朝5時にスマホのアラームが鳴り響く。
眠い目を開けると、カーテンの隙間から光が部屋へと入り込んでいる。
ぼぅっとした頭で枕元に置いてあるスマホを手に取ってアラームを止めた。
ゆっくりと体を起こし、大きくあくびをすると声がかけられる。
「おはよう、オトメ。今日はよく晴れている」
「……おはよ」
ジャージに着替えていて、髪もきっちり整えているルドルフがいた。
楽しみな気持ちを抑えられない様子に感じる。予定よりいつも早く動いているけど、その元気さはどこから来るのかなとよく疑問に思う。
元気なルドルフに対し、私は朝がそれほど強くない。
ゆっくりとした動作でベッドから降りるとカーテンを開ける。まぶしさに目を細めると、小さな冷蔵庫から緑茶のペットボトルを取り出して飲んでいく。
冷たい感触が口へ入り、喉を通り過ぎていくと段々目が覚めていく。
パジャマを脱ぎ、ベッド脇に置いてあったジャージへと着替えて部屋の外へ行く。
トイレに行き、次はいったん部屋に戻ってブラシを取ってから共用の洗面台へ顔を洗って髪を整える。
部屋へと戻ってお灸セットを手に取ると、同じくお灸セットと地面へ敷くバスタオルをを持ったルドルフへと声をかける。
「行こっか」
「ああ。楽しみで仕方ないよ」
にこやかなルドルフを連れ、寮の外へ出るとすでにお灸セットを持ったケイが待っていた。
軽く手を振りながら笑顔でケイのところへ行こうとしたら、私の前にルドルフが出てくる。
「オトメのルームメイト、シンボリルドルフだ」
「えっと、あの、ケイエスミラクルです。昨日からオトメ先輩のお世話になっています」
「あまりオトメを困らせないでくれよ?」
胸の下で腕を組んだルドルフは眼光鋭くケイをにらみ、ケイはどうしていいか困っている。
突然のことに驚いたけど、これは嫉妬なのかな。
新しいことを始めたのにルドルフより先にケイとやっちゃったからだと思うけど。別に威圧なんかしなくても私にはルドルフが一番なのに。
「なに威圧してるの、ルドルフは」
「ただの挨拶さ」
「ごめんね、ケイ。目つきが怖いけど、ルドルフはいい子だからねー」
ルドルフをそっと手でどかしてケイの前に出て優しく言う。場をちょっとなごませてから、ケイとルドルフを連れて昨日使った寮の脇へと移動する。
私がアスファルトの地面へ座ると左にケイ、右にルドルフが手のひら5つぶんほど距離を開けて座ってきた。
「さっそくやろっか。ケイは昨日、教えた場所は覚えている?」
「はい、覚えています。先にやっててもいいですか?」
「いいよ。私はルドルフにやるから。ルドルフは部屋で聞いていたものだったよね? おなかを出して……じゃなくて足にしよっか」
「そんな気を使わなくてもいい。人に見せてもはずかしい体はしていないからね」
生理痛対策というのを言わないようにしつつ、ルドルフは手に持っていたバスタオルを地面へと敷き、その上に体を倒す。
ジャージをまくり、実に健康的で綺麗な筋肉がある白いおなかを見せてくる。
無防備に見せてくる姿はかわいい、いえ、犯罪的な感じがしてよくないことをしている気分になってきそう。
変に煩悩がやってきそうなので、指を伸ばして、今日やる予定のツボを説明しながら押していく。
「おへそから指2本下の気海と4本下の中極っていう2か所をやるから。生理痛の緩和と便通をよくして、腰痛や冷え性に効果があるの」
ケイのほうから火をつけたお灸の香りがただよってきて、正しい位置に置けているかをちらりと確認する。
特に問題がなさそうなのを見てから、私はルドルフが持っていたお灸の箱からお灸を取り出して火をつけると、おなかの上に置いていく。
「熱かったらはずしてね」
「わかった。オトメも自分のことをやるといい」
そう言われ、靴下を素早く脱ぐと昨日と同じ場所にお灸をやっていく。
