「 ってのが、オレちゃんが阿散井パイセンが苦手な理由、っていうか嫌いな理由な?誇り高い、プライドが大事。
あぁ、ご立派ですよん。でも、それをオレちゃんたちに押しつけないでね。
あくまでオレちゃんはオレちゃん。アンタはアンタ。
バカみたいな眉毛をしたがる、バカみたいにたけえゴーグルに環費やしたがるのはアンタだけだし、イカした発明品を作りたがって、ご機嫌なブランデーをミックスしてアルコールに酔いたがるのがオレちゃんなんだからさ。
他人とテメェの価値観を同じもんであるべきと思ってゴリ押してくんじゃねぇよ。
そもそも戦士の誇りだかなんだかだけで上手く行けば科学技術なんて要らねぇんだよ。
それだけじゃ上手くいかないからこそ技術開発局があるんだろうがって。
お前虚圏での隊長見てなに学んだんだ?バカゴーグル眉毛。
そもそも式神に文句言ってるけどさ、オレちゃんはあくまでその武装を作ったのであって、本体を組み立てたのはシゲっちなんだよぉ。オレちゃんに当たるのは筋違いだろう。
朽木隊長ならともかく、アンタみたいなセンスのない男にだけは言われたくないねが、オレちゃんの言い分。 」
「 ははぁ・・・ 」
言いてぇことぜんぶいいやがったな、コイツ。だが、オレはカツラに大賛成だ。
千年前、四楓院様ら最初の隊長たちが、滅却師たちの王を打ち払ってより、この護廷十三隊という組織は尸魂界、引いて三界のバランスを守り続けているが、その中でこないだまで脅威らしい脅威というものが現れることはなかった。さらに情報統制が進んだ結果、
その当時よりも護廷は大きく弱ってしまった。年々組織ぐるみで平和ボケしているが為に、世代を経るごとに俗物の割合が多くなっていっている。
五大貴族でさえもその流れに抗えてはいない。四楓院夜一をみろ。あんなバカ女、地獄で四楓院様が呆れていた。正直あの人にも極力関わりたくない。弟の方もダメそうだし。志波家に至っては没落までしている。先代の十番隊隊長はのうのうと家庭を築いている上、その甥にあたる海燕はいうまでもない。先代のソースは何処だって?冬獅郎だ。
どうあれ誇りだなんだという戦いへの余計な価値観と、長く続いた平穏が、死神から力と知恵を奪っていった。
そうして雑魚とバカだらけになった結果が、あの藍染惣右介の反乱、そして彼が崩玉を用いて生み出した、破面たちの出現だ。
それを補える手段も、探せば幾らでもあるはずなのだが、
死神の大半が、誇りに執着してしまっていて、おおよそ新しい物を受け入れられない。
その筆頭が、朽木家をはじめとした尸魂界の最上位、五代貴族であるわけだ。
この千年の太平の世の対価に護廷は衰退し続けている。
「 んでだけどさ、サトっちゃん。 」
「 なんだ、カツラ? 」
「 気になることがあったんだけどさ。 」
「 サトっちゃん、さっき東仙が嫌いっていってたけどもよ、藍染の方はサトっちゃんからしてどうだよ? 」
「 どうだってなんだよ? 」
「 いや、気になっただけさぁ。言えたもんじゃないけどサトっちゃん、周りと価値観違うからなぁ。たぁぶん違う意見が出てくるよなって。
つまるところ、単なる好奇心さぁ。東仙に関しては、兄ちゃん絡みで嫌ってるって言ってたろ。藍染はサトっちゃんの兄ちゃんには危害加えてないじゃん。組織的には滅茶苦茶被害被ってるけど。
サトっちゃんから見て藍染惣右介がどんな奴なのか、オレちゃんちょっと知りたいなってだけで。 」
好奇心ねぇ。こいつはそれがネコをも殺すことを知らないのか?まぁ、いいけどよ。
こいつもオレや茂ほどではないがアウトサイダーだしな。へんに言いふらしたり、誇張してチクったりはしないだろう。
火力バカだが、そんな信頼がある。それがこの紅蓮院カツラという男だ。
「 なんとも言えない。これがオレの所感だ。 」
藍染惣右介。元護廷十三隊五番隊隊長。当時は柔和で温厚な人物として知られていて、副官だった桃をはじめとして周囲からの信頼も厚い人格者。
であったが、朽木ルキア処刑騒動の際、その本性が顕わとなる。
禁忌を犯したとはいえ、当時席官ですらなかったルキア殿の処刑に、双極が使われるという異例の事態に、隊長や浮竹隊長は、山本総隊長も怪しんでいた。
そして、冬獅郎が確認したところ、そんな判決を言い渡した中央四十六室は、アイツが入室した時点で既に皆事切れていた。
死んで暫く経っている状態だったそうだ。
そして同じく、卯ノ花隊長が何者かによって殺害されたと思しき藍染の遺体を調べたところ、偽造されたものだということが発覚。
つまるところ、藍染こそが、あの一連の騒動の黒幕であったわけだ。
