【三章開始】いずれ神成る恋物語-天使と悪魔とラブコメ生活- 作:ビスマルク
ここからこの章のラストスパートに入ります。
次の章はラブコメ章です。
この章あと10話で終われるか……?
エルが立ち直る10分ほど前、テレビ局は報道ヘリを飛ばしていた。ヘリの目的地はこの人工島に存在する電波塔だ。東京スカイツリーと同じくらいの高さを誇るこの島の象徴。そこにテロを起こすと30分ほど前にテレビ局に連絡があったのだ。当然警察にも連絡が行き、何台ものパトカーが押し寄せることになっている。
「本当にテロなんて起こるんですかね……」
「分からないわ。でもあの連続火災事件、アレを引き起こしたのは自分達だって言ってきたのよ。それも報道してないはずの情報まで合わせてね」
「信憑性は高い、ってことですか」
報道ヘリの中でニュースキャスターとカメラマンがそんなことを話している。半信半疑ではあるが怪しいのは確かな上に警察から止められていた情報も知っていたとなるとただのイタズラだとは思えない。警察関係者や報道関係者によるイタズラの可能性も捨てきれないがこんな事をしでかすような暇は両者ともにないはず。ニュースキャスターはそう思いながらここ数日の出来事を思い出し陰鬱に溜息を吐く。
(日本の連続不審火、それに伴う被害者達の無気力状態。何か特殊な薬を散布されたって正式発表されていたけど被害者達と病院関係者の話だとそんなものを吸い込んでる様子はないって話なのよね……。それに日本だけじゃなくて海外でも色々と事件が起こっててその関係も調べられてるし。まぁでも、
警察からの正式発表に対し疑問を抱きつつもそれに対する答えを持たない彼女は番組の肝になるであろう事件が起きるか、警察が止めるその瞬間を待つ。違和感はあれどすぐにそれを脳の外に押しやる。知っている者がいればそれが天使達による認識阻害の影響だと分かっただろう。
「さて、そろそろ予定時間だけど――――」
緊急特番として動画サイトにも生放送で流すことになっている為何が起きても見逃さないようにカメラを回そうとしたその瞬間、この新興都市
「皆さんご覧ください!!警察がこの上鳴タワーに突入しています!!今夜ここでテロを起こすという予告がありました。事前に警察による調査によりここには爆弾等は設置されていないことが確認されています。この状況で犯行グループはなんらかの声明を出すと考えられてますが」
「お、おいあれなんだ?」
ニュースキャスターが簡潔にここで起こっていることを説明している最中でカメラマンが焦った顔で疑問を吐き出す。自分が見ている物を信じられないと言わんばかりに目を見開いて、それでも視線はタワーの頂上付近、通常人が出入りできない場所に向けられている。
キャスターもまたその視線の先を見て驚く。遠くでよく見えてはいないが確かに人影が存在する。それも幼いと言っていいほどの少女の姿が。
「あ、あそこに誰かいます!!!カメラ、早くあっちを撮りなさい!!!」
「は、はい!!」
その異常な光景にカメラが向けられる。ズーム機能で捉えられたのは青い髪にフリルの多い白いドレスを着ている少女の姿。まるで恐怖を感じないようにタワーの淵に腰かけ何の足場もない場所で足をぶらぶら揺らしている。まるで公園のベンチで過ごしている日常のようなその様子は場所が場所故に歪に映る。
「ご、ご覧ください皆さん!!あそこに一人の少女がいます!!13……いえ10歳ほどの少女です!!彼女があの連続不審火事件を引き起こしたテログループ人間なのでしょうか!?警察による取り押さえ後の様子が」
「私を見つけちゃったね♪」
「「「――――――――――――――」」」
届くはずのない少女――――『永死殺総』アネモネの声が何故か報道ヘリにいる全員の耳に届き恐怖によりその身体をこわばらせる。カエルが天敵である蛇に睨まれた時のように、人類には存在しないはずの天敵に見つかったような悪寒が背筋を凍らせた。
ニュースキャスターは手に持っていたマイクを落とし、ヘリの操縦者は一瞬気が遠くなった影響で手放してしまった制御を取り戻そうと必死になる。揺れるヘリの中でカメラマンだけが気付いてしまった。カメラ越しで見ていたその少女が笑みを浮かべていたことを。その口が人間ではありえない程に大きく避けるように弧を描いていたことに。そしてその少女と目が合ったことに。
「ひ、あああぁあああああああああ!!!??!?」
「な、なに!?どうしたの!!?」
ありえないことが幾つも重なりカメラマンが恐慌に陥る。持っていたカメラを落してしまいそうになるのを慌てたニュースキャスターが落ち着かせようとその身体を抑えながら背中をさする。それでも半分狂気に飲まれたカメラマンはカメラを落としそうになり、その頭の右側を弾けさせた。
