深淵の門—銀河英雄伝説異聞   作:でてこ@子(dc1394)

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第二十三話「決戦の回避」

百六

 

 宇宙暦七九六年六月十九日。午前八時。

 

 イゼルローン回廊、同盟側中間地帯。旗艦《ヒューベリオン》の艦橋。

 

 ヤン・ウェンリー少将は、紅茶のカップを指揮席の肘掛けに置いた。

 

 艦橋の照明は、夜間モードから昼間モードへの切り替えが終わったばかりだった。観測スクリーンには、宇宙の暗さと、肉眼では見えないが観測機器の中では明確に存在する敵艦隊の艦影が、青と赤の対比で表示されていた。

 

 二日目の朝だった。

 

 前日の午後、本隊が反転機動に入って以降、ヤンは艦橋を離れる時間を最小限に絞っていた。昨夜は、艦長室で四時間ほど横になった。それ以外の時間は、艦橋にいた。決戦を仕掛けないからこそ、艦橋を空けてはならない。対峙が続く間、司令官がそこにいることそのものが、艦隊全体への信号になる。

 

 《エクリプス》——いや、要塞の管制圏に入った時点で、その名はもうエッシェンバッハに戻っているはずだった——が、要塞に受け入れられたという事実は、まだヤンの手元には届いていない。届くはずもなかった。同盟軍別働隊所属の電子戦艦が発信し続けている断続的な妨害波は、要塞とゼークト艦隊主力の通信を撹乱するためのものだった。その副作用として、要塞内部で何が起きているかを、こちらも知ることができない。

 

 それは、こちらが設計した不自由だった。

 

 ヤンは観測図を見た。

 

 青い印が同盟軍第一三艦隊本隊、四千五百隻。赤い印がロイエンタール艦隊主力、七千隻。距離は、八十光秒。反転機動の後、両軍はほぼ同じ距離を保ったまま、互いの動きを観察し続けていた。

 

 「向こうも、動かないね」

 

 ヤンは低く呟いた。

 

 ムライ参謀長が、観測図の向こうから答えた。

 

 「はい。ロイエンタール艦隊は、こちらの反転後、追撃を試みず、現在の位置に留まっています。先方も、こちらの動きを読み切れていない可能性が」

 

 「読み切れていない、というよりは、読まないことを選んでいる」

 

 ヤンはそう言った。

 

 「あの指揮官は、迂闊に追ってこない。半個艦隊同士の決戦を、こちらも仕掛けないし、向こうも仕掛けない。両方とも、それがいま最も合理的な選択だと判断している」

 

 ムライは、わずかに眉を寄せた。

 

 「決戦の回避は、こちらの利益でもあります。シェーンコップ大佐の任務に時間を与えるという意味では」

 

 「そうだね」

 

 ヤンは、紅茶のカップを取り直した。

 

 「ただ、向こうが決戦を回避しているのは、シェーンコップ大佐のためではない。向こう自身の判断として、ここで決戦を仕掛けない方が合理的だと見ている」

 

 その判断の質を、ヤンは評価した。声には出さなかった。

 

---

 

 艦橋では、各部署が低い声で報告を交わしていた。哨戒情報、補給状況、艦の位置調整、機関の温度。どれも、艦隊戦の前段階で続けられている事務的な確認だった。

 

 決戦が起きないということは、艦隊が一定の緊張を保ったまま、何時間も待機し続けるということを意味する。緊張は、消耗する。しかし緊張を解けば、相手が動いた瞬間に対応が遅れる。どこで緩め、どこで張るか。それを決めるのも、艦隊司令官の仕事だった。

 

 ヤンは艦橋全体の空気を感じ取った。

 

 前日の午後、彼は艦橋の全員に短く話していた。「焦らせたい方が、先に動く。我々は、その時まで落ち着いていればいい」——その言葉が、艦橋のどこかに残っている。完全に染み込んだわけではない。緊張は依然として残っている。しかし、緊張の質は昨日とは違っていた。

 

 「ムライ参謀長」

 

 ヤンは低い声で呼びかけた。

 

 「はい」

 

 「君も、交代で休んでくれ。今日中に二度ほど」

 

 「閣下、私は——」

 

 「グリーンヒル中尉にも休めと言った。参謀長にも同じことを言う。長期戦は、休みながら戦うものだ。私自身も、艦長室で短く横になる時間を取る」

 

 ムライは、わずかに躊躇った後、頷いた。

 

 「では、午後二時から二時間ほど」

 

 「結構」

 

 ムライは観測図に視線を戻した。

 

 ヤンは、グリーンヒル中尉に視線を向けた。彼女は艦橋の隅で、補給と兵站の最新報告書に目を通していた。視線に気づき、報告書から顔を上げる。

 

 「閣下」

 

 「グリーンヒル中尉、君も休んでいい」

 

