『虚飾』から始めるヒーローアカデミア   作:百合カプはいいぞ

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感想で運対になってしまっていたものがあったのですが、ちょっと判定厳しすぎじゃないかなと思いました。R18は多分書くかもしれません。考えてはいるのですが、安易にふたの方に逃げないように縛りを課しているので、中々難しい。



最近知ったのですが、「ラム元日本人の転生者説」というものがあるらしいですね。個人的には筋も通ってるし、ロマンもあって好きな考察でした。


遊園地なんて久しく行ってない。多分今後も行くことはないだろう

 ――私は、本物の悪意を知っている。

 

「一塊になって動くな!」

 

『動くなよ……動いたら、このナイフ刺してぶっ殺すからな』

 

 ――だって、常に向けられてきたから。

 

「あれは……(ヴィラン)だ!!」

 

『ぐへへ、売る前に少しくらい楽しんでもいいだろ』

 

 ――実の親から私への、欲望の瞳を。

 

『良かったなぁ……無個性だったお前に、こんなに価値が付いた。お陰で俺達の将来は明るい』

 

 ――あの日……私は初めて、(私を犯そうとしてきた父親)を殺した。

 

 

 

 

 

¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥

 

 

 

 

 

「バスの席順でスムーズにいくよう、番号順に二列で並ぼう!」

 

 どこから取り出したのか、体育教師がよく持っているホイッスルを片手に、飯田君が声を出している。正式に委員長に選ばれて、やる気に満ち溢れているのだろう。いいこと……なのかな?まぁ、空回りして大惨事を起こすような人ではないから、そこは安心か。

 

 バスの中は結局二列で座るタイプじゃないから、意味ないんだけどね。

 

「私、思ったことを何でも何でも言っちゃうの。緑谷ちゃん……貴方の個性、オールマイトに似てる」

 

 レスキュー訓練へと向かうバスへ全員が乗り込み、走り出してからしばらく。項垂れる飯田君を余所に、梅雨ちゃんが切り出した。ちなみに、私は梅雨ちゃんの隣に座っており、目の前に芦戸さんがいる感じだ。この二人とは普段から教室でよく話してるからね。出席番号も近いし、バスで隣になるのは必然と言える。

 

「そっそそ、そうかな!?いやでも、僕は、えとその…………」

「待てよ、梅雨ちゃん。オールマイトは怪我しねーぞ、似て非なるアレだぜ」

 

 B組にほぼ同個性の鉄哲君がいる切島君が言うと説得力が高いですね。というか、この世代なら探せば似たような個性の人は沢山いそう。

 

「しっかし、増強型のシンプルな個性はいいな!派手でできることが多い!俺の『硬化』は、対人じゃあつえーけどいかんせん地味なんだよなー」

「僕は凄いカッコいい個性だと思うよ!プロにも十分通用する個性だよ!」

「プロなー。しっかしやっぱヒーローも人気商売みてーなとこあるぜ?」

 

 実際、今のヒーローは半分アイドル化していると言っても過言ではない。人気投票とかもあるし……まぁ、その反例的な存在が私達の担任なのだけれど。あの人はアンダーグラウンドで一般人からの知名度こそ少ないが、ヒーローの間ではかなり有名で有力なヒーローだ。まさに知る人ぞ知る実力者って感じで、ビジュともマッチしている。

 

「派手で強いって言ったらやっぱ、轟と爆轟、あと虚だな!」

 

 む、ここで私の話も出てくるのか。確かに派手だけどね、『魔女』というか魔法は。

 

「爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気出なさそう」

「ンだとコラ出すわ!!!」

「ほら」

 

 梅雨ちゃんの言い分は大分事実である。未来ではその暴力的な言動でビルボートチャートの順位一気に落ちてたし。

 

「逆に飾ちゃんは人気出そうだよねー!顔もいいし、言動も爆豪と違って丁寧だし」

「アァ!?」

「……私は、相澤先生のようなヒーローを目指していますので、あまりそういった話には興味がありません」

「ええー!?勿体ない、こんなに綺麗なのに!!」

「ありがとうございます、芦戸さん。ですが、皆さんも非常に華やかで整っておいでですし、人気も出ると思いますよ。それに私は、あまりカメラが得意ではないので……」

 

 そんな感じでやいのやいの騒いでいると、相澤先生から叱咤が入り、みなが示し合わせたように静かになる。どうやら、あと少しで着くようだ。

 

 

 

 

 

「スッゲェ~、USJかよ!」

 

