pixvではまとめましたがこちらでは分割投稿します。
双子のウィーズリーとの出会い
ヴェルは、こっそりホグワーツの生徒たちの様子を眺めるのが好きだった。
入学の歓迎会も、授業も、クィディッチも、イベント事のパーティーも、物陰に隠れてよく彼らの様子を伺った。先生たちもそれに気づいていながら、たいてい目を瞑ってくれていた。
ヴェルは、入学前のホグワーツでの生活において、一般生徒に見つからないよう常々言い聞かされていた。その理由も、ヴェルは幼いながらに十分理解していたので、自ら彼らに見つかるよう突っ込んでいくようなお転婆はしなかった。教師たちの手を煩わせたい訳もない。
しかし、それでも気になるものは気になるのである。
城の中では、主にフィルチ(とミセス・ノリス)が目を光らせていた。生徒に出くわしそうな場所にいると、フィルチに見つかり次第、彼がすっ飛んできて、教師たちに返却される。ということが多くあった。
そして段々と油断が出てきて、詰めが甘くなりはじめると、実際に生徒に見つかってしまう事件が何回か起こった。まあ、ヴェルには目くらましの魔法も、透明マントも効果がないので、迂闊に城を歩いていれば、生徒に見つかってしまうのは確かに時間の問題ではあったのだが。
生徒に見つかると、すぐさま先生の誰かの手によって(大体はスネイプだったが)、忘却術などの隠ぺい工作が為されて事なきを得ていた。その度にヴェルはこっぴどく叱られた。
そのような具合で、多少のトラブルはあれど、ホグワーツで暮らしながら、ヴェルの機密は脅かされることなく保たれていた……
……フレッドとジョージが入学してくるまでは。
フレッドとジョージに初めて見つかったのは、彼らが入学して半年も経たない頃だった。
生徒たちがランチを楽しんでいる時間。ヴェルは城の裏手にある人気のない草むらに寝転んでいた。先ほどまでそこでハグリッドと一緒に遊んでいたのだが、景色もいいし、ここでランチを食べようと提案したところ、ハグリッドがサンドイッチを取りに行ってくれるというので、その帰りを待っていたのだった。
少しの時間だったが、天気もいいし風も気持ちよく、うとうとしかけていたところ、男の子の声が聞こえてきた。
「ハグリッドのやつ、こっちから来たよな」
「うん、きっとまた面白い生き物を新しくペットにしたから隠れてじゃれあってたんだよ。きっと」
「絶対見つけてやろうぜ」
ひそひそと話す二人の男の子の声がこちらへ向かっている。ヴェルははっとし、このままでは見つかってしまうと焦りだした。
草は背が高く、そのまま寝転んでおけばヴェルの姿は二人には見えていなかったが、慌てたヴェルはその場でがばりと起き上がってしまった。
すると、思いのほかすぐそこまで来ていたフレッドとジョージと、バッチリ目が合ってしまったのである。
「「いた!」」
フレッドとジョージが叫んだ。
ヴェルは急いで立ち上がって逃げ出した。
「待って!」
「逃げないでよ!」
ヴェルは二人に捕まらないよう走ったが、とうとう振り切りことはできなかった。
「「捕まえた」」
二人はニヤニヤしながら、ヴェルを前後で挟み込むようにして立った。
「なんだ、ただの女子かあ」
「小さいし、1年生じゃないの?でも僕たちの中にいたっけ。こんな子」
「どこの寮だろ?制服着てないけど。なんでこんなところにいるの?一人でさ」
「ひょっとしたら、いじめられてるんじゃないか?フレッド」
ヴェルを覗き込むように見ながら交互に言い合う双子。ヴェルは戸惑うばかりだった。
「えっと……」
「よく見ると僕らより年も小さそうじゃないか?ほら、ロンと同じくらい」
「そうかなあ。ロンよりは……うーん、どうだろう」
そんなやり取りをしているうちに、ハグリッドが戻ってきた。
「ああ!こら、ウィーズリー!」
ハグリッドはヴェルが双子に捕まっているのを見るや否や、真っ青になって二人をとっ捕まえにかかった。ハグリッドはフィジカルモンスターではあるが、双子のすばしっこさには敵わない。四苦八苦していたところに、騒ぎに駆け付けたフィルチも参戦して、ウィーズリーはあえなく御用となった。
双子はマクゴナガルとスネイプのもとに連行された。
「お前たちか。ウィーズリーの双子め。いつかしでかしかねんと思っていた矢先に──」
スネイプに一通り悪態をつかれてから、二人まとめてオブリビエイトにかけられた。
その結果、二人は午後の授業に遅刻という名目でグリフィンドールから減点。本人たちは草むらで昼寝をしていて寝過ごしたという記憶に書き換えられることになった。
ヴェルと、ハグリッドもお説教を食らいかけたが、今回の件は違うように思われた。この時、特筆すべきは、「双子の方が」ヴェルを見つけた、ということである。いままでの、生徒に見つかった例では、ヴェルがうっかりして生徒に見られる、など、ヴェルに過失があるパターンばかりだった。
しかし、今度の例では、ヴェルに非はなかった。一瞬離れたとはいえハグリッドと一緒にいたのであるし、先生たちからも許しを得ている、生徒は立ち入らないはずの場所にいたのだから。
それが、フレッドとジョージとの闘いの幕開けだったのだが、その時点で二人は異彩を放っていたのである。
*
後日……。
「やあ!こんにちは」
「きみ、ホグワーツ生じゃないでしょ。なんて名前?」
オブリビエイト!