 「閣下が休まれてからにします」

 

 「私は、艦橋にいる必要がある」

 

 「副官も、艦橋にいる必要があります」

 

 ヤンは、わずかに笑った。

 

 「君は、副官として優秀すぎる」

 

 「ありがとうございます」

 

 グリーンヒル中尉は、報告書に視線を戻した。ヤンも観測図に視線を戻した。

 

 艦橋では、司令官と参謀長と副官が、それぞれ別の方向を向いて、それぞれの仕事を続けていた。決戦を回避するという艦隊の意思は、そうした小さな判断の積み重ねの中で、毎時間、形を取り続けていた。

 

---

 

百七

 

 同日。同時刻。

 

 イゼルローン回廊、帝国側中間地帯。旗艦《トリスタン》の艦橋。

 

 オスカー・フォン・ロイエンタール中将は、観測図の前で腕を組んでいた。

 

 異色の双眸——左が黒、右が青の——が、観測図の中の青い印を見ていた。同盟軍第一三艦隊本隊、四千五百隻。こちらから八十光秒。動きはない。

 

 ベルクマン少佐が、観測情報の最新版を読み上げていた。

 

 「同盟軍本隊、現在位置に留まっています。速度はゼロ。陣形は、反転後の散開隊形のまま。哨戒艇の活動は通常水準です」

 

 「変わらず、か」

 

 ロイエンタールは低く言った。

 

 「変わらず、です」

 

 ベルクマンはデータパッドの画面を繰った。

 

 「駐留艦隊主力からの定期報告も、特に変わりはありません。ゼークト大将閣下は、要塞周辺の哨戒線復元に集中しておられるとのことです」

 

 「駐留艦隊との通信状況は」

 

 「依然として不安定です。三〜四割の通信は通っていますが、定期報告以外の細かいやり取りには時間がかかっています。電子戦による妨害である可能性が高いと、通信士官は判断しています」

 

 「妨害、か」

 

 ロイエンタールは観測図に視線を戻した。

 

 妨害は、同盟軍が仕掛けている。それは疑いようがない。問題は、その目的だった。

 

 前日の午後、同盟軍本隊が反転した時、ロイエンタールはその動きを「駐留艦隊の誘出」と読んだ。誘出は成功した。駐留艦隊主力一万隻は、半日にわたって要塞から離れた。

 

 だが、その後に本隊が打った手は、見えなかった。

 

 本隊四千五百隻は、要塞を直接攻撃するには少ない。トゥールハンマーの射程へ踏み込むなら、もっと厚い兵力が要る。にもかかわらず、ヤン・ウェンリー少将は、駐留艦隊を引き出すために、かなり精密な機動を組んだ。

 

 誘出だけで満足する指揮官なら、あの精密さは過剰だった。

 

 ロイエンタールは、観測図の青い印を、指先で軽く叩いた。

 

 四千五百隻で、何ができるのか。

 

 誘出後の手が見えないなら、その手は見えない場所に置かれている。少なくとも、艦隊戦の延長線上にはない。

 

---

 

 「閣下、何か気になることが」

 

 ベルクマンが、横から低い声で言った。

 

 「気になることは、ある」

 

 ロイエンタールは短く答えた。

 

 「だが、まだ言葉にするには早い」

 

 「お聞かせいただいても、よろしいでしょうか」

 

 ロイエンタールは、ベルクマンの方を見た。

 

 「同盟軍本隊が、誘出だけのためにあれだけの動きを組んだとは思えない」

 

 「と、おっしゃいますと」

 

 「誘出は成功した。だが、本隊は決定的な攻撃を加えていない。打てなかったのではなく、打たなかった。打たなかったのは、別の手が走っているからだ」

 

 「別の手——」

 

 「その輪郭が、まだ見えない」

 

 ロイエンタールは観測図に視線を戻した。

 

 艦隊戦の中で打つ手なら、観測できる位置で動く。観測できない位置で動く手は、艦隊戦の外側にある。例えば——

 

 ロイエンタールは、その先を言葉にしなかった。

 

---

 

 ロイエンタールは、艦橋を一度離れた。

 

 《トリスタン》の艦橋から出ると、長い回廊が伸びていた。照明は、艦の標準より一段低く設定されている。指揮官の艦長室と艦橋を繋ぐ区画では、夜間モードが長く維持されていた。

 

 歩きながら、彼は艦橋では言葉にしなかったものを、頭の中で並べ直した。

 

 誘出は成功した。

 

 誘出後、こちらの観測範囲で決定的なことは起きていない。

 

 ならば、観測できない範囲で何かが進んでいる。

 

 要塞内部。

 

 ロイエンタールは、回廊の途中で一度だけ立ち止まった。壁には、《トリスタン》の艦番号と、所属艦の連隊章が並んで掲げられていた。特命艦隊として編成されても、各艦には元の所属の印が残っている。

