壊れた人形師の鬼退治(連載開始)   作:蜜柑ブタ

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やる気がなかったわけじゃない!
気力がなかっただけだ!
……言い訳にしかなりませんが。


今回は、前回の終わりで予告していた煉獄との模擬戦。
太郎丸と戦います。

ただし、途中で太刀が折れちゃうので勝負はつきません。

オリキャラくんは、チートではないですが、状況や場面によってはめっちゃ強いってことにしています。
そのため対人戦では……?






それでもOKって方だけどうぞ。







いいですね?


第2話  炎柱と模擬戦

 

 

 奇妙な組み合わせの模擬戦が始まろうとしていた。

 片や鬼殺隊の柱のひとり、炎柱の煉獄杏寿郎。

 もう片方は人間ですらない、糸で操られるからかくりの鎧武者・太郎丸。

 その太郎丸を操るのは、ヴァル・ノーヴァディと名乗る銀色の髪と眼を持つしろがねという普通の人間とは異なる存在だという少年。見た目15歳ぐらい。

「いつでも来い!」

「お願いします!」

 煉獄の大きな一声と、ヴァルの嬉しそうな声。

 ヴァルの人形繰りで太郎丸が太刀を抜いて構えた。

「んん? あの構え…どこかで…。」

 柱のひとりである、音柱の宇随という男が太郎丸の構えを見て訝しんだ。

「師範! 頑張ってください!」

「人形が、刀構えてる。」

「絵面だけ見たら奇妙で仕方ない…。あれが人形だからか?」

「下弦の伍を圧倒したからくり…。果たして…。」

 柱達は、それぞれの思いを持ってこれから始まる未知の戦いを見守る。

 

 模擬戦の試合開始の合図は、産屋敷の嫡男が執り行った。

 

 先に動いたのは煉獄だ。常人どころか鬼ですら見抜くことが困難な抜刀で繰り出された煉獄の刀を、太郎丸が大きな太刀で受け止める。

 ギリギリと刃が擦れるが煉獄の力では、太郎丸はその場から動かない。

「重い! 見た目通りだ!」

 煉獄だって大正時代の男性にしては大変体格に恵まれている方だが、鎧武者のからくりには体重で劣るのは仕方ない。

「うちの人形で一番重たいんですよ! 太郎丸は!」

「むぅ!」

 体格差は見ての通り。更に見た目通りかなり重たいと来たら。

「内部構造が複雑で外も内もクソ硬い人形を一撃で真っ二つにするのを追及した結果、こうなった!!」

 煉獄を強引な形で弾き、煉獄は数メートル近く後方に吹っ飛ばされた。

 そこへ太郎丸が追撃してくる。重たい足音を立てて砂利の地面を抉りながら予想以上の速度で迫ってくる。

 その迫りくる時の威圧感や不気味さは、鬼とはまた違った異質な恐怖を見る者に抱かせる。

 振り上げ、振り下ろされる太刀を煉獄は頭上で刀で受け止める。

 太刀を振り下ろした力の強さで煉獄の足が僅かに地面に埋まるし、全身の筋力に力を入れたため体に血管が浮いた。

「人形とは思えない速さだ! そして…この力…! 並みの隊士では刀ごと逝っていただろう! 刀の出来もだが、本当に人形の力なのか⁉」

 太郎丸が力で押し込もうとしてくるのに耐えるせいで、背筋や足が僅かに震える煉獄がそう口に出す。

「一撃必殺に拘りました! そしたらしろがねの間で、最強格の人形だって言われるようになりましたよ!」

「なるほど、それほどだったとは…、侮っていたことを詫びよう! 少しばかりこちらも本気を出さなければならなそうだ! 多少壊れても怨まないでくれ!」

「そっちこそ、怪我しても知りませんよ!」

「負ける気は、ない!」

 煉獄が炎の呼吸を使った。

「炎の呼吸、肆ノ型『盛炎のうねり』!!」

「おおっ! なんか分かんないけど、すごっ!!」

 煉獄が放った刀は業火のような炎をまとい、太郎丸の身を弾き飛ばした。

 ヴァルは手早く糸を繰り、太郎丸を地面に着地させた。

 切断するには至らなかったが太郎丸の胴体に浅く傷を負わせた。

 ヴァルは、初めて見る鬼殺隊の隊士が使う呼吸による技を見て表情を輝かせた。

「凄まじい硬さだ…! 那田蜘蛛山で下弦の伍の糸の血鬼術は日輪刀をも切断する切断力を持つと聞いていたが、それで切断されなかったとは聞いていた。しかし、これほどとは……、何で出来ているのか気になる!」

