夢想少女ノ魔女裁判   作:タイホくん

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日常パート その18

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───同日 9時45分 牢屋敷内 2階廊下───

 

 午前中の自由時間は10時まで。時間内に監房に戻っていないと懲罰房行きの対象となるため、すぐに帰還できるように残りの時間は牢屋敷内で過ごすことにしました。

 あてもなく、図書室に入って本をペラペラとめくっていましたが、相変わらず読めそうにありません。すぐに諦めた私は図書室を出て、早めに監房に戻っておこうと思いました。

 

(推奨BGM「小鳥達の閑話休題」♪9)

 

オリ

 「‥‥壁紙に違和感がありますね」

 

 図書室を出て階段の方へ向かっていると、何もない壁に向かって神妙な面持ちを浮かべるミオリさんを見かけました。左手を顎の下にあて、空いた右手で壁をトントンと叩いています。

 

コト

 「‥‥何してるんですか、ミオリさん」

 

 彼女に話しかけると大抵変なテンションで捲し立てられるのでやや躊躇しましたが、それよりも“壁紙の違和感”とやらが気になった私は思わず話しかけてしまいました。

 

オリ

 「あいや、マコト殿。いや、此度の自由時間は牢屋敷内の散策に時間を割いていたのですが‥‥ふとこの壁を見たときに違和感を覚えましてな」

 

 ミオリさんは変わらずトントンと壁を叩いています。

 

オリ

 「よく見てくだされ。あたしが今叩いているこの部分だけ、音と壁紙の色がやや違うように見えるのですよ」

 

 ミオリさんが叩いている部分をよく見てみます。確かに、叩いている部分の壁紙は白っぽいのに対し、そうでない部分の壁紙はやや黄ばんでいます。まるで、白い部分だけ新しく壁紙を貼り直したように見えます。

 続けてミオリさんと同じように壁を拳で叩いてみます。黄ばんでいる部分はゴスゴスと鈍い音を立てるのに対し、白い部分はカツカツと軽い音が響きます。

 

オリ

 「ね? 何かおかしいですよね?」

 

 同意を求めるように、ミオリさんの両の眼がキラリと私に向けられます。シュバッ、という効果音でもつくかのようにこちらに視線を送ってくるものですから、思わず頷いてしまいました。実際、この壁には違和感があるので、どのみち彼女の意見には賛成なのですが。

 

オリ

 「謎の屋敷への監禁、それに加えて壁紙の違和感。ある種テンプレとも言えるこの状況。で、あるならばこれを解決する手段はもはや1つしかありませんな」

 

 ミオリさんはみぞおち辺りに手を伸ばすと、そこに手を突っ込みます。空間ポケットから何かを取り出そうとしているようです。

 

オリ

 「こんなときは─‥‥。テッテレー、皿の破片~」

 

 ミオリさんはポケットからなぜか皿の破片を取り出しました。怪我をしないように、片側に布が巻かれています。

 

コト

 「‥‥なんて物を持ち歩いてるんですか」

 

オリ

 「いやいや! この手の屋敷に閉じ込められたときに、真っ先に回収しておくべきアイテムでしょう!」

 

 何を言っているのでしょう、この人は。

 

オリ

 「ともかく! この手の違和感のある壁紙には、皿の破片を使うのが常套手段! 拙者の剣捌き、とくとご覧あれッ!」

 

 ミオリさんは何のためらいもなく皿の破片を壁紙に突き立てると、そのまま縦に切り裂きます。ビリッと小気味のよい音と共に壁紙に切れ目が刻み込まれます。その隙間からは‥‥木製の何かが見えます。

 続けてミオリさんは横方向に皿の破片を振るいます。十文字の切り目が壁紙に刻み込まれました。

 

オリ

 「やや。先端が欠けてしまいましたな。これはもう使い物になりませんし、あとで処分しておきましょう」

 

 皿の破片は早々に役目を果たしたのか壊れてしまったようです。残念そうにポケットにしまい込むと、ミオリさんは十文字の切り目に手をかけます。そのまま勢いよく壁紙を引きちぎると、私たちの眼前には木製の扉が現れました。

 

コト

 「こんなところに‥‥扉、ですか」

 

オリ

 「そのようですな。幸いスライド式の扉のようです。どうやらプラスドライバーで、ドアノブを拝借する必要はなさそうです」

 

 プラスドライバー‥‥? ドアノブ‥‥? 拝借‥‥?

 

オリ

 「あいにくライターを持ち合わせていませんが‥‥入ってみましょうか。マコト殿」

 

コト

 「え、あ、でも」

 

オリ

 「突撃ィ!」

 

 私の同意を得る前にミオリさんは扉を臆することなく開きました。そこにあったのは‥‥。

 

コト

 「これは‥‥美術室、でしょうか」

 

 キャンバス、パレット、絵の具か何かが入っているであろう金属製のバケツ‥‥一目で芸術活動を行うことができる部屋であることは明らかでした。

 

オリ

 「そ、そのようです。まさか、こんなところに部屋があるとは‥‥それも、あたしのようなオタク向けの!」

 

 思えば、中庭から見えるバルコニーの数と、2階の部屋の数が一致していませんでした。最初から2階に隠された部屋があることは一目瞭然だったようです。

 

オリ

 「むふ~。創作意欲が高まりますな。ポケットにしまっていた“御神体”‥‥もといフィギュアは没収されてしまいましたが、ここなら新しく自分の手で再現したものを作れそうです」

 

 ミオリさんは部屋の中を物色して粘土を見つけ出したようです。あれを使ってフィギュアを作ると言っているようです。

 

オリ

 「ぬおおおおッ! やる気が湧いてきたッ! やってやるぞー!」

 

 1人で勝手に騒ぎ出し始めたので、私はそそくさと美術室を後にしました。このままここにいると巻き込まれかねません。

 ミオリさんの歓喜の声を背に私は自分の監房への帰路につきました。

 

オリ

 「最ッ高ー!」

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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