文学少女の先輩と放課後の部室でお喋りするだけ 作:天都ダム∈(・ω・)∋
三月 文学少女の先輩と
「かっくん、ご存じですか? 遊園地デートはカップルの親密度を測るのに最適だと」
Web小説における掲示板システムは一つの発明だと思うが、これは縦書き媒体の書籍になったとき、途端に視認性が悪化してしまうという欠点がある。
電子書籍が台頭している時代、適した媒体に適した作品が掲載されていることが重要なのかもしれない……しかし転生者掲示板ってのは珍しいシステムだな。
前提として無数の平行世界の地球が存在して、そこに転生した元地球人達が集う掲示板に、転生初心者の書き込みがあったところから物語が始まり――――。
「かっくん、あの、先輩がデートの提案をしていますよ」
「あ、すいません、聞いてませんでした」
タブレットで開いていたページを閉じて、顔を上げる。ぷんすかと怒るヨム先輩が、僕に抗議の視線を向けていた。
「もうちょっと誤魔化しようというものがありませんかっ!」
「誤魔化しても聞いてなくてもあまり反応が変わらないので……」
三学期の期末テストが終わり、春休み待ちのシーズン。
新学期になればヨム先輩は三年生、僕は二年生になるわけだ。
進路の問題で言うと、既に三作目の制作に取りかかっているプロ作家のヨム先輩と比べ、特筆した技術もなければ目標もやりたいこともない僕の方が将来不安なんだよなぁ、という事を思い出し、来年中に何か探さないとな、と思いつつも、まだまだ実際に動き出すにはやる気が足りず……。
そんな事を考えていると、ヨム先輩はむぅ、と膨れて席を立ち、僕の隣までやってきた。
「むぅ……私はいつだって、かっくんをこの部室から追い出せるんですからね」
「そのときは図書室に籠もります、もう夜々美に勧誘されなくなったし……」
「べ、別の場所でもいいっていうんですか! 浮気者!」
「追い出すのはヨム先輩の方じゃないですか……」
「そこを、私の方が大事だなって思ってほしいんです!」
「我儘だ……」
「春休みなんですからー、どこかでかけましょうよー」
「それはいいんですけど……春休みの遊園地って多分世界でいちばん人居ますよ」
数多の経験を経て、か弱くはないかもしれないが、大きさの変動があったわけではないヨム先輩が、人並みに浚われる姿が容易に想像できる。
「じゃあ、別の所でもいいですから」
「えー……少し早めのお花見とか?」
桜の名所とかに行くのであれば、やっぱり混み合ってはいるだろうけど……遊園地よりはマシな気がする。
「お花見、いいですね。次の主人公は桜にしようかな」
「やっぱり花なんですね……」
「桜の花言葉って何だか知ってます? かっくん」
「
「そんなとげとげしい花言葉はこの世にありません!」
「スノードロップとか、〝貴方の不幸を願う〟じゃありませんでしたっけ」
「そ、そうなんですか? ……そうじゃなくて、桜の花言葉っ!」
えー、そうだなぁ……花びら一つ一つは細かいし……。
「小さい、とか」
「今、私の胸を小さいと言いましたか!?」
「言ってねえよ」
ちょっと頭が桜色になってるじゃねえか。
「桜の花言葉は優雅な女性、です! つまり……私の事ですよ、かっくん」
「お、電車で二駅の所に桜並木がありますよ、こっちに行きましょうか」
「かっくん? あの、先輩の発言を無視しないでください。法廷に呼びますよ」
「子供の喧嘩に親を連れてこないでくださいよ……」
なまじ今は、殺される理由がなくもないわけで………ああ、もう。
本当に、黙っていれば美人なのだから。
黙っていてもらおう。
「ヨム先輩」
「なんですか、かっくん」
「今日も、可愛いですね」
「…………~~~誤魔化すのに使うのは、駄目っていいましたよねっ! もうっ!」
花冠ゆらにとって脇役にすらなれなかった僕は。
何者にもなれず、何事もなせず。
だけどそれは僕にとって、決して悪いことじゃあないのだと思う。
私立風光学園、第三文芸部。
ここには僕とヨム先輩の、二人しかおらず。
文学少女の先輩と、放課後の部室でお喋りするだけの日々を送っている。
最初に乗せとけよ! なキャラ紹介。
【挿絵表示】
というわけで「文学少女の先輩と放課後の部室でお喋りするだけ」でした。
お付き合いいただきありがとうございました。
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続きは……またそのうちどこかのイベントで出す予定…………!
続けてカクヨム・なろうからの転載になりますが、同じ学園を舞台にした少女二人の陰鬱青春ジュブナイル
「だから、私たちは空に落ちていくフリをする」を掲載していきます。
本日から開始らしい。よしなに。 ↓
https://syosetu.org/novel/410118/