また1年が経過した。
現在俺はバリバリ依頼をこなして金を貯めている。
現在は3月の終わり。
あと数週間で俺達の誕生日、4/24が迫っていたのだ。
遂に20歳、大人の仲間入りとなる。
その為、前回までは資金の関係で出来なかったが今回は
カーリーに誕生日プレゼントを用意することにしのだ。
しかし、
生まれてこの方、なんなら前世も含め女性に対してプレゼントなんて送ったことがない身。
一体何を渡したらいいのか検討もつかないのだ。
今ある候補としてはホイールズ・インダストリー製の大剣だ。
しかし、女性の誕生日プレゼントでこれは本当にあってるのか?
わかんないのでアパートの隣人達に聞きに来ました〜。
「って訳でショーンおじさん
意見求む」
「急に扉蹴破って入ってくるから強盗かと思ったぞコノヤロウ」
こういう時に頼るのがこの男!ミスターショーン!
カーリー以外で1番長い付き合いだし、
年上の同性な為かついつい頼ってしまう。
「相棒への誕生日プレゼント!
頼りになる大人からの意見よこしやがれください」
「人に物頼む態度じゃねえなおい」
「頼んますよおじさーん
プレゼントとかこの生活じゃあ思いつかねえんだよ」
「相棒ってカーリーだろ?
そんなの簡単じゃねえかよ」
「お!!さすがおじさん頼りになる!!」
今まで描写こそしてなかったが、かなりの数この人には相談をしていた。
毎回問題解決までは行かないがの糸口に繋がるようなアドバイスなどくれた彼はこんな相談でもきっといいアイデアを……
「『プレゼントは俺』ってやれば」
「はい却下、退散退散」
「あ、ちょっ、じょうだ」ガチャン
どうやらあのおっさんはロクなアドバイスもできない男だったようだ。
長年頼りにしてた人がこんなにも情けないなんて。
俺、涙が出そうだよ。
てかなんだよあれ、それで喜ぶのは男だけだっての。
よし、次々
気を取り直していこう。
さて、次に聞きますは上の階に住むグースお姉さん。
やっぱ女性へのプレゼントは女性に聞くに限るね!
「こんちゃー、いつもお世話になってる下の階のラックです」
「あらラック、丁度作り過ぎたご飯おそそ分けに行こうと思ってたの」
「あざっす!いつも助かってます!」
この人には時よりこうして料理のおそそ分けを貰っている。
ぶっちゃけた話、俺もカーリーも料理はまるでダメ、
食卓のレパートリーは塩振ってサッと焼いた物位なものである。
そんな中振る舞われる彼女の料理には毎度心を踊らせるものだ。
真冬の仕事終わりで身も心も冷え切った時にくれたキムチチゲ、
あれは美味かった。
「今日はどうしたの?
あ、タッパーはあるから使ってね」
「あのですね、あ、ありがとうございます
えっと、もうすぐ誕生日なんですけど、カーリーに渡すプレゼントが思いつかなくて相談を……」
「まあ、もうそんな時期なの
そうねぇ、無難なものだとネックレスなんかのアクセサリーだけど……わかるでしょ?」
「こんな裏路地でそんなもの付けていたら狙われる
もう何度もそういう所見てるんで分かりますよ」
マジでそれなんだよな、
変に高価で目立つものを選ぶと確定でカーリーに危険が及ぶ。
もうやだここの治安酷すぎ!!!
「それなら少し高めの入浴剤とかどうかしら
女の子はそういうの喜ぶわよ」
「なるほど、さすがお姉さん!
どっかのおっさんと違ってちゃんとしたアドバイスくれる!」
「あら、よかったわ」
「この恩は物で返します!
あ、貯金これから消し飛ぶから高いのは無理なんで!」
有益な情報を得た俺はすぐに立ち上がりアパートを飛び出した。
「貯金消し飛ぶって
あんまり買いすぎないのよ〜」
そんな俺を若干の呆れを含みながらも微笑ましそうに見送ってくれた。
アパートを飛び出し十数分、たどり着いたのは以前戦利品を売った商店。
あれ以降、他にも回ったが結局ここに戻ってくる。
見た目ボロいが1番良心的なのだ。
中に入ると相も変わらずしわくちゃな老婆が目を見開いて座っていた。
ここ数年でシワが増えたな、あと5年もしたら死にそう。
「あたしゃあと20年は生きるつもりだ失礼な小僧」
「ナチュラルに心読むのやめてくれよ」
「お前の考えることなんて手に取るようにわかるよ
何せ顔に書いてあるからね
そんなお前には明日から販売価格20%増」
「まーじ勘弁してくださいよ
このとーり!」
「ほんと簡単に下げれる安い頭だねぇ」
俺が失礼な発言をし、婆さんが値上げ
俺が土下座。
ここへ通うようになりひと月ほどでこの流れが定着した。
最初はどちらもガチだったが、今では互いに戯れとして楽しんでいる。
「簡単に下げられますよ
なんせなんの価値もないんでね」
「5級フィクサーになって何言ってるんだい
あんたここら辺ではある程度名が知れてるんだよ」
「そうなの!?」
「で?