「ほぼ未来の技術ですね。あとは自分の思い付きで強度を上げるように試行錯誤してます。」

「なんと!」

「どんな攻撃を受けても倒れないように、多少壊れても戦えるように内部構造も追及しまくりましたからね!! 太郎丸は初めて造ったからくりだから!」

 凶悪に見える笑みを浮かべたヴァルが興奮した声音で喋りながら太郎丸を繰り、先ほど以上の勢いで煉獄に太郎丸を差し向けた。

 その動きは人間では恐らく不可能な速度。そして腕力と脚力。生き物ではないからくりだからこそ再現できたものだが、それ以上にヴァルが太郎丸の作者として太郎丸の力を引き出し方を知り尽くしていることが重要だ。

 そこからはまさに人外の領域の剣の打ち合い。

 体格差と力の差はあるが、若くして柱として頭角を著した煉獄は一歩も劣らない。剛力で押されてもすぐに持ち直して反撃し、太郎丸も先ほど一撃を受けたからヴァルも人形繰りに力を入れて太郎丸の動きが力強さはありつつ、より速度を増しつつ繊細なものに変わる。

 大柄なうえに鎧武者という動きにくそうな外見なのに、どうやってあの動きができるんだというのと、その動きをさせているのが太郎丸と繋がった糸を指に繋いだヴァルの技量なのだ。見ている方は信じられない目でその試合から目を離せない。

 両者に殺意はない。

 そのせいか煉獄の表情は、鬼を退治する時や隊士達の訓練を行う時と違う顔をしている。

 真剣であるが、心底楽しそうな顔をしているのだ。

 それはヴァルの方もだ。煉獄の剣に目をキラキラさせて笑顔でいながら太郎丸を繰る手の動きは凄まじい。

 その時だ。

 

 何度目か分からない煉獄の日輪刀と太郎丸の太刀が打ち合った瞬間、太郎丸の太刀が真ん中辺りから折れて飛んで行った。

 

「あっ。」

 それで空気が固まると同時に緊張が切れた。

 そして産屋敷の屋敷の屋根に折れた太刀が刺さった。

 シーンと静まり返る。

 ヴァルは、頭を抱えた。

「あ~~~~~! すっごい楽しかったのに~~~!! もともと限界だったけど結構いけそうって感じだったから力入れすぎた~~~!!」

「そういえばそうだった! すまない!」

 煉獄は刀を収め、綺麗な姿勢になって深く頭を下げた。

「折れるって分かってて模擬戦請け負ったのはこっちですから…。気にしないで……、グスッ…。」

「泣いてる⁉」

「産屋敷さん…。」

「うん。約束通り、我が鬼殺隊に刀を卸している刀鍛冶に案内する。君の大切なからくりのための刀が用意できるよう協力しよう。」

「おでがいじまず~~~。」

「そこまで辛いなら模擬戦を承諾するなよな…。」

「すごかった…。折れなかったら、僕もやりたかった…。」

「それは止めた方がいい。お前の腕力では、あの剣の一撃の重さに耐えられたとは思えない。」

「そう? 糸切ったら終わりじゃない?」

「そんなもの、向こうが一番警戒することだ。分かり切っているのだから簡単にやらせるないだろう。実際、煉獄も糸を狙ってはいたが一本も切れなかったようだ。」

「…本当?」

「糸が張り詰める音はあった。だが、断ち切れる音は一度もない。」

 霞柱の時透が自分も太郎丸との模擬戦を希望したがっていたことを口にするので、岩柱の悲鳴嶼と蛇柱の伊黒がやんわり止めた。そして止めた理由を話した。

 彼らの言う通り、煉獄は糸を狙ってはいた。太郎丸という刀を使うからくりの力を試したいという気持ちもあるが太郎丸というからくりを無力化する最大の弱点である糸を切ることも視野に入れて模擬戦をしていた。

