「……なんでだ?」

「お前みたいなやつを見た事がねえ。詰まるところは好奇心ってやつだ。うちと対峙して恐怖心も躊躇う様子もなかった。学生騎士の中だとそんなやつまずいねえよ」

「……お互い本気じゃなかった。それだけの話だろ」

「そりゃな。本気でやってりゃ破軍学園なんて吹き飛ぶしうちらのどっちかが死ぬまでやることになっちまうからな」

 

どっちかが死ぬまでか。

あのままやってたら俺はこいつを殺れてたのか。

死ぬ気もない殺される気もない負ける気もない。が、勝ててたかと言われればキツかっただろうな。

たぶん、"俺が死にかけ"の状態になって何とかイーブンに持ってける相手だろう。"このタイプ"とは戦場でそれなりに経験はある。

いまだに"そういうやつ"相手は手傷を負わせられた程度。多分西京寧音相手もそんな感じになってたかな。

 

「…………」

「………なんだ?」

「いや?お前の頭ん中のシミュレーションでうちは殺れそうだったか?」

「……出来てそれなりの手傷止まりだな」

「……いいねえ。いつかガチンコでやりてえよお前とは」

「俺はごめんだな。真っ向勝負の純粋なタイマンは苦手だ」

「だろうな。お前みたいなやつはなんでも使って勝ちをもぎ取りに行くタイプだ。だからこそ状況が目まぐるしく変わる戦場でこそ輝く」

「ああ、だから諦めてくれ」

「それはむーりー」

 

こいつは…。

思わず呆れのため息とジト目で睨んでしまう。

そんなのを無視して西京寧音は運ばれてきた料理を店員さんから受け取りテーブルの上へと並べていた。

 

「つかよぉ、お前の能力強くないけど厄介だよな」

「なんだいきなり」

「治癒力上げれんのは別にどうでもいいけどダメージの弱体化ってのがずりぃ」

「……弱体できるだけだ。無効じゃない」

「そら無効だったらチートすぎるだろ。じゃなくてそのダメージの範囲が広すぎんだよ。"うちの重力"まで弱められてビビったっての」

 

西京寧音、能力は"重力"を操る自然干渉系。

使い方は多種多様。相手にかかる重力の操作や重力のエネルギーそのものを投擲するとかいった応用までできる。

実際、俺の固有霊装や俺自身も重力を重くさせられた。普通なら動けなくなるレベルだったんだろう。

 

「魔力量は全然だし魔力制御も得意じゃない。そこに才能があったらもっといい能力だったんだろうけど……俺にはイマイチな力だ」

「まあな。でも磨けば光る力だ。お前戦い方独学だろ。多分だけどそれ──」

「分かってる。分かってるし知ってる。ただ"実戦レベル"じゃない。魔力制御が終わってるからな」

「なんだ、やれはすんだな?てこたあ後は特訓あるのみか。うちが師匠になってやろうか?」

「………」

「うわ、すっげえ嫌そうな顔」

 

何を言うかと思えば。

こちとら残りの高校生活はゆっくりしようとしてんのに。

別に魔道騎士とか目指してる訳じゃない。まずは学生をさせてくれ。

 

「ま、気い向いたら、だな。とりあえず飯食うぞ。腹減ったー」

「……ご馳走なるわ」

「おう食え食え!」

 

促されるままに箸を手に。

……うん、美味い。




ギャグ要素とか入れていきたい。
おふざけパートとバーサーカーパートの温度差で風邪ひかせたい。

……それを実現するための文才ェ…。
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