俺の名前は明智圭一郎。小林の良さは俺だけが知っている。   作:旧姓小林

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第3話

「ふむ……」

 

 いつもの如く、心地の良い風と運動部の活気が流れ込んでくる。

 しかし、圭一郎はいつも以上に難しい表情で、机の上に置かれた便箋を見つめていた。

 

(どう見てもラブレターだよなぁ)

 

 今朝下駄箱に入っていたそれは、明らかに圭一郎に宛てられたラブレターに間違いなかった。

 宛名まで書いてあるのだから、入れ違いという線も存在しない。

 

(まぁ、普通に断るだけなんだが──)

 

 それはそれとして、便箋開けられずにいる。

 恋愛に興味がないとかそういうことではなく、意中の女子の一人や二人居る身としては、素直に喜べなかった。

 

(俺にこんなもの渡してくるような女子に覚えはないしなぁ)

 

 そんなせいか、活動に身が入らなかった。

 

「明智先輩入りますよー……って、それどうしたんですか?」

「ラブレター。下駄箱に入ってた。それよりも、ノックはしろ」

 

 いつもの如く、みくるが部室にやってきて、いつもの如く、圭一郎が意味のない注意をする。

 

「ラブレター!? え、明智先輩、誰かに告白されるんですか!? 中身読みました!?」

「この年頃の女子はすぐこうだ……読んでない」

「何でですか! 体育館の裏手で待ってたらどうするんですか! ほら、早く!!」

 

 みくるも探偵を目指しているものの、結局中身は年頃の女子中学生であり、この手の話は大好物なのか食い付きが良かった。

 

「どうせ受ける気もないんだが……ん?」

 

 仕方なくペーパーナイフで便箋の封を切って中身を取り出すと、赤と青の薔薇のポストカードが一枚封入されていた。

 

「『あなたの大切なモノはいただいた』……いや、なんだこれ、予告状?」

「過去形なら予告状ではないのでは?」

「そうだが……青い薔薇なんて見たことない」

 

 圭一郎が意図不明の手紙を便箋ごとホワイトボードに磁石で留める。

 いくらなんでもその扱いはいかがなモノかとみくるは眉間に皺を寄せる。

 

「心当たりとかないんですか?」

「……全くないな」

 

 何となく、幽霊部員の顔が思い浮かんだが、顔は出てきても記憶が全くない。

 もっとも、その記憶の顔も本当にそうだったのかもわからない。

 

「まぁ、何にせよ。差出人も意図も不明な手紙はいたずらとして処理するしかないのだが……それじゃあ面白くない」

 

 折角、目の前に謎があるのだから、推理小説研究部として見過ごすわけにはいかない。

 

「投函時期は朝の散歩をしながら開門と同時に登校したタイミングとほぼ同時刻……」

 

 圭一郎がホワイトボードに情報を書き込む横で、別の情報をみくるが追記する。

 

「でも、開門を担当する教師や用務員さんは明智先輩より先に来てますよね?」

「だな。だけど、それはないな」

 

 タイムテーブルとは別の場所に四角を二つ書いて独身・既婚というカテゴライズをしてその中に女性教師の名前を書いていく。

 

「独身の教師陣が書いたとして、朝日先生は武本先生とそういう感じらしいし、中野先生は子供が二人、萩原先生は今月末お見合いだそうだ」

「どこからそんな情報仕入れてくるんですか……」

 

 あくまでもここは推理小説研究部。

 文芸部と対して変わらないはずなのに、圭一郎の探偵としての能力にみくるは毎度のことながら不思議に思える。

 

「まぁ、俺は昨日は普通に帰ったから放課後に生徒が投函した。という線もあるが……まぁ、そうなるとキリがないな」

「……じゃあどうするんですか? 迷宮入りにでもするつもりですか?」

「本人が来るまで待つとするさ。迷宮から出てくるまでな」

 

 便箋をホワイトボードから取って鍵付きの棚にしまう。

 

「きっとこれは予告状だからな。いつか返しに来るというな……勘だが」

 

 いただいたのであれば、いつか返しに来るというメッセージという可能性もある。

 圭一郎の好きな作品にも、そういう怪盗がいた。

 

「推理の最後が勘ってどうなんですか?」

「たまには勘も必要な時もある」

 

 理屈もへったくれもない圭一郎の言葉に呆れてみくるは帰り支度を始める。

 

「……私、もう帰りますね」

「気を付けろよー」

 

 その日、下校する間際に特に意味はないのだが、みくるは屋上や体育館の裏を確認してしまった。

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