【三章開始】いずれ神成る恋物語-天使と悪魔とラブコメ生活- 作:ビスマルク
義によって小説を書くでござる
現代社会舞台でハーレムやるならこれくらいの問答は必要だと思っていたので結構重要な回である。同時にリョウ君の止まらなさがヤバい。
血を流しながら殴り合う。人間離れした力同士の殴り合いのせいで周辺のコンクリートが砕けその下が露出し、辺りが荒廃しているように見えてくる。それでも僕も竜崎も止まることなく相手を殴り続ける。
「おまえは!!なんでぞんな色んな子に声かけてんだよッ!!!!」
「勘違いすんな!!!エルとリルナとシルフィ以外にはそういう感情持ってないぞ僕は!!!ただ単に気付いたから言ってるだけだし似合ってるからそう言ってるだけだ!!!!」
「それが悪質だって言ってんだよォ゛!!!!!」
興奮か、それとも殴り合ってる間に自意識がしっかりして来たのか竜崎の言動が徐々に正常に戻っていっている。本人はそのことに気付いているのか分からないが、肉体の方も段々と縮んでいっている。『炎天渇奪』の影響から抜け出ているのかもしれない。
「第一僕が女子だけを褒めてるなんて風評被害だ!!!僕は男女問わず褒めるべきところを褒めているだけだ!!!智弘君がサッカーを頑張っていたらそれを褒める!!!小沢君が漫画で賞をとれるよう頑張っていたら読んで感想を伝えていいところをちゃんと言う!!!当たり前の事をしてるだけだろうガッ!!!」
「長台詞で隙丸見えなんだよォ!!!!」
言葉の途中で殴り飛ばされて中断させられた。なんという奴だ、僕の感情を引き出しその隙を突くなんて。アッパーなんて映える殴り方してくれたおかげでビルの3階に叩きつけられた。今のは流石に脳が揺れて2秒くらい動きが鈍くなりそうだったぞ。
叩き込まれた時に割れてしまったガラスを踏みながら今も異形の形を残している竜崎を見下ろす。そしてその言葉を思い返して一つの結論を出す。
「言ってることは、アイツの方が正しいな」
どこまで行ってもこの現代社会で生きている以上いくら好きだと言っても三人を想うのは不誠実だ。だから竜崎の言っていることが正しくて、僕はただの三股クソ野郎なのは確かだ。いやでもまだ付き合ってるわけじゃないからギリギリセーフでは?と思わなくもないが、どのみち三人の内一人と恋人になったとしても他二人への態度を改める気はさらさらないので遅かれ早かれ言われる事だろう。
そう、正しいのは竜崎で。間違っているのは僕だ。
「でも、その正しさがエル達を幸せに出来ない理由になるなら守ろうとは思わないな」
今更ながらに自覚する。僕はこうして社会に生きているけれど、それより大切な者の為ならば一切の躊躇いもなくそれを捨てられる異常性を持っていると。悪魔との戦いも、生死の境を彷徨うことも、彼女達と一緒にいる為ならば何も怖くない。“愛”も“欲望”も、どちらも壊れているが故の歪み。生まれた時から抱いていたけれど、その機会がなかったから表に出てこなかったそんな歪さ。
「だからこそ、逃げるつもりはないけど」
ここで逃げるという事は、正論から逃げるということだ。正しいことを言われたら尻尾を巻いて逃げるということになる。だけどそれは、僕の抱いているこの想いが間違いだと断じられるに等しい。彼女達を愛したい、幸せに死体、守りたい、共に居たい。そんな“愛”と“欲望”の源泉を自ら放棄することに他ならない。それをしたら僕はもう二度と戦う事は出来ないだろう。
「だからごめん。エル、リルナ。本当にもうちょっとだけ待ってて」
愛しい少女達に届かぬ言葉を呟きながらビルの三階から無造作に落ちる。頬を空気が撫でるも、それも最早慣れ親しんだ感触でしかない。強化された肉体とこれまでの戦闘経験は着地に傷一つ付けない。僕から一切目を離さないでいる竜崎は息を荒げながらもその戦意を一切衰えさせない。
「さぁ、まだ始まったばかりだろ。続きをしよう」
「ふぅふぅふぅ……!!バケモンかよ……!!!」
