【三章完結】いずれ神成る恋物語-天使と悪魔とラブコメ生活-   作:ビスマルク

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恐らくこの章も残り5話程度で終わるかと思います。

そしたらイチャラブ短編集みたいな4章を書けるんだ……!!
4章の章タイトルは「天使と悪魔とラブコメディ」ですね。


『時進過浄』と『炎天渇奪』

「何も出来ないまま死ねッ!!!!!」

 

 

 その戦いの最初の一手をうったのは『愛求堕喰』アドラメレクだった。全身から噴出させた紅蓮の炎によって周囲を囲み重力という事象(・・・・・・・)を奪い取っていく。結果としてショッピングモール内にある全ての瓦礫や残された物が重力の楔を失くし宙を浮くことになる。

 

 重力が消えるという事はつまり踏ん張りがきかなくなるという事である。例えどんな能力を持っていようが足場が安定していない状態ならば動く事さえままならない。それは天使であれ悪魔であれ変わらない。翼を広げ空を飛ぼうとしてもその瞬間には必ず隙が生まれるはず。

 

 

「能力発動。範囲指定足元、“時象固定”完了」

 

 

 重力が奪われたことにより空中に浮かび上がったダフネが呟く。それは彼女と最も多く模擬戦を繰り返したドッペルの模倣。能力を行使する時に技名を呟き発動キーにする。

 友人であり同僚になったヒルダが最も得意にしている、能力にまで昇華させた模倣には程遠いただの真似事。だけどそれでいい。上級悪魔にまで上り詰めたダフネの“欲望”は他者には決して真似出来ない領域にあるのだから。目標であり師でもあるドッペルをなぞることにこそ意味がある。

 

 ダフネの能力は自分と自分に触れた物への時間操作。巻き戻し停止加速の順で“欲望”の消費が大きい。自分以外への生物の時間操作は更に消費が激しく、無機物にならばほぼ消費なく行える。リョウがダフネに自身の治療を最低限にさせたのは竜崎との戦いをなかったことにしたくなかったこともあるが“欲望”の消費を出来るだけ避けたかったという理由もある。

 

 燃費の悪さならば『観測希究』陣営の中でも最上級。だが、それでもなおリョウは『炎天渇奪』アドラメレクを倒すことをダフネに任せた。それは己の仲間に対する信頼の高さか、それとも鍛え上げた師としての自信か。恐らくは両方だ。

 

 

「行くか―――――ぶっ飛べ」

 

 

 足元にある空間の時間を停止させる。そこを足場にして燃え盛るアドラメレクに向かって力強く、全ての力を込めて踏み込み、一気に加速する。重力が消えたことにより宙に浮かんでいる物体全てを弾き飛ばし弾丸以上の速度でアドラメレクに突っ込む。

 

 

「が――――ぁアアアアアアアアアアアアアア!!?!?」

 

「オラオラオラァ!!!!どうしたどうしたどうしたァ!!!!旦那の“欲望”吸っておいてその程度かよクソザコがよォ!!!!!!」

 

 

 超高速の弾丸と化したダフネはその勢いのままアドラメレクを殴り、共に壁を破壊して進んでいく。炎に囲まれた空間から脱することで重力が戻ってきて身体が重さを取り戻す。しかしそんなことは知らないとばかりに共に品物を破壊しながら進んでいるアドラメレクを無遠慮に掴む。

 炎の熱という生物が本能的に忌避する鎧を纏っているアドラメレクにそんな熱など知らぬ忘れた触れられるなら殴れると言わんばかりにダフネが拳を振り上げる。叩き落されるその拳を流石は長年生きた上級悪魔というべきかアドラメレクは両腕を交差することで受け止め防御することに成功する。

 

 

「“時象加速”!!!」

 

 

 だがその防御さえもただ数を重ねればいずれ壊せると言わんばかりに再びダフネが能力を使用する。加速された腕部による連打は音を置き去りにしてアドラメレクを破壊しようと何度も振るわれ打撃音がマシンガンのように鳴り響く。

 

 

「お嬢と似てるその顔がムカつくんだよッ!!!よく似てるけどその分違うところが目立って腹立つわ!!!」

 

「私が小娘に似てるんじゃない……!!小娘が私に似てるのよッ!!!!」

 

 

 だがしかし、アドラメレクもまた長く生きた悪魔である。その戦闘経験はダフネの遥か上を行く。全てを破壊しようとする連打を受け止めつつ僅かな隙を見つけてその腕を掴みその勢いを殺さずに上へ向かって投げ飛ばす。2階、3階の天井を破壊して月の出る夜の空中に投げ出されたダフネに対し追撃の炎球を数十発を放つ。

 

 

「旦那ぁ……頼むからもう少し“欲望”抑え込んでくんねぇかなぁ……」

 

 

 自身の師であり目標でもあり“欲望”の供給元でもある少年にぼやく。基本的に理性的だが一度こうと決めたらブレーキのなくなる少年は今頃愛しの少女二人と共に居ることでもとより強大な“欲望”が更に増幅しているのだろう。

 

 数十の炎球を放ってもなお煌々と燃え盛るアドラメレクを見ればそれが間違いではないと分かる。恐らくアドラメレクに流れ込んでいる“欲望”は本流に比べれば雀の涙でありながらまったく枯渇する様子がない。相変わらず化け物染みていると思いながらダフネはその能力を使用する。

 

 

「“時象固定”及び“時象加速”。対象空間及び自分」

 

 

 能力行使に必要のないそれは自分に対する呪(まじな)いの一種。これからやることを言い聞かせることにより迷いを切り捨てる。敵に聞かれればどんな使い方をするかバレる可能性はあれどそれならば相手に聞かれないように小声で言えばいい。もっと言えば聞かれたところで反応出来ない速度で壊しきればいいのだ。