 だが太郎丸の動きはそれを的確に防いでみせた。

 操り手のヴァルが、人形繰りで操るからくりが糸が最大の弱点だというのを一番よく分かっているからこそ対策する動きが可能になったのだ。

 しかも糸の長さやうねるのを見極めて切られる隙を一切無くし、太郎丸の力を最大限に引き出す操りを実行もして見せたのだ。

 ただし、ここまでからくりを動かせるしろがねは、長いしろがねの歴史の中でヴァルしかいない。

 太郎丸は、最初のヴァルの作品だが長い年月をかけて改良を重ね、やがてしろがね達が持っているからくりの中で最強格と数えられるほどの出来となったからくりであるが、一方でその力を使いこなせる最強の操り手はヴァルなのだ。

 他のしろがねでは、太郎丸はまともに扱えないほどの難しい代物なのだが、残念ながらそのことを知る者はこの場にいない。ヴァルもあまり自覚していない。何人かが試して指や手首が折れたなんて……、知る由もない。

 

 太郎丸の太刀の折れた部分は、この後屋根から回収されて持ち手の方と共に鞘に収めて太郎丸から外した。

 使用不能になったのと、刀鍛冶の里へ持っていき、そこの鍛冶職人達にすぐに見てもらうためだ。

 太郎丸を葛籠に収め、太刀を収めた鞘を抱えてデカい溜息を吐いて俯くヴァルを、炭治郎が背中をさすって励ましていた。

 

「煉獄さんの技でも傷一つつかないなんて…、信じられられない。」

「いいや、ちゃんと見てたか?」

「えっ?」

 恋柱の甘露寺が悲しそうな顔をして呟いたところに宇随が声をかけた。

「まったく傷がつかなかったわけじゃねぇ。だが鎧を切り裂くほど刃が入らなかっただけだ。刀が当たった時に聞いたこともねぇ音がしてた。単純に硬い素材じゃない。何重にも別の素材を重ねたかして、強度と一緒に斬りづらさを追及したってところだろ。」

「よく分かりましたね!」

 ビュンッとヴァルが宇随の前に来ていた。

「ぬあ⁉ 急に距離を詰めてくんな! 心臓に悪い!」

「え~、だってぇ! うちの太郎丸のこと褒めてもらったら嬉しくってぇ!」

「褒めてるつーか…。ただそんじょそこらの技術じゃねーって話をしてただけだぞ?」

「そーなんですよ、そーなんですよ! 太郎丸の太刀も拘ったけど、鎧も拘りぬいたんですよ! 硬さだけじゃなく、どんな衝撃や化学物質や環境にも耐えられるように試行錯誤して、あれを上にして、これを下にして、厚みはあーでこーでって、軽量で強度と柔軟性がある新素材が発明されたら試したりしたから最初の頃より軽くはなったんですけどね~。」

