黄金樹から出禁くらったので、フォドラで生きていきます。   作:エクストラ・バージニアオイル

7 / 7
ひとまずここまでオリ主がやらかした事のまとめ。
 &今後の展開への導入。

と、それに対する教会の方針決定の回です。
戦闘シーンはありません。(ないとは言ってない。)


「幕間、というより現状確認...よ。」

 

 フォドラ大陸の中央。

 

 険しい山の中に建つ豪奢な風貌の大聖堂。

 

 その名を「ガルグ=マク大修道院」。

それに併設された士官学校の学生寮1階にある、ベレスの部屋から筆を走らせる音が聞こえる。

 

 今は学級対抗の模擬戦が終わって数日後。

 

 ベレスが指導する黒鷲の学級(アドラークラッセ)が勝利してからすぐに、次の節での課題が発表された。

 

 彼女が筆を取る理由はその課題に関する資料をまとめるためであった。

 

 

 

 「山賊討伐、ザナド。どちらも不確定な情報ばかりだ。」

 

 

 

 一人呟きながら、悪戦苦闘する。

どうにも集めた情報の入手日が昔のものばかりで信憑性がイマイチであるのだ。おまけにザナドに関しては魔物が出るという報告がそれなりに多いため、実地調査も出来そうにない。

 

 今日はせっかくの休養日ではあるのだが、いかんせん普段から教師としての業務が多いので、こうして節の課題にまで手が回らないのである。

 

 ただ剣を振り、傭兵稼業をこなしていた時とは違う。今や羽根ペンを握る時間の方が長くなっている気がする。

 

 

 

 「─────ぬし...おぬし...おい、おぬし!!」

 

 「!!(え、誰。)」

 

 「やーっっっっと気づきおったか!この鈍臭い奴め、儂が何度も呼んでおるのに無視するとは薄情なヤツじゃのう!」

 

 

 

 ちょうどベレスの左後ろ。ベッドの上あたりに少女が浮いていた。

 

 彼女には見覚えがある、そうソティスである。

メリクとのファーストコンタクトでしこたまキレ散らかしていた幼女が幽霊のように浮いているのだ。

 

 ...よく考えるとベレスのイメージ空間にしか居ないのなら幽霊で合っているかもしれない。という気持ちは飲み込んでおく事にする。

 

 

 

 「ごめん。気づかなかった。」

 

 「ふん、口では何とでも言えるわ。儂は退屈じゃ、どこかへ出かけんと気が済まぬぞ?...あと、おぬしはさっきから何を見ておるのじゃ?」

 

 「これ。赤き谷ザナドについて。」

 

 「ザナド...うーん、昔聞いた気がするのう。じゃが思い出せそうで、思い出せん...むむむ。」

 

 「この場所に今度行くから調べないと。」

 

 「ほう!ならばこうしようかの、儂がザナドについて思い出す。じゃから思い出そうとする間、おぬしは儂を連れてどこか面白い場所に連れて行くのじゃ!どうかの?」

 

 

 

 ソティスはどうにかして出掛けたいようだ。

正直、彼女が思い出すかどうかも運次第だが流石に今の今まで無視し続けて「仕事がある」で終わるのはあまりにも酷い。ここはおとなしくしておく事にしよう。

 

 

 

 「わかった、大修道院を見て回ろう。」

 

 「よしよしそうこなくてはな!まずは食堂じゃ!儂は腹ペコじゃ!」

 

 「...食事、できるの?」

 

 「いいや。おぬしが儂の代わりに食べるのじゃ。良いな?」

 

 「...。」

 

 

 

 ちょうど朝飯は食べてないので、構わないか。

などと思いつつ、幽霊少女と一緒に部屋を出た。

 

 

 

 「あっ、こんにちは先生!今日はメリクさんと一緒じゃないんですね!」

 

 「アネット、こんにちは。何してるの。」

 

 

 

 早速、食堂までやってきたが普段のエプロンをつけた食堂のおばさんではなく、青獅子の学級(ルーヴェンクラッセ)の生徒。アネットが出迎えてくれた。

 

 

 

 「今日はアタシが料理当番の日なのでみんなのお昼ご飯を用意していた所なんです!先生はもうお昼は食べましたか?」

 