 スペースヒーロー・13号に連れられた私達は、USJへとやってきた。みんなが辺りを見渡す中で、本来ならここで合流するはずのオールマイトがいないことに疑問を持った相澤先生が13号――黒瀬亜南先生へ問いかけている。オールマイトは通勤中に制限時間ギリギリまで活動したせいで、今は絶賛仮眠室で休憩中だ。ヒーローとしては満点、教師としては赤点な行動に、相澤先生も思わず苦言を漏らしている。

 

 そして、13号先生の演説が始まった。私は一度と言わず何度も画面越しにも聞いたし、紙面で読んだから内容を知っている。要は「馬鹿もハサミも使いよう」的な話だ。人を簡単に殺せる個性を、人を救うために使う。ヒーローになるために、その重要性を説いている。

 

 いい話だとはいえ、既に知っている話なので軽く聞き流しながら、これからの行動について考える。原作と異なる部分があった場合、私はそれの対処を優先してい行うつもりだ。とはいえ、変化するかどうかは予測できない。十中八九変化するとは思うが、一応変化なしの場合はどうするか考えよう。

 まず、相澤先生の怪我を治すのは既に決めていることだ。これは変化しようがしまいが変わらない。問題は怪我をする脳無戦まで、どう動くか。下手に動くと、いくら教師の保護下とはいえ迷惑になるかもしれないし……黒霧の足止めに参加しようかな。それだったら、特に大きな影響を与えずにいけるかもしれない。

 

「以上、ご清聴ありがとうございました!」

「素敵~!」

「ブラボー!」

 

 そうこう考えている間に、13号先生の話は終わってしまったようだ。仕方ない、流れに身を任せるしかないか。

 

 今からは訓練ではない、本当の戦闘が始まるのだから。

 

 USJのセンサーの役割を持っている照明のような器具に電気が走る。そして、相澤先生の背後……そこにある噴水に現れた、黒い靄。言うまでもなく、黒霧のワープゲートだ。禍々しいその様子は、ここからよく見える。

 

「一塊になって動くな!13号、生徒を守れ」

 

 ワープゲートからは、続々と敵が出てきていた。ほとんどは異形型の敵で、その数は両手の指では到底収まらない。十や二十でも足りないだろう。

 

「なんだありゃ、入試の時みたいにもう始まってんぞパターン?」

「動くな!」

 

 未だに状況を飲み込めていないクラスメイト達に、相澤先生の鋭い声が飛ぶ。

 

「あれは……(ヴィラン)だ!!」

 

 そして、最後に出てきたのは……()()の、脳無。片方は知っている。原作でも出てきた、『ショック吸収』と『超再生』を持つ対オールマイト用のパワー型の脳無だ。しかしもう片方は、私の知識にはない。あれが、今回私がいることで起こった変化だろう。二次創作でも、オリ主が増えた分敵の数を増やすのは、メジャーな手法だ。

 

「それと、『パンドラ』!お前も13号と協力して、みんなを守れ!」

「……はい、承りました。『イレイザー・ヘッド』さん」

 

 イレイザーからそんな命令を受けて、承諾する。尤も、そんなことはできないと思うが。

 私の知らない脳無は、もう片方と同様に筋骨隆々で脳みそが丸出しの姿をしていた。しかし違うのは、翼が生えており、その目が私を確かに見据えていることだ。ハイエンドほどではないが、もう片方の脳無と比べれば比較的知性を持っていそうな目。随分といい個体を用意している。多分、私のために調整された個体なのだろう。私を見つめているということは、最低限の命令を守る思考以外は私を倒すことに注力しているように思える。目的を一点に絞った分、特定の場面で知性が高くなってる感じかな。

 

「どこだよ……折角こんなに大衆引き連れて来たってのにさぁ」

「……イレイザーさん」

「なんだ、パンドラ?」

 

 死柄木の声は、確かな負の感情で満ちている。そしてその後ろで、僅かに体を揺らした脳無の姿が見えた。

 

「子供を殺せば来るのかなぁ?……行け、脳無。あの餓鬼を殺せ」

「――来ますよ」

 

 死柄木の言葉を皮切りに、私のために用意されたであろう脳無が、こちらへと飛んできた。こちらに辿り着くまで、時間にして一秒もないとてつもない速さだ。右手を私へと突き出し、このまま行けば私の心臓を貫くだろう。