今日は何を買いに来たんだい
まだ日用品の補充にはまだ早いなぁ?」
「実はもうすぐ誕生日でカーリーへの誕生日プレゼントを」
「そうかい」
「だから普段買わないようなにゅ「みなまで言わなくてもわかるよ
今持ってきてやろう」
俺が目的の物を言うより先に婆さんはヌルッと立ち上がり滑るように店の奥へ消えていった。
その動きはなんとも言えぬ気持ち悪さだった。
やはりあの婆さんは妖怪の類に違いない。
そんなアホみたいなことを考えていると奥から赤いリボンの束を持って婆さんが出てくる。
「あー、婆さん?
別にラッピングのリボン買いに来たわけじゃ」
「まったく、あんたもそんな歳になるなんて
子供の成長は早いねぇ」
「いや、ちょっと」
「誕生日プレゼントとなればこれは定番さ
あたしも若い頃やったわ」
「いや、だから」
「ほれ、これを身体に巻いて」
「てめえもそれか!!!」
プレゼント定番商品一覧!
みたいなの想像した俺が間違ってたわ!
なんだこいつ!
てかこの周辺は一定の年齢からそんな発想しか浮かばないようなやつしかいねえのかよ!!!
「何を怒鳴ることがある、これやれば1発で決まる。
あたしもむかーしやって大成功したでよ」
「なんなんだよ中年過ぎた辺りの奴らはよぉ!!
てかそれ成功するのは女がやってこそだろっての!!!
そんなもん要らねえから入浴剤とかコスメとか!!!
なんかそういうの出せよ!」
「なんじゃ、つまらん
そんなのいつも買ってるじゃないかい」
「いつも買ってるやつよ高いのとか
なんか、ブランド物みたいなのあるだろ!」
「そんなもんないよ!
需要がないんだ!
供給は需要があって発生するんだ!
こんな所でそんなのにこだわる人間は皆無!
年に数回来るか来ないかの客の為に置く商品はないんだ!
欲しけりゃ巣にでも行くんだね!」
「ちっくしょう!
無駄足かよ!」
「なんだ何も買わないのかい!
冷やかしかい!
なんか買うまで帰さないよ!!!!」
結局リボンとその他数点買わされた。
てか、若い頃これやったのかあれが……あ、やべ想像したら吐き気が。
それにしても、あそこにないとなると他の売店探しても無さそうだ。
巣に行くかー?
いやでも、俺では検問所を通る為の審査だけで月が変わりそうだ。
とてもじゃないが誕生日に間に合いそうにない。
詰みだ、どうしたらたらここからプレゼントを買えるんや?
もうあとは、最初に決めてたホイールインダスリーズの大剣しか。
いやぁ、改めて考えると……武器かぁ
あぁ、あー、んん〜?
これ女性へのプレゼントに最も適さないよな。
最初俺は何考えてこれ選んだんだ……しかしこの際しのごの言ってられない、背に腹はかえられない。
プレゼント無しに誕生日を迎える訳にはいかないのだ。
現在は正午、
工房までは別の区まで行く必要があるため片道だけで少なくとも数時間はかかる。
購入手続きなど諸々済ませたとして、急げば日付が変わる頃には帰れるか?
色々考えながら、俺は工房へ向かう足を早めたのだった。
この頃、普段合わないようなトラブルに巻き込まれまくり結果23区に戻った途端掃除屋の相手をする羽目になったのはまた別の話。
暗闇にロウソクの明かりが20本、その光か微かに部屋を照らしていた。
静寂に包まれた部屋に突如「パンッ!!パンッ!!」と小さな破裂音が響きそれと同時に
「「ハッピーバースデー!」」
互いに祝い会う誕生日会が開始した。
誕生日ケーキのロウソクを2人で吹き消し明かりをつけると部屋はあちこち飾り付けがなされ、テーブルには毎年恒例の不格好なケーキの周りにはかなり火の通ったローストビーフ、生ハムサラダ、焦げの目立つガーリックライス、グースーお姉さんがくれたミヨックが並べられていた。
「ははー、毎度部屋の飾りとかはいいのに
見栄え悪い誕生日メニューだこれ」
「私は好きだぞこういうの
……なんか飾りのひとつやけに大きくないか?」
「いや〜優しさが染みるねぇ
酒も色々買ったぜ
ビールにワイン、ウイスキーにシャンパン
飲酒解禁の大盤振る舞いだオラ!」
「律儀に控えてたのはお前だけで私は飲んでたがな」
やはり祝い事はテンションが上がるものだ。
あらかじめアパートの住民には騒がしくなると断りを入れているので久しぶりにどんちゃん騒ぎで楽しんだ。(主に俺)
「ローストビーフかっっっった!