 「そうか、もう昼か。」

 

 「もしかして先生、朝ごはんも食べてないんじゃないですか?」

 

 

 

 図星を突かれたベレス。

 

 というのも、今日は朝からずっと部屋でザナドの下調べと、生徒たちの授業進度の精査、一部生徒が引き起こした問題の尻拭い(主にメリク)。

 

 これらの諸用を片付けるために部屋にこもりきりであったのだ。

 

 

 

 「もう先生〜、ダメじゃないですか!ご飯は一日を元気に過ごすためにもちゃんと食べないと!せっかくですし、先生のお昼ご飯は多めによそってあげますね!」

 

 「程々でいいよ。」

 

 「おぬし、せっかく可愛い生徒が言ってくれておるのじゃ。受け取っておくが良い。それに...量が多い方が見てる儂としても気持ちが良いからの!」

 

 「...。」

 

 

 

 結局。付き添いの童女と、眩しい笑顔を向けるアネットの勢いに押されたベレスはいつもの1.5倍ほどの量になった昼食を頂くことになった。

 

 

 

 「あ。ベレス、おきてた。」

 

 「ん...ごくん。おはようメリク、その荷物は?」

 

 

 

 アネットの大盛り定食を無事に完食した所で、一際大きな荷物を背負ったメリクが食堂に入ってきた。

 

 何やら長い棒やら角ばったものやらを布で包んでいるみたいだ。

 

 

 

 「これ、あとでくんれんでつかうやつ。ほかクラスのひとたちが、けいこしてほしいっていってたから。」

 

 「確か、前の模擬戦が終わった時に色んな子達に囲まれてたね。」

 

 「そう。べれすはひま?」

 

 「ううん。用事があるかな。」

 

 「そっか...。」

 

 

 

 表情こそ変わらないが少し肩を落とすメリク。

最近は単独行動をしても問題ない、というか他学級の子達が付き添いで様子を見てくれているためベレスが一緒にいる頻度が減っている。

 

 好奇心の強いメリクの事を思うと自分とずっと行動するより、他学級の生徒らと一緒の方がいいと思ったが、そうでもないようだ。

 

 

 

 「夜までには終わると思う。夕食は一緒に食べようか。」

 

 「うん。わかった、なにかあったらいつでもよんで。」

 

 

 

 先程より背を伸ばして、嬉しそうに (ベレス感) 夕食の誘いを快諾するメリク。

どうやら元気にはなってくれたようだ。

 

 そのまま手を振り、彼は訓練場の方へと行ってしまった。

 

 

 

 「やれやれ世話の焼ける男じゃのう。いや、情緒だけ見ればまだ童といった方が正しいか。」

 

 「...ソティスが言うんだソレ。」

 

 「おぬし?今ものすごく失礼な事を想像しとらんかの!?儂をあやつと一緒にするでないわ!」

 

 「...。(口が滑った。)」

 

 「今更黙っても遅いわい!はぁ...それで?次はどこへ行くのじゃ?」

 

 「なら、市場にでも行ってみよう。」

 

 

 

 腹も膨れた2人( 周囲から見ると1人 )は、大修道院の門を抜けてすぐにある市場へと赴くことにした。

 

 休養日で多くの人がごった返す市場は、無数の物や人で溢れている。

 

 

 「おお!おぬし、儂はアレが欲しいぞ!」

 

 「...。」

 

 

 はてさて、今日が終わるまでベレスのお小遣いが持つのかどうか、それは女神の機嫌次第であった。

 

 

 

 

 

 

 

 一方、謁見の間の奥。大司教の部屋にて。

 

 レアとセテスが二人して机を挟んで考え込んでいた。

 

 

 

 「改めて、レア。これまでのあの者『メリク』がしてきた事について私なりにまとめてみたが...。彼は本当に『我ら』と同じ出自かそれに近しい者だと思うか?」

 

 「ここまでの事が出来るというのは予想外です。しかし以前変わりなく、彼は我らの同胞...いいえ。それ以上の可能性すら考えられます。」

 

 「それ以上というのは、どういう事なのだレア...?」

 

 

 

 机の上に広がった資料には様々な情報がこれでもかと並べられており、彼のフォドラに来てからの動向が詳細に記録されている。

 