そして私たちは言葉なく静かな時間が過ぎていく。
居心地が悪いわけではなく、同じことを同じ時間にやるのはなんだか楽しい。今までは祖母としかやっていなかったのに、3人一緒だなんて。
お灸の熱を感じながらあたりを見回していると、煙が風に流されたのを感じてか、近くをウマ娘が通ると私たちへ目を向けては驚いて立ち止まっている。
あまりにもびっくりしている子には手を軽く振り、おだやかな笑みを向けることにした。こうすることで怪しいことをしていると思われないはず。
中にはルドルフのおなかを見て、好奇心を強く向ける視線もあったけど。
ルドルフ本人はおなかをやってもいいって言っていたけど、これからはおなかを隠す用のタオルを持ってこなきゃ。
色々と考えていると火と熱がなくなっていて、お灸を外すと私とルドルフの片付けをしていく。
すでに片付けていたケイが私の代わりにやろうとしてくれたけど、お灸の会を主催した私が責任を持ってやらないといけないと思う。
なので昨日と同じように寮へ行き、捨ててから戻ってくればケイとルドルフが話をしていた。
レースをするときの得意距離は何か。芝とダート、どれぐらいできるかを。
近づくと話は途中で止まり、ふたりが振り向くとルドルフが口を開く。
「オトメ、次はストレッチをしてランニングだったな?」
「うん、そうだよ。なにか他にやりたいことがあるの? ふたりで話をしていたし」
「いや、確認をしていただけさ。これからこうやって集まったとき、トレーニングを一緒にやることがあるかもしれないだろう?」
「私の練習制限はないし、自由にできるからなんでも言ってよ。一緒に走れるのは嬉しいから」
と、気軽に言ってストレッチをしていくが、ルドルフとケイはちょっとだけ困った表情をしてから私に続いてストレッチをしていく。
いつでも予定は空いているよと伝えたんだけど、担当トレーナーに放置されているから反応に困ってしまったらしい。
でもストレッチが終わる頃には困った様子はなく、昨日ケイと走ったコースでランニングをしていく。
この日から3人で一緒に朝の時間を過ごすようになった。雨が降ったときは使っている場所に屋根がないから中止している。
朝の時間をゆったりとした時間で過ごしたいため、グループチャットで連絡するときは出欠の確認だけ。
お灸を始めて5日目を過ぎたあたりで朝の様子を見た人たちから、学校の休み時間中に声をかけられることが増えてきた。健康についての話や朝の時間に参加したいというのが。
それはルドルフやケイも話を聞かれたとのこと。
どうやらお灸や楽しくランニングをするのに興味を持ったらしい。あとはイケメンなルドルフと会話をするきっかけという理由もあるけど。
体調が悪いのは医者やトレーナーに相談してと前置きをしてから、私が知っている分だけ相談に乗っていく。
薬を使わず体調を良くしたい、生理痛の相談をできる人がいないから話をしたいと。体が悪いことだけじゃなく、様々な悩み事を言い、あとは懺悔みたいなことを。
決まった練習メニューがない私は相談に乗り、話をしっかりと聞いていく。
誰かに求められ、感謝の言葉を言ってくれたときは、とても気持ちがいいという下心があるけど。
デビュー前の子と一緒にダンスやボーカルのレッスン、走る練習にも付き合っている。
ケイとルドルフのふたりと朝を過ごし、学校では悩み相談。放課後は自分でメニューを決めて走るか、悩んでいるウマ娘と一緒にトレーニング。
それがつらいと思うことがある。頼ってくれるのは嬉しいけど、私は1勝をしただけのウマ娘。
トレーニングを教えるときはそのことを伝えているけど、そのことを聞いて私と一緒にするトレーニングをやめるウマ娘は少ない。
