日本からアベンジャーズ入りしました。尊敬する人?五代さんと一条さんです 作:ken4005
MCUスパイダーマン編開幕
やあ読者の皆さん。僕の名前は、ピーター・パーカー。クイーンズに住んでいる、ごく普通の高校生だ。
……うん。たぶん、普通。学校に行って、授業を受けて、宿題をして、友達と話して、テストの点数を気にする。好きなものは科学と数学。あとスター・ウォーズ。嫌いなものは、授業中に突然当てられることと、メイ叔母さんに部屋を片付けろと言われること。
それから、放課後は秘密の活動をしている。………高校生なんだから、秘密の活動の一つや二つ、あるでしょ?
秘密の活動は、一応インターンということになっている。スタークさん本人からの紹介、あのトニー・スターク、アイアンマン。……今でもたまに意味が分からない、と思う時があるけどね。
それと、もう一つ。僕には秘密がある。赤と青のスーツを着て、壁を登って、糸を出して、クイーンズを飛び回っている。強盗を捕まえたり、事故に遭いそうな人を助けたり、道を聞かれたり、盗まれた自転車を探したり。
つまり、僕はスパイダーマンだ。特殊なクモに噛まれて、特別な力を得て、なるべく人の役に立てるよう努力している。
ちなみに、そのことを知っている人は思っていたより多い。
スタークさん、クロオさん、真魚さん、メイ叔母さん、ネッド、サラ、ジーン、ペッパーさん、ハッピーさん、その他アベンジャーズ関係者の皆さん。うん、……改めて数えると、全然秘密じゃない気がしてきた。
でも、学校では秘密だ。そして今僕は、
「ピーター、ネッド。ちょっといいか?」
先生に呼び止められている。場所は放課後の教室。僕とネッドは、これから僕の家のラボに向かう予定で鞄をまとめていたのだけれど、教卓の前から先生がこちらを見ていた。そして、何故かすごく期待に満ちた顔をしている。
嫌な予感しかしないな。ネッドを見ると、多分同じことを考えている顔をしている。
「何ですか?」
僕が聞くと、先生は手元に持っていた資料を掲げた。
「学力コンテストの件だ。」
「……ああ。」
学校対抗で行われる学力コンテスト。科学、数学、一般教養なんかを中心に何人かの生徒でチームを組んで出場する大会で、うちの学校も毎年参加している。そして今僕は、その学力コンテストのメンバーにネッドと一緒にスカウトされています。
……ということで、自己紹介は終わり。ここからが今日の本題だ。
「ぜひ二人には、揃って参加してほしい。」
僕は少し困ってネッドを見るけど、ネッドも困った顔をしていた。
「すみません、無理です」
僕が先に断ると、先生の表情が固まった。
「即答!?」
「いや、だって予定がありますし。」
「コンテストはまだ先だし、日付は土曜日だぞ!?」
「スターク・インダストリーのインターンがあります。」
横でネッドも頷く。
「僕もです。」
先生が目を細めた。なんか、明らかに疑っている。先生としていきなり生徒を疑うのはどうなんだろう?
