【三章開始】いずれ神成る恋物語-天使と悪魔とラブコメ生活- 作:ビスマルク
「うーん、すごい迫力だね」
『そりゃまぁリョウちゃんの“我欲”でより強化された影だからねぇ。そりゃ上級悪魔だって一方的にやられるってば
さて、このまま影による圧殺で『永死殺総』を倒せればいいのだがそう上手くはいかないだろう。エルをここまで追い詰めたという実績だけでも十分にヤバいが、今の奴は間違いなく僕達にこだわっている。この程度で終わるくらいの執念でこちらを襲うなどするはずもない。一切の油断なくここから詰めろまでもっていかなくては。
影の蛇に乗ったまま頭上高くを取りながらエルをお姫様抱っこしながら考える。ここからどうやって攻めていくべきかを。
「リョウ君リョウ君、少し仮面を外してくれませんか?」
「えっ、いいけど……」
今も抱きかかえているエルにそう言われて仮面を取る。何かあったのだろうか。流石に鏡を見る時間もないので今の姿に関してはほとんど把握していないのだが。そう思っているとエルの顔が見る見るうちに不機嫌になっていく。表情はあまり変わってないけど僕にはわかる。これはかなり機嫌が悪くなっている奴だ!!!
「ど、どうしたのエル?僕なんかやっちゃった?」
「いえ、リョウ君は悪くありません。聞こえてますよね金髪悪魔」
『聞こえてるけどそれが何かぁ?アタシとリョウちゃんは今や文字通り一心同体なんですけどぉ?』
「リョウ君の目の色が貴女と同じなのはどういうことなのか答えてくれませんか」
「えっ、僕の目今はリルナと同じなの?」
リルナと同じという事はあの綺麗なオッドアイに僕もなっているという事か。それは、かなり嬉しいのだが僕ではあの目の魅力は引き出せないだろうからそこは残念だ。リルナの目はリルナが持っているからこそよく似合うし綺麗だと思うのに。
『前の“魂魄契約”よりももーっと深く繋がっちゃったからさぁ。身体的特徴もリョウちゃんと共有することになったみたい。まぁアタシにとってもこれは普通に予想外だったから見逃してほしいかなぁって。あ、でもリョウちゃんがアタシ色に染まったみたいなところあるからかなり嬉しいかもだけどね!!!』
「リョウ君、今すぐ髪を銀色に染めましょう。大丈夫です、私がしっかりちゃんと最後までやりますし染め直す時もちゃんと責任取ってやりますから」
『はぁ?リョウちゃんの髪を染めるとか正気ですかー!?リョウちゃんは黒髪が一番だと思うんですけど!!!そんなにアタシがリョウちゃんを自分色にしてるのが羨ましいのかなぁ!?』
「羨ましいし妬ましいに決まっているでしょう!!!なんですかこのお揃いの目の色は!!!私だって……私だって!!!」
『ハァ!?妬ましいって言ったらアタシの方こそ妬ましいんだけど!!!アンタはリョウちゃんからキスされたじゃん!!!アタシの時はアタシからしたのに!!!風天使の時だってあっちからだったし!!!リョウちゃんからされたのアンタだけで無茶苦茶ムカつくんだけど!!!』
「リョウ君とキスした!?なんですかそれ聞いてません尋問する許可を願います!!ええ、根掘り葉掘りこれまでの活動について聞かせてもらいたいところです!!!ああそうだ!!!ドッペルが海外でも活動してると聞きました!!!その時にリョウ君が色々とやらかしてないかも聞かないと!!!!」
『あーーーー、うん。まぁ、あれだよ。リョウちゃん海外じゃ殆どドッペル状態だったからリョウちゃんとしてやらかしたことはないよ。うん、ちょっと脳を焼いてる連中がいるかもだけどそこまではアタシも責任持てないし』
「リョウ君?」
「心当たりはありません」
僕の中にいるリルナとエルの言い争いがどんどんエスカレートしていく。この状況を止める方法は僕にはなくただ聞いているだけしか出来ない。これもまた僕が選んだ選択の結果だというなら受け入れるしかないのだろう。竜崎、これが責任を取るということだ。
「―――――――――――調子に!!!乗ってんじゃねぇえええええええええええ!!!!!!」
エルとリルナの舌戦が続くと思われたその瞬間、殺到していた影を全て蹴散らしその中から『永死殺総』アネモネが姿を見せる。傷だらけでありながらこちらを見上げるその表情からは一切弱さが見えない。未だにこちらに対する殺意は保っている、いやこれまで以上に漲らせている。
「ドッペル……!!エル・ライトガーデン……!!!ちょうどいい、お前達二人共ぶっ殺す!!!そしてその次はシルフィ・エアロードだ!!!『病孤涙苦』の仇!!『病孤涙苦』を殺した人間!!!天使!!!全員皆殺しにして私の下に付けて永遠と使い倒してやるよォ!!!!!」
『永死殺総』のスカートの下から数えきれないほどの鳥籠が落ちていく。あの中にあるのは全てが死体でありその能力の結晶なのだろう。これまで集めてきた、殺してきた人間、天使、悪魔。その数は僕の想像を超えるほど多い。間接的には『病孤涙苦』の方が多いかもしれないが直接的にだったら『永死殺総』の方が多く殺しているだろう。比較対象にあの屑が並ぶ時点で相当ヤバいことには間違いない。
「そんな未来あり得るもんかよ」
鳥籠が解放されれば即座にその中から大量のゾンビが現われ襲い掛かってくるだろう。
「お、まえ」
「そちらにばかり気を取られていいのですか」
鳥籠を封じられたことによる一瞬の動揺を捉えたエルが一瞬で『永死殺総』の懐に入り込む。その速度は誰の目にもとらえることは出来なかった。それは強化された僕の目でも同じで、まさしく光の速さといっても過言ではなかった。
「ッ!!!!」