「……………………え」
飛び散るカメラマンの頭の破片が周囲を赤く染める。当然カメラマンに近づいていたニュースキャスターの顔と服も赤くなった。何が起きたか分からないと強烈な血の臭いに意識を飛ばしそうになるのを更なる恐怖がそれを許さない。
「そのままちゃーんと私を撮るんだよぉ♪頭半分なくてもそれくらい出来るでしょ♪」
「は……?」
声が聞こえてくる。鈴を鳴らしたような綺麗な声が聞こえる。だがそれはありえないはずだとニュースキャスターは思う。ヘリの中にはそんな声を出すような少女はいないはずだし、ヘリは今遥か上空を飛んでいる以上途中で乗ることなど出来やしない。そのはずなのにヘリの窓は外から破壊され強烈な風が入り込んでくる。そしてその風と共に声が聞こえてくる。可憐で、それ以上に恐ろしい声が。それをありえないとニュースキャスターの常識は判断する。
(そう、そうよ……。こ、こんなのは夢で、だってそうじゃないとおかしいじゃない。急に古部君の頭が破裂して、死ぬなんて)
そんな常識を嘲笑うようにカメラマンの死体がゆっくりと動き出してカメラを構え直す。一寸のブレも許されていない為生前以上にしっかりとカメラを持ってヘリのドアを破壊して入り込んでくる少女を映しとる。
「――――ひゃっほー♪『永死殺総』アネモネちゃんだよー♪私の玩具の人間&存在そのものが鬱陶しくてたまらないクソ天使共、見てるー?」
先程まで上鳴タワーの上にいたはずの少女が笑いながら言い放つ。その背中には黒い翼が生えておりアネモネの言葉と連動するように嬉しそうに動いている。作り物とは思えないほどの生命力を感じるそれを見て間違いなく本物だと本能的にキャスターは気付いてしまう。
「テレビも生放送だし動画サイトにも同時にアップされてるよねこれぇ?いやぁ、テレビ局内部の人間がもう既に死体になってるって気付かせないようにするのは面倒だったんだよぉ♪秘密裏に飢えの連中だけぶっ殺して制御下に置くのも大変なんだよ本当。生きてる時と全く同じようにするっていうの大変だし、雑な仕事すると天使共が嗅ぎつけて面倒なことになるし、アドラメレクは手伝いもしないのに色々と言ってくるしさぁ……。でもそんな苦労ももう終わりだね♪」
捲し立てるように不平不満をぶちまけるアネモネは長く(たかが数日)続いた日々を思い出し涙を流したと思えば次の瞬間には笑みを浮かべている。その容姿も合わさってコロコロと変わる表情を愛らしいと思う人間もいるかもしれない。そんな考えを吹き飛ばすほどの不吉さをアネモネは全身から噴き出している。画面越しでさえもその不吉さを見たくないと思わせるほどだ。直に見てしまったニュースキャスターは腰を抜かして失禁してしまう。
「あ、ああ、あああなた、は」
声を震わせながらアネモネに聞いたのはこの職に就いているプライドからか、あるいは聞かなければすぐにでも殺されてしまうと本能的に察してしまったからか。混合して自分の感情も分からなくなりつつニュースキャスターはアネモネに聞いた。待っていましたとばかりに花が開いたような笑顔になったアネモネがカメラに向かって宣言する。
多くの天使達が、天使達に協力していた人間達が長年隠し続けていたその正体を。今の世界をぶっ壊す為の一言を叩きつける。
「私はぁ、この世界の存在じゃないのだ♪こことは別次元にある異世界、そこから来た悪魔!!もちろん私以外にも悪魔はいーーーーっぱい来てるよ♪元の世界の人間共は殆ど虫の息みたいなもんだからさぁ、こっちに来て色々と楽しませてもらってるの♪」
完全なる不意打ち、天使が対処することも出来ず認識阻害が間に合わない程の広範囲にその事実が伝えられる。人間が作り出したネットワークを伝わり一気に世界中の何も知らない人々にそれが知らされる。それを嘘だと思える者はいない。画面越しであっても本能が拒否する『永死殺総』の在り方そのものが真実だと教えてくる。
「も・ち・ろ・ん、私達を止めようとする連中はいるよぉ?天使って連中がさぁ元気いっぱいに私達に襲い掛かってくるの。しかもさぁ、そいつら人間の上層部とも情報共有して追い詰めてくるしさぁ本当勘弁してほしいよねぇ……。私も何度邪魔された事か分からないよ、とほほほ……」
わざとらしく涙を拭くように目元を拭う。人間は唐突に知らされた天使の存在に希望を持たされる。アネモネの思うがままに。希望が絶望に変わるその瞬間に発生する“負の感情”を取り込むために。
「うわっ!?な、なんだ!?」
「な、なに!?今度は何なの!!?」