「……前々から思っていたんだが。」
「はい。」
「君たち、本当にスターク・インダストリーでインターンをやっているのか?」
「やってますよ。」
僕は即答する。
「ちゃんと学校にも正式に連絡が入っているはずです。」
「それは……入っている。」
先生が少し悔しそうに言う。そう、ちゃんと入っているのだ。スタークさんがその辺りは妙にしっかりしていて、学校側に正式な書類まで送ってくれている。というか、スターク・インダストリー本社から、それもスタークさんの名前で正式に連絡が来たせいで、最初は先生たちの方が大騒ぎになったらしい。
「でもだな。」
先生が資料を机へ置く。
「高校生二人がスターク・インダストリーで何をしているんだ?」
「僕は開発部門のインターンを。」
僕は普通に答える。
「あ、あと警備部門のトップと仲が良いんで、そっちの手伝いもしています。だから最近身体も鍛えているんです。」
先生に力こぶを見せてみる。
「……確かに、前より随分鍛えられた気はするが。」
「ですよね。」
実際にはスパイダーマンとしての活動と訓練のおかげだけど。先生の視線がネッドへ向く。
「君は?」
「僕はプログラミング関係ですね。」
ネッドもさらっと答える。
「あ、あと、ピーター経由で警備部門のトップの人と知り合って、そっちも手伝ってます。僕は主にサイバー対策関係ですけど。」
「サイバー対策……。」
「はい。」
ネッドが胸を張る。実際、最近のネッドはかなり凄いのだ。僕がスパイダーマンとして動いている時に通信を繋いだり、監視カメラを確認したり、スタークさんのシステムを使って情報を整理したり。最近、本人は完全に裏方の仕事、椅子の人を楽しんでいる。
先生はしばらく僕とネッドを交互に見てから、深く息を吸い、
「頼む!」
突然、両手を合わせた。
「えー。」
「先生?」
「今回だけでいい!」
先生が僕たちへ詰め寄る。
「君たち二人がいれば、かなり上まで行けるんだ!去年は地区予選で負けた!一昨年も負けた!今年こそは勝ちたい!」
「いや、でも。」
「頼む、パーカー!」
先生が僕の手を掴む。
「スターク・インダストリーなら一回くらい休んでもいいだろう!?」
「いや、それは僕が決められないですって!」
今度は先生がネッドを見る。
「リーズ!」
「僕!?」
「君なら分かってくれるだろう!」
「いや、僕もインターンなんで。」
「そこを何とか!」
ほとんど縋り付く勢いで頼んでくる先生を前に、僕とネッドは揃って顔を見合わせた。……どうしよう。本当に困った。
ーーーーー
結局、先生からの熱烈な勧誘については、その場で答えを出さずに保留ということになった。
先生は最後まで「前向きに検討してくれ」「本当に頼む」「優勝とは言わない、せめて地区予選を突破してくれ」と何度も念を押してきたけれど、僕たちにも予定がある以上、その場の勢いだけで参加すると約束するわけにはいかない。
そういうわけで、ようやく先生から解放された僕とネッドは学校を出ると、そのまま僕の家にあるラボへ向かうことにした、のだけど。
「……ピーター、さっきから後ろを気にしてどうしたの?」
「うん。さっきから誰かついてきてるんだ。」
「え、マジ?スパイダーマンだってことバレた?」
学校を出て少し経った頃から、明らかに僕たちの後ろをついてきている人がいる。
距離は一定。僕たちが曲がれば曲がる。信号を渡れば少し遅れて渡ってくる。たまに振り返ると、ものすごく分かりやすく視線を逸らされる。
尾行としては、たぶんあまり上手じゃない。
「どうする?」
「うーん。」
少し意識を集中させてみる。頭の奥は静かなまま。危険を知らせる、あの独特の感覚はまったくない。敵意も殺気も感じないし、襲ってくる気配もない。
「まあ、いいんじゃない?」
「いいの?」
「スパイダーセンスも反応してないし、悪意とか危険とかも感じないから。少なくとも、いきなり襲ってくるような人じゃないと思う。」
「ピーターがそう言うならいいけど。」
ネッドは一度だけ後ろを振り返ったけれど、それ以上は気にしないことにしたらしい。
僕も同じだ。というわけで、そのままラボへ向かう。そして到着した僕たちは荷物を置くと、まず最初にスタークさんへ連絡を取ることにした。
こういう判断をするようになったのは、クロオさんの影響が大きい。前にクロオさんから、
『スパイダーマンとして活動していて、どうすればいいか分からないことが起きたら、一人で抱え込まずに真っ先に大人へ相談すること。トニーさんでも、ハッピーさんでも、フューリーでも、最悪僕でもいいから。自分だけで何とかしようとしない。絶対に。』
と、かなり強く念を押されている。その話をしている時のクロオさんが、妙に遠い目をしていたのが印象的だった。すると隣にいた真魚さんが、
『いっぱいお説教されてきたもんね。』
と言いながら、クロオさんの背中をポンポンと叩いていた。クロオさんは何も言わなかったけど、否定もしなかった。
……たぶん、本当にいっぱい怒られてきたんだろうな。
そして、その光景を見ながら、ちょっと羨ましいと思ったことは内緒だ。僕も彼女欲しいな。