自分が思ってた以上に深く相談されると、担当トレーナーに見放されている私が誰かを教え導いてもいいのかなと心が痛くなる。
でも私と会っただけできらきらと輝く目で見てくる子がいて断りきれない。
感謝されるほどに罪悪感が増え、相談を断り自主練をひとりですることも。
ルドルフは落ち込むことが多い様子の私を心配してくれたときに、頑張りすぎたと今の状況を説明して自分の時間を増やすように努力をしていく。
ひとりでやっているときにでも、私と話をした子たちが飲み物や食べ物の差し入れをしてくれたのは嬉しかった。自分は良いことをしている、と肯定してくれているのを感じて。
そんな日々を過ごしていき、ルドルフはダービーを勝って2冠を達成した。直接見に行ったけど、走る姿とライブはルドルフのことしか考えられなくなるぐらいにかっこよかった。
ルドルフが学園の生徒たちやメディアから賞賛されるのは嬉しくなる一方、全然成績がよくない私が近くにいてはルドルフのためにならないんじゃないかと考えてしまう。
5月終わり頃にやったダービーの前日。トレーナーに放置されてから初めてレースに出たけど、9人中7着で終わった。
私の体は私の期待を裏切るばかり。
トレーナーに指導されなくなっても成績が変わらないということに、能力が上限に達したんじゃないかなんてことを考えて鬱々とした気分になる。
まぁ、それでも1日ほどの時間が経てば、あきらめという気持ちを持って落ち着くことができるけど。
6月最初の朝。曇り空の日、いつものように3人で座ってお灸をしていると周囲にも同じようなことをしている子たちを見ることが増えてきた。
すぐそばには来ないけど、私たちのようにそれぞれの寮の横でやっている。
お灸仲間が増えたことに喜んでいると、ケイが「そういえば」と声を出して話が始まる。
「おれ、近頃の体調が良くなったんです。筋肉に柔軟性がついたってトレーナーさんにいっぱい褒めてもらったんです」
「私もお灸が効いているな。生理痛が楽になり、胃腸もよくなった」
ケイとルドルフがそう言ってくると嬉しくなる。
ふたりも最初よりお灸をする数が増え、今では6個や8個を使うようになってきた。私に聞くだけじゃなく、ネットや本で色々なツボを調べて実際にやっている。
「これもオトメ先輩と出会えたおかげです」
「オトメはな、一緒にいると元気をもらえるんだ。自分のことのように話を聞いてくれる。心優しく、相手の気持ちを尊重してくれる。ケイもそう思うだろう?」
「はい、一緒にいるとオトメ先輩のファンが多い理由がよくわかります」
ずいぶんと過大評価をされている。私を間近で見ていると、ただ人の話を聞くだけしかしていないとわかるはずなのに。
特にルドルフ。君とルームメイトになって今年で4年目なんだけど。
「過大評価しすぎ。私は求められるから仕方なく答えているだけ」
「ふむ、謙遜と世話焼きのバランスこそオトメが聖女と呼ばれている理由か」
「なに、聖女って。知らないあいだにそう呼ばれているの、私」
聖女と呼ばれる人はすごい能力や献身的に活動し続けた結果で言われる。
私はレースですごい成績をあげたわけでもなく、学業が優秀ということでもない。モデルをできるほどの美人さもなく、実家がお金持ちだったりもしない。
知らないところで聖女と呼ばれていたのを知ると、私のことをきらきらとした目であこがれの人のように見てきた理由がわかるというものだ。
「その呼び方、おれのクラスが発祥かもしれません。クラスメイトがオトメ先輩のことを最初はお灸の人って呼んでいたんですけど、呼び方がださいから綺麗にしたいって理由で始まったんです」
ケイのクラスメイト。と言われても誰が誰だか把握していない。聖女なんて言葉を使うなんてお嬢様の人かな。でも呼び方がださいからって理由だとギャルの子?
