夢想少女ノ魔女裁判   作:タイホくん

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日常パート その20

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─同日 21時20分 牢屋敷内 シャワールーム─

 

(推奨BGM「ボクとワタシの」♪10)

 

 「いーやーだー、お風呂めんどくさいぃぃぃ!」

 

リナ

 「こらー。女の子なら1日1回はお風呂入らなきゃ駄目っしょ!」

 

 「うおおお、差別だ! お風呂に入らない女の子がいたっていいじゃないかあ!」

 

 シャワールームに来て早々暴れるチサさんをセリナさんが抑え込みます。

 

 「‥‥抑え込むのが随分と板についている」

 

ヅハ

 「彼女の性格を考えると、入浴を拒否するのはこれが初めてではないようですね‥‥」

 

 チサさんを抑え込むセリナさんの手つきは嫌にこなれていました。妹さんがいると話していましたし、この手のある種の《荒事》には慣れているのかもしれません。

 

 牢屋敷のシャワールームは全部でブースが3つ。13人いるため、複数人で訪れると順番待ちが発生してしまいます。チサさんが脱走する前にシャワーを済ませたいと、セリナさんがチサさんと一緒のシャワーブースを使い始めました。

 

 残る2つは先にシヅハさんとミトさんに譲り、私は1人シャワールーム内のロッカールームをうろつきます。

 

 ロッカーには監房と同じようにそれぞれ囚人番号が振られており、毎日朝に新しい服が支給されているようです。

 その代わり、使い終わった服はシャワーブース横のダストシュートから捨てなければならないというのがルールになっているようですが‥‥。

 

コト

 (‥‥新しい服は毎回どこから現れるのでしょう)

 

 自分の囚人番号‥‥27番のロッカーを開けます。中には新しい服。きれいに畳んで置いてあります。

 もしかして看守さんかゴクチョーさんが毎日せっせと作り直しているのでしょうか。その光景を想像すると‥‥ほんの少しだけ微笑ましいです。

 

ヅハ

 「篠宮さん、お先です」

 

コト

 「シヅハさん、早いですね」

 

 バスタオルを巻いたシヅハさんがロッカールームに現れました。1人先んじて浴び終わったようです。湯気の中、髪先から滴る水がロッカー室の床を濡らしていました。

 

コト

 「後の2人はまだですか?」

 

ヅハ

 「白川さんは髪が長いからまだ時間がかかっているようです。星谷さんたちは‥‥」

 

 「うぎゃあああッ! 目がッ‥‥目がァ‥‥!」

 

リナ

 「だーかーらー、目ェ開けちゃ駄目って言ってるっしょ! どんだけベタなんよ!」

 

ヅハ

 「‥‥あの調子ですから、まだかかりそうです」

 

 断末魔にも似たチサさんの大声が隣のシャワールームから響いてきます。随分と大変そうです。

 

コト

 「そ、そのようですね」

 

 

───────

 

 

 私とシヅハさんは、先んじて廊下に出て3人を待つことにしました。湿気に満ちたシャワールームから一歩外に出ると、スッと爽やかな心地になります。中庭から流れ込んできた空気で、1階部分には常に新鮮な空気が満ちているようです。

 

 ふと隣を見ると、シヅハさんは珍しくフードを脱いでいました。この牢屋敷にはドライヤーがありませんから、タオルである程度の水気を取ったあとは自然乾燥に頼らざるをえません。

 

ヅハ

 「‥‥あの、篠宮さん。何か私の顔についていますか?」

 

 ジッと見つめられていたのが気になったのか、シヅハさんがややモジモジしながら私に問いかけます。

 

コト

 「あ、いえ。その‥‥フードを被っていないのが珍しいなーと思いまして」

 

 シャワーを浴び終えたばかりのシヅハさんは、フードを被っていないのに加えて、髪の毛がいつもと違って片側に寄っていないので、目元がしっかりと見えます。

 出会ってまだ数日ではありますが、彼女の顔をこうしてちゃんと見るのはこれが初めてかもしれません。

 