……話を戻そう。
「スタークさんに繋いで。」
ラボのシステムへ声をかけると、すぐに通信が開始される。数秒後、正面のモニターにスタークさんが映った。ただ、スタークさんのラボやアベンジャーズ基地ではない。
後ろには大勢の人がいて、音楽が流れ、ドレスやスーツ姿の人たちがグラスを片手に談笑している。どう見てもパーティーだった。
『ピーター。今度は何だ?』
「今、大丈夫ですか?」
『見ての通り仕事中だ。』
「パーティーにしか見えませんけど。」
『これも立派な仕事だぞ。活動を続けるにはスポンサーが必要だし、そのスポンサーと良好な関係を築くのも大事な仕事だ。君も覚えておけ。ヒーロー活動には金がかかる。ものすごくな。』
「ああ……。」
お金に関しては、僕にも少し小話がある。
以前、一度だけ企業の人から「スポンサー料を払うからスパイダーマンのスーツに会社のロゴをつけてくれないか」と頼まれたことがあった。
さすがに断った。
赤と青のスーツの胸に、知らない会社のロゴが大きく入っている自分を想像してしまったからだ。
ただ、その代わりに事件を解決した時、たまたまニュースのカメラに映ったので、その会社の商品を少しだけ宣伝してみたら後日、担当者から泣きそうな勢いで感謝された。
売上がものすごく伸びたらしい。
……スパイダーマン、思ったより広告価値があるのかもしれない。いや、それは今はいい。
「それでスタークさん。ちょっと相談したいことがあるんですけど。」
『言ってみろ。』
「僕とネッド、学校の学力コンテストに出ないかって誘われてるんです。」
『学力コンテスト?』
スタークさんが少し考えるように目を細め、それからあっさりと答えた。
『出ればいいじゃないか。』
「いいんですか?」
『何が問題なんだ? インターンという名のヒーロー活動についてなら、その日は休みにしておけばいい。高校生が学生の行事に参加するんだから、むしろそっちを優先しろ。』
「それはそうなんですけど……。」
僕はネッドを見る。たぶん、同じことを考えている。
「正直、コンテスト当日に事件が起きたら、僕、真っ先に飛び出す自信がありますよ。」
『…………。』
スタークさんが黙り、額へ手を当てる。
『そうだった。君たちはそういう人種だったな。』
「スタークさんも同じでしょ?」
『僕は最悪、スーツだけ現場へ向かわせられるからセーフだ。』
「それズルくないですか?」
『科学技術の勝利と言ってくれ。』
スタークさんはまったく悪びれない。
アイアンマンのスーツは遠隔操作もできるし、自律行動もできる。本人がパーティー会場にいながら現場へスーツだけ送り込む、なんてことも普通に可能だ。
スパイダーマンにはそんな便利機能はない。
……僕も遠隔操作できるスパイダースーツを作ったらどうだろう?いや、それもう僕いらないな。
『まあ、当日はニューヨークに僕のスーツを何機か配置しておけばいいだろう。それでも心配なら、暇そうにしている奴を一人か二人、ニューヨークに置いておく。君は安心してコンテストに出ればいい。』
「暇そうにしている人って、例えば誰ですか?」
ネッドが興味深そうに聞くと、スタークさんは少し考えて、
『ソー。』
「却下です。」
僕は即答した。
『早いな。』
「だってソーさんですよ? 銀行強盗相手にムジョルニア持った雷神を派遣するんですか?」
『犯罪抑止効果は抜群だぞ。』
「抑止どころか犯罪者がニューヨークから引っ越しますよ。」
それはそれで平和になるのかもしれないけど。
『じゃあ、スコット。』
「スコットさんは潜入任務が専門でしょ?」
『巨大化もできる。』
「だから余計に向いてないですって。街中で巨大化したら事件より騒ぎになりますよ。」
『注文が多いな。なら――ハルク。』
「スタークさん?」
僕が真顔になり、スタークさんも真顔でこちらを見る。
『冗談だ。』
「本当ですか?」
『さすがに高校生二人を学力コンテストへ参加させるためだけに、ニューヨークへハルクを待機させるほど僕も馬鹿じゃない。……そうだな。クロオが暇かどうか確認して――』
「クロオさんや真魚さんだって大学があるんですよ?」
『分かった、分かった。』
スタークさんが両手を上げた。
『じゃあ僕自身が当日ニューヨークにいられるよう日程を調整する。それでいいか? 僕がいれば大抵の事件には対応できるし、どうしても無理なら他のメンバーを呼ぶ。君は大人しく問題を解いていろ。』
「おお。」
横でネッドが嬉しそうな声を上げる。確かに、それなら心配する必要はない。ニューヨークにアイアンマンがいて、必要ならアベンジャーズにも連絡できる。だったら僕が数時間くらいスパイダーマンを休んでも、たぶん大丈夫だ。
「じゃあ、参加してみようかな。」
「僕も。」
先生、喜ぶだろうな。あの勢いなら、泣くかもしれない。そこで僕は、ふと思いつく。
「スタークさん。」
『今度は何だ?』
「せっかくなんで、学力コンテストで優勝できたら、お祝いもしてください。」
『…………。』
スタークさんが僕を見る。なんだろう?
