日本からアベンジャーズ入りしました。尊敬する人?五代さんと一条さんです 作:ken4005
さらに一月後。アベンジャーズ基地は凄いことになっていた。
「……いや、もう。」
会議室の中を見回しながら、ロキが呆れたように口を開いた。
「この面子で勝てなかったら、もう諦めるしかないんじゃないか?」
「縁起でもないことを言うな。」
すぐ隣に座っていたソーが眉を寄せる。
「だが、間違ったことを言っているか?」
ロキが肩をすくめるのを見ながら、僕も改めて会議室の中を見回す。
僕の隣には真魚。
少し離れたところにフューリーとトニーさん、バナーさん、ピーター。それからハンク・ピム博士。
反対側にはソーとロキ。
さらに、闇の力を中心として、火、水、地、風の四人のエルロード。
そして今回の作戦において欠かせない魔術師側として、エンシェント・ワン、スティーブン・ストレンジ。
……確かに。冷静に考えれば、かなりおかしい戦力が集結している。アベンジャーズ、アスガルド、カマー・タージ、そしてエルロード。地球で用意できる戦力としては、かなり上位の者たちが集められている。
「僕も少しだけロキに同意したくなってきた。」
「クロオまで何を言ってるの。」
真魚に軽く肘で突かれた。
「いや、だって。」
「気持ちは分かりますけどね。」
ピーターも小声で頷いている。
「僕、この部屋にいるだけで凄い緊張します。」
「君はもっと堂々としてろ。」
トニーさんが言いながら、ピーターの肩を軽く叩く。
「今回は見学だけじゃない。ちゃんと作戦要員だ。」
「それ言われると余計緊張するんですけど。」
ピーターが困った顔をする。すると、フューリーの低い声が響き、それまで少しだけ緩んでいた空気が一気に引き締まった。
「静かに。全員揃ったなら始めよう。」
会議室中央の大型モニターに、暗い紫色の空間が映し出される。ダーク・ディメンション。正確には、エンシェント・ワンが再現した映像を基にトニーさんたちが作ったものらしい。
「その前に。」
エンシェント・ワンが立ち上がった。
「今回初めて顔を合わせる方もいますので、簡単に自己紹介だけしておきましょう。」
そう言って、彼女は軽く頭を下げる。
「私はエンシェント・ワン。カマー・タージにて魔術師たちを導き、この世界を魔術的な脅威から守ってきました。」
「スティーブン・ストレンジだ。」
ストレンジさんも続く。
「現在、彼女の下で魔術を学んでいる。」
トニーさんが少しだけ眉を上げる。
「元神経外科医の?」
「元ではない。今でも医師だ。」
「はいはい。」
「何だ、その返事は。」
「トニー、悪い癖が出てるよ。」
バナーさんが間に入る。エンシェント・ワンは二人のやり取りにため息を吐きつつ、そのまま説明を始める。
「まず、今回の敵について簡単に説明します。」
モニターの映像が無数の異形の構造物に切り替わる。上下も遠近も曖昧で、見ているだけで感覚がおかしくなりそうな空間。
「ドルマムゥはダーク・ディメンションの支配者です。ですが、通常の意味での王や統治者とは異なります。ドルマムゥは、ダーク・ディメンションそのものと極めて深く融合しています。」
バナーさんが腕を組む。
「つまり、その次元全体が彼の身体に近い?」
「完全に同一というわけではありませんが、その理解で大きくは外れていません。」
「厄介だな。」
トニーさんがモニターを見る。
「相手のホームグラウンドに行くっていうより、相手の体内に入るようなものか。」
「近い表現ですね。」
エンシェント・ワンが答える。
「さらに、通常の時間概念も通用しません。ダーク・ディメンションには、我々の世界と同じ意味での時間が存在しないのです。」
「だから老いも、死もない。」
ストレンジさんが補足し、エンシェント・ワンが僅かに頷く。
「カエシリウスが求めたものも、それでした。……ドルマムゥは他の次元を取り込み、自らの領域を拡大します。奴が地球に現れるだけで、この世界もダーク・ディメンションの一部とされてしまうでしょう。」
ピーターが少しだけ身を固くする。
「……世界が消える、ってことですか?」
「今の形では存在できなくなるのは確実です。」
エンシェント・ワンの返答に、ピーターが黙る。ソーが腕を組んだ。
「であれば、我らが直接奴の領域へ踏み込み、そこで討つしかない、ということか。」