 じっくり見てみると、シヅハさんは端正で整った顔立ちです。ボブカットの綺麗な黒髪も相まって、和の美人といった言葉が似合う姿です。私の視線に恥じらう表情にも、どことなく美しさを感じて‥‥

 

ヅハ

 「‥‥そのへんで品評するのは辞めにしてくれませんか? ‥‥恥ずかしいです」

 

コト

 「な、何も言っていませんよ!?」

 

ヅハ

 「顔に書いてあります‥‥!」

 

 顔を真っ赤に染めたシヅハさんは、フードが被れない代わりに髪の毛をパッパと片目にかけ直すと、そっぽを向いてしまいました。‥‥怒らせてしまったでしょうか。シヅハさんは軽く頬を膨らませています。

 

コト

 「‥‥そういえば、やけに静かですね。さっきまでチサさんたち、あんなに騒いでいたのに」

 

 気まずい空気が流れる前に話題を変えようと、私は頭の片隅で気になっていた事を口に出します。さっきシャワールームにいたときには、嫌と言うほど騒がしかったセリナさんとチサさんの騒ぎ声がまったく聞こえません。

 

ヅハ

 「‥‥言われてみればそうですね」

 

 廊下は静寂に包まれています。シヅハさんの呼吸や、私に文句を告げる小さな独り言もハッキリと聞こえます。チサさんたちの騒音は、文字通り鳴りを潜めています。

 

コト

 「もう浴び終わったのでしょうか」

 

 そう言って私がシャワールームの扉に手をかけると、ちょうどミトさんが出てきました。そして、続けざまに聞こえてきたのが‥‥

 

リナ

 「だーっ! 逃げるな! 風呂上がりのネコじゃねーんだから!」

 

 「タオルで拭かなくても勝手に乾くもん! セリねえの助けなんかいらないッ!」

 

 相変わらず2人はギャーギャーとじゃれ合っているようです。シャワールームから出てきたミトさんは軽く耳を抑えながら、迷惑気な表情です。

 

 「‥‥元気すぎるのも、考えもの」

 

 軽く文句をたれながら、ミトさんは扉を閉じました。すると‥‥

 

コト

 「‥‥あれ。音が聞こえなくなりましたね」

 

 「‥‥ほんとだ。何でだろ」

 

 不思議に思ったミトさんが扉を開けると‥‥

 

リナ

 「だーかーらー走り回るなって言ってんの! いわんこっちゃない!」

 

 「頭が‥‥割れるッ! ぬおおおおおおおおおッ!」

 

 ‥‥どうやら走り回ったチサさんがずっこけたようです。セリナさんの反応を聞くに、大事に至っていないようで一安心です。

 

ヅハ

 「‥‥このシャワールーム、防音性が高いようですね」

 

 シヅハさんは扉を開けては閉じ、開けては閉じを繰り返します。その度に、2人の喧騒が消えては聞こえ、消えては聞こえを繰り返します。

 

コト

 「本当ですね。でも、なんで‥‥」

 

ヅハ

 「‥‥プライバシー保護のため、とかでしょうか。一応、それぞれのブースにシャワーカーテンも取り付けられていましたし」

 

 「‥‥本当に妙なところで囚人に甘いよね、この牢屋敷」

 

 シヅハさんの推理が当たっているかはともかく、このシャワールームが防音だということが判明しました。

 ‥‥いや、判明したところで何か利益があったわけではありませんが。

 

 それから約5分後。セリナさんに首根っこを掴まれたチサさんが出てきたので、私たちは一緒に監房へ帰ることになりました。

 

 




以下、作者後書き




















何となく風呂キャンキャラを用意したほうがいいと思ったので、チサさんは風呂キャンの民に仕立て上げました。
まあ、もとよりチサさんは風呂キャンの民ですがね‥‥。

チサとセリナのドタバタキャラは書いてて楽しいですし、勝手に動いてくれるので非常に楽です。賑やかし要員に頼りすぎるのも考えものですが。
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