 

 彼は、その連隊章を一度だけ見た。

 

 要塞内部の防諜は、要塞司令官の仕事であって、ロイエンタールの仕事ではない。だが、敵将がこちらの職掌の境界線を利用しているとしたら、その境界線はもはや単なる事務上の線ではない。

 

 敵将は、こちらの組織が引いた線を、こちらが対応しにくい場所として使う。

 

 それが戦争の指揮官として優れているということの一つの形だった。

 

 ロイエンタールは、回廊の終わりで、もう一度立ち止まった。艦橋に戻る扉の前に立ち、しばらく扉を見ていた。

 

 扉を開けた。艦橋の照明は、回廊より一段明るかった。

 

 観測図の中の青い印は、依然として動いていなかった。

 

---

 

百八

 

 同日午後一時。

 

 イゼルローン要塞、第三ドック。鹵獲帝国軍駆逐艦エッシェンバッハ、艦長室。

 

 ワルター・フォン・シェーンコップ大佐は、艦長室の机の前に座っていた。机の向かい側には、カール・シュナイダー中佐がいた。

 

 二人の間には、要塞内部の見取り図と、いくつかの技術仕様書が広げられていた。仕様書は、シュナイダーが「艦の反重力制御系統の検査記録」として持ち込んだもので、表紙にはその通りの題名が書かれていた。中身は別物だった。

 

 「時間は、どれくらい使えますか」

 

 シェーンコップは低い声で訊いた。

 

 シュナイダーは、データパッドの画面を一度繰った。

 

 「四十五分です。それ以上は、技術評価の所要時間として不自然になります。要塞側の検査記録のテンプレートを基準にすると、駆逐艦の反重力制御系統の検査は、最大でも一時間以内に完了するのが標準です」

 

 「四十五分なら、必要なことは話せます」

 

 シェーンコップは頷いた。

 

 「移動経路、エネルギー供給系中継点までの導線、発射口集束装置までの導線、撤収経路。この四つを確認します」

 

 「結構です」

 

 シュナイダーは、見取り図の上に指を置いた。

 

 「まず、移動経路です。エッシェンバッハから要塞内部の保守通路に入る経路は、第三ドック北側の搬入口を経由します。搬入口は、駐留艦隊の出撃以来、警戒水準が一段上がっています。定期便以外の出入りは止められています。ただし、艦の整備作業員の出入りは認められています」

 

 「我々は整備作業員になるわけですな」

 

 「はい。整備作業員の制服は、艦内の予備倉庫に二十四名分置いてあります。階級章はありません。名札も用意しましたが、搬入口での確認には使われないので、念のためです」

 

 「確認はIDカードですか」

 

 「はい。今のハインリッヒ・ブランデル少佐のIDではなく、整備作業員用のIDが必要です。これも、二十四枚あります」

 

 「二十四枚」

 

 シェーンコップは、その数字を口にした。

 

 正門を抜けるための身分と、要塞内部を移動するための身分は違う。戦闘で損傷した駆逐艦の乗員から、艦の整備作業員へ。偽装は、要塞の内側へ進むにつれて形を変える。

 

 「マルタン大佐から、何ヶ月も前に手配がありました」

 

 シュナイダーは短く言った。

 

 「整備作業員のIDは、要塞内部の人事データベースに登録されています。私が反重力制御部門の主任という立場で、自分の部門の作業員として、二十四名分を少しずつ追加しました。一度に登録すれば目立ちます。二ヶ月かけました」

 

 「実在の作業員として」

 

 「データベース上は、そうです。実在はしません」

 

 シェーンコップは、シュナイダーの顔を見た。

 

 四十八歳の技術中佐は、検査記録を読み上げるのと同じ調子で、それを言った。表情に動きはない。声に強調もない。三年間、この男は要塞の内部で、こうした作業を一つずつ積み上げてきた。一度も顔色を変えずに。

 

 シェーンコップは、短く頷いた。

 

---

 

 シュナイダーは、見取り図の上で指を動かし、エネルギー供給系中継点の位置を示した。

 

 「第二の項目です。エネルギー供給系中継点。場所は、要塞中央部の地下三階、技術区画の奥です。私の部門の管轄下にある区画で、私が単独で立ち入ることは可能です。ただし、二十四名の作業員を伴えば、警備員に止められる可能性があります」

 

 「では、あなたが中継点に向かう」

 

 「はい。中継点は私が破壊します。あなた方は、発射口周辺の構造物を破壊してください。二つの場所は離れています。同時に動くことで、警備の対応が分散されます」

 

 「時刻は」

 

 「明日午前二時四十分。深夜の警備交代時刻の直前、最も警備が薄くなる瞬間です」

 

 シュナイダーは、そこで一度言葉を切った。机の上の紅茶のカップを取り、一口だけ飲んだ。シェーンコップが艦長室の常備品から用意したものだった。

 

