【三章開始】いずれ神成る恋物語-天使と悪魔とラブコメ生活- 作:ビスマルク
「邪魔を、するなぁあああアアアアアアアア!!!!!!」
「するに決まってるでしょうがッ!!!!リョウのところへは行かせないッ!!!!!」
叫び声と共に二つの影が夜の街の中でぶつかり合う。周囲の窓ガラスが割れ空気が揺れ炎が周辺に舞い散る。青い炎は幻想的でありながら危険を感じさせる。
『盗炎結偽』ベルサシエは今すぐにでもここを離れアドラメレクの元に走ったリョウ達を追いその行動を止めたい。逆に風の上級天使シルフィはその目的を阻止しリョウが勝つ為の時間稼ぎをする。互いの目的が絡み合い、譲れない一線をかけてぶつかり合う。
「“壁炎”!!!!」
「また壁を……!!逃げんじゃないわよ!!!!」
風が吹き周囲を囲もうとする蒼炎を吹き飛ばす。その隙にここから離れようとする黒い翼を白い翼を広げて追う。速度は互角、このままではショッピングモールに先に辿り着かれると判断したシルフィはその能力を行使した。
「ガッ!!?」
「障害物くらいならこっちだって風使えば用意出来んのよ!!!!」
嵐を思わせるほどの風が吹き荒れベルサシエの前に周囲に放置されていた車が飛んでくる。速度を出すことに集中していたベルサシエは咄嗟の反応も出来ずに辛うじて腕を交差させてそれにぶつかる。そのままシルフィが作り出した竜巻に巻き上げられて遥か上空まで連れていかれる。
「ぶっ潰れろぉおおオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」
「ぐ、ぎああああああああああああああああああ!??!!!?」
上下左右さえも分からなくなる突風の中で方向感覚を狂わされたベルサシエ。竜巻の上の無風空間から一気にトップスピードに入ったシルフィの両足がドロップキックの要領でベルサシエの腹部に叩き込まれる。口から空気を吐き出しながら地面に一直線に向かい道路を砕く勢いで突き落とされたベルサシエは痛みから腹部を抑えながらも一度体勢を立て直そうと蒼炎の壁を作りながら後方へ下がろうとする。
「逃げるなって言ってんでしょうがッ!!!!」
「は、やっ!!?」
蒼炎の壁が成立する前に接近したシルフィはその顎を殴り抜き地面から脚を離させる。そして追撃として先程作り上げた竜巻を巻き込んだ物を含めて叩き込んだ。ビルを貫き瓦礫もまた風邪に巻き込まれて次々とベルサシエに当たりダメージが重なっていく。
「あああああああああああああ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!?!??!」
風がタクトのように操作していた指と連動して向きを変え空から地面に向けられる。地面にぶつかりながらなおも止まらず進み続ける螺旋の風は地面を抉り、その中心にいるベルサシエもまた血を流す。
(蒼炎で、壁、少しでも防ぐ、いや、無理。炎が吹き散らかされて……!!?)
圧倒される。一方的に削られていく。上級天使と上級悪魔の戦いだというのに圧倒的なまでの差で圧し潰すされる。以前のショッピングモールで対峙した時はここまでではなかったはずだと考えても意味はない。現実として同格のはずの存在に何一つ勝てずに地面にめり込まされている。
「アンタのことは前の戦いで大体理解したわ。蒼炎は確かに厄介よ。炎としての性質で触れるだけで負傷するし、燃やし広がった部分は壁となる。攻撃にも防御に使える。ええ、大した能力だと思うわよ」
白い翼を収めて地面に降り立ったシルフィは竜巻を押し付けることによって動きを封じたベルサシエを油断なく見つめながら自分の考えを晒す。悪魔を大人しくさせるもっとも簡単な方法は心をへし折ることだと知っているから。
「でも使ってるアンタが弱すぎる。肝心のアンタの使い方が悪すぎる。だからこうして私に負けるのよ」
(ボクの、使い方が……!?)
「確かリョウ達……ドッペルの影操作の担当はアンタの妹だったはずよ。共闘したこともある私からしても、上手い上に丁寧で多分単独でも上級悪魔に成ってたら私よりも強いと思うわ」
シルフィはエルよりも格下。本人を含め周囲全てがそう考えている。ただ一人だけ彼女を心の底から尊敬し続けている少年だけはそうではないと考えていたが。確かにシルフィは扱える力はエルに劣る。しかしその能力操作の精密性はエルよりも上だし、何よりも弱いが故に相手の弱味を突くことに躊躇いを覚えない。
「端的に言ってアンタ。もうとっくに妹に追い越されてるのよ。追い越した妹を守るだとかなんだとか言う前に自分のことを鍛え直したら?」
(――――――――――――ッ!!!!!!)