「あれでか⁉ あれでまだ軽くなった方なのか⁉」

 つまり太郎丸は、昔はもっと重たかったらしい。

 とんでも重量の葛籠に太郎丸とウズメという白拍子の人形が入っていても、柱でも持ち上げるのが大変な代物だ。それを平然と背中に担げるヴァルがおかしい。

「でもこれからはそれも使えないから、鎧の修繕に大正時代で手に入る物で代用しないと…。まっ、なんとかなるなる!」

「前向きだな…。気色悪いほどに…。」

「あの~。」

「なんですか?」

「えっと…、あのウズメだったっけ? あの人形は太郎丸と違って軽そうだったような気が…。」

 甘露寺が挙手してヴァルに訊ねた。

「ウズメは、人間の動きを再現するのを重視しているのでできる限り軽さを求めてて、頑丈さとかは重要視してないんです。」

「そっか、だからあんなのに滑らかな動きで踊れたんだ! 見惚れちゃったもん!」

「この葛籠って…、中、どうなってる? 折れ曲がってる?」

 時透が葛籠をジッと見つめながら聞いてきた。

「人形達でぎっしり詰まってるよ!」

「この中に2体もか…、煉獄と互角かそれ以上かもしれねー鎧武者と白拍子…。」

「4体分だから、もうギッチギチで。」

「はあ、4体………、は?」

 空気が凍った。視線がヴァルに集まる。

 ヴァルは、キョトンとした顔で首を傾げた。

「今……なんて言った?」

「えっ?」

「これ(葛籠)に何体人形が! 入ってるって言ったぁ⁉」

 不死川が詰め寄ってきた。

 ヴァルは、これといった動揺もなく首をかしげて自然と答えた。

「4体。俺がイチから造った人形が入ってるよ。」

「まてまてまてまて!」

 さすがに動揺する柱達。

 太郎丸だけでも十分驚かされているのに、ここでウズメという白拍子の人形が一緒に同じ葛籠に入っていたという事実が発覚して更に驚かされたのに、実はもう2体入っていたという新事実。

 それなら葛籠がやたら重い理由も納得がいくが、どうやって4体もの人形を折り畳んで、いつでも出せるようにしているのかは謎だ。いつ糸を付け替えているのかも分からない。

 太郎丸を収めた後ですぐにウズメを出せたのだから葛籠の方も、内部の構造が常識はずれなのは間違いない。つまり見た目は葛籠だが、これもからくりの一種なのかもしれない。

「あとは、次郎丸と、弁慶丸っていう人形が入ってるんですよ~。」

「太郎丸の弟分か…?」

 名前からしてそれっぽい。

「違いますよ。次郎丸は忍者で、弁慶丸は、昔実在したと言われる武蔵坊弁慶を参考にした!」

 予想外にごつそうなのが収まってると判明。

 もしそうならウズメは、一番細くて軽量なからくりということになる。

「見てみます?」

「気にはなるが…、出せるのか?」

「出せますよ?」

「…どっちも人間の大きさか?」

「そうですね。」

「どうなってんだ、その葛籠の中⁉ どこにどう4体も等身大が入ってやがる⁉」

「コツがあるんですよ。あと綺麗に収まるように設計したから!」

 イエ~イって顔でドヤるヴァルに、不死川は軽くピキッとなったが理性で抑えた。

「じゃ、とりあえず1体ずつ出しますね。1体しか繰れないし。」

「忍者ってのが気になるな。」

 宇随は自身の過去のこともあり、忍者型らしい次郎丸が気になっていた。

「次郎丸!」

 素早く糸を取り換えて葛籠から出てきたのは、濃い紫の衣装をまとい、二本の刀を逆さまの状態で背で交差させた奇妙体勢をしたからくりだった。見た目から入ったのか、大抵の人間が思い浮かべる忍者といえばこれという外見をしている。

 二本の刀を背中側で逆さにして交差させている理由は分からない。

 太郎丸と違い鎧を身に着けていないため、見た目的にあまり圧は感じないが顔が布で隠れているため不気味さはある。

「ほ~~~、なるほど、これはこれは……。」

 宇随が興味深そうにジロジロと次郎丸を上から下まで見ていた。

「脆そう。」

 時透が太郎丸と比べたのかそう口にした。

「次郎丸は、機動力重視だから強度は……。だからよく壊れるもんで。もう何代目かな?」

「だったら硬くすりゃいいだろ?」

「それだと機動力…、速度が落ちるんですよ。動きが害されちゃうし。太郎丸とじゃ、運用目的が違うから。」

「確か、人間を襲う自力で動く人形と退治をしていたんだったな? そのための使い分けか?」

「そんなところです。太郎丸は、とことん戦闘での一撃必殺攻撃重視。次郎丸は、人間相手や獣とか、集団戦とか、大事な物資の受け渡しを迅速に行う時とか、素早い動きが欲しい時によく使うんで次郎丸の出番って多くって。だから壊れる頻度も多いのかも。」

「人間相手に…。」

「むやみに殺すわけにいかないから、打撃でおねんねしてもらうんです。ま、打撲や骨の一本や二本、歯が折れたり、顔の骨の陥没とかは許してって感じで。」

「大怪我じゃないですか。」

 蟲柱である同時に鬼殺隊の医療従事者である胡蝶が、眉間にしわを寄せた。

「相手が銃火器、刃物持って集団で来る危険なお薬で荒稼ぎしてるような治安の悪い場所にいる暴力組織だったり、人形の陽動で騙された公安の部隊を切り抜けるのに致し方なくですってば。力加減や細かい操作をするための仕掛けの部品の数とかの関係で太郎丸より中身の部品の構成が細かいので、どうしても鎧とかは邪魔になるんですよ。」

