夢想少女ノ魔女裁判   作:タイホくん

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日常パート その22

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───4月10日 7時10分 牢屋敷内 食堂───

 

(推奨BGM「迷宮の徒」♪8)

 

 一晩明けて午前中の自由時間。私たちは7時10分ぴったりに食堂に集合しました。

 と、言うのも昨晩22時すぎに、リクアさんから一斉メッセージで7時10分に食堂に集合するように指示があったからです。

 一体何ごとだと言わんばかりに、皆さん今日