*
また別の日……。
「見つけた!」
「きみ何者?生徒じゃないでしょ?僕らと友達になろうよ」
オブリビエイト!
*
さらに別の日……。
「いたいた!見つけた!妖精ちゃん!」
「あ、逃げないでよ!」
オブリビエイト!
*
何十回目かのある日……。
「いた!」
「ねえ、きみ──」
「ああもう!いい加減にしてよね」
一件落着に思えたその事件のあとも、ウィーズリーはまたヴェルと遭遇した。
何回も。
何回も。
その度に二人の記憶は改ざんされたのだが、また数日後にはまた見つけるのである。
ヴェルを見つけては記憶を消され、見つけては消されというループを、最終的に双子は少なくとも20回は繰り返した。
(実は、始めの数回以降は、フィルチから忍びの地図を盗んだことが大いに役立っていた。双子は暇があれば地図に目を通し、名前のない謎の人物(ヴェル)の動きを発見しては、その正体を暴くために探し回るというのをやっていた。そのため以降はほぼ毎日、ヴェルを見つけ出していたのである。)
中には1日のうちで3回もいたちごっこを繰り返した日もあった。
当然こうなると先生たちも埒が明かなくなり、とうとう20の何回目かで、闘いは教師陣の敗北という形で幕を閉じた。
そして、フレッドとジョージにだけ特別に、ヴェルのことを紹介することになった。
「あなた方には本当に……ああ、何と言ったらいいか。言葉も出ませんよ」
マクゴナガルはウィーズリー二人を前に、額に手を当てて頭痛を抑えようとしているようだった。同席しているスネイプも眉間に深いしわを刻み、ダンブルドアも珍しくため息をついていた。
「僕たちがこの子と20回以上も会ってるって?」
「全然覚えてないや」
「先生たちが僕たちの記憶を消してたんでしょ?」
「酷いなあ。いつの間にか減点されてると思ったらそう言うことだったのか」
教師たちが頭を抱えている反面、ウィーズリーは呑気に喋っていた。
「君たちにはわしらもお手上げじゃよ。まったく……」
らしくなく、悩まし気な様子を隠そうとしないダンブルドア。普通なら生徒のお転婆にも「ふぉっふぉっふぉ」と笑っていそうだが。二人のいたずらっぷりは流石のダンブルドアも計算違いだったようだ。
「ダンブルドア先生」
「この子のことを教えてよ」
「ああ、いいとも。仕方ない」
ダンブルドアはウィーズリーにヴェルの事情を語りはじめた。
「この子は……ヴェルはまだ9歳なんじゃが、わけあってな、ホグワーツでわしらと暮らしておる」
「ふーん、9歳か、やっぱりロンと同い年だ」
「なんでホグワーツに?」
「実はな、ヴェルは『ノウル』なのじゃ。それに里子じゃからな。
ノウルというのは、魔法がかからない種族のことでな、その中でもヴェルは魔法がかからないにもかかわらず、魔法を扱うことができる。非常に稀な生まれなのじゃ」
フレッドとジョージは、ダンブルドアの突拍子もない説明に、目をぱちくりさせた。魔法がかからない?それなのに魔女だって?そんなことがあり得るのか、信じられないといった様子だった。
「そういうわけでな、ホグワーツで、魔法界の世間にも秘密の存在として匿っておる。入学するまでは他の一般生徒に見つかってはいかんのだよ。だから君たちにも隠しておったのじゃが、もう君たちとイタチごっこをするのにわしらは疲れた……。
今後は記憶を消したりはせんから、代わりにヴェルの秘密を守ることをわしらと約束してもらうからの」
ダンブルドアの説明に、ウィーズリーはポカンとしながらも納得したようだった。
「そういうことなら」
「わかりました」
ということで二人には、ヴェルの秘密を言いふらしたら即退学、さらに今後お互い接触してもよいが、決して一般生徒にバレないようにすることが言い渡された。
三人はその日から友達になった。