 その中からレアはメリクが教師陣の前で切腹したあの日、すなわち一度大聖堂のステンドグラスが全壊し、大広間がめちゃくちゃにされ、ハンネマンが気絶した日の記録を指差した。

 

 

 

 「セテス、あなたはこの日に大聖堂で壊れたはずのステンドグラス、更には散らかった大広間が元に戻ったと言っていましたね。」

 

 

 

 と言いながら確認を取ると、セテスはしかと頷く。

 

 何よりあの場面はセテス以外にも複数の騎士や生徒らが目撃していた。

客観的な事実に基づいて、あの現象は幻覚などではないと断言できる。

 

 

 

 「新たな魔法の実験だと誤魔化しはしたが、あの一件で同盟貴族の一部から詳細を明らかにせよと要求されている。帝国と王国からは特にないが、恐らく帝国ではエーギル公による実権掌握が過激化している事、王国内はフラルダリウス公が事情の説明に回ってくれたことが幸いした。...レア、こんな大事を起こしても彼を信じられるのはどういう事なのだ?壊れたモノや空間を元に戻すなど、人智を超えた力だ。彼は危険すぎる!」

 

 「...それはおそらく、彼が神祖。あるいはそれと同等と考えられる存在だからです。」

 

 「なっ!?」

 

 

 

 驚愕のあまり動きを止めたセテス。それも想定の範疇か、レアは話を続ける。

 

 

 

 「かつてお母さ...神祖には特別な権能がありました。私も全てを知る訳ではありませんが、その中に『時を戻す権能』を持っていたと聞いた事があります。」

 

 「それこそあり得ないだろうレア!彼は狭間の地という聞いた事もない場所からやって来たと言うではないか、仮に彼が強大な力を持っていたとしても、神祖と同等の存在が眷属すら連れず一人でやって来るなど...それこそ暴論がすぎる、あり得ん!!」

 

 

 

 真っ向からレアの意見を否定するセテス。

 

 彼の意見は尤もだろう。超常の力を所持しているはずの神祖、この場合はレアやセテスが仕える女神そのものが、たった一人で見知らぬ異国へ旅立つかという話だ。

 

 つまり、レアの説明ではあまりにも無理がある。

 

 

 

 「いえ、根拠はもう一つあるのですセテス。それは...。」

 

 否定されようともレアは止まらない。次に彼女の指が示したのは。

 

 

 

 「ベレス...!やはり、彼女には何かあるのかレア!?」

 

 「この際です、全て話しましょう。あの子は私が手ずから生み出した子...その胸の中には神祖の心臓が...。」

 

 「なんという!!禁忌を犯したのか、レア!?くっ...止められなかった私にも責はある...!だが、それはつまり...?」

 

 

 

 重々しく頷いたレア。

 

 自身の身内である神祖をよもや肉体の核にして、人造人間を生み出したレアはある数奇な偶然を、突拍子もない結論に至っていた。

 

 

 

 「神祖が...彼を、遠き狭間の地という場所にいた自身と重なる者を呼び寄せて、その力を以って復活する。その可能性が、いいえ。彼の力を行使すれば実現出来るのです。」

 

 「真偽はともかく、この答えにたどり着いた者がいればあの二人の身柄を奪い合う戦いすらも起こりかねんぞ...。」

 

 「ええ。なので大修道院の警戒度を最大限に引き上げます。セテス、騎士団の中で現在任務についていない待機中の部隊を大修道院およびガルグ=マク近郊、そして『アビス』内に通常より多く配置させるのです。」

 

 「部隊の配置は構わないが、配置の理由はどうするのだ?」

 

 

 

 大規模に兵力を大修道院近辺に配置するというのはあまりにも不自然な動きになってしまう。

 

 この理由を少し考えたレアは。

 

 

 

 「女神再誕の儀にあたり、大修道院周辺の治安維持をより強固なものにするため。という体で行いましょう。もうすぐ千年祭が控えている時期での儀式ですから、説得力としては十分にあります。」

 

 「承知した。...レア、彼を自身の目的のために犠牲にするというのなら私個人としては反対させてもらう。あの者はまだ幼い、心が未成熟な無垢なる者を利用するならば、それは闇に蠢く外道と何ら変わらない。」