「簡単に言えばそうなります。」
エンシェント・ワンが答えたところで、フューリーが立ち上がった。
「ここから先は作戦説明だ。」
モニターの画面が再び切り替わる。中央に地球。そして、その外側に大きく表示されるダーク・ディメンション。さらに、その間にいくつもの線が引かれた。
「今回の目的は一つ。」
フューリーが全員を見回す。
「ドルマムゥを地球にまで呼び寄せつつ、撃破する。」
ロキが僅かに眉を上げる。
「随分と簡単に言うな。」
「説明まで複雑にする必要はない。」
フューリーは全く気にしない。
「奴を自分の領域から切り離せるなら、それが理想だ。だが分離が不可能な場合でも、少なくともこちら側へ意識と力の大部分を向けさせる必要がある。」
モニター中央に、僕の姿が表示された。
「そのための切り札が黒雄、クウガだ。」
「やっぱり僕ですよね。」
「当然だ。現状、ドルマムゥを相手に正面からダメージを与えられる可能性が最も高いのはお前だ。」
闇の力が静かに口を開く。
「ドルマムゥが一つの次元と深く融合した存在であるならば、通常の生命体を相手にするのとは勝手が違う。しかし、クロオの封印エネルギーならば奴を封じ、撃破できる可能性がある。」
「分かってる。」
僕は頷く。
「殴って効くなら、殴り倒してみせます。」
「シンプルで良いよな。」
火のエルが笑った。
「難しいこと考えるより、それでいいんじゃねえか。」
「お前はもう少し考えろ。」
水のエルが呆れたように返す。
「話を続ける。」
フューリーがモニターを切り替える。今度は四方へ火、水、地、風のエルが配置された図が表示される。
「四人のエルロードは、結界を構築する。」
火のエルが頷く。
「ドルマムゥを逃がさないためだな。」
「そうだ。」
フューリーが続ける。
「ダーク・ディメンションを地球から離す、もしくは別の手段で退避されることを可能な限り防ぐ。」
地のエルが腕を組む。
「完全に封じられる保証はないぞ?」
「分かっている。」
フューリーは即座に答えた。
「だから可能な限りだ。宇宙やら別次元の脅威相手への作戦とはそういうものだ。」
次に表示されたのは、トニーさん、バナーさん、ピム博士の三人。
「科学班。」
トニーさんが嫌そうな顔をする。
「その呼び方やめないか?」
「却下だ。トニー・スターク、ブルース・バナー、ハンク・ピム。」
フューリーはそのまま続ける。
「三人は戦場の外からドルマムゥ、ダーク・ディメンション、結界、こちらのエネルギー状況を分析してもらう。」
ピム博士がモニターを見る。
「我々の機器がどこまで役に立つかは分からんぞ?」
「分かっている。だが何も測定しないよりはいい。」
「同感だね。」
バナーさんが頷いた。
「未知の存在でも、何か変化が起これば観測できる可能性はある。」
トニーさんも続く。
「エネルギー変動、空間の歪み、結界への負荷。それくらいなら拾えるかもしれない。」
「必要なら戦闘班へ情報を送れ。」
「任せろ。」
次に、ソーとロキが表示される。
「二人は地球側で待機していてくれ。」
ソーが僅かに眉を寄せる。
「我らは突入しないのか?」
フューリーが答える。
「全戦力を一ヶ所に集めるつもりはない。」
ロキが納得したように頷く。
「不測の事態への備えか。」
フューリーがモニターを指す。
「そうだ。ダーク・ディメンションへ主力が入っている最中に、地球側で別の問題が起きる可能性はある。結界の破損、別地点への侵入、あるいはドルマムゥ以外の存在の介入。」
ソーが頷いた。
「ならば任せろ。」
「兄上が暴走しないように私も見ておこう。」
「逆だろう。」
「さて、どうかな。」
二人が睨み合い始めたところで、フューリーが無視して画面を切り替える。今度は、僕、真魚、エンシェント・ワン、ストレンジさん、ピーター。ピーターが僅かに姿勢を正した。
「突入班は黒雄、真魚、エンシェント・ワン、スティーブン・ストレンジ、ピーター・パーカーだ。」
「僕も、なんですね。」
ピーターが言う。
「そうだ。お前には別の役割がある。」
「スパイダーセンスだ。」
トニーさんが先に答えた。
「ドルマムゥの領域では、何が起きるか分からない。通常の観測機器や魔術による予測では感知できない危険もある。」
ピーターが真剣な顔で聞いている。