この一件で一番喜んだのは、実はヴェルだった。
ヴェルは、仕方ないと分かりつつも、フレッドとジョージが毎回自分のことを忘れてしまうのを寂しく思っていた。それに、知り合っても、またすぐに初めて知り合うリアクションを取ってくるのにもうんざりしていたので、最終的に友達になれてとても嬉しかった。
二人が遊び相手になってくれたおかげで、ヴェルの遊びの幅はうんと広がった。
以前からも、ハグリッドや屋敷しもべ妖精(とたまにダンブルドアたち)と遊んだりして大いに身体を動かしていたヴェルだったが、双子の型破りな行動範囲に大きな影響を受けることになったのは言うまでもない。
*
「「おはよう、ヴェル」」
「フレッド、ジョージ、おはよう」
「今日も昨日の続きから探検しようぜ」
「レイブンクロー寮の方からだったな」
三人が遊ぶようになって始めのうちは、校内中の抜け道や隠し通路、隠し部屋を巡る散歩をしてまわった。フレッドとジョージがヴェルに新しく教えるルートもあったし、逆にヴェルが秘密の仕掛けなんかを教えることもあった。
そして段々と、双子の遊び心といたずらが本格化していき、ヴェルを巻き込んでいった。
ヴェルははじめ、マクゴナガルの、どちらかというと行儀作法方面の教育に影響を受けていたため、双子がやるようないたずらをするのは性に合わないと思っていた。だが、やはり二人には敵わなかった。
もう楽しくって仕方がない。
フィルチやゴースト、屋敷しもべ妖精にいたずらを仕掛けたり、鬼ごっこをしたり、ハグリッドやフリットウィックあたりの生徒好きする先生たちにも、ちょっかいをかけたりするところから覚えていった。
そして双子の考えたいたずら道具や魔法のお菓子の実験に付き合ったりもした。(その過程で双子は、改めてヴェルがノウルであることを実体験し、ヴェルでも楽しめるジョークアイテムなども色々アイデアを出してくれた。)
そこら辺までは普段厳格なマクゴナガルも大目に見ており、むしろ、ヴェルが一層明るくなっていく様子を喜ばしいとさえ思っていた。(スネイプのほうは以前ウィーズリーが気に食わない節があるようだったが。)
しかし、ときどき派手なことをしでかすこともあった。
例えば、双子がクィディッチ選手に選ばれてテンションが上がった日。ヴェルを箒に乗せて相乗り飛行しようとして、フーチやマクゴナガルに大目玉を食らったこともあった。
またある日には、魔改造したボートで湖を爆走してひっくり返り、三人ともずぶ濡れになった挙句、水生の魔法生物に食われかけた。なんとかハグリッドに助けてもらったが、城に戻ると、先生たちのお仕置きフルコースが待っていた。ヴェルはその時風邪を引いた。
ホグズミードにこっそりヴェルを連れ出そうとして、とっ捕まったこともあった。
何を思ったか、暴れ柳にブランコを取り付けて天然のアトラクションにしようと企み、フィルチとスネイプがブチギレたこともあった。
(お分かりだろうが、どれもこれも発案はフレッドとジョージであって、それにまんざらでもないヴェルが乗っかっているという構図だ。)
教師陣にとって一番厄介なのは、ヴェルがケガをしたり、風邪など軽度でも病気にかかることだった。魔法で治すことができないからだ。
そういうわけで、上記のようなヴェルの身体に関わる事件を起こすと、最終的に一番ウィーズリーに怒り狂うのは、マダム・ポンフリーに他ならないのである。
余談だが、ヴェルの怪我の頻度が増えたことで、彼女はマグルの医学を進んでさらようになった。そしてヴェル本人にも、多少の知識を自分で持っておくに越したことはないと、色々教えるようになった。
2へつづく
ヴェルの秘密保持についてですが、
ダンブルドア「忠誠の術?秘密そのものに魔法がかからん時点で発動できるわけないじゃろうが」
とのことです。