 

 「ええ、誓って犠牲には致しません。.....きっと、彼ならば分かってくれるはずです。私はあの二人を信じているのですから。」

 

 「......。」

 

 

 

 セテスの忠告を受けようとも、レアの表情は変わらない。

 

 どこか遠くを見て、何かを待っている少女のような目。

危うさを秘めたその面持ちからは狂気すら感じられる。

 

 彼女と同じ志を持つ仲間として、ここまで支えてきたセテスであったが。彼にも今のレアを止める事は出来ない。

そう感じさせる激しい思いが、大司教レアを突き動かしているように見えた。

 

 

 

 

 

 

 そしてその頃。

 ガルグ=マク近郊の城下町にて。

 

 街の奥、路地裏を抜けて、人通りや喧騒から遠く離れた街の隅。

そこにある古びた宿屋の2階、最奥の部屋。

 

 その中には怪しげなお面と赤いマントをつけた鎧の人物と。

その従者と思しき、いや。士官学校の制服から私服に変えてこそいるが特徴的な人相のヒューベルトが立っていた。

 

 

 

 「.....これが私の見たあの化け物の中身だ。」

 

 「ククク、よもやあの方にそれほどの秘密が隠されていようとは驚きでございます。して、それを先日ご相談されたお相手からは何と?」

 

 「知らなかった。とだけだ。」

 

 「果たして欺いているのか、ただ無知であるのか。どちらなのでしょうな。」

 

 「どちらにせよ計画に変更はない。西方教会の動向でどのみち大司教も動かざるを得ない、そこで明らかになるだろう。...闇の者からは何か聞き及んでいるか?」

 

 「はっ、こちらに書状が。」

 

 

 

 悪趣味な黒い封がされた一通の手紙を差し出すヒューベルト、仮面の人物が中身を見ると。

 

 

 

 「どうやら、奴らも気づいたようだ。あの化け物『メリク』が抱えるモノの一端を。」

 

 「彼らと連携して化け物退治という方針の方がよろしいですか?」

 

 「不要だ。あの存在相手にどんな大軍や策を弄したとしても徒労に終わるだけだ。」

 

 「随分と評価されていらっしゃるのですね。」

 

 「ただの事実だ。...アレが、あんな一つの世界が固まった存在を、生物などというものか。」

 

 

 

 忌々しくそう呟くと、仮面の人物はヒューベルトへ何かを囁く。

 

 すると恭しく礼をしたのち、転移の魔法を行使したかヒューベルトと仮面の人物は跡形もなく消えてしまった。

 

 その場に残されたのは僅かな銅貨だけ。

再び、宿屋は静寂に包まれる。彼らの話を聞く者など居るはずもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 「しかし、不思議だよなぁ〜!メリクが使う白魔法って傷薬より効くのに何回でも使えちまうとか驚きだぜ!」

 

 「かるいきずだから。もっとかいふくさせる祈祷、いちどに5かいがげんど。」

 

 「キトウ?それがメリクの回復させる魔法の名前なのか。不思議な名前の魔法だな!」

 

 

 

 激しい剣と槍、斧や拳の打ち合いが響く訓練場の端、淡い金色の光を放つメリクの祈祷「回復」によってカスパルの打撲した腕が完治する。

 

 すでに何度も祈祷を使用しているのか、激しく汗を流す者はいても傷を受けている様子の者は誰一人いない。

 

 

 

 「なぁ、メリクがいた所はみんな魔法が使えたのか?俺もなんか使ってみてぇよ!」

 

 「ううん。のうりょくたりないやつは、ぜったいつかえない。むこうも、こっちも、それはおなじ。」

 

 「そっかぁ、それじゃ難しいな...。」

 

 「でも戦技ならおぼえられるかも。やってみる?」

 

 「おぉっ!戦技!バックブローとかスマッシュみたいなヤツって事か、教えてくれ!!」

 

 

 

 魔術や祈祷には必要とされるステータスが存在しているが、戦技はあくまでも武器に宿る記憶。それを発現させる技術だ。

 

 それならば幾千の戦いと経験の中で、体術による戦技の再現という偉業に辿り着いたメリクであれば教えることも出来よう。が、それを許してくれるわけはなく。

 