「そっちは囮です、よッ!!!!!!」
エルが突き出す“光槍”を咄嗟に弾いた『永死殺総』の腹に加速したエルの拳が突き刺さる。口から血反吐を吐きながら飛ばされるも飛距離はそこまでなくエルの射程距離圏内にいるままだ。
「
次のゾンビを出すことを諦めて今出しているゾンビを僕とエルそれぞれに殺到させる。流石に動き回る全てのゾンビを拘束することは出来ない。それでもこのまま圧し潰されるわけにもいかない。彼らに対して恨みは一切ない。あるのは憐れみだけ。それさえも彼等に対する侮辱になりえるかもしれないけれど。
「ごめんなさい。僕達は、貴方達を踏み越えて生きます」
飛び掛かってくる天使と悪魔、影の蛇を伝い上ってくる人々の残骸にそう伝える。彼らの生前を知る術はないし、それに干渉することも出来ない。彼らがどんな人間、天使、悪魔だったかを知ることも出来ない。だからこそ今ここにいる彼らの魂に許しを乞う。それが自己満足だとしても。
「“影爪”、かかってこい」
一瞬だけ目を閉じて、見開いた瞬間に影の爪を振るい全てを弾き飛ばす。リルナとより深く繋がったことにより自分の中にある“我欲”をより引き出すことが出来るようになった。これまで以上に強化された肉体に任せて空に伸ばした影を足場に跳びはねる。
「ッ――――――!!」
「ドルザルクと同じ系統の能力!!」
全てを壊そうと振り下ろされる巨腕に対して真っ向から迎え撃つように拳を振り上げる。ぶつかった瞬間周囲全てを吹き飛ばすほどの衝撃が襲うもそれさえも耐えてより力を引き出す。滑らせるように相手の拳をすり抜けさせて懐に入り今出せる全力で殴り飛ばす。
「
生前の頑丈さはなく空に飛ばされたその死体は粉になり、煙となって姿を消した。最後の言葉をなんとなく理解でき少しでも納得できたのであれば幸いだと思う。そんな感傷に浸る間もなく様々なゾンビが襲い掛かる。毒ナイフを振る悪魔に“影爪”を振るう。火花が散る中でその毒刃に僕の後ろに飛び出した天使が氷柱を放とうとしているのが映る。
「“影牢”」
「「ッ――――!!!」」
咄嗟に自分を中心に影のドームで外からの攻撃全てを防ぐ。同時に暗闇の中でも見えるようになった目で目の前の毒刃を振るう悪魔を倒す。小回りが武器なのだろう、その小柄な体躯に見合った速度で振るう毒刃は脅威だが、跳びはねる余地のない空間ではその脅威も半減する。毒刃をその手から弾き飛ばし空に舞っているそれらに目が向いた瞬間“影爪”で貫いた。
「
声にならない声だけ残しその悪魔もまた消える。影の中に入り込み、同時に“影牢”を解く。そこにいるはずの仲間と敵が消えたことに天使ゾンビが動揺している隙にその足を掴み影の中に引きずり込む。以前は出来なかった同意なしに影世界に引きずり込むことも今ならば出来る。
「ッ!!!!!」
「遅いよ」
なにも見通せない影の世界で唯一視認出来た僕に対して即座に氷柱を飛ばす。その氷柱は真っ直ぐ僕に突き刺さり、影となり消えた。
“影形”、影で作り出した僕の分身。この影世界ならばそれが無制限に出すことが出来る。次々にゾンビをこの中に引きずり込んでいきすぐに無力化していく。動く死体であることから解放された彼らは一言だけ聞き取れないような声を残して逝ってしまう。せめてその魂に安寧があってほしいと願う。
最後に残った氷の天使と相対する。背後に用意された氷の矢に両手で持つ氷の剣。真っ直ぐ見てくるその冷たい双眸に確かな戦意を感じ“影爪”を構える。互いに言葉なく同時に踏み出し互いの武器をぶつけ合う。氷の矢を“突影”により弾き飛ばし“影爪”で氷の大剣を壊す。だが壊した程度で彼の天使は止まらず大剣を再構築して再び振るう。振るう度に壊れるも壊れる度に再構築する。その速度は瞬き一つする間に完了する程で、そこまで研鑽を重ねてきたことに心底からの経緯を抱く。
そんな戦いも長くは続かない。武器をいくらでも再構築できたとしてもその身体はそうではない。死体となり脆くなったその身体は動きについていけず崩壊していく。完全に崩壊しきる前に一歩踏み出しその身体を“影爪”で貫いた。この戦士に勝つのであれば、せめて身体の崩壊という自滅ではなくきちんと勝ちたかった。その代償に肩に氷が突き刺さるが、必要経費だろう。
「
満足げに笑い彼もまた死体一つ残さずに消えた。魂を、肉体を、死んだ後も弄ぶ。そして役割を果たせなければ塵一つ残すことを許さない。『永死殺総』はどこまで行っても他者を踏みにじることしか出来ず、それ以外をしようとしない。
「なんでこうも、ムカつく事する奴ばっかなんだろうね」
『そうじゃなきゃリョウちゃん狙って襲い掛かってこないよ』
リルナの言葉に納得して僕は影の中から飛び出した。これ以上被害者を、魂の牢獄に囚われる人を増やさないためにもここで奴を完全に仕留めることを決意して。
今回の曇らせは良かったか?
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最高だった
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良いと思う
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もっと時間をかけて欲しい
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絶望が足りてない
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もっと序盤で見たかった