杜王町に住む漫画家、岸辺露伴の元にやってきた数人のスピードワゴン財団の職員達。彼らはとある少女とその取り巻きについての資料を渡してきた。
それは…『涼宮ハルヒ』、そして彼女を含めた『SOS団』の団員たちについてのものだった。
※「岸辺露伴は動かない」時空ではなく、「ジョジョの奇妙な冒険」時空をベースとしています。
※ハルヒたちが入学した年を仮に2003年だとして、この話を2004年としています。
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2004年、杜王町。
岸辺露伴の自宅の呼び鈴を鳴らしたのは、白い服に身を包んだスピードワゴン財団の職員達。
「岸辺露伴先生。我々はあなたに、ある人物の『読解』を依頼していただきたく、ここに来ました。」
「『読解』して欲しいだと?僕は君たちの便利屋じゃあないんだぞ。……わかった、中に入れ。」
露伴は不機嫌そうに応答し、彼らを自宅に案内する。
「こちらを。」
職員の1人が数枚の資料を差し出す。そこに書いてあったのは、兵庫県西宮市に住む1人の女子高生ーー『涼宮ハルヒ』と、その『仲間達』についてのことで、特にこの少女の周りでは因果の歪み、またはそれすら無視したようなことが起きていると記載されていた。
「もしこれが本当であれば……従来のスタンドを遥かに越える『何か』がある可能性があります。」
「なるほど……で、コイツを僕のスタンドで本にして、暴いてもらいたいと?」
「はい…。」
「分かった。引き受けてやろう。漫画のネタになるかもしれないからな…。」
露伴は不機嫌オーラから解放されたように目を輝かせていた。このスタンドすら越えるかもしれない『何か』を秘めているであろう『涼宮ハルヒ』に対して興味深々だったのだ。
翌日。露伴は空港で数名の財団職員と共に「同行者」を待っていた。
しばらくし、その同行者として現れたのは、空条承太郎と東方仗助の2人。かつて、共に杜王町を吉良吉影という殺人鬼から救った者たちである。仗助とは相変わらず仲が悪いが。
「承太郎さんと仗助か…。チッ…仗助の奴は気に食わんが、状況から考えると仕方ないな…。不本意だが今回は我慢してやる…。」
その後、飛行機に乗った彼らは数時間のフライトを終え、西宮北口前の喫茶店へと足を運んだ。
ここはハルヒがよく通っている店であり、誘い出すのにはうってつけだった。
しかも、現在ここは財団の工作によって完璧にコントロールされており、店内にいるのは露伴と承太郎と仗助と、店員や客に扮した職員達だけだった。
「おい露伴!余計なことして街一つ滅ぶようなことすんなよ!」
「それぐらい分かっているッ!お前こそ余計なこと言うんじゃあないッ!」
仗助のちょっかいに腹を立てる露伴。すると
「おい、お前ら。『涼宮ハルヒ』がやってきたぜ。」
承太郎が言う。2人は小競り合いを瞬時にストップして客のように振る舞い始めた。
ウィーーーン
自動ドアの開く音が店内に響く。
そして、入ってきたのは例の少女--『涼宮ハルヒ』だった。
ちなみに彼女が入った直後、職員はドアを開閉できぬよう仕掛けを施した。
「やあ、そこの君。」
露伴は隣を通り過ぎようとした彼女に話しかける。
「何よあんた……ってええ!?大人気漫画家の露伴先生じゃない!!」
ハルヒは彼が大人気漫画家の岸辺露伴だと知るや否や興奮した。普段『非日常』以外にはあまり興味のない彼女だが、本物の有名人を見ると、しかも目の前でとなると、やはり反応するのであろう。
しかし、そんなハルヒの反応など気に留めず、露伴は自分の絵を彼女の目の前に差し出して叫んだ。
「『ヘブンズ・ドアー』!!!」
彼女は倒れ、顔が一枚の「本」へと変わり、露伴はそれを手に取り読み始める。
初めのうちは記憶や人生、ハルヒ自身の本質、『非日常』に対する執念とも取れる感情など…様々なことが書かれていた。
露伴は個人的な好奇心と、プロの漫画家としての矜持を持って、ページを読み進める。
だが--。
「…ッ!?何だこれはァ!?」
露伴の指先が凍りついた。承太郎や仗助、職員達もページを覗く。そして戦慄した。
彼らを震え上がらせたもの---そのページに書かれていたことを簡単に表すと
『願望を自由に実現できる』『機嫌しだいで世界が変わる』
などと言った、従来の「スタンド使い」のカテゴリーには収まらないであろうことだ。
彼女は、『この世界の理』そのもののようであった。
ウィーーーン
その時だった。ロックされているはずの自動ドアの開く音がした。何者かが、この店内へと侵入したのだ。
「誰だッ!おい職員!店には侵入できないようにしてなかったのか!?」
露伴が叫ぶ。
「いえ。確かに侵入できないよう、厳重にロックされていましたよ。露伴先生。」
財団の工作を「なかったかのように」すり抜け、店内に入ってきたのは、4人の少年少女、そして黒服の集団だった。
そして先ほど喋ったのは4人のうちの1人ーー『古泉一樹』という少年だ。
「承太郎さん!こいつらハルヒと一緒で資料に載ってたっスよ!」