「色んな人に言われてるよ、それ」
苦笑しながら離れた場所でこちらを見ているダフネを見る。ダフネは黙って僕に任せてくれている。早く終わらせろとも、参加させろとも言わない。バトルジャンキーだけどこういう時は空気を読んでくれるから助かる。
多分ここにいたのがヒルダだったら後でなんと言われようとも僕とリルナの為を想って竜崎を排除しようとするだろう。ディアンナだったら巻き込むなと怒りながらもなんだかんだ手伝ってくれそうだ。誰であろうと僕のことを想って動いてくれる。何度も思うが、やはり僕は周囲の仲間に恵まれている。人間天使悪魔問わずに助けられている。そんな彼女達に返せるのは、絶対的な勝利だけだ。
「納得するまで殴り合おう……って言いたいところだけど時間がないんだ。もうそろそろ終わらせるよ」
「言ってろや!!!テメェぶっ倒してサンドバックにしてやるよ!!!!」
巨腕を大きく振りかぶっているところ目掛けて走り出す。カウンターで全力を叩き込みそのまま吹き飛ばす。今の竜崎の耐久力を考えたらこれが最適解のはずだ。竜崎が足に体重をかけるタイミングを合わせて踏み込み速度が出たその瞬間に最大の力を入れた右拳を叩きつけようとして。
「あづぁ!!ぐぉおあッ!!!!」
「なッ!?」
「あ゛っ!?ほ、炎だと!?」
竜崎に向かってきた炎の槍を素手で掴んで止め、動きが止まった瞬間最大の力を込められた竜崎の巨腕を真っ向から受けて地面に叩きつけられる。血を吐き、意識が混濁する。力だけならば上級悪魔に匹敵するそれをまともに受けるのは流石にキツイ。痛みと衝撃には慣れているけれどそれでもこの意識が飛ぶ感覚は何度やっても慣れたくないものだ。
「な、なんで邪魔をするんですか沢渡リョウ!!?貴方はあの悪魔の少女を助けに来たのでしょう!!?なんでこんな所でそんな人間を相手に戦って傷ついてるんですか!!!」
地面に掘られたクレーターの中で倒れている僕に対し、炎の槍を放ってきた張本人であるヒャン・フレイムが叫ぶ。いつか僕をぶっ刺した時以来に彼女を見る。シルフィも僕に配慮してか一度も話題に出してなかったのでどうしてここにいるかも分かっていない。
「なッ!?な、んだテメェは……!?羽、天使……!?」
「黙りなさい『炎天渇奪』にそそのかされた罪人。今自分が何をやっているのか分かってるんですか。その男は今、命懸けでエル様を助けようとしているんです。一度その邪魔をし、命を奪おうとした私が言うのは間違っていますが、それでもその邪魔はさせません」
「邪魔は、お前だボケええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!」
突然の天使の登場に理性を取り戻しかけている竜崎が驚き呆けている。ヒャンもまた、天使としての使命として当然のことをしている。
「だが、それでも、今!!僕の邪魔をしてるのはお前なんだよ、ヒャン・フレイム!!!!!」
「まったくだな。旦那がマジで真っ向から殴り合ってるのじゃますんなよ。その気になりゃ速攻で終わるのにわざわざ相手の土俵でやってんのくらいみりゃ分かんだろ」
「え、ええ!?な、なんでそんなことをわざわざ!?」
ヒャンが目を白黒させて本気で驚き混乱している。真面目だから仕方ないとは思うがそれはそれとして邪魔をされてた僕の感情はヒートアップしている。
「説明しないと分からないか、分からないよね!!君は真面目だから仕方ないと思う!!天使として悪魔と契約して『炎天渇奪』の目的を達成する手伝いをしてしまってる竜崎に奇襲を仕掛けるのも正しいと思う!!!」
「そ、それなら別に」
「だけど今は男同士の殴り合いなんだよ!!!相手を納得させるまで終わらない喧嘩してんだよ!!!!」
「それ今やることじゃないですよね!?」
「今じゃないと対等じゃないだろうがッ!!!僕も竜崎も本気で相手を殴り合ってんだよ!!!この後『炎天渇奪』は確実にぶっ潰すんだから竜崎は今の力を失う!!!そしたらコイツのパンチなんか怖くもなんともない!!!一方的に殴るのは喧嘩とは言わないんだよ!!!」