ヘリの操縦者の焦った声と共にヘリが揺れる。腰が抜けて動けないニュースキャスターは揺れるヘリの中で必死にしがみつきながら何が起こったのかを聞いた。だけどその疑問に答える程の余裕は操縦者にない。目の前に白い翼を広げた人影が何人もいるのだから。その翼は本来ならば真っ白だったのだろう。だが自分の血で汚してしまった為か赤黒い色にところどころ変色してしまい、その目もまた虚ろだった。
「だから今までぶっ殺しまくってきたんだけどね♪」
その天使ゾンビの多くが下級から中級で構成されていた。しかし情報を制限して伝えられてきた事実により天使が殺されゾンビにされて悪魔に操られているということにのみ人々の意識が集中してしまう。天使という抑止力の存在に希望を持った人々は唐突にそれを奪われて再び唖然とする。
「私達を、どうするつもりなの……?」
「えっ?そりゃぶっ殺して私のコレクションに加えるけど?ああ、安心して♪貴女は綺麗だし死体も綺麗に残るように殺してあげるから♪ちゃーんと原形が残るみたいにね♪アイツらみたいにはしないからさ♪」
「あ、あいつら……?」
「見てみれば分かるよ♪ほら見せてあげなよ♪」
「えっ!?きゃっ、や、やめて!!落ちる!!!」
アネモネの指示通りに動くカメラマンの死体が呆然と呟くニュースキャスターの顔を掴んでヘリの下を無理矢理見せる。高い場所から落ちそうになり悲鳴を上げそうになるが下に広がる地獄絵図を見て言葉を失う。
「なんだこいつら!!?」「う、撃て!!撃てッ!!」「駄目です止まりません!!」「機動隊を呼べ!!」「もう応戦してます!!でも止まらないんですよアイツら!!!」「こちら包囲部隊!!上鳴タワーから大量のゾンビが発生!!ふざけてない本当なんだよ!!」「脚を撃て!!絶対に街に行かせるな!!!」「う、わあああああああああ!?!た、助けてくれぇ!!!」
大勢の警官、空らを軽く上回る数のゾンビ達が上鳴タワーの中から飛び出して街へ向かおうとする。アネモネの命令により手あたり次第人間を襲うようになっているゾンビ達は警察により攻撃されて身体が損傷しても構わずに動き続ける。意味のない呻き声と共に市民が暮らしている場所へ向かおうとするゾンビ達を警察官は止めようとしてぶつかり合っているも、その圧倒的な物量によって徐々に抑え込めなくなっていく。
「みんなみんなみーーーんな、私の玩具にするの♪だから大丈夫、一人ぼっちじゃないからさぁ。何もかも諦めちゃえ♪」
「あ、は……ははは……」
もうどうにもならないと悟り放心しながら涙を流す。これからあの中に仲間入りすることが確定し、抵抗する気力も湧かない。頭を掴んでいるカメラマンと同じ末路を辿るのだと思い――――その掴んでいる手が光によって消し飛んだ。
「え……」
掴まれていた部分が消えたことにより身体を支えることも出来ずにヘリから落ちてしまったニュースキャスターを柔らかく暖かい感触が包み込んだ。彼女を助けた天使はそのまま高速で移動しヘリを囲んでいる天使ゾンビを一蹴しながらヘリの操縦者をを即座に引っぱりだしてその手に抱え込む。
「だ、れ……?」
「私は天使です。いつも貴女のニュースを見ているファンでもありますね。もう大丈夫、安心してください」
天使――――エルは二人を抱えながら微塵も不安を感じさせない優しい笑みを浮かべながら語り掛ける。安心感からか、意識を失った二人を抱えながら“光矢”を発動させアネモネの乗っているヘリを全方位から串刺しにして爆散させた。
その爆炎の中から無傷のアネモネが黒い翼を広げて空中に踊り出た。先程まであったキャラ付けは余裕と共に消し飛び本性である残虐性を前面に出した笑みでエルを睨み殺そうと殺意を向ける。
「ようやく来たなァ!!エル・ライトガーデンッッッ!!!!今すぐぶっ殺してやるよ!!!!」
「頭まで腐ったんですか。前回のことをもう忘れているらしいですね。今度こそ仕留めるから好きなように喚いてなさい『
天使と悪魔、その戦いの火蓋が切って落とされた。
都市名出してなかったよなと思い今回初出し。
もしも過去話で出してたら指摘お願いします……。
あと感想くれると非常に嬉しいです……!!
今回の曇らせは良かったか?
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最高だった
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良いと思う
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もっと時間をかけて欲しい
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絶望が足りてない
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もっと序盤で見たかった