【三章完結】いずれ神成る恋物語-天使と悪魔とラブコメ生活-   作:ビスマルク

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それぞれの戦い

 アリナと智弘君と別れた後僕達は目的地であるあの例のショッピングモールに向けて走っていた。まぁ走っていると言ってもそれは僕だけでシルフィとダフネは共に翼を広げて飛んでいるのだが。

 

 

「普通は走って私達に追従するとか無理なはずなんだけど……。いやもうリョウだからで納得することにしておいた方が精神衛生的に楽なのかしら」

 

「流石にここまで来たら自分が人間離れしてるのは分かってるからそれでいいんじゃないかな。といってもなんでこうも僕が人類の想定外になってるかは知らないけど」

 

「そんなもん旦那だからじゃねぇの。それこそ考えても答えが出ない類の問題だろ」

 

 

 こういう時ダフネは結構鋭いことを言う。いつもはバトルジャンキーそのものなのにこういう面を見せられるとギャップを感じる。普段からもう少しこの調子でいてほしい気もするけどそれはそれでなんか嫌な気分になりそうだ。

 しかし道路の真ん中を走っているが人っ子一人いない。車もない大通りというのは少しだけ不気味に感じる。街灯が機能しているのが唯一の救いだろうか。残念ながら飛んでいる二人のスカートの中身は見えずに歯噛みすることになっているが。

 

 

 

「――――悪いけど、ここから先は行かせないよ」

 

 

 会話をしながら進んでいたところに上空からそんな声が届くと同時に目の前に青い炎が道路を封鎖するように立ちふさがる。ショッピングモールの時の戦いで見た結界を作り出す炎だ。そしてこれを使えるのは『盗炎結偽』、リルナの姉であり名前は確かベルサシエだったか。

 この結界の炎を無理矢理壊すことは難しいだろう。だがしかし、対処法なら既に見えている。上空にいるベルサシエの場所まで蒼炎は届いていない。つまり空まで結界は伸びていないということだ。僕は炎の前でブレーキをかけることなく方向転換してビルに向かう。その勢いのままビルを文字通り駆け上がる。窓枠に足をかけて上へ上へと進んでいく。

 

 

「大人しくしていてほしい。ボクは出来れば危害を加えたくないんだ。ここで止まってくれるのであればこれ以上何もしないと約束」

 

「うるせぇ邪魔すんなボケ」

 

 

 僕の行動を見て囮になるように止まっていてくれていたシルフィとダフネに対し語り掛けていたベルサシエの上をとりそのまま地面に向かって蹴り飛ばす。激突の衝撃で轟音と土煙が上がる。道を塞いでいた蒼炎は消えたので邪魔されることはない。

 

 

「復讐者としてもリルナの家族としても中途半端なお前には山ほど言いたいことがあるけど今は急いでるんだ。お前の自己憐憫に付き合ってる暇はないの。だからシルフィ、あとはよろしく」

 

「予定通りに、ね。そっちもちゃんと上手くやりなさいよ。私はそっちに手を貸せなくなるんだから」

 

「もちろん、任せておいてよ。こういう時僕はすごい強いんだぜ」

 

「ええ、知ってるわ」

 

 

 シルフィなら任せられる。彼女もまた僕に対して同じ信頼を向けてくれている。ならば立ち止まる必要などどこにもない。『盗炎結偽』ベルサシエと相対している風天使シルフィに背を向けて先へ進む。今もまだ『炎天渇奪』に囚われたままのリルナを救うために。

 

 

「ようやく見えてきた……!!」

 

 

 目的地であるショッピングモールが見えてきたことに安堵感を覚える。天使達の張った結界の中では同じ系統の能力であるディアンナの能力の使用が制限されるとはいえここまで来るのにかなりの時間がかかってしまった。一度繋がった魂の繋がりは契約を奪われてなお僕にリルナの状態を教えてくれる。恐らく後10分は耐えてくれるはずだが急ぐに越したことはない。逸る気持ちを抑えきれずに待たせてしまったリルナを迎えに速度を上げようとし。

 

 

「止まれ旦那!!!」

 

「ッ!!」

 

「ざわ゛だり゛ぃいいいいいいいィイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!!」

 

 

 ダフネの声に急ブレーキをかけて止まる。ギリギリで反応出来た為潰されることはなかったが上から降ってきた肉塊に似た怪物に行く手を阻まれる。この声はどこかで聞いたことがあると記憶を漁り、あの戦いの前の学校での日常で一度だけあった青年と酷似していることに気付いた。確か竜崎、と言っていたか。生憎苗字以外は覚えていないが。

 

 

「どーやら『炎天渇奪』の奴にそそのかされたみてーだな」

 

「戻せる?」

 

「一度ぶっ倒して抵抗する意識を失くせばすぐに戻せると思うぜ」

 

 