仗助が言う。そう、この古泉一樹こそが、涼宮ハルヒを取り巻く人間の1人。そしてその後ろにいる、何処にでもいそうな男子高校生『キョン』と、おどおどした小柄な少女『朝比奈みくる』、感情の読めない無機質な少女『長門有希』。
「皆さんッ!外の様子が!」
職員の1人が窓の外を指差す。なんと、まるで異空間かのように景色が歪んでいたのだ。
「逃げられては困りますのでね、長門さんに協力していただきました。」
「この建造物及びその周辺は現在隔離中。よって自力での脱出はほぼ不可能。」
古泉が胡散臭い笑みを浮かべながら、長門は表情一つ変えず淡々と言った。
「スピードワゴン財団…表向きは多分野に力を注いでいる巨大企業。しかし裏では、かつては『石仮面』…そして現在は『スタンド』という概念の研究をしている。我々『機関』は、その動向も既に把握済みです。」
古泉の説明に、財団職員達は顔を真っ青にする。
「で、なんの要だ…?」
露伴は彼を睨む。
「簡単なことですよ。今すぐお引き取り願いたい、ということです。もし貴方達が涼宮さんを刺激するのなら、我々が直接手を下すか、長門さんによる情報操作、または涼宮さん自身によって……。とにかく、この三択しか選択肢は存在しません。」
「…人質は『俺たち』…そういうことか…。」
承太郎が低く唸った。
「……分かった、僕らの負けだ。」
古泉の説明を聞いた彼は負けを認めた。内心では、もっとハルヒのことについて知りたかった上、負けなど認めたくなかった。しかし、古泉ら機関による何かしらの行為、長門有希による情報操作、そしてハルヒ自身からの『何か』ーーーーそれが露伴にすら『敗北』を認めさせたのだ。
彼の言葉を聞いた仗助や承太郎、職員たちも静かに頷いた。
長門による隔離が解除され、外には元の北口前の街並みが蘇っていた。
承太郎は去り際、こう呟いた。
「やれやれだぜ…俺たちはとんでもねーモノに触れちまったって訳だな…。」
彼に続き、露伴も店を出ようとしたその時
「露伴先生。今日ご覧いただいたであろう、涼宮さんに関することは…くれぐれも漫画などで取り扱っていただかないよう、お願いすることはできるでしょうか?」
古泉からそう言われ
「彼女を『刺激』しちゃあダメなんだろ?……不本意だが、約束してやるよ。」
と返して、去っていった。
「…うーん…あれ?露伴先生は?」
本にされた顔が元に戻り、意識も取り戻したハルヒがキョロキョロしながら言う。
「露伴先生だと?お前……店の床で倒れてると思ったら、急に何言い出すんだ?」
事情を知るキョン。しかし、彼はあえてそれを言わなかった。
時は流れ、7年後の2011年。
世界…いや宇宙そのものが、エンリコ・プッチの手によって一巡されようとしていた。
…しかし
「ッ!?」
何の前触れもなく、プッチはこの世から消滅し、一巡しかけていた世界も元通りになった。
スピードワゴン財団は原因の調査を起こったが、何も手掛かりは掴めない。そして苦し紛れに導き出された答え…
---『涼宮ハルヒ』よるもの、そう結論づけられた。
「…久しぶりだな、ここも。」
露伴は7年前に訪れた、あの喫茶店へと出向いていた。
「え!?露伴先生!?今度はちゃんと現実じゃない!」
すると、25歳ほどになったであろうハルヒが彼を見つけて叫んだ。
幸いにも、店内は店員を除き、彼ら2人だけであったため、騒ぎにはならずに済んだ。
「僕のファンかい?」
既に会ったことはあるものの、事情が事情なので露伴は初対面を装う。
「ファンって程でもないけど…たまに、あんたの漫画読んでるわよ。」
ハルヒは言う。かつてのエネルギッシュなオーラは鳴りをひそめ、代わりに洗練された大人の女性としてオーラが取り巻いている。しかし、眼の奥にはあの時と変わらぬ『非日常』への思いが衰えず輝いている……そんな風に、露伴からは見えた。
「向かい合って座らないか?」
「いいの?じゃあ遠慮なく座らせてもらうね。」
露伴に誘われてハルヒは向かい側に座った。
「この前…変なことが起きなかったか?」
「え?変なこと…。確か最近…「世界がおかしくなり始めてる!?」って感じになったわね…。あとそれでね、「絶対こんなのあたしの望む『非日常』じゃないわ!」って思ったのよ。」
(感じていたのか…。しかも、やはり彼女の『願い』によってプッチの計画は阻止…いや、プッチごとそもそも「なかった」ことにされたという訳か…。)
露伴は少し身震いした。プッチも『天国』も、この女が願っただけで、存在ごと消されてしまったこと。それに加えて、彼女の直感の鋭さにも。(これに関しては世界が一巡する様子が、視覚的に近い何か、そんな感じで分かりやすかった可能性もあるが。)
「だが、今は何も変化はない。もしかしたら、君の『願い』とやらは、少なからず届いたのかもしれないな。」
彼は遠回しに、自分なりの感謝をハルヒへと送った。
「ふん!あたしはかつて世界を盛り上げるために活動してた『団長』だったんだから!それぐらいあり得るわね!」
すると、彼女はかつての『団長』だった時の様に言った。
「じゃあ、僕は仕事が山ほど残ってるからここでお暇させていただくよ。それじゃあ。」
露伴はコーヒーを飲み干し、立ち去っていった。
「あんたの漫画応援してるわよ!」
彼の背中を見ながら、ハルヒは元気よく言い放った。