「だが、君の危険察知能力なら、理屈を飛び越えて反応する可能性がある。本当に危険だと感じた時は、迷わず言え。」
フューリーが低い声で補足する。
「黒雄だろうが、エンシェント・ワンだろうが関係ない。止まれと言え。逃げろと言え。お前が危険だと感じたなら、それを最優先の情報として扱う。」
ピーターが少し驚いた顔をする。
「僕の感覚を、そこまで信用するんですか?」
「信用しているんじゃない。」
フューリーは即答した。
「利用できるものは全部利用する、それだけだ。」
「あ、はい。」
ピーターが少し複雑そうな顔をする。
「フューリーらしいね。」
僕が苦笑すると、本人には睨まれた。
「突入後は、黒雄を主軸に攻撃を行う。」
エンシェント・ワンが静かに続ける。
「私たち魔術師も可能な限り援護します。」
真魚も頷いた。
「私も光のエルの力と魔術を撃ちまくります。」
ストレンジさんが腕を組む。
「私もだ。」
一瞬、全員がストレンジさんを見る。
「何だ。」
「いえ。」
僕は首を振る。
「修行始めてまだそんなに経ってないのに、普通に参加するんだなって。」
「三ヶ月もあれば十分だ。」
エンシェント・ワンが横から口を挟む。
「十分ではありません。しかし、この作戦で非常事態が起きた時、私の代役が必要だったのです。タイムストーンの扱いに関してはサラよりストレンジの方が適してますからね。」
あ、ストレンジさんが少し不満そうな顔になった。
「第一目標は撃破。」
フューリーは気にせず続けると、モニターに大きく赤い文字が表示される。
「だが、黒雄でも倒せない場合、第二案へ移行する。」
画面が切り替わり、アガモットの目が映し出される。
「タイムループ作戦だ。」
ストレンジさんの目が細くなる。
「エンシェント・ワン、ストレンジ、そして火のエル。」
フューリーが3人を見る。
「時間操作能力を持つ者たちで、ドルマムゥを時間の循環に閉じ込める。」
火のエルがニヤリと笑う。
「倒せないなら、逃げられない状況を作って根比べってわけだ。」
エンシェント・ワンが答える。
「ダーク・ディメンションには通常の時間が存在しません。だからこそ、外部から時間という概念を強制的に持ち込めば、ドルマムゥにとって極めて異質な拘束となります。」
ストレンジさんがアガモットの目を見る。
「つまり、勝てないなら交渉するまで永遠に繰り返す、ということか?」
「最悪の場合は。」
エンシェント・ワンが答えた。
まずは僕が殴る。ダメなら、皆で時間に閉じ込める。作戦だけ聞くと随分力技に見えるけれど、相手が相手だ。
「以上が概要だ。」
フューリーが全員を見回す。
「細かい手順はこれから詰めていく。」
ドルマムゥ。一つの次元そのものと言っていい怪物。これまで戦ってきた相手とは、何もかも違う。僕はゆっくり息を吐くと隣の真魚がこちらを見ていた。僕は笑顔を作り、
「まあ。やるしかないよね。」
「うん。」
真魚が笑って頷いてくれる。その向こうでロキが、小さく息を吐く。
「だから言っただろう。」
全員の視線を集めたロキは肩をすくめ、
「これで勝てなかったら、もう本当に諦めるしかない。」
「だから縁起でもないことを言うな!」
ソーの声が、会議室中に響いた。
ーーーーー
会議が終わり、全員がそれぞれの持ち場へ戻っていった後。アベンジャーズ基地の会議室には、まだ数人が残っていた。
フューリー、トニー・スターク、闇の力、エンシェント・ワン。そして、火のエル。先ほどまでより、部屋の空気は更に重い。
最初に沈黙を破ったのは、火のエルだった。
「先に言っとくぞ。」
椅子の背もたれに身体を預けたまま、火のエルが全員を見回す。
「クロオが負けたなら、未来は諦めるくらいの覚悟でいろ。」
スタークの眉が僅かに動いた。
「随分と景気の悪い話をするな。」
「事実だ。」
火のエルは即答するが、冗談を言っている顔ではない。
「ドルマムゥは確かに化け物だ。次元と融合して、普通の生命体とは比べものにならない。でもな。」
火のエルが机の上へ肘を置く。
「今回の戦いは、もっと先に来る本物の化け物どもに比べれば、前哨戦みたいなもんだ。」
フューリーが目を細める。
「サノス。いや、セレスティアルズか。」
「ああ。今の地球で真正面から戦って一番強いのは、間違いなくクロオだ。」
闇の力は何も言わす、火のエルはそのまま続ける。