 「了解しました」

 

 シェーンコップは、発射口区画を指で示した。

 

 「発射口周辺の構造物の破壊は、二十四名で実行できますか」

 

 「できます。私が用意した爆薬を二箇所で同時に作動させれば、発射口集束装置の主軸を歪めるには十分です。主軸が歪めば、トゥールハンマーは発射できません。仮復旧だけでも数週間、完全な再調整にはさらに時間がかかります」

 

 シェーンコップは、その言い方を頭の中で確認した。

 

 使えなくなる。だが、帝国は回復できると考える。ヤン・ウェンリー少将が求めた程度の無力化は、その間にある。

 

---

 

 シュナイダーは、撤収経路の説明に移った。

 

 「撤収経路は、保守通路を経由してエッシェンバッハに戻ります。爆破後、要塞は警戒態勢に入ります。ただし警戒の重心は、侵入者の捜索よりも、まず主砲の状態確認に向かうはずです」

 

 「はず、ですか」

 

 「はい。私が三年間観察してきた限りでは、シュトックハウゼン大将閣下は、要塞の構造的な損傷を人的な問題より優先する傾向があります。断定はできません。ただ、そう判断する可能性が高い」

 

 シェーンコップは、頷いた。

 

 「撤収後、エッシェンバッハは要塞から強行離脱します。退去許可を求める時間はありません」

 

 「強行、ですか」

 

 「はい。本来であれば、入港した艦が要塞を出るには、要塞司令部の許可と第三ドックの開放手続きが必要です。通常の手続きを踏めば、二時間以上かかります。しかし爆破後の二時間で、状況は変わります」

 

 「所属照会ですか」

 

 「はい。ゼークト大将閣下の駐留艦隊主力は、すでに要塞近傍に戻っています。第七分艦隊への艦籍照会が行われれば、エッシェンバッハという駆逐艦が所属していなかったことは、数時間で発覚します」

 

 「ロイエンタール中将も、同じ照会を行っているかもしれない」

 

 「可能性はあります。あの方は、独立した通信経路を持っておられます。いずれにせよ、爆破後は、確認が間に合うかどうかの勝負になります」

 

 シュナイダーは、見取り図の第三ドックを指した。

 

 「第三ドックは、爆破の瞬間に、要塞全体の警報と連動します。その混乱の二、三分の間に、通常の許可手続きを経ずに出航してください」

 

 「ハッチは」

 

 「私が、内側から手動制御モードに切り替える細工を済ませておきます。エッシェンバッハ艦内から、事前に渡す操作コードで開けられます」

 

 「あなた自身は、第三ドックには行かないのですか」

 

 「私は中継点に向かいます。第三ドックの細工は、爆破前に済ませます」

 

 シェーンコップは頷いた。

 

 シュナイダーが要塞に残ることと、エッシェンバッハの脱出経路を用意することは、同じ判断の二つの面だった。この男は、自分が逃げるためではなく、こちらを逃がすためにドックを開ける。

 

 「強行離脱中の交戦の可能性は」

 

 「あります。主砲ではない近距離防衛火器は、爆破後も機能している可能性が高いです。第三ドックを出た直後の数分間が、最も危険です。要塞から一定距離を取れば、防衛火器の射程外に出ます」

 

 「被害次第では、要塞外で立ち往生する可能性も」

 

 「否定できません。私が用意できるのは、混乱の二、三分間と、第三ドックのハッチの手動制御だけです。それ以降は、艦の機関の出力と、運に依存します」

 

 シュナイダーは、それだけ言うと、視線を見取り図に戻した。

 

 シェーンコップも、見取り図に視線を戻した。楽観的な脱出路ではない。爆破の瞬間の混乱を使った強行突破だった。そして、その突破を成立させる内側からの細工を、シュナイダーが負担する。

 

 「退去後、《エクリプス》——同盟軍側の運用名に戻ります——は、第一三艦隊本隊と合流します」

 

 「合流地点は」

 

 「ヤン・ウェンリー少将閣下が、別働隊と本隊の中間に設定する想定です。具体的な座標は、退去後に指示が来るはずです。あの方は、おそらくそういう方だ」

 

 シェーンコップは、頷いた。

 

---

 

 時計を見た。四十五分のうち、三十二分が経過していた。

 

 「最後に、一つだけ訊かせてください」

 

 シェーンコップは、声を一段低くした。

 

 「あなたの撤収は」

 

 シュナイダーは、データパッドから視線を上げた。

 

 「私は、要塞に残ります」

 

 「残る、ですか」

 

 「私が中継点を破壊した後、要塞内部の調査が始まります。技術部門の中佐として、私はその調査に参加することになります。調査の中で、私自身が容疑者として浮上する可能性がありますが、その場合は別の対応を取ります」

 

 「別の対応——」

 