 

 

 「おい、いつまで喋っているつもりだ。次は俺との立ち会いだろう。剣を構えろ!」

 

 「ごめんカスパル。あとでおしえる。」

 

 「えー!?絶対だからな!」

 

 

 

 頷き返して、訓練場の中央へと歩いていく。

 

 次の相手はフェリクス。前回戦った時は呆気なく勝利してしまったが、今回はそうでもなさそうだ。

 

 

 

 「前回の戦い方はもう覚えさせてもらった。前と同じようにいくと思うなよ。」

 

 「うん。やろうか。」

 

 

 

 腰を落としてフェリクスの攻撃を待つ。

それに呼応するように、深く前へ踏み込んできた。

 

 

 「しッ...!!」

 

 素早い突き。狙いはメリクの喉か。

 

 「...。」

 

 腰を落とした状態から、さらに深く。

もう一段膝を落として沈み込んだメリク。

 

 前傾姿勢になりながら剣筋の下を潜り抜けていく。

 

 

 

 「これが、居合。」

 

 「ッ!?」

 

 

 

 相手の眼前へと迫りながら、抜刀。

 

 腰から抜き放った木剣は腰の回転に合わせて上段から振り下ろされる。

 

 

 パコォン!!!

 

 「づぁっ...。」

 

 「はやいけど、けいかいがうすい。」

 

 

 重力×技術。腕に力は込めずに、振り抜いた重さのまま素早い縦切りが命中した。

 

 フェリクスの額に大きなタンコブが浮かんでいる。

 

 

 

 「派手にやられてんなぁフェリクス!ははっ!!」

 

 「抜かっただけだ、次は当てる!」

 

 「てあてしてから。」

 

 

 

 順調に強くなっていく生徒達。

 

 メリクとしては会う度に新しい戦い方をする手合いというのはこれまでいなかった為、充実感を覚えていた。

 

 異なる方法で自分を倒すために挑んでくる、かつて狭間の地で自分が行っていた営みを、よもや自分自身に向けられるというのは存外に悪くないものだ。

 

 

 

 「なぁアンタ、アタシとも勝負してくれねぇか?」

 

 「?」

 

 

 

 回復の祈祷でフェリクスのタンコブを直し終わったメリクに声をかける人物が一人。

 

 ブロンドの髪に褐色の肌。

白い鎧に刻印されたマークは、セイロス騎士団のもの。

 

 

 

 「あっ、カトリーヌさんじゃねぇか!」

 

 「よおカスパル。さっきの立ち会い見てたよ、こっぴどくやられてたじゃないか。あとそっちの坊やも。」

 

 「チッ...。」

 

 「だれ?」

 

 「あの人はセイロス騎士団でもスゲェ強い人なんだぜ!『雷霆』って剣を使う凄腕の剣士!」

 

 「ふぅん。」

 

 

 

 生返事をしたメリクだったが、その様子は既に臨戦体制。

ゆっくりとした足取りでカトリーヌの前へ向かっている。

 

 

 

 「らいてい、ってどんなの?」

 

 「見たけりゃアタシから一本取ってみな?」

 

 

 カァァァァァァァァァンッ──────。

 

 

 「...ははっ、手が早いのは好きだよ!」

 

 「.....。」

 

 

 

 

 躊躇いのない袈裟斬り、これを寸手の所で受け止めたカトリーヌ。

 

 この一撃が勝負の合図となった。

 

 

 

 「せあっ!!」

 

 「...。」

 

 「まだまだっ!!」

 

 「.....。」

 

 

 

 初撃を止められたメリクは、一転守勢。

 

 カトリーヌから放たれる多彩な攻撃をひらり舞い踊るように避けていく。

 

 

 

 「いつまでも様子見してちゃ、勝てっこないよ!!」

 

 

 

 重く、鋭い。それでいて迅速な剣捌きを見せるカトリーヌ。

 

 英雄の遺産である『雷霆』を託される剣の腕前というのも伊達ではない。激しい動きの中で、隙を意図的に生み出している。

 

 まるで攻撃を誘うかのような視線や動き。

ごく自然を装いながらメリクの打ち込みを狙っているのだ。

 

 これには思わず周囲にいた生徒や、他のセイロス騎士までもが固唾を飲んで見入ってしまう。

 

 だが。

 

 

 

 「うん。だいたいわかった、ふんっ。」

 

 「うおっ!?」

 

 ガコッ、ギギッ...カァァァァン!!