そうして彼は、それまでと打って変わって、冷酷かつ残忍な側面を見せる。
己に健気に尽くしてくれていた桃を切り捨て、己を信頼してくれた冬獅郎を嘲笑い。
因縁深い浦原喜助が、彼の手に渡らせぬ為にルキア殿の義骸に仕込んだ崩玉をまんまと奪い取って虚圏へと去り、護廷十三隊の最大の脅威として立ちはだかった。
最終的には浦原氏と当代死神代行の活躍によって倒され、現在は無間に収容されている。
その所業は確かに目に見えて悪辣ではあるが、同時にこの男は尸魂界に利益を齎しているのも事実だった。
護廷内では隊士の勤務体制の見直しや給金増付といった改革を、霊術院では効率の良い鬼道の鍛錬方法が未だに教科書に載っている。
「 とっとと殺した方が益になったろうに桃や冬獅郎を殺さず、未だに彼を慕うものもいる。
益にもなれば、毒にもなる。
だからオレは、あの男を善し悪しで測ることはできない。
他の奴にこれを言えば、なにかしら反感を買われるだろうから、言えるのはお前や茂、それに京楽隊長くらいだろうな。 」
「 やっぱりな。冬獅郎とかだったら絶対出てこないご回答だ。 」
「 それにな・・・ 」
「 それに、なに? 」
「 もういいだろうから言うけども、実はオレ、っていうか京楽隊長もだけども、藍染が黒だって前から気づいてたんだ。 」
「 え、マジで!? 」
「 二十年くらい前になるかな?冬獅郎の前の隊長の志波なんとかって人、覚えてるか? 」
「 ああ、いたいた。そんな人。確か急にいなくなったんだよな。 」
「 志波前隊長がいなくなる前に、空座町で死神が不審死する事件があったんだが、それの調査にその人が行ったらしいんだけども、その時に三人、不審な黒いローブを着た連中が、尸魂界から現世に出ていってたんだよ。
地獄蝶を使って。 」
「 三人、丁度あの時裏切った隊長の人数だ。ていうかそんなん何処で見たんだよ。 」
「 その頃オレは現世の長期任務に就く前で、瀞霊廷中に式神をばら撒いてそこら中監視してた。
奴らはそれにまんまと引っかかってた。 」
「 マジで? 」
「 マジで。そこらにありふれた動物霊だけどな。目としては有用だ。これを知ってるのも、他には隊長と副隊長だけだ。
霊圧だってでかくないから気づかれない。
だから、アイツらが護廷の目を掻い潜って、現世に飛ぶまで一部始終を見ていた。
知りもしなかったろうな、瀞霊廷を飛び交うカラスに池の鯉、田んぼのカエルヤモリ森林のカブトクワガタスズメバチに至るまでにオレの監視網が行き渡ってたなんてな。
それで隊長はルキア殿の処刑騒動の時にも、藍染を怪しんでたんだ。
不審な行動が多かった上処刑が明らかに大袈裟で、タイミングよく死んでたらしいからな。 」
「 んで実際はそれ偽装だったってやつだったよなぁ。でもさぁ、前から気づいてたなら総隊長に言わなかったの? 」
「 あの頃は、物的証拠もなかったからね。オレ自身も席官に過ぎないし、彼を完全な黒だって表立って言い切れなかった。それくらいアイツのフォロワーが多くて、非の打ち所がなかったのさ。
総隊長も、冬獅郎も、藍染を信じ切ってたからな。まぁつまるところ、奴はオレや隊長が気づき初めていたのに、最後まで気づけなかったというわけだ。
ただ・・・ 」
「 ただ? 」
「 遅かれ早かれ、藍染みたいな手合いは出てきてたもんだとは思ってる。
幾ら情報統制が敷かれているといっても、死神という種族は血濡れた歴史の上で成り立っているから、なにかの拍子に知ってはならないことを知ってしまうことだって全然あり得る。
"天に立つ"と言った彼の気持ちは分からなくもないが、だからといってやったことは褒められたものではない。
だから、オレは善し悪しで彼を推し量れない。 」
「 んじゃ、藍染はその知ってはいけないなにかを知ってたってこと? 」
「 そうなるな。恐らく、いや確実に、王族専務辺りだろう。 」
「 なんだっけその人たち? 」
「 文字通り、尸魂界の王を護ってる人たちだと思っとけばいい。それくらいで、済ませるべきだ。
・・・カツラ。 」
「 なあに? 」
「 真実を知っていることが、いい方向に転ぶとは限らない。いつ誰が、藍染のようになるのかなどわからない。
でもさ、オレたちはオレたちでいよう。
世の理なんか知らなくても、いいはずだからな。 」
そう、この世には知らない方がいいこともある。知ってしまえばわが身を滅ぼす。
そんな禁忌が。
せめてこいつらは、そうなって欲しくない。
藍染惣右介。あまり関わることはなかったが、良い反面教師になってくれた。
だれも、触れるべきではない。
あの、"