「えーと…、つまり武器を使わないで戦うってこと?」

 甘露寺が次郎丸の性能や運用について聞いた。

「相手を不殺で戦闘不能にするなら鞘から刀を抜かなくていいので、鞘で殴るって感じ。肩でぶつかるようにしただけで、だいの大人が簡単に吹っ飛びますんで。そういう意味じゃ、人間相手は楽でいいんだけどな~。」

「聞き捨てならない言葉ですよ。」

 背中の方で逆さにバツの形に交差させているのは、人間などを相手にした場合に鞘で打撃を与えることが目的だったようだ。鞘の先端辺りが肩の後ろのから伸びているので肩をぶつけるように硬い鞘で殴られたら、ただの人間にはひとたまりもないだろう。

「だって、本当のことだも~~ん。人形と違って、ちょっと骨折ったらそれだけで動けなくなるからすっごい楽。あの蜘蛛の鬼は人形より柔かったけど、首をちょん切らないと死なないとか、日光が弱点とか、分かんない部分がまだ多いし、人形とどっちがマシかって要素を知らないし。教えてもらえたら助かります。」

「倫理観のおかしい方に教えるのは…。」

「どうかお願いしますよ~。自分、鬼のこと何にも知らないから~。教えてもらったらからくり達に鬼退治向けの仕掛けつけて助けますから~。」

「なら…、太郎丸の新たな太刀は、日輪刀にしてはどうだろう!」

 煉獄が良いことを思いついたとばかりに口出ししてきた。

 確かに柱の煉獄と互角に渡り合うほどの太郎丸に鬼を倒す刀である日輪刀を装備させれば、まさに虎に翼かもしれない。大振りの太刀で蜘蛛の鬼を圧倒したほどだ。鬼を退治するよう特化した特別な刀である日輪刀を握らせて暴れればどうなるか。

 だが太郎丸に合わせた太刀の日輪刀が造れるのかという問題がある。

 ただでさえ柱達の癖の強さに合わせたとんだ日輪刀造りに悪戦苦闘させられている刀鍛冶の里の職人達だ。今までどれだけ苦情を言われたかを思い出し、あらからさまに顔を逸らす者、若干遠い目をする者がいた。

「どうでしょうか、お館様!」

 煉獄が産屋敷に向き直り聞いた。

「それは最初から考えていたよ。下弦の伍の支配下にあった蜘蛛鬼退治の報告を聞いていたから、もし我々に協力してもらえるなら、ぜひ太郎丸の新たな太刀を日輪刀にしてみてはどうかと提案しようと思っていたところだ。」