 

 

 一瞬の鍔迫り合い。

カトリーヌの攻撃に合わせて剣を当ててきたメリク。

 

 相手が反応する前に、剣を足元へ導くようにと回転させ。勢いよく、カチ上げた。

 

 これによって胴が空くカトリーヌ。

 

 

 

 「.....いくよ。」

 

 「ッ!なんのこれしきィ!」

 

 

 

 隙を見つけたメリクによる追撃、素早く剣先を相手に向けて突きを放つ。

 

 だが、これにやられるカトリーヌではない。力任せに剣を叩き折る勢いで振り下ろした。突きがもう少しで命中するという所で強引に軌道を地面へ逸らした。

 

 

 

 「かかった。」

 

 しかし、剣が地面につく前。

素早くメリクは手元へ引き寄せるとカトリーヌへ突っ込む。

 

 

 「ぐっ、なにをっ!?」

 

 「突撃。」

 

 

 戦技『突撃』。本来は槍などで真価を発揮する戦技を用い、体幹の崩れたカトリーヌを後方へ押し込む。

 

 そしてそのまま

 

 

 「せい。」

 

 「ぐはぁっ!!」

 

 

 ダメ押しの突きによって勝負は決した。

 

 

 

 「あいたたた...。」

 

 「だいじょうぶ?」

 

 「ああ、おかげさまでね。コイツはアタシの負けだ。」

 

 「たのしかった。」

 

 

 

 

 メリクが倒れたカトリーヌに手を貸すと、周囲から歓声が上がる。

 

 この試合の様子を見届けた者たちからの祝福を受け続けるのも小っ恥ずかしい二人は、端の方で見ていたカスパルとフェリクスの元へ向かった。

 

 

 

 「最後の突進と突き、あの組み合わせは面白い。また一つ貴様のやり方を覚えさせてもらったぞ。」

 

 「すげぇ勝負だったな!見ててワクワクしたぜ!」

 

 「そりゃどうも。改めて、セイロス騎士団のカトリーヌだ。約束通り『雷霆』見せてやるよ。」

 

 「メリク。たのしいしょうぶだった、またやろう。」

 

 

 

 互いの健闘を讃えつつ、その後カトリーヌの持っていた『雷霆』を見せてもらう事になったメリク。

 

 が、その時。彼は一つの事実に気づく。

 

 

 

 「このぶき、だれのからだでつくったの?」

 

 「「「は?」」」

 

 

 

 フォドラの闇に触れてしまった褪せ人。周囲に嫌な静寂が流れる。

 

 

 

 

 

 

 ────────夕方、食堂前にて。

 

 

 

 「........。」

 

 「ふむ、そろそろ来ても良い頃合いじゃと思うが。メリクとやら...どこをほっつき歩いているのじゃ。」

 

 「探した方がいいかも。」

 

 「まぁそうじゃのう。おおよそ迷子に、ん?おぬし。向こうに人だかりが出来ておるぞ。見に行ってみるかの。」

 

 「メリクいるかも。」

 

 

 

 複数の生徒や修道士らが集まる大広間近くの渡り廊下。

 

 人混みから少し顔を出し、彼らの目線の先を見る。そこには。

 

 

 

 「メリク...?」

 

 

 

 手錠に繋がれて、複数のセイロス騎士に連行される見知った男の姿があった。

 

 物語が緩やかに壊れ始めていく。




はい、またやらかしです。

英雄の遺産は神祖であるソティス含む、ナバテアの人達から作られた人体を素材にした武器ですので。

ええ、狭間の地で色んな敵の死体を武器にしてた褪せ人なら一発で分かってしまいますよね...。

ここからロナート卿の鎮圧→女神再誕の儀につなげたい
のですが、綺麗にいけるかどうか。

といった所です。次回もお楽しみに。



6/25 11:40 ( 誤字報告、感謝です。おそらく直ったと思うのですが今後また何かございましたらご報告よろしくお願いします。)
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