『ピーター。』
「はい。」
『最近、なかなか性格が図太くなってきたじゃないか。』
「師匠が優秀なお陰です。」
僕が笑顔で返すと、スタークさんは一瞬だけ目を細め、それから満足そうに頷いた。
『そうか。師匠のおかげなら仕方がないな。』
……認めるんだ。
『優勝したら考えてやる。』
「約束ですよ。」
『まずは優勝してから言え。あとネッド、お前もだぞ。出るなら中途半端な成績で帰ってくるな。スターク・インダストリーのインターン二人が参加するんだ。』
「プレッシャーが急に重くなったんですけど。」
ネッドが苦笑する。僕も同じ気持ちだ。こうして僕たちは、ほとんど勢いのまま学力コンテストへの参加を決めることになった。
ーーーーー
――その日の夜。
「サラ、今日は帰ってこないんだって。」
夕食の皿をテーブルへ並べながら私がそう言うと、向かい側に座っていたジーンがフォークを手にしたまま顔を上げた。
「カマー・タージ?」
「そう。今日は向こうに泊まるって連絡が来たわ。明日の朝には戻るそうよ。」
「ふーん。」
それだけ言うと、ジーンは特に気にした様子もなく、目の前の料理へ視線を戻した。私はそんな彼女を見ながら、小さく笑う。
この家でサラとジーンが暮らし始めたばかりの頃なら、こうはいかなかった。
最初の頃のジーンは、サラが少し長く家を空けるだけでも、本人は平気そうな顔をしながら何度も時計を確認していたし、サラがカマー・タージに泊まると聞いた夜には、何度も玄関の方へ視線を向けていた。
もちろん、無理もない。
あの子にとってサラは、ただの姉ではないのだと思う。自分を守ってくれる家族であり、頼れる人であり、安心できる場所そのものだったのだろう。でも最近は、随分と変わった。
サラがいなくても普通に夕食を食べるし、一人でお風呂にも入るし、夜になれば自分の部屋へ行く。私やピーターに遠慮することも減って、冷蔵庫を勝手に開けてジュースを取るくらいには、この家を自分の家として扱ってくれるようになった。
……逞しくなったものだ。
「メイ叔母さん。」
考え事をしていると、ピーターが声をかけてきた。
「何?」
「今日、学校で学力コンテストに出ないかって誘われたんだ。」
「あら。」
私はピーターを見る。
「いいじゃない。」
「まだ詳しい話してないんだけど。」
「ピーターが学校の行事に参加するって聞いた時点で、私は賛成よ。」
「早くない?」
「早くないわよ。」
最近のピーターは、放課後になるとスターク・インダストリーのインターンと称してラボに籠もるか、スパイダーマンとして街を飛び回るか、クロオたちと訓練をするか、そのどれかだ。
普通の高校生として友達と過ごす時間が、以前より明らかに減っている。
本人は楽しそうだから強く止めるつもりはないけれど、叔母としては少しくらい高校生らしいことをしてほしい。
「それで、出るの?」
「うん。ネッドと一緒に出ようかなって。」
「だったらいいじゃない。出なさい。」
「やっぱり即答なんだ。」
「ネッドも一緒ならなおさら賛成。」
私がそう言うと、ピーターは少しだけ苦笑しながら食事を続ける。すると、今まで黙って話を聞いていたジーンが顔を上げた。
「でも、ピーター。」
「ん?」
「スパイダーマンの活動はいいの?」
「ああ、それなら大丈夫。」
ピーターは口の中のものを飲み込んでから答えた。
「最近、ちょっと活動しすぎだったし、大会当日はスタークさんがニューヨークに来てくれるんだって。」
「へー。」
ジーンが感心したような、していないような声を出す。
「何かあったらスタークさんが対応してくれるし、それでも無理なら他のアベンジャーズにも連絡してくれるって。だから、その日は僕もスパイダーマンを休んでいいって言われた。」
「へー。」
また同じ返事。私は何となくジーンを見る。何か考えている顔だ。この顔をする時のジーンは、大抵ろくでもないことを思いついている。