 その前に、陽魔法を駆使しその手を掴んで、生徒が誰もいない方向へと投げ飛ばした。直後、少し遠い位置から轟音が鳴り響く。かなり遠くへ飛ばしたし、少しの時間稼ぎにはなるだろう。

 

「パンドラ!」

「どうやら、あの奇妙な生物の狙いは私のようです。出てきた時から、ずっと私のことを見据えていらっしゃいました」

「………………」

「このままでは、生徒に被害が出る可能性もあります。私一人で対処するのが、合理的な判断ではないでしょうか?」

「き、危険だよ飾ちゃん!相手はあんなに速いんだよ!?」

「そうだぜ虚!さっきのは距離があったからなんとかなったけど、次はどうなるか……」

 

 イレイザーが迷う。私を狙っているのなら、私が一人でに対処するのが合理的。実力的にもそれができる可能性は非常に高い。しかしその反面、私はまだ生徒だ。仮免を持っているとはいえ、彼からすれば経験不足のヒヨッコ。白雲朧の記憶が、重なっているのだろう。

 

「迷っている(いとま)はありません。許可を」

「…………パンドラは、先ほどの生物を対処。戦闘不能にさせるのが理想だが、できなくとも救援が来るまで耐えてくれ」

「「先生!?」」

 

 迷いの末、合理的な選択をする。元々何を言われても行くつもりだったから、正式な許可が出たのはありがたい。

 

「はい、改めて承ります……ご武運を」

「お前もな」

 

 そう言い残し、私は脳無が飛んで行った方向へと向かう。さて、どのくらいで討伐しようかな。

 

 

 

 

 

「……もし、生きていらっしゃいますか?」

 

 脳無が激突したであろう地点に向かえば、そこには何事もなかったかのように二本の足で立つ脳無の姿。辺りの壊れ具合からして、それなりの衝撃で激突したはずだが、どうやらダメージはなさそうだ。

 

「ご無事な様で、安心しました。私は不必要な犠牲は望んでいませんから」

 

 既に脳無を製作しているということは、個性の複製もある程度進んでいるだろう。『ショック吸収』か『超再生』……あるいは、両方という可能性も十分にある。再生の瞬間を見た訳ではないが、少なくとも『超再生』は持っているはずだ。

 

「……そうだ、お聞きしたいことがありました。是非とも、お話し願いたいのでs――」

 

 その言葉を言い切る前に、脳無の拳が私の頭を潰す。あの距離ですら見切るのは結構ぎりぎりだったのだ、先ほどよりも遥かに短い距離では、こうなってしまうのも必然か。

 

「困りましたね……私は、貴方に危害を加えたくはないのです」

 

 『頭を潰されて死んだ』事実を見間違えにしつつ、言葉を紡ぐ。何故こうも話しかけているのかというと、この脳無がどの程度のレベルの個体なのか気になるからだ。ついでにパンドラムーブもできるし、お得。

 

「話せばわかり合えるはずです。私達には、言葉があるのですから」

 

 そう話しかけても、返ってくるのは暴力だけ。今度は、心臓を貫かれて死んだ。

 

「一度、落ち着いてください。争いは、何も生みません」

「アァァァ!」

 

 今度は『魅了』の力を解放して話しかける。しかしどうやらこの力は死体には意味がないのか、足で体を腰の辺りから上下真っ二つに割られてしまった。

 

「もしや、話せないのですか?……困りましたね。てっきり、異形型の個性の方なのかと思っていたのですが」

 

 権能を行使しながら白々しくそう言えば、次はその翼で首を飛ばされる。翼はホークスのように鋭いようで、私の肌をいとも簡単に切断してきた。

 

 脳無はその素体が死体ではあるが、中にはハイエンドと呼ばれるそれなりの知性を有した個体が存在する。目の前の個体がどうなのかはわからないが、私を狙っている以上私のことが知られているのは確定。少しでも話せれば、何かしらの情報収集ができると踏んでいたのだが……。流石に、高望みしすぎたようだ。

 

「仕方ありませんね。あまり手荒な真似はしたくありませんでしたが……『ヴィータ』」

 

 とりあえず、重力を増やして動けなくする。どうやらあの超スピードは何かしらの個性だったようで、ただの『ヴィータ』でも脳無は動かなくなった。『筋力増強』とかではないのだろうか。できるかどうかは置いといて、もしかすると全身の分の筋力増強を足に集中させたりしているのかもしれない。

 

「さて……お話ししてくださらないのなら、他のことを聞くとしましょう」

 