聖女と呼ばれているのは恥ずかしいし、変な人だと思われている。まだ広まっていない今、誰かを特定して止めないと。
「広がってないうちに止めなきゃね、それ」
「……そのオトメ。君にとって悪い話がひとつあるんだが」
私がお灸を終え、ストレッチを始めていくと同じくストレッチをしたルドルフが気まずそうに声をかけてくる。
じっとルドルフの目をみつめると、私から目をそらす。
「4日前だが生徒会で君の話になったとき、君のことをお灸の聖女だなんてことを言って言葉をつけたしたんだ。君の素晴らしさを伝えたくてな」
「あぁ、ルドルフ先輩がきっかけだったんですか。グループチャットでその言葉が使われ始めた理由がわかりました」
なに、お灸の聖女って。あとグループチャットをするほどに人気があるの。
私、何も知らないし。2週間前にルドルフが生徒たちの話題として私のことが出始めたと言っていたけど、それかな。
それかなぁ!?
自身の健康のために始めたものが、私をきっかけとして他の人たちも健康に興味を持っているのはいいことだと思う。
私に相談をしたいという人の中にはお灸とは関係なしにお悩み相談をしてくることや、ひとりじゃ寂しいから練習を一緒にやってほしいとかもあるけど。
「オトメと一緒に走ると強くなるという噂があるな」
「おれが聞いたのは持久力がすごくつくとか。オトメ先輩がランニングを本気でやると長時間やりますから」
「そういう特殊能力はないよ、私には」
噂になるような能力があるなら、ケイは短距離だけじゃなくマイルと中距離を走れるようになるし、ルドルフは引退まで負けなしになりそうだ。
ルドルフとケイから私のうわさを聞いてから、すごい存在じゃないとアピールするようになった。
聖女なんて言われても困るから。
聖女ですかと聞いていた子に対してははっきりと否定をし、今までと変わりなく過ごしていく。
誰かのためじゃなく、自分のために生き方を変えずに。
1週間が経ったあたりに、私の担当トレーナーの噂も出てくるようになる。
『お灸の聖女を担当トレーナーが捨てた』というのが。
それが出始めてすぐに、私は放置されて以降はじめてトレーナーに呼び出しの連絡をランニングが終わった朝に受けた。
これを機会に契約をなくしてしまおうかと思う。
今までは未練で走っていたけど、もっと真剣に将来のことを考えなきゃいけない。期待が高すぎた私に失望した人たちを見返したいという気持ちがあった。
でもケイやルドルフと過ごすようになってから、心に余裕ができて深く考えられるようになった。
引退しても私の人生は終わるわけじゃない。地方で走ることもトレセン学園に残って普通に卒業することだってできるから。
授業が終わった放課後、トレーナー室にノックをし、不機嫌そうな返事が出て入ると同時に、トレーナーが新しく担当したウマ娘が部屋を出ていく。
すれちがったとき、私をにらみつける目には驚いた。けど、ちょっと考えれば私の噂が広がるほどに肩身が狭くなるのだから仕方がない。
だからといって私が謝ることはしない。
「3週間ぶりですね、トレーナーさん」
「お前、俺に嫌がらせか? お互い同意の上で今の状態になっているだけだろ。なのになんで俺が一方的に捨てたことになっているんだ。お前が自由になっただけだってのに。」
スーツを着て疲れた顔をして椅子に座り、机を前にしているトレーナーさんからは前にはなかったタバコの匂いがある。
タバコはもうやめたと言っていたのに、こうなっているのは私のせいかと思うと心苦しくなる。
「私は嫌がらせをしていません。ですが、悪い噂が出たのは謝ります。ですから契約を解除したいんです」
「お前、次のトレーナーが決まっているのか」
「いいえ。契約に向けた動きもしていません」
そう言うと、トレーナーさんは机の引き出しから1枚の紙を取り出し、ペンでさらさらと書いていく。
それは契約終了の紙で、書き終わってから10秒ほど悲しそうに見つめてから最後に印鑑を押して私へと差し出してくる
「今日か明日に出しておけ」
「はい。今までありがとうございました」