 

 

「さぁて、そんじゃあもう一発行ってみようかァ!!!!!」

 

 

 足元の空気の時間を止めることで足場にしたダフネは翼を広げることなく空中に留まり、次の瞬間自身の時間を加速させ砲弾と見間違う速度でアドラメレクに迫る。殺到する炎球をその拳で振り払いある程度の負傷を無視して突っ込む。

 

 

「っ!!この、イノシシが!!!!」

 

「真っ直ぐ行ってぶっ飛ばす!!!それが一番早ェんだよ!!!!」

 

 

 辛うじてその突撃を避けるも砕かれた地面が弾丸のように周囲に放たれる。アドラメレクもまた反射的に顔を守ってしまい一瞬だけダフネの姿を見失う。その一瞬は十倍以上に時間感覚を延長させたダフネにとって十分すぎるほどの隙だった。

 

 

「ぐあっ!?な、があああああああああああああ!??!!?」

 

「ぶっ潰れて擦り切れろやぁあああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」

 

 

 真正面からアドラメレクの顔面を掴んだダフネはその勢いのまま地面に叩きつける。そしてその態勢のまま地面を走り出す。超高速による移動によりアドラメレクの完全だったドレスが薄汚れその金糸のような髪に鮮やかな赤の液体が混ざっていく。

 

 

「いい加減に、しろ!!!この雑魚がァアアアアアア!!!!!!」

 

「うおっ!?熱っ!!!」

 

 

 引きずり倒されそのまま走り回られても上級悪魔であるアドラメレクはまだ死なない。それだけの耐久力を持っているからこそ彼女は君臨することが出来ていた。反射というには遅いが全身から発火させたままダフネの腕を掴み炎を燃え移していく。その熱を感じた瞬間に手を離し距離をとったダフネを今度は強烈な倦怠感が襲う。

 

 

「っ!!」

 

「お前から、体力を奪ったわ。まだ動けるでしょうけど、それなら逃げ場のない状況に追い込んであげる。逃げ場もなくなれば燃え尽きるしかないでしょう!!?」

 

 

 その言葉通りダフネの周囲全てから弾け飛ぶように連続的に爆発が起こり周囲を爆炎が包み込む。いくら時間を操れると言えど限度はある上に炎はアドラメレクの“欲望”によって引き起こされた物。停止させれば“欲望”を多く消費してしまいそのまま押し切られてしまう。

 

 

「チィ!!!」

 

 

 ダフネが咄嗟に選んだのは地下への退避だった。自分の拳に力を入れて振り下ろす途中で時間停止を行う。溜められた力が停止解除と同時に放たれ(デコピンと同じ要領)即座に地面を破壊し地下駐車場へと逃げ込むことが出来た。

 

 

(俺のパワーがそこまでじゃないってのは今のでバレただろうな)

 

 

 性格的にパワフルと思われがちだが実際のところダフネ自身にそこまでの力はない。上級悪魔の中では最下級と言ってもいいほどにパワーはなかった。だからこそ能力を使うことで威力を補ってきた。それを隠す為にも常日頃から力を溜めることを行っていたが今の予想外の爆発への対処で一瞬動きを止めてしまった。アドラメレク程の悪魔ならばこれだけで能力を推察されることをダフネは経験で知っていた。実際、以前『病孤涙苦』と足止め戦闘を行った際はそれで即座にバレて対処されたのだから。

 

 

「まじぃな……。決定打がねぇ。どうやってあのババアをぶっ潰すべきかねぇ」

 

 

 時間操作という能力は万能と言っていいほどに何でもできるが、唯一の難点を上げるとすればそれは破壊力の欠如だろう。事実超高速の連打をアドラメレクに浴びせてもなお今もまだ十分に戦闘が可能な状態だ。それを続けようにも近付けば体力を削られ奪われていく。長期戦は間違いなくアドラメレクに有利でありどうしようもない事実だ。

 

 

「ここでこうして考えられる時間もそう長くねぇ。一気に勝負を決める方法を考えねぇと……」

 

 

 自身の思考のみを加速させることで思考時間を作り出しているがそれも長くは持たない。アドラメレクならば即座に自分を追ってくるか更なる罠を仕掛けて待ち受けるかのどちらかを選択してくる。どちらにしろ長い時間をかけるのは悪手。

 

 

「こういう時ヒルダがいりゃいい考えが浮かぶかもしれねぇのによぉ……。ディアンナでも俺より考えられるだろうし」

 

 

 リョウの命令、というより頼みで天使や怪我人の治療を手伝っているヒルダももしもの時の移動要因として結界外に待機しているディアンナも自分よりは考えることが得意だろうとダフネは思っている。事実もう考えるのやめて突っ込むのが最適解じゃないかとさえ思いつつ周囲を見渡して、二つの影を見つける。

 

 

「ああ、いやぁ……。この手があったかぁ……」

 

 

 悪魔らしく嗤ったダフネはその二つの影に近寄る。この状況でまだここに残っている以上根性はあるのだろうと判断して。一人で勝てる可能性は残念ながら低い。それだけアドラメレクは強いし相性も良くはない。触れれば何もかも奪ってくる炎に対し触れなければ能力の行使も出来ないダフネでは対処法も限られる。そしてそのことをアドラメレクも熟知している。

 

 

「なら、計算外のもので外からぶん殴れば話しは早いよなぁ?」

 

 

 誰もここにいることを想定していなかった二人――――竜崎登とヒャン・フレイムがそこにはいた。

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