「面白そう! 人形はいないし……、これも何かの縁だろうから協力しま~~~す!!」

「……戦力にはなりそうだが、鬼にからくりがどこまで通用するかだろうな。」

「そ・の・た・め・に! 鬼のこと教えて! 蝶々のお姉さん!」

「……胡蝶しのぶです。」

「お願いします! 胡蝶先生!!」

「頭が壊れていると言っていましたね……。治らないとも。協力するのでしたら、最低限の規律には従ってもらいます。もし破れば……。」

「煮るなり焼くなりどうぞー! でも、ちゃんと守りますよ? だって、炭治郎と禰豆子ちゃんのことが気になるし、協力してあげたくって。」

「えっ⁉」

 まさかの言葉にずっと黙っていた炭治郎が思わず声を上げた。

 ヴァルは、ニコニコしながら炭治郎に近づいた。

「その方が今後のからくりの改造とか、対鬼用の仕掛け造りの方針ってことにしたいし。」

「い、いいの? まだ会って間もないのに…。」

「いいのいいの! 交際日数無しで即結婚だってあるんだから、出会ってすぐに全面協力ってのもありあり! それにどうせなら誰かのためにってのが、俺の生き方だから。」

「……ありがとう!」

 ヴァルからは嘘偽りのない匂いを感じ、炭治郎の目に涙が浮かび、深々と頭を下げてお礼を言ってきた。

「頭上げてよ。俺ってそんな大層な奴じゃないし。」

「おーい、お前ら……、勝手に色々決めてんな。鬼殺隊に所属すんなら、お館様の命は絶対だってまず覚えろ!」

「は~~~い。まずは、太郎丸の太刀をなんとかしなきゃ。それからからくりの修理と整備するための工房と……。」

「その点については刀鍛冶の里に文を送っているから、心配しなくていいよ。」

「本当⁉ やったー--!」

「お館様のお気遣いにちゃんと礼を尽くせや! あと、頭がたけぇ!」

「わーいわーい! 一番心配だった事柄が解決! やったー--!」

「聞け! 人形と共々、うろちょろ踊るな!」

「なるほど…、次郎丸は、可動域が太郎丸より大きくて複雑なのか。そりゃ鎧なんざ付けられねーな。」

「太郎丸の刀が完成したら、ぜひ再戦したい!」

「僕もやりたい。」

「やめておけと言ってるだろ。」

「伊黒さんの言う通りだと思うよ。」

 煉獄に便乗しようとする時透をやんわり止めに入る伊黒と甘露寺だった。

「ふふ……、君は面白いね。ヴァル。」

 不死川にギャーギャー怒られるが、スキップしながら変な踊りをしながら次郎丸を繰って一緒にスキップしながら踊って同じ場所をグルグル回るという変な行動をしていた。

 宇随は、次郎丸に鎧を着せられない理由を見抜いたようだ。手足の動きなどが太郎丸と比べると違うのだ。細やかな動きは、白拍子のウズメに共通しているように見えた。

 目は見えないが、雰囲気と音で感じている産屋敷は、クスクスと笑いをこらえていた。

 

 

 こうしてヴァルは、鬼殺隊に協力することになった。

 色々ツッコミどころや、不可解な部分が多いが柱のひとりである煉獄との模擬戦で凄まじい力を見せつけた太郎丸の性能と、そんな太郎丸を操るヴァルの技量は確かなものだった。

 太郎丸の太刀が強度の限界で折れてしまったため、ひとまず刀鍛冶の里へ身を寄せることになった。

 刀鍛冶の里は、秘匿されているため、炭治郎達とも一時離れることなった。

 

 

 そして……、太郎丸との模擬戦をしてくれた炎柱こと煉獄杏寿郎とは、二度と再会できなかった。太郎丸の日輪刀が完成しても、模擬戦は二度とできない。

 彼は、あの後に大きな任務に炭治郎らを連れ、そこで命を燃やし尽くしたのである。

 その知らせをヴァルが聞いたのは、刀鍛冶の里でからくりのための仕事場の準備を順当に整えている最中のことだった。

 

 

 

 




黄金律の都合でからくりを使って自動人形を倒すしろがねではありますが、実は対人戦とか1対1みたいな状況でなら、クソ強い部類になるってことにしました。
人形作りに没頭して、人形の力を引き出すために操る技術を磨いたらこうなったという感じ。本人は人形作りという趣味の結果、しろがねの中でも最強格になっていることについてあまり自覚してない。
あと複雑な構造をした自動人形より壊しやすいという理由で対人戦で強いという。
ちなみにあと数振りで折れると予測していた太刀がすぐ折れなかったのは、ヴァルが煉獄を殺さないように加減していたのと、本物の日本刀を使う剣士との戦いを見たかったからできる限り長く戦おうとしたから。
自動人形を一撃でぶった斬る時の加減でやってたら……?

実は4体人形を所持していたことが判明するけど、どうやって葛籠に収めているのかは謎にしました。
元ネタのからくりの君でもどう収まっていて、どうやって次々に人形を出せたのか分からなかったので。
次郎丸は、お披露目しましたが弁慶丸はまた別の回で。
まだ宇随が元忍者の家系の本物だとは知りません。お嫁さん達もくのいちだということも含めて。

刀鍛冶の里へ行って専用の拠点を構える都合で無限列車に関われなかったため、煉獄とは今回が最初で最後となりました。
これは最初から予定していたことです。

次回は、無限列車前の時間軸で刀鍛冶の里へ行った時の話にしようかと思います。
太郎丸の日輪刀の製作や、縁壱零式のことやからくり技師の小鉄とどう関わるかを考えたいと思います。
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