「アルティメットを超えた力を手に入れたアイツなら単純な破壊力だけじゃなく、相手の力を封じながら戦うことかできる。」
エンシェント・ワンが静かに聞いている。
「そんなクロオが、ドルマムゥ相手に正面から戦って勝てない。」
火のエルが一度言葉を切った。
「だったら、セレスティアルズには絶対に勝てねえ。」
スタークが腕を組む。
「絶対、か。」
「絶対だ。」
迷いなく言い切る。
「少なくとも、今の地球の戦力じゃな。」
フューリーが低く問う。
「どれほど違う。」
「相手による。」
火のエルは少し考えてから答える。
「セレスティアルズにも個体差はあるらしいからな、上の連中は星をどうこうするって尺度で話をする。」
「星を破壊する、という意味か?」
スタークが聞く。
「それだけならまだ分かりやすい。」
火のエルは苦笑した。
「星を作る。生命を作る。文明を選別する。必要なら惑星ごと処理する。そういう連中だ。」
会議室が静かになり、フューリーが机の上の資料へ視線を落とす。
「……なるほどな。」
「今回のドルマムゥ戦で見たいのは、勝てるかどうかだけじゃない。」
火のエルは言う。
「今の地球が、次の段階へ進めるかどうかだ。」
エンシェント・ワンが僅かに目を細めた。
「黒雄を基準にして、ということですか。」
「そうだ。」
火のエルは頷く。
「クロオがドルマムゥを殴り倒せるなら、少なくとも希望はある。」
「逆に。」
スタークが言う。
「勝てなければ?」
「今のままじゃ無理だ。」
火のエルが答えた。
「その時はタイムループでも何でも使って、この戦い自体は終わらせりゃいい。でも、そこで安心したら終わりだ。」
フューリーが火のエルを見る。
「つまり、ドルマムゥを退けることと、勝つことは別だと。」
「ああ。」
「交渉で撤退させることはできても、それは力で上回ったわけではない。」
エンシェント・ワンが静かに補足する。
「そういうことだ。」
火のエルが頷き、再び沈黙が落ちる。スタークが椅子へ深く座り直した。
「気に入らないな。」
「何がだ。」
「結局、またクロオ頼みだ。」
スタークの声は軽く聞こえたが、表情は笑っていなかった。
「訳の分からない化け物が出てくるたびに、最後に一番重いところを持たせるのはあいつだ。」
フューリーが答える。
「現状、それが最も合理的だ。」
「分かってる。」
スタークが即座に返す。
「だから気に入らないんだ。」
誰も否定しなかった。
闇の力が、ようやく口を開く。
「クロオ自身は、それを苦とは思っていない。」
「それが余計に困るんだよ。」
スタークが言う。
「あいつは自分がやれば済むと思ったら、本当にやる。」
「否定はできないな。」
フューリーも認め、エンシェント・ワンが静かに息を吐いた。
「だからこそ、私たちが追いつかなければなりません。」
全員の視線が向く。
「黒雄一人が強くなるだけでは意味がありません。」
エンシェント・ワンは続ける。
「次に何が来るのか。それがドルマムゥを超える存在なのか、セレスティアルズなのか、それ以外なのかは分かりません。」
「だが、脅威は来る。」
フューリーが言う。
「そういうことだろう。」
「ええ。」
エンシェント・ワンが頷く。火のエルも笑わずに答えた。
「来るぞ。」
短い言葉だったが、それだけで十分だった。スタークが机を指で軽く叩く。
「なら、やることは一つだな。戦力の底上げを続ける。科学、魔術、超能力、神の力。使えるものは全て伸ばす。」
闇の力も静かに頷いた。
「クロオにのみ未来を背負わせるべきではない。」
火のエルが口元を少しだけ緩める。
「それでいいと思うぜ。」
フューリーが立ち上がった。
「まずはドルマムゥだ。そこで黒雄が勝つ。」
スタークも立ち上がる。
「その上で、次に備える。」
「もし負ければ?」
火のエルが聞くと、スタークは一瞬だけ黙るが、火のエルを睨むように見て、
「その時は、もっと強くなるだけだ。」
火のエルが僅かに笑った。
「最高の答えだな。」
フューリーも頷く。
「黒雄に託すしかない状況を、今度こそ終わらせる。」
エンシェント・ワンが静かに目を伏せる。
「ええ。」
闇の力も、短く答えた。
「そのために、我々も力を蓄えよう。」
そして最後に、誰に言うでもなく呟いた。
「クロオ一人に、世界の未来を背負わせ続けるな。」