 「私のことは、私が判断します。あなた方の作戦には、影響しません」

 

 シェーンコップは、シュナイダーの顔を見た。

 

 四十八歳の男の顔は、検査記録を読み上げている時と同じだった。声に揺れはない。視線にも、揺れはなかった。

 

 「あなたには、家族はおられますか」

 

 シェーンコップは、訊いた。

 

 訊いた瞬間、彼自身が、その問いの不適切さに気づいた。情報分配の構造上、シェーンコップはシュナイダーの個人的な情報を知らされていない。訊くべきではない問いだった。

 

 しかし、シュナイダーは答えた。

 

 「妻が一人」

 

 「お子さんは」

 

 「いません」

 

 「奥様は」

 

 「オーディン近郊の小さな町に住んでいます。私が単身で要塞勤務に来ているので、妻はそちらに残ったままです。年に一度か二度しか、顔を合わせていません」

 

 シェーンコップは、自分が訊いた問いの重さを感じた。オーディン近郊の小さな町。そこでは今も、要塞の中でこれから起きることとは無関係に、日常が続いているはずだった。

 

 「失礼しました」

 

 シェーンコップは、短く言った。

 

 「いえ」

 

 シュナイダーは首を振った。

 

 「あなたが訊いてくださったことは、私にとっては、悪いことではありません」

 

 シェーンコップは、それ以上は訊かなかった。訊かないことが、礼儀の一部だった。

 

 代わりに、机の上の見取り図を一度だけ正面から見た。

 

 見取り図の角には、シュナイダーが鉛筆で書き加えた記号がいくつかあった。整備作業員の動線、警備の交代時刻、配電盤の位置。記号は、整然と並んでいた。

 

 シェーンコップは、その記号の上を指で軽くなぞった。止めた指の先には、明日午前二時四十分という時刻が、シュナイダーの字で書かれていた。

 

 「明日午前二時四十分」

 

 「明日午前二時四十分」

 

 二人は、同じ時刻を口にした。

 

---

 

 四十五分が経過した。

 

 シュナイダーは、データパッドと検査記録を片付け、立ち上がった。シェーンコップも、机の前に立った。

 

 「カール・シュナイダー中佐」

 

 シェーンコップは、相手の名前を口にした。

 

 「はい」

 

 「ありがとうございます」

 

 シュナイダーは、わずかに首を傾けた。

 

 「私の役割です」

 

 軽く敬礼を交わした。シュナイダーは艦長室を出た。扉が閉まる音は、静かだった。

 

 シェーンコップは、机の前に一人残った。

 

 艦長室には、技術評価のための仕様書と、紅茶のカップだけが残っていた。シュナイダーが座っていた椅子を見たが、手を当てて確認する気にはならなかった。確認することが、敬意ではないように思えた。

 

 明日午前二時四十分まで、約十三時間。

 

 十三時間後に、二十四名で発射口区画に向かう。十三時間後に、シュナイダーは中継点で爆薬を作動させる。その後、シュナイダーは要塞に残る。

 

 残る、ということの意味を、シェーンコップは考えた。考えても、答えは出なかった。

 

 答えが出ないというよりは——出すべきではない、と、シェーンコップは思った。シュナイダーは「私が判断します」と言った。その判断の領域に、シェーンコップが踏み込む権利はなかった。

 

 シェーンコップは、艦長室の窓の外を見た。要塞内部の人工照明は、昼モードに入っている。明るく、平静で、誰も明日午前二時四十分のことを知らない光だった。

 

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百九

 

 同日午後三時。

 

 イゼルローン回廊、帝国側中間地帯。旗艦《トリスタン》の艦長室。

 

 ロイエンタールは、艦橋を一度離れ、艦長室に戻っていた。机の上には、紅茶のカップと、観測情報の最新版が並んでいた。

 

 舷窓は、宇宙の暗さに向けて開いていた。八十光秒先の同盟軍本隊は、肉眼で確認できる距離ではなかったが、ロイエンタールの中では、そこに艦隊がいるという事実は、視覚以上の精度で認識されていた。

 

 ロイエンタールは、紅茶を一口飲んだ。

 

 艦長室の机には、ロイエンタールが個人的に持ち込んだ書物が二冊、無造作に積まれていた。一冊は古代地球時代の戦略家クラウゼヴィッツの『戦争論』の古い版、もう一冊は十九世紀の詩集だった。その上には、帝国軍の制帽が置かれている。制帽は、長い航海の間、ほとんど被られることがなかった。

 

 午前中の艦橋でベルクマン少佐に「まだ言葉にするには早い」と言ったが、艦長室で一人になった今、ロイエンタールは、その言葉の先にあるものを考えていた。

 

 もし、艦隊戦の延長線上にない手が走っているなら、その手は要塞内部に向かっている。

 