 上級悪魔となりダフネの能力は元々高かった応用性を更に跳ね上げていた。相手が一般人ならば若返りも老化も思うがままに出来るという。常に最高の戦いをしたいという彼女の“欲望”が、相手の全盛期を引き出す為の能力として発現したのだろうが、その利便性はやはり他の二人と比べても高い。こういった悪魔の被害を受けた一般人をすぐに戻せるのは非常に助かる。本人の意図した使い方ではないだろうが利用できるは利用させてもらうのが僕の流儀だ。

 

 

「それじゃあ悪いけどダフネ。彼のことを急いで片付けてほしい。僕は先に――――」

 

「ざわ゛だり゛ぃいいいィイイイイイ!!!!おまえが!!おまえみたいなやつが!!!ライトガーデンをしあわせにできるわけねぇええええええええええ!!!!!」

 

「…………あ”?」

 

「地雷踏みやがったコイツ」

 

 

 ダフネが何か言っているが聞こえない。僕が、エルを幸せに出来ない?到底看過できない言い分だ。僕は僕の全身全霊、魂をかけて彼女を幸せにすると決めている。エルがずっと笑っていられるように僕はドッペルになり戦い続けたしこれからも戦うだろう。そこに一切の迷いはないが、だからこそ幸せに出来ないなんて言葉を認めることは出来ない。

 

 

「もう一遍言ってみろ不良もどき。誰が、誰を幸せに出来ないって?」

 

「おまえだァ!!この、おんなたらしがぁあアアアアアアアあああアアア!!!!!いつもいつもお前はほかのおんなをほめてやがるッ!!!ライトガーデン一人にしぼれねぇテメェがゆるせねぇえええええええええ!!!かるいくちでいつもふざけてほめことばたれながしやがって!!!!」

 

「ふざけんな僕はふざけて口説いたことなんか一度たりともないわ!!!全部が全部本音も本音だ!!!エルもリルナもシルフィに対しても!!!それ以外の老若男女問わず褒めた言葉に嘘偽りなんて何一つないね!!!!」

 

「ざわ゛だり゛ぃいいいィイイイイイイイイイイ!!!!!!!!」

 

「竜崎ぃいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!」

 

 

 人の範疇を越えた筋肉質な肉塊が巨大化した腕を僕目掛けて振り下ろしてくる。それに対して避けることを一切考えないで思いきり握り締めた拳を振るう。

 

 

「ぐ、おっ……!!?」

 

「がああああああああああああああアアアアアアアア!!!!!!!!」

 

 

 ぶつかり合った拳だが、押し負けたのは僕の方だった。ビルに叩きつけられガラスが周囲に散らばる。“欲望”によって身体強化出来ていたからよかったが出来てなかったら今ので死んでいた。口を切ったせいで出た血を吐き捨てて冷静になった頭で考える。ここで竜崎と戦ってる暇があるのかと。今はリルナを優先すべきではないかと。こんな時彼女だったらなんというだろうか、想像する。

 

 

『考え込むとかリョウちゃんらしくないよ。さっさとぶっ飛ばして先に進めばいいじゃん』

 

 

 リルナだったらきっとそう言う。彼女は決まって自分より身内の気持ちを大事にする子だからきっとそう言ってくれる。ダフネに任せて先に進む方がきっと正しいのだろう。今は時間がないのだからやるにしたってこのタイミングで戦うのが間違いだというのは分かる。だけど僕の心が叫んでいる。

 

 

「同じ人を好きになった男から背を向けて逃げたら、僕は胸を張って彼女達に会えない」

 

 

 竜崎の言い分は分かった。この現代社会で複数の女性と付き合うというのは紛れもないクズの所業だ。それを否定する事はしないし、僕の中にもその常識はある。誰か一人を選んで、死ぬまで愛することが正しいというのは分かっている。

 

 

「だけど、それを分かった上で僕は三人を好きになったし。誰よりも幸せにしたいと思ったし、すると誓った。他の誰でもない僕の意思で、僕の魂に誓ったんだよ」

 

「ざわ゛だり゛ぃい……!!!」

 

「でもそれを語っても君は納得できないだろ。納得したくないんだろ。だったらもう、拳(コレ)しかないね」

 

 

 いつだって男の喧嘩なんて殴り合いで決着をつけることになってる。例え相手が見上げるほど高かろうと逃げるという選択肢はない。そもそも逃げる必要性すら感じられない。僕は僕の想いをかけて。彼は彼の想いを乗せて拳を振るう。

 

 

「さぁ存分に殴りに来いよ!!!殴り返してぶちのめして納得させてやるよ!!!!」

 

「ざわ゛だり゛ぃいいいいいいいィイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!!」

 

 

 剛腕が風を切る音を聞きながらそれに対してクロスカウンターで顔面を撃ち抜いたところからこの馬鹿げた、それでも譲ることのできない喧嘩が始まった。




男同士の殴り合い、ファイッ!!!!

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