 私に当ててきたのなら、それ相応の個性を持たされているだろう。次はそれを試すとする。AFOが何を以て私の対策としているのかが気になっていたし、丁度いい機会だ。

 

 まずは火による焼却。次に風による切断。その他にも土による圧し潰し、氷による氷結、熱線などなど色々試していく。

 

「…………『超再生』、『超スピード』『切断耐性』、『両翼』……この辺りは、まず持っていると見て間違いないでしょう」

 

 色々試していると、翼以外にあまり違いはないように見受けられる。私は去年既にインターン生として活動していたこともあるから、私の個性に関しての情報はある程度持っているはずだ。なのにあまり対魔法用の調整がされていないのは、情報収集が甘いのか、個性の複製が間に合わなかったか、あるいは『超スピード』だけでも十分私を殺すことができると踏んでいたか。私の肉体強度はエキドナよりも高いが一般人よりも遥かに劣るし、抵抗しなかったとはいえ実際何回も殺されている。しかし『超スピード』だけでは博打が過ぎる気がするが……やはり、手持ちの個性的にこの辺りが限界だったのだろう。

 カメラも付いていない所を見るに、偵察用という線も薄い。殺せればラッキー程度の認識か。

 

「大方、理解しました。どうやら『不死王の秘蹟』に通ずるものがあるようですね。私はそちらの方面にあまり詳しくないのですが……エキドナなら、何か知っているかもしれませんね」

 

 『不死王の秘蹟』とは簡単に言えば死者を傀儡にして操る魔法だ。魔女が使用することで生前の姿で蘇らせ、使役することもできる。脳無のアプローチとして死体にプログラミングを施して動かせるようにするという点においては、似たようなものだ。残念ながら、私には扱えないが。原理としては水魔法の応用に近いかな。確か水魔法の適性によってはどうのこうのみたいな話があったような気がする。正直、それ以上は何も知らない。

 

「無垢の民の遺体をこのように利用するのは、私の好む所ではありません。しかし……治す手段がないのも、また事実」

 

 権能を使えばどうとでもなるだろうが、生憎そこまでする義理もない。誰とも知らぬ死体をわざわざ取り返そうとも思えないし。とはいえ、消してしまうのはそれはそれで後々問題が起こりそうで面倒だ。

 

「……時間も差し迫っていますし、意識だけでも奪っておくとしましょう。『エル・シャマク』」

 

 『エル・シャマク』で脳無の意識と肉体を分離すれば、上手くいったのか先ほどまで自身に掛かる重さに対抗しようとしていた腕から力が抜けていっているのがわかった。一応、捕縛布を使って拘束もしておこう。パワー自体はそこまでないから、拘束を解かれる可能性も低い。

 

「さて……他の方々は」

 

 辺りの気配を探れば、色々試している内にかなり時間が経ってしまったのか、既に黒霧によってみんなはバラバラに飛ばされてしまっていたようだ。様々な場所から戦闘音が聞こえてくる。しかし、私の近くには誰もいないようだ。

 

「……イレイザー・ヘッドさんの援護に向かいましょうか」

 

 つい先ほど遠くで水の柱が出てきたのを見るに、おそらく相澤先生はそろそろ脳無にボコされる時間だろう。見て見ぬふりもできないし、相澤先生と脳無の相性も悪いから、そちらに向かうことにする。

 

「そうだ、すっかり忘れていました。『あなたは意識を取り戻しても、拘束を解こうとは思わない。その翼の使い方すら忘れ、大人しく待っているだろう』」

 

 私は念のために脳無に対して権能を使いながら、適当に座標の当たりをつけて転移をしたのだった。

 

 

 

 

 

===============

 

 

 

 

 

「ぐぁぁぁ!!」

 

 イレイザー・ヘッド……相澤消太の頭を、脳無が容易く掴み地面へと打ち付ける。叩きつけられた頭からは血が流れ、地面にひびが入っていることからその怪物が凄まじい力を持っていることが読み取れた。

 

「死柄木弔」

「黒霧、13号はやったのか?」

 

 その光景を前に、動じず事務的な報告をする黒霧と呼ばれた黒い靄のような人物と、死柄木弔と呼ばれた、手をいたるところに着けた成人男性。奇抜なファッションのようにも見えるが、見る人が見れば、それがただの模型ではなく本物の人の手であることは簡単にわかるだろう。

 

「行動不能にはしたのですが……散し損ねた生徒がおりまして。一名、逃げられました」

「…………は?」

 