 要塞内部に向かう手は、艦隊からは届かない。届かない手を打つには、要塞内部に既にいる人間の協力が要る。

 

 要塞内部に既にいる人間。

 

 ロイエンタールは、紅茶のカップを置いた。

 

 その可能性を示す観測事実は、何もなかった。しかし、目の前の状況——通信妨害、誘出、誘出後に見えない手——が、要塞内部という領域を、ロイエンタールの読みの中に引き寄せていた。

 

 もし、協力者がいるのなら。

 

 もし、協力者を介して、要塞内部で何かが進んでいるのなら。

 

 その「もし」は、まだ仮定でしかなかった。仮定を、命令にしてはならない。ロイエンタールは、そう自分に言い聞かせた。

 

---

 

 艦長室の扉がノックされた。

 

 「入れ」

 

 ベルクマン少佐が入室した。手にはデータパッドがあった。

 

 「閣下、要塞司令部からの定期報告です。通信状態が改善し、まとまった内容が届きました」

 

 「読み上げてくれ」

 

 「はい。要塞司令部、シュトックハウゼン大将閣下より。要塞周辺の哨戒線は復元中。駐留艦隊主力は、本日午前七時頃に要塞近傍に帰投済み。要塞内部の警戒水準は、駐留艦隊出撃時に上げた水準を維持。特記事項として、本日未明、戦闘で損傷した帝国軍駆逐艦エッシェンバッハが要塞に退避入港。乗員二十四名、艦長代理ハインリッヒ・ブランデル少佐。所属は駐留艦隊第七分艦隊。被害状況の確認後、艦内待機中。以上です」

 

 ロイエンタールは、しばらく黙っていた。

 

 「もう一度、読んでくれ」

 

 ベルクマンは、同じ箇所を繰り返した。

 

 「本日未明、戦闘で損傷した帝国軍駆逐艦エッシェンバッハが要塞に退避入港。乗員二十四名、艦長代理ハインリッヒ・ブランデル少佐。所属は駐留艦隊第七分艦隊」

 

 「駐留艦隊第七分艦隊、か」

 

 ロイエンタールは、その所属を口の中で繰り返した。

 

 出撃中、第七分艦隊の駆逐艦が同盟軍別働隊との接触で被害を受けたという報告は、ロイエンタール艦隊側の観測情報の中にはなかった。

 

 なかった、ということ自体は、決定的ではない。通信妨害下では報告が抜けることもある。だが、気になるには十分だった。

 

 ロイエンタールは、データパッドを受け取り、報告の文面を自分の目で確認した。

 

 「ベルクマン」

 

 「はい」

 

 「駐留艦隊第七分艦隊の出撃時の艦艇リスト、駆逐艦の艦名一覧を取り寄せてくれ。可能なら、第七分艦隊の指揮官にも、エッシェンバッハという艦名の駆逐艦が所属していたか確認する」

 

 「直接の確認は、現在の通信状況では困難です」

 

 「ゼークト大将閣下を経由するのは避けたい。直接、第七分艦隊の指揮官に問い合わせる経路はあるか」

 

 「あります。ただし、応答に半日以上かかる可能性があります」

 

 「構わない。問い合わせを出してくれ」

 

 ベルクマンは、敬礼して退室した。

 

---

 

 扉が閉まった後、ロイエンタールは、データパッドの報告をもう一度読み直した。

 

 戦闘で損傷した帝国軍駆逐艦エッシェンバッハ。乗員二十四名。艦長代理ハインリッヒ・ブランデル少佐。所属は駐留艦隊第七分艦隊。

 

 駆逐艦の標準乗員定数は、百名を超える。二十四名という数字は少ない。救命ポッド脱出、艦長戦死、通信不良——説明はいくつも作れる。要塞司令部は、そのうちの一つを妥当と判断したのだろう。説明の中身は、ロイエンタールの手元には届いていない。届く必要もない、と要塞司令部は判断したはずだった。

 

 その判断自体は、規程に照らせば適正だった。

 

 しかし、駆逐艦一隻が、戦闘で損傷しながら、なぜ単独で要塞まで戻ってきたのか。第七分艦隊の他の艦艇は、どこで何をしていたのか。被害を受けた艦を、なぜ分艦隊は支援しなかったのか。

 

 通信妨害の影響だとしても、視覚的に味方艦の被害は確認できたはずだった。

 

 ロイエンタールは、紅茶のカップを取り直し、一口飲んだ。冷めていた。

 

 誘出。誘出後に見えない手。通信妨害。要塞に単独で到達した負傷駆逐艦。乗員二十四名。

 

 それらは、まだ一つの作戦だと断定できるものではなかった。だが、別々の偶然として片づけるには、少しずつ近づきすぎている。

 

 もし、同じ一つの作戦の異なる側面だとすれば——

 

 ロイエンタールは、その先の言葉を口にしかけた。

 

 「ヤン——」

 