「え、エル先輩の事とか」
「同じ女の子を好きになった相手を納得させられないでエルの前に出られるかァ!!!!」
結局のところそこなのだ。僕にとって今ここで大事なのは、納得させること。エルのことを好きで、僕のことを嫌いな竜崎という男に僕を認めさせる。正しいことを言っている男に、その正しさを前にしても引かない姿を、負けない姿を見せる。それくらい出来なければ僕はここから先の道を歩いていけない。
「お前、馬鹿だろ。頭からダラダラ血ぃ流しながらそんなこと言ってよ。そっちの変な羽根女の言うとおり、俺なんか無視して進めばいいだだけだ」
「これが僕だ。好きな人を好きだと言って、何度痛い目を見ても懲りずに繰り返して。そんな僕を彼女達は好きになってくれた。だから僕は絶対に変わらないし変わっちゃいけないんだよ」
「だから放置すれば俺に勝てるのに、庇えばそのまま殴られるのも分かってて、あの炎から俺を守ったってのか。俺は敵だぞ」
「何度も言わせるなよ。あくまでこれは僕がお前を納得させるための喧嘩だ。炎の槍なんて文字通りの横やり入れられてそれでお前を納得させられるとは思えなかっただけだ」
僕のことを好きになってくれた人がいるのであればそれはこの在り方を認めてくれていたからだろう。ここで楽に流れる姿なんて見せたくはないし、それをしたら僕ではない。彼女達に誇れる、好かれている僕のままでいたい。例えそれが死の淵に立たされたときであっても。
「俺は嫌いだぜ。お前みたいに口だけみたいな奴がな」
正気を取り戻したのであろう竜崎が完全に人間の姿に戻っている。異形の痕跡はところどころ真っ赤に変色している肌くらいだ。だがその力はここまでで一番発揮されているだろう。ダメージが蓄積している僕が喰らえば一晩起きれなくなるかもしれない。一方で僕もまた最高の一撃を打ち込む準備は整っている。
「だけどよ」
互いに逃げることも避けることも考えないで走り出す。大きく振りかぶった拳が交差して互いの顔面に突き刺さる。殴られて気を失いかけるもこれ以上一秒たりともリルナを、エルを待たせたくはない。この私闘は僕の我儘なのだから、せめて完全に勝たなければならない。
「テメェは、口だけじゃないんだな」
声にならない叫びをあげながらたたらを踏んだ足で大地を踏み抜く。直前で殴るのに使った右手を大きく引いて左腕を加速させる。腰を入れた拳が竜崎の顎を捉えそのまま跳ね上げる。轟音と共に空気が震えて殴られてのけぞった姿勢のまま仰向けに倒れた。
「ライトガーデン、幸せに出来んだろうな」
「僕が一番エルを幸せに出来る。それだけは断言しておくよ」
馬鹿な男同士の馬鹿みたいな殴り合いの喧嘩はこれで終わり。僕の本気が分かったのかそのまま竜崎は目を閉じて気絶した。
何もならないはずの戦いでも僕の中で一つの区切りと決意は出来た。僕が、誰よりも彼女達を幸せにするという決意。それが同じ少女を好きになった男と殴り合って勝利した僕の責任でもあるのだから。
リルナとの魂の繋がり、その残滓はまだ残っている。彼女がどこにいるか、どれだけ弱っているかも。まだ間に合うところにいる彼女の元へ再び僕は走り出した。
ちなみにやろうと思えばリョウ君一方的にタコ殴りにして勝負決められた模様。全部受けきって勝たなきゃ愛の証明にならないからって理由でプロレスラースタイルで勝負決めた。
時間に余裕はないけどリルナが耐えてくれるのは魂の繋がりの残滓で分かっているのでもう少し我慢してもらった。後で土下座行脚予定。
ちなみに戦闘時テンションが上がってるので若干ドッペル時の性格が出てきてる模様。
新作も一応毎日投稿中。
そちらの方も見てもらえると嬉しいです。
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