紙を受け取り、今まで指導してくれたことに感謝して深く礼をする。
顔をあげると、トレーナーは顔を横に向けて私から目を合わせてはくれない。
「お前は断ることができない奴だからな。俺みたいな管理主義の奴と契約するなよ」
「管理してくれるのも悪くありませんでしたよ」
そう言ってから、私は最後にトレーナー室をぐるりと見まわしてから出ていく。
ここが今日で見納めになると思えば、寂しくなるなぁと思いながら。
「悪かったな、ミラクルオトメ」
部屋の扉を閉める直前、ため息と共に言葉が投げかけられた。
ガチャン、と扉が閉まってから意味を考える。
それは何に対しての謝罪だったのかなと。
お互いに相手を理解できなかった、信頼が足りなかったというのが今回の契約終了の理由だと思っている。
紙を折りたたんで制服のポケットに入れると、寮へと戻って必要事項を紙に書いていく。
そして印鑑を最後に押す。
あとはこれで私はトレーナーがいないウマ娘となる。
寂しい気持ちと責任がなくなるという安心感のふたつがやってきて、それらの気持ちと共に印鑑を押す。
これで私は新しい私となる。
書き終わったあとは学園へと戻り、職員室へ行って教師へと提出した。
そのあとはジャージに着替えてトレーニングをする気分でもなく、のんびりしたかった。
学園内にあるカフェテリアに行ってフルーツパフェを注文。
ガラスの入れ物に入ったパフェには甘酸っぱさが特長のストロベリーシャーベットやフローズンミックスベリー、いちごソースなどがあり、トップにはさくらんぼを乗せた立派なものだ。
カロリーが高く、あまり食べる機会はなかったけど今日ばかりは気にしない。
注文したものを受け取り、誰もいないテーブルの角へと座る。
放課後の時間帯はトレーニングをするためにほとんど人がいなく、静かに食べられる。
スプーンで一口ずつ味わいながらパフェを食べていく。
上品でさわやかな甘さはおいしく、今のすっきりした気持ちと合わさって前に食べたときよりもおいしく感じられる。
食べていると、ふと真横に気配を感じて振り向く。
そこにはおだやかにほほえみながら、紙コップに入れられたホットコーヒーを持つ制服姿のルドルフがいた。
「相席してもいいかな、オトメ」
パフェを食べたままの私はスプーンを持っていない左手で向かい席へと手のひらを向ける。
ルドルフは私の正面側の椅子へと座り、紙コップをテーブルの上に置いた。
口にあるパフェを飲み込むと、私は一呼吸置いてから言い始める。
「ねぇ、ルドルフ。私、さっき契約を解消してきたんだ」
「納得しての円満的解消かい?」
「うん。これでフリーになったよ」
「私に手伝えることはあるかい?」
まだこれからどうするかの方向性も決まっていないから、まずは自分がどうしたいかを考える必要がある。
だから、心配してくれた言葉に対して首を小さく横に振る。
「そうか」
そう言って私の答えを聞いたルドルフはコーヒーを飲んでいく。
これで私たちの会話は終わった。まわりから見れば、どっちも言葉に説明が足りないと思うかもしれない。
でも私とルドルフならこれで通じる。心の悩みが一段落したことを。
私がパフェを食べていても、落ち着いた様子でコーヒーを飲んでいるし。もし通じてなくても部屋に戻ったときに話をするから大丈夫。
ゆっくり食べていると、私が食べ終わるよりも先にコーヒーを飲み終えたルドルフは私をおだやかな目で見つめてくる。
そんなルドルフに対してパフェを食べながら、スプーンで最後の一口をすくってルドルフの口元へと持っていく。
ルドルフは少し驚きながらも口を開けてくれたので、そこへそっと入れた。
「またあとでね」
「ああ、またあとで」
私は空になったパフェのガラス容器を手に持って立つと、同じくルドルフも空の紙コップを持って立ち上がる。
返却口へと行って片付けたあと、私たちはカフェテリアの出入り口まで一緒に並んで歩く。
そしてお互いに笑みを浮かべ、手を振って別れた。
晴れやかな気持ちになっている今、これから何を目指そうかと考え始めながら歩き始める。
終わり