 声に出す寸前で、止まった。

 

 「ヤン」という二音節の音が、口の中で形を成しかけて、最後まで出なかった。

 

 ロイエンタールは、自分が今、何を口にしかけたかを自覚した。

 

 まだ、早い。

 

 エッシェンバッハの所属確認は、まだ済んでいない。違和感の繋がりは、推論であって、事実ではない。

 

 ロイエンタールは口を閉じた。

 

 口を閉じた後も、その二音節は、しばらく残っていた。

 

 机上の経歴と、目の前で誘出を組んだ指揮官。その二つの輪郭が、ほとんど重なっていた。重なった瞬間に、自分はあの指揮官を、報告書の名前ではなく、目の前にいる一人の敵として認識し直すことになる。

 

 ロイエンタールは、心の中で、階級を付け直した。

 

 ヤン・ウェンリー少将。

 

 まだ、早い。

 

 ベルクマン少佐の問い合わせの結果が、半日後に届く。それまでは、この違和感を、違和感のまま置いておく。

 

 ロイエンタールは、紅茶のカップを置き直した。冷めた紅茶は、新しいものに替える価値もなかった。

 

 舷窓の外には、宇宙の暗さが広がっていた。八十光秒先の同盟軍本隊は肉眼では見えない。しかしロイエンタールの中では、そこにいる指揮官の輪郭が、机上の経歴と、ほぼ同じ位置に来ていた。

 

 ほぼ。

 

 その一語が、まだ、最後に残っていた。

 

---

 

百十

 

 同日午後六時。

 

 フェザーン、自治領主府、ルビンスキー執務室。

 

 アドリアン・ルビンスキーは、机の上の通信記録を読んでいた。

 

 通信記録は、フェザーン情報網の様々な情報源から集まったものだった。同盟軍と帝国軍の動きに関する断片、商船の航路情報、両陣営の政治家の発言——どれも、ルビンスキーの机の上では一つの絵を構成する素材だった。

 

 ボルテックが、執務室の入り口に立っていた。

 

 「閣下、イゼルローン方面の最新情報です」

 

 「読み上げろ」

 

 「ヤン・ウェンリー少将率いる第一三艦隊本隊と、ロイエンタール中将率いる帝国軍特命艦隊が、イゼルローン回廊中間地帯で対峙を続けています。両軍とも決戦を仕掛けず、距離を保ったまま、二日目に入りました」

 

 「決戦を仕掛けない、か」

 

 ルビンスキーは、わずかに笑った。

 

 「両者ともに合理的だな」

 

 「さらに、要塞司令部側の断片情報として、帝国軍駆逐艦エッシェンバッハが本日未明に要塞へ退避入港した、との記録があります」

 

 「エッシェンバッハ」

 

 ルビンスキーは、その艦名を口の中で転がした。

 

 「その艦名を、照合しろ」

 

 ボルテックは端末に向かった。数分後、戻ってきた。

 

 「現在の帝国軍艦籍にはありません。約六年前、フェザーン方面の辺境宙域で、帝国軍駆逐艦エッシェンバッハが消息を絶っています。当時、同盟軍に拿捕された可能性が高いと、帝国軍内部で結論されていました」

 

 「拿捕された艦が、要塞に戻ったわけか」

 

 ルビンスキーは椅子の背にもたれた。

 

 「面白い」

 

 ボルテックは、わずかに眉を動かした。

 

 「帝国軍に通報なさいますか」

 

 「しない」

 

 ルビンスキーは即答した。

 

 「帝国軍に伝えれば、ヤン・ウェンリーの作戦が崩れる。崩れれば、何も起きない。何も起きなければ、均衡は今のままだ。今のままでは、フェザーンにとって面白くない」

 

 「同盟側にも、伝えませんか」

 

 「伝えない。こちらが知っていることを、あちらも知っているとは限らない。知っていない方が、判断はよく見える」

 

 ルビンスキーは、机の上の通信記録を指先で軽く叩いた。

 

 「ヤン・ウェンリーが何を狙っているのか、正確には分からない。だが、要塞を落とすつもりでないことは、だいたい見える。落とすなら、もっと大きく動く。彼は程度を測っている。帝国を怒らせすぎず、同盟には成果として示せる程度をな」

 

 「閣下は、ヤン・ウェンリー少将を信頼しておられる」

 

 「信頼ではない。観察だ」

 

 ルビンスキーは、薄い葉巻を取り出した。火はつけなかった。

 

 「観察の対象が、観察に値する動きをしている。それだけだ」

 

 ボルテックは一礼して、執務室を出ていった。

 

 ルビンスキーは、一人になった執務室で、通信記録をもう一度見た。

 

 ヤン・ウェンリー。ロイエンタール。エッシェンバッハ。二日目の対峙。

 