「……何?」
ピーターも気づいたらしく、少し警戒するようにジーンを見る。するとジーンは椅子から降りた。そのままテーブルの横を歩いて、わざわざピーターの後ろへ回る。
「ジーン?」
ピーターが振り返ろうとしたところで、
ぽん、ぽん。
ジーンがピーターの背中を優しく叩いた。そして、少しだけお姉さんぶった顔を作り、
「ちゃんとスタークに相談できて偉いね、ピーター。」
「…………。」
ピーターが固まった。フォークを持ったまま、本当に動かなくなる。
私は吹き出しそうになるのを必死に堪えた。
数秒後、ピーターがゆっくりと振り返る。
「……誰の真似?」
「真魚とサラ。」
即答だった。
「ああ……。」
ピーターが納得したような、納得したくないような顔になる。
「二人とも、そんなことする?」
「するよ。」
ジーンは当然のように頷く。
「クロオがちゃんと相談した時に真魚がやってた。あと、私がちゃんとエンシェント・ワンに相談した時、サラもやってくれた。」
「なるほど……。」
ピーターは何とも言えない顔で頷いている。どうやら反論できないらしい。ジーンは満足したのか、そのまま自分の席へ戻っていく。
私はとうとう我慢できなくなって、頬杖をつきながらニヤニヤとピーターを眺めた。
「……メイ叔母さん。」
「何?」
「その顔やめて。」
「どんな顔?」
「絶対面白がってる顔。」
「そんなことないわよ。」
「嘘だ。」
失礼ね。確かに面白がってはいるけれど。
それにしても。
私は再び食事を始めたピーターを見る。ちゃんと誰かに相談するようになった。自分だけで何とかしようとせず、スタークさんに連絡して、大人に頼って、自分が休んでも大丈夫なように準備をしている。
スパイダーマンになったばかりの頃のピーターなら、きっと全部自分でやろうとしただろう。
学校のコンテストにも出て、途中で事件が起きれば飛び出して、それでも誰にも迷惑をかけまいとして、一人で走り回っていたに違いない。そう考えると――。
「ピーター。」
「何?」
私も手を伸ばした。
ぽん、ぽん。
「ちゃんと相談できて偉いわね。」
「メイ叔母さんまで!?」
ジーンが声を上げて笑い、私は笑いながら手を引っ込める。こうして三人で夕食を食べながら、くだらないことで笑っていられる。
サラがいない夜でも、ジーンはもう不安そうに玄関を見ない。そしてピーターも、少しずつだけれど、自分一人ですべてを背負おうとしなくなってきた。
色々あったけれど――この家はこの家なりに、ちゃんと前へ進んでいるらしい。そんな二人を眺めながら、私はもう一度、小さく笑った。
ーーーーー
おかしい。いや、別に気にしているわけじゃない。ただ、少し気になるだけだ。
ピーター・パーカーとネッド・リーズ。
あの二人は、私と同類だと思っていた。別に友達という意味じゃない。そもそも、あの二人とそんなに話したこともないし。
そうじゃなくて、学校行事とか、みんなで力を合わせようとか、クラス一丸となって頑張ろうとか、そういう言葉を聞いた時に、一歩引いたところから眺めている側の人間。少なくとも私は、そう思っていた。
今回の学力コンテストは、最終的にはあの二人が入ると思っていた。本人たちが立候補するとは思っていなかったけれど、どうせ先生が放っておかない。
ピーターは科学と数学が得意。ネッドはプログラミングとか、その辺が得意。そして二人とも、成績はかなり良い。
戦力として考えれば、先生が声をかけない理由がない。実際、今日の放課後、先生は二人を呼び止めていた。だから私は少し離れたところから見ていた。
盗み聞きじゃない。たまたま聞こえただけ。……少しだけ近くにいただけ。
そして案の定、先生は二人に学力コンテストへの参加を頼んだ。ここまでは予想通り。問題は、その後。二人とも断ったのだ。