 黒霧は言いにくそうに、死柄木への報告を口にする。それは死柄木にとって、ゲームオーバー宣告と同義の報告だった。

 

「はぁ…………黒霧、お前ぇ!お前が『ワープゲート』じゃなかったら、粉々にしたよ!!」

 

 首を掻きむしり、明らかに苛立った声で死柄木はそう言う。明らかな怒気と殺意を発している彼に、黒霧は何も言わずに反省するばかりだ。

 

「帰る前に、『平和の象徴』としての矜持を、少しでも……へし折って帰ろう!!」

 

 死柄木は、すぐ近くで見ていた蛙吹梅雨を標的に『崩壊』を発動させるために手を伸ばす――ことは、なかった。

 

 

 

「もし……あまり、乱暴はいけませんよ」

 

 

 

 その声が響いた時、死柄木弔の体は自然と停止していた。

 

「イレイザーさんを粗末に扱われては、こちらとしても困ってしまいます」

 

 彼女は、いつの間にかそこにいた。脳無が押さえつけていたイレイザー・ヘッドを、どうやったのかはわからないが救出までして。その顔にはこの場の光景を見るには相応しくない、微笑みが浮かんでいる。

 

「……水魔法はそこまで経験がないのですが、仕方ありません」

 

 その女はイレイザー・ヘッドに対して、何やら治療を行っているようだ。イレイザーの傷は徐々に塞がっていき、折れていたはずの腕も、正しい形に戻ろうとしている。

 

 止めなければならない。

 

 なのに、彼女から目が離せない。

 

 流れるような白金色の髪が。世界を閉じ込めたような蒼い瞳が。死柄木を魅了して止まないからだ。

 

 想像を絶するほどの多幸感。その行動を、自分に向けられたい。意識を向けてくれたなら、死んでもいい。

 

「ぱん、どら……?」

「……イレイザーさん、お疲れ様です。後のことは私が処理いたしますので、『眠って休んでいただいて構いません』よ」

 

 紡がれた声にも、「従わなければならない」と思わせるような、不思議な魅力があった。

 

 イレイザー・ヘッドの目が閉じる。それは先程までの苦しみに耐えるようなものではなく、夜に眠りに就くような穏やかなものだった。

 

「…………お前、は」

「?……あぁ、自己紹介がまだでしたね」

 

 絞り出すように、恐れ多いと思っていると見えてしまうほど小さく震えた声を出すと、彼女は簡単に死柄木に意識を向けた。

 

 髪が揺れ、瞳が動く。更に多くの多幸感が全身を包み込み、常に感じているはずの『ヒーローへの憎しみ』も今この瞬間だけは、死柄木の中から消えていた。

 

「私の名前は『パンドラ』…………ただの、パンドラです」

 

 彼女の微笑みは、最初から最後まで崩れなかった。




・パンドラ成り主

『魅了』の力を解くのを忘れている。
(この世界の)実の父親に犯されそうになった経験がある。未遂のためそこまでトラウマになったわけではないが、無意識化で男性(というか男性との恋愛とか)が苦手になった。



・翼の生えた脳無

対パンドラ用脳無。普通の生徒に当てていれば数人は殺せた程度のスペックはあったのだが、パンドラ成り主に当ててしまったため何もできず魔法の実験台にされた。速いけど力はそこまでない。
一応素体が死体のため『不死王の秘蹟』の適応範囲内ではあるが、パンドラ成り主にそんな高度な魔法は扱えない。エキドナ成り主なら一方的に操れるかも。



・死柄木弔

パンドラ成り主にめちゃくちゃにされた人(誤解を生む表現)。
成り主のことを「欲しい……!」って思うようになるかも。成り主的には、彼も被害者の一人。



・AFO

「この程度で死ぬならそこまでだった」という、試験的な目的で脳無を追加投入した人。
晴れて突破したので、パンドラ成り主を駒にしようと決意。何度でも言うが、失敗する(ネタバレ)。彼の明日はパンドラ成り主の気分次第。




個人的な趣向の話になるのですが、(恋愛的な意味で)お相手のいる人は他の人とそういう行為はしてほしくないなーと思っています。純情と言われればそれまでなのですが、リアルはそんなに綺麗に行かないからこそ、創作では綺麗であって欲しいみたいな。特に冒頭で出てきたような強◯は個人的には地雷なので、本作では未遂という形にしています。未遂ならギリ許されると思ってる。

ポケモンチャンピオンズとか大会とか色々あるので次回は未定です。
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