TS眷属にされたので、勇者よりも先に魔王殺しの聖剣集めます。――ダンジョン使って、のんびりスローライフ 作:あでぃかりん
戦争開始からはや2ヶ月。僕たちは家の中でのんびりお茶会を開いていた。
「戦争、なかなか終わらないね」
「まだ2ヶ月ですわよ。まだ各方面から招集している段階ですわ」
テールがつっこむ。
戦争ってもっと早いかと思ってたよ。
「確かに、さっさと決着つけたいんだけど、相手の軍、全然ダンジョンに近づいてくれないんだよね」
リアリス、そんな事考えてたんだ……
「常識的にダンジョンと言う超危険地帯に軍を駐留させませんわ」
「してくれたらそのままパックンできるのに」
「だからですわよ!!」
そう言って、リビングでのんびりしていると、ツヴァイが外から帰って来た。
「アシュお嬢様、テールお嬢様、えっと、王子様がお呼びです」
「え、シャナルマト君が?」
何か用事なんだろうか。
「しかも、ツヴァイを連絡に使うのは正規ルートではありませんわ」
テールは不可思議な出来事の様に考え込む。
「まぁ、行ってみようか。ダンジョン内ならトラブルが起きても、何とでもなるしね」
リアリスが尻尾を揺らつかせる。
この街忘れそうになるけどダンジョンなんだよね。
「んー、シャナルマト君どうしたんだろう」
「普通の用事なら普通に呼びますわ」
「普通じゃないって?」
「少なくとも、人に聞かせたくない話でしょうね」
人に聞かせたくない話……
何かあるのかな?
「アシュちゃん大丈夫。心配しなくてもなんとかするよ」
「リアリスの“大丈夫”は方向性が違いますわ」
「テールラナ、僕の名前で勇者に会いに行ったよね?」
「家の名前を使いましたが……あ」
「後見人なんだから、僕の名前と一緒だよ?」
「それで、勇者の行方不明の件について聞かれたんだ」
「でも、シャナルマト君の名前は本当に出してないよ?」
「アシュ、わたくしの家はシャナルマト殿下の後見家ですの」
「うん」
「その家の人間が勇者に接触した直後、勇者が消えましたの」
「……それすっごく怪しい?」
「その通りですわ」
そんな僕たちの会話を聞いていたシャナルマト君はゆっくり椅子に腰を下ろす。
「……勇者に会ったんだね? それで?」
「え、えーっと」
これ、なんて答えれば良いの!?
しばらくの時間、鐘半分より短いぐらいして、シャナルマト君の家に青髪の美しい少女が現れた。
「はーい、リアリスちゃんです」
戯けたように言い出すリアリス。
「君が黒幕か」
「一応魔王、やってまーす」
「なお質が悪いよ!!」
リアリスを交えて、今までの出来事を端的に説明する僕ら。ちなみに、僕の話は基本省略された。
アルナスが入れた紅茶をシャナルマト君が口に含みため息をつく。
「はぁ、つまり魔王に勇者が倒されて聖剣が奪われた。それで本拠地はここ。僕、今まで魔王の領地管理させられてたのか……」
「ごめん、シャナルマト君……」
「一応、勇者の身柄はダンジョン内に拘留、この街じゃないんだね。ならまだなんとかなる、か……」
「今、魔王に暴れられたら帝国との戦争とあわせて王国は確実に潰れる。だから、今は魔王と口裏を合わせるしかない」
シャナルマト君はリアリスの事を秘密にしてくれるみたい。
良かった。みんな死刑かと思ってた。
「具体的にはどうしますの?」
「まず君たちは、ダンジョン内で敗北、勇者の聖剣は行方不明、勇者は重傷で記憶の混乱が見られる。そんなカルテにしようか」
シャナルマト君が1枚の紙にサラサラと文字を書いて行く。それが書き終わると、紅茶に口を付けた。
「ふぅ、極秘裏で呼び出してよかった。王家の間諜に聞かれてたら、みんな一緒に反乱罪だった」
「まぁ、聞かれてたら口封じ出来たよ」
「だから怖いんだよ!」
「ふぅ、助かりましたわ。シャナルマト王子が味方についてくれなきゃどうなっていたことか」
「あはは、監視の為に私まで屋敷持ちになっちゃったよ」
「当たり前ですわ、目撃情報はどうしたって出ますもの。そもそもあなたもアシュに匹敵する美貌だって忘れてませんの?」
「あー、そんな設定もあったね」
「設定言うな!」
「んと、僕もリアリスと一緒に住む。近くにいた方が良いし……」
なんとなく、リアリスを人間社会で一人にしちゃダメだと思ったんだ。
「アシュちゃん可愛い!!」
リアリスの抱擁に胸が熱くなった。まだ男の気持ちが残っているんだと少し安心した。