 どの情報も、今日のところは内部に留める。明日になって、状況が動いたら、その時点で改めて判断する。

 

 窓の外では、フェザーンの夜が、いつもと同じ密度で広がっていた。

 

---

 

百十一

 

 同日深夜。

 

 イゼルローン回廊、同盟側中間地帯。旗艦《ヒューベリオン》の艦長室。

 

 ヤンは、艦長室の机の前で、紅茶のカップを手に持っていた。机の上には、戦術図と、観測情報の最新版があった。

 

 観測情報には、ロイエンタール艦隊が依然として動いていない、という事実が記されていた。距離は八十光秒のまま。陣形にも変化はない。両軍は、決戦を回避し続けていた。

 

 あと数時間で、シェーンコップ大佐とシュナイダー中佐が、それぞれの作業に入る。

 

 具体的な時刻は、ヤンには伝えられていない。情報の分配構造により、ヤンが知っているのは「作戦本体は明日のいずれかの時刻に実行される」という範囲までだった。分単位の同期は、シェーンコップとシュナイダーの間でのみ共有されている。

 

 知らないことが、ヤンの仕事だった。

 

 扉がノックされた。グリーンヒル中尉だった。手には、紅茶のポットがあった。

 

 「閣下、新しいものをお持ちしました」

 

 「ありがとう」

 

 ヤンは、カップを差し出した。グリーンヒル中尉は、ポットから新しい紅茶を注ぎ、空のカップを下げた。

 

 「グリーンヒル中尉、休んだか」

 

 「四時間ほど」

 

 「足りないね」

 

 「閣下も、お休みになっていません」

 

 「私は、艦長室で少し横になる。あと数時間後に、艦橋に戻る」

 

 グリーンヒル中尉は頷いた。

 

 彼女もまた、具体的な時刻は知らされていない。しかし、「あと数時間後」という言い方が、何かの瞬間を指していることは、副官として理解していた。

 

 それ以上は訊かなかった。訊かないことが、副官の役割の一部だった。

 

 扉が閉まった後、ヤンは紅茶のカップを机に置いた。

 

 戦術図を見た。ロイエンタール艦隊の位置、本隊の位置、別働隊の位置、要塞の位置。どれも、ヤンの手元から離れた場所で、それぞれの動きを続けていた。

 

 ヤンに決められるのは、艦隊本隊の動きだけだった。本隊は、ロイエンタール艦隊と対峙し続け、決戦を回避し続ける。それが、今の仕事だった。

 

 ヤンは椅子の背にもたれた。

 

 決戦を回避する、という仕事は、艦隊司令官として、決して簡単な仕事ではなかった。ロイエンタール艦隊は、こちらより数で優っている。決戦に持ち込めば、こちらが負ける可能性が高い。だからこちらは決戦を仕掛けない——それは戦術判断として正しい。

 

 問題は、相手がいつまで仕掛けてこないかだった。

 

 ロイエンタール艦隊の指揮官は、今のところ決戦を仕掛けてこない。半個艦隊同士の決戦に合理性を見出していないのだろう。そしておそらく、こちらの動きの全体像をまだ完全には掴んでいない。

 

 ただし、相手が全体像を掴むのは、時間の問題だった。

 

 ヤンは、戦術図の上で、ロイエンタール艦隊の位置を指で軽く叩いた。

 

 あの指揮官は、観察力に優れている。アスターテに参加していなかった以上、机上の自分の経歴と、目の前で対峙している自分との間で、相手は今、判断を組み立てている最中のはずだった。判断が組み上がった瞬間に、相手は次の手を選ぶ。

 

 こちらの作戦が完了する前に、相手の判断が間に合うかどうか。

 

 それが今の勝負だった。

 

 ヤンは、戦術図から視線を外した。

 

 机の引き出しを開けた。

 

 引き出しの中には、ハイネセンを発つ前にキャゼルヌ先輩から受け取った、菓子の紙袋が入っていた。途中で食べる機会はなかった。

 

 ヤンは紙袋を手に取った。中身はクッキーだった。キャゼルヌ夫人が焼いたものだった。

 

 クッキーを一枚取り出し、口に入れた。

 

 甘さが、紅茶の渋みと混ざった。

 

 明日の朝には、何かが終わっているか、何かが始まっているか、どちらかだった。どちらが起きたとしても、この艦長室には、戻ってきた紅茶のカップと、半分残ったクッキーの紙袋があるはずだった。

 

 半分残ったクッキーの紙袋を、ハイネセンに戻った時、キャゼルヌ先輩に見せられるかどうか——ヤンは、その先のことを、ふと考えた。考えて、そこで止めた。

 

 戻ってからのことは、戻ってから考える。

 

 今は、戻るための作戦が、ヤンの手元から離れた場所で動いている。

 

 ヤンは、紙袋を引き出しに戻した。引き出しを閉じる前に、一度だけ手を止めた。

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