容赦なく風と言葉を叩き込みその身体と心を抉る。もっとも触れられたくない部分を無造作に抉られたベルサシエは後先を考えずに炎を噴き上がらせて風に対抗しようとし
「ほら、そうやってすぐに激情に身を任せる。竜巻が何を巻き込んでるか知らない訳じゃないのに。だからほら、アンタが馬鹿みたいに炎を出したから」
青い炎が竜巻を包み、その動きを止めようとする。蒼炎が壁を作り風の動きを無理矢理止めようとする。そう、多くのガソリンが入っている自動車を巻き込んだ竜巻を炎で止めようとした。
「ガソリンに引火して爆発するじゃない」
自身の周囲を風によって断熱し、炎が来ないようにしたシルフィは呆れながらその光景を見た。竜巻そのものが蒼炎によって形成されるような光景は破滅的だった。当然その被害を火をつけた本人であるベルサシエもくらう。
「ぐ、ああああああああああああああああああぁあああああ!!!?!!?!?」
自分でも制御できない程の熱量によって身体を焼かれる。無論それで死ぬほど上級悪魔の肉体は弱くはない。だが既に『炎天渇奪』によってもっとも重要である“欲望”を奪われているベルサシエにとってこれは致命的なダメージでもある。
「ぐ、ああ、ぐ、ぞぉ……!!!」
「まだ這い上がってくる気力はあるのね。流石、とは言っておこうかしら」
ところどころにやけどを負い、風による裂傷を負いながら抉られた道路から這い上がってきたベルサシエを見下ろすようにシルフィは立つ。その頭を踏みつけ、これ以上這い上がれないようにしつつ怒りに燃える瞳と相反する冷たい無表情でベルサシエを抑え込む。
「私はね。『炎天渇奪』と『永死殺総』も嫌いだけど、何よりアンタがムカついてならないのよ。妹が大事だって言っておきながらその妹が最も嫌がることをやり続けるアンタのことが、自分勝手でなにより悍ましく感じる。まだあっちの上級悪魔二体の方が理解出来るわ。いやまぁ理解出来ると許容出来るかは全く別の話だから絶対に討伐するけど」
「勝手な、ことを言わないでほしいね。七番と、君は何の関係もないだろ。ボクと七番はもう、互いに唯一の家族なんだ、よ」
「関係あるわよ。同じ男に惚れたって関係が」
シルフィは見てきた。リョウが胸に穴をあけ倒れてから常に自身を責め続け自分を追い詰めてきた少女の姿を。自分のせいだと責めて、復讐に全てを捧げようとするその姿は方向性こそ違えど親友であるエルとよく似ていると思った。だからどうしても放っておけずに声を掛けた。それでも結局それは功を奏さずにリルナは一人『炎天渇奪』を殺そうと相打ち覚悟で挑んでしまったが。
「アンタはただあの子を追い詰めただけよ。追い詰めて追い込んで自分に従う人形にしたかっただけ。それがアンタのやりたかったことの正体でしょ」
「違う、ボクはあの子に平穏で、何にも冒されることのない平和な生き方を!!!何もかも奪われても、あの方から完全に解放される!!復讐なんて何も生み出さない事を続けることよりも!!ドッペルなんてやって傷つくよりも!!その方がマシだろう!!!?」
踏みつけてる足をはねのけて殴りかかってくるベルサシエの腕を肘で受け流しながら流れるような動きで側頭部に叩き込む。悪魔であっても人間を模している以上ある程度肉体はその機能に縛られている。脳が揺れれば当然動きは緩み遅くなる。
「それを決めるのはアンタじゃないわよッ!!!」
「ぐ、が、べげっ!?」
「少なくても私は!!身体が傷つくよりも心を傷つけられる方がずっと苦しかった!!寄り添ってくれる誰かがいてくれて本当に嬉しかった!!!アンタはあの子からその寄り添ってくれる誰かの存在を記憶ごと奪おうとしたのよ!!!」
「グギィ!!?」
「いい加減、自分が何したいのかをちゃんと考えろォ!!!!」
小型の竜巻を纏わせた拳を叩き込みベルサシエを吹き飛ばす。地面をバウンドし、倒れ伏したベルサシエにはもう意識はなく、炎が噴き出す様子もない。曲がりなりにもリルナの家族である以上止めを刺すわけにもいかないシルフィは風によって完全に拘束しておいた。
「さて、リョウは上手くやったのかしら……。あ……!!」
リョウが走り去った先に視線を移せばその瞬間影が柱のように天まで届いていた。それは力の規模こそ違えどかつて見たあの影法師の力で間違いなく。それが意味するのはただ一つ、あの二人で一つの存在が復活したという事実。
「さて、私ももうひと頑張りしましょうか」
シルフィは笑いながら白い翼を広げて空を飛ぶ。アリナに連絡を入れベルサシエの拘束を任せつつ、親友と想い人がいる場へ急ぐ。
リョウから“欲望”を奪っていた『炎天渇奪』。さらにそこから“欲望”を供給されたことで今までで最も能力を発揮している『永死殺総』。残る二体の悪魔はいまだ健在。いくらでも戦局は覆される可能性が残っている。
上級悪魔と戦いまくってきたシルフィと『炎天渇奪』の下で暗躍し続けてたベルサシエだとこうなるという簡単な図式。
シルフィ、エルと比較すると戦闘力では劣るけどそれ以外の所で補ってくるので相手からするとクソ面倒な所が多い。
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絶望が足りてない
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もっと序盤で見たかった