暇を持て余す博麗霊夢のもとへ、いつも通り魔理沙が騒ぎながらやって来る。
ところが神社の裏で、ちょっとだけ面倒な“異変未満”の出来事が発生。
霊夢は文句を言いながらも、
ゆるく・雑に・最低限の労力でそれを片付けていく。
異変ほど大ごとじゃないけれど、放っておくとちょっと困る――
そんな幻想郷の日常を、塩対応の巫女がゆるく処理していく物語。
博麗神社の朝は静かだった。
……静かすぎた。
「異変の気配がないって、逆に不安なんだけど」
霊夢は縁側でお茶をすすりながら、誰も来ない参道を眺めていた。
妖怪も来ない。人間も来ない。賽銭も来ない。
「いや、最後のはいつもだけど」
自分でツッコミながら、霊夢はため息をつく。
異変が起きれば起きたで面倒だが、起きなければ起きないで暇すぎる。
巫女としての存在意義が揺らぐレベルである。
「……こういう時に限って、絶対ロクなこと起きないのよね」
その予感は、だいたい当たる。
「よーっす霊夢! 異変だぜ!」
「ほら来た」
霊夢はお茶を置き、魔理沙をじろりと見る。
「で、どんな異変?」
「いや、異変は起きてないぜ!」
「帰れ」
「待て待て待て! 異変が起きてないのが異変なんだよ!」
霊夢は眉をひそめた。
「……それ、ただの暇つぶしに来ただけでしょ」
「バレたか」
「バレるわよ」
魔理沙は勝手に縁側に座り、霊夢のお茶を奪って飲む。
「んー、霊夢のお茶は相変わらずうまいな」
「返して。あと賽銭置いて」
「お茶一杯で賽銭要求する巫女がどこにいるんだよ」
「ここにいるわよ」
そんなやり取りをしていると、神社の裏から妙な音がした。
「……ねぇ、今の聞いた?」
「聞いたぜ。なんか“ぽよん”って音だったな」
「ぽよんって何よ」
二人が裏へ回ると、そこには――
巨大化したスライム状の妖精が、ぽよんぽよん跳ねていた。
「……なにこれ」
「いや、知らんぜ」
妖精は霊夢を見ると、嬉しそうに跳ねた。
ぽよん。
「可愛いけど……なんで巨大化してんのよ」
「さぁな。異変ってほどじゃないが、放っとくと面倒なやつだな」
霊夢はお札を構えた。
「よし、さっさと片付けるわよ」
「お、やる気だな霊夢!」
「暇なのよ」
霊夢が札を投げると、妖精はぽよんと跳ねて避けた。
「避けた!?」
「霊夢、あいつ意外と運動神経いいぜ!」
「妖精のくせに生意気ね!」
霊夢は空へ飛び、上からお札をばらまく。
魔理沙も横からレーザーを撃つ。
しかし妖精は――
ぽよんぽよんぽよん!
「跳ねて避けるなぁぁぁ!」
「霊夢、あいつただのスライムじゃなくて“弾幕反射体質”かもしれん!」
「そんな体質いらないでしょ!」
最終的に、霊夢が素手でつかんで捕獲した。
「……結局、力技なのよね」
「霊夢、巫女の戦い方じゃないぜ」
「文句ある?」
「ないぜ」
捕まえた妖精を調べてみると、ただの妖精が魔理沙の落としたキノコを食べて巨大化しただけだった。
「お前のせいじゃない」
「いや、私のキノコがそんな効果あるわけ……あるかもしれん」
「どっちよ」
妖精は元のサイズに戻り、ぴょこっと霊夢の肩に乗った。
「……まぁ、可愛いから許すわ」
「霊夢、甘いな」
「異変じゃないし、これくらいでいいのよ」
霊夢は肩の妖精を撫でながら、ふっと笑った。
「異変がない日も、まぁ悪くないわね」
「じゃあ今日は私の家でキノコ鍋でも――」
「絶対行かない」