火が通り過ぎ厚く切りすぎ!」
「おい、この生ハムサラダのハム」
「残念ながら普通のハムです
生ではありません!」
「なんでここだけ手を抜くんだよ」
「ここ近辺だと人肉の生ハムしかないからね仕方ないね!
ミヨックうまー」
料理に舌鼓を打ったり。
「おい、火」
「はい姉御、ささコチラですぜ」
「スゥゥゥ、ハァァァ
……お前も吸え」
「え、いや自分は別に」
「私のタバコが吸えないってか!?」
「え、あ、いや
もちろん吸わせていただきやす
スゥゥゥゲホッ!」
「おいおい、僕ちゃんにはキツかったか〜
そんなむせやがって〜
……悪い、変な酔い方してる」
「ゲホッ、ゲホッ
だいじょーぶ、俺も楽しんでるから」
ギャグみたいな初めてのタバコデビューを果たしたり。
「おぇ……」
「おい大丈夫か?」
「キャパとか把握してないのに勢いに任せて飲みすぎた……う"っ!」
「片付けなんかは私がやるから、落ち着くまでトイレに陣取ってろ。」
「まじごめんなさい、ほんとごめんなさい」
「……」
「え、なに?
なんで無言で見てくんの?」
「いや、なに
こういう姿見てると思い出すなって」
「思い出す?こんな無様な姿でなにを?」
「初日の腹下し」
「やーめーお"ぇ!!!」
人生初のキャパオーバーリバースは予想してなかった。
そんなこんなで楽しいひと時を過ごしのだった。
しかし、楽しい時間はあっという間に過ぎてしまい用意していた料理は食べ終わり酒も空瓶に変わっていた。
そろそろお開きにするかというタイミングでカーリーは一度席を外した。
グットタイミング、俺はすかさず部屋の飾りに見立てて隠しておいたプレゼントを取り出す。
言及された時は冷や汗吹き出したがどうにか勢いで誤魔化した。
これを受け取った時、カーリーはどんな反応するかな。
5分ほど経ったか、なにやらガサゴソと聞こえてきた。
一体何をしてるのか気になり席を立とうしたところでカーリーは戻ってきた。
その手には30cm程の長方形の箱を持っている。
「戻ったぞ……なんだそのバカでかい箱」
「えっと、サプライズの誕生日プレゼント……だったんだけど
え、もしかして」
「こっちも、サプライズ
……考えることは同じみたいだな」
「「……ふっ、ははははは!!!」」
まさかどっちもサプライズを企画してるなんて思いもせず互いに鳩が豆鉄砲食らったような顔になってしまい、
その顔があまりにも馬鹿馬鹿しい顔だったため同時に大爆笑してしまった。
「はは!!なんだよその顔」
「お前こそ、
通りでショーンおじさんが変な態度だったり
グースーお姉さんが微笑ましそうに見てきたはずだ」
「えー!まさかお前も聞きに行ったのか?」
どうやら、俺達は相当気が合うみたいだ。
計画も、行動も日にちが違うだけで同じ様なことをしていたようだ。
同じように人に聞き、同じような反応をし、同じようにプレゼントを用意した。
それを知ってまた面白くなり笑いながら互いのプレゼントを交換する。
「誕生日おめでとうカーリー、これは日頃の感謝の気持ちだ」
「おめでとうラック、私からも日頃の感謝を込めてこれを贈る」
箱を受け取り、その場で開封すると美しい刀身のナイフ。
俺には武器の良さを見分ける目は備わっていない、しかし素人目に見ても業物とわかるそれには目を奪われた。
「狼牙工房製のナイフだ
以前使ってたのは壊れだだろ
得物は変えたのは知ってるが一目見た時お前が浮かんでな」
「……」
「気に入らなかったか?」
「……え?あ、いやいやそんなことはない
少し見惚れてただけだ。
ありがとう、すごく嬉しいよ
俺からはホイールインダストリーズの大剣だ
俺にはちょっと扱いきれないような代物だけど、
きっと君なら使いこなせるだろ?」
カーリーは包みを開き取り出した大剣を構える。
俺では構えるだけで腕が震えるような代物を軽々と扱っている。
片手で…え?
やだ、腕力強すぎ。
「重いな、けど扱いきれる。
どうだ?」
かなり自慢げな顔をしながら片手で力強く振るう。
俺が扱いきれないって言ったからか?
「まったく、君には敵わないよ」
お互いのプレゼントを確認したあとまたどっと笑った後、誕生日会はお開きとなった。
最初にぶっぱなしたクラッカーの紙テープを片付け、飾りは纏めて収納にしまい、皿は一先ず水に漬けて置いておく。
そこらでもうめんどくなり、残りの片付けは明日に回そうとしていたら声をかけられた。
「ラック」
「ん?」
「改めて言うがプレゼント、本当に嬉しかった。
その、これからもよろしくな相棒」
「…はは、こちらこそ頼んだぜ相棒」