いや、正確には保留。理由は――スターク・インダストリーのインターン。……怪しい。ものすごく怪しい。
確かに、二人がスターク・インダストリーでインターンをしているという話は聞いたことがある。学校にも正式な連絡が来ているらしいし、先生たちも認めている。
でも、だからこそ怪しい。
普通の高校生二人が、どうして世界有数の巨大企業で揃ってインターンをしているのか?しかもピーターは開発部門でネッドはプログラミング関係。さらに二人とも、警備部門の人間とも関係があるらしい。
……そんなことが普通の高校生にある?私は気になった。だから放課後、二人の後をついていった。ストーキングじゃない。人間観察だ。私は昔から人間観察が好きだから、その延長。
別に犯罪じゃない。……たぶん。
ピーターは途中で何度か振り返っていた。その度に私は自然に視線を逸らした。完璧だったと思う。少なくとも、声をかけられなかったんだからバレてはいない。そして、しばらく二人の後を歩いた結果、
「…………何、ここ。」
思わず声を出してしまった。二人が入っていったのは、どう考えても普通の高校生が放課後に遊びに行くような場所じゃなかった。
高級タワーマンション。
それも、入口を見ただけで分かるくらい高そうなところ。ピーターの家が引っ越したという話は聞いていた。でも、……ここ?
クイーンズに住んでいる普通の高校生じゃなかったの?少なくとも私の知っている普通の高校生は、こんなところに住んでいない。
中に入ろうかとも思ったけれど、さすがに無理だった。エントランスからしてセキュリティが厳重すぎる。住人でも関係者でもない私が入ろうとしたら、普通に止められる。そこまでして入ったら、本当にストーカーみたいになる。
私はストーカーではない。人間観察をしているだけだ。
だから、その日は帰った。ただし、一つだけ確信した。ピーター・パーカーとネッド・リーズ、あの二人は絶対に何か隠している。
スターク・インダストリーのインターンという話自体が嘘だとは思わない。むしろ、本当だから余計に怪しい。世界的企業のインターンをしていて、警備部門とも関係があって、放課後には二人揃って高級タワーマンションへ入っていく。
……何なの、あの二人?まあ、いい。急ぐ必要はない。学校では毎日会える。しばらく観察を続ければ、そのうち何か分かるでしょ。別に興味があるわけじゃない。ただ――ちょっと面白そうなだけ。
ーーーーー
そして翌日。
「先生。」
ピーターが先生のところへ行った。その隣にはネッドもいる。私は少し離れた席から、本を読みながら二人の様子を眺めていた。もちろん、本当に読んでいる。
たまたま二人が視界に入っているだけ。
「昨日の学力コンテストの話なんですけど。」
「お、おう。」
「僕たち、参加します。」
「本当か!?」
先生が立ち上がった。勢いよく、ものすごく嬉しそうに。
「よし! よし、これでいける! 今年はいけるぞ! パーカー、リーズ、本当にありがとう! いやあ、良かった! これで地区予選突破が見えてきた!」
「先生、声大きいです。」
「そうですよ。みんな見てますって。」
二人が少し引いているが、先生は気にしていない。
「よし、今日から早速――」
……うるさい。朝からテンションが高すぎる。でも、私は本を一ページめくりながら、二人を見る。
昨日は保留。今日は参加。一晩で何が変わった?インターン先と相談した?それとも――昨日、あのタワーマンションで誰かと話した?
「…………。」
やっぱり怪しい。私は本へ視線を戻す。二人が学力コンテストに参加するなら、ちょうどいい。観察する機会も増える。
私はまだ、学力コンテストのメンバーに入っていない。
……別に入りたいわけじゃない。ただ、ピーター・パーカーとネッド・リーズ。この二人が何を隠しているのか、もう少し近くで観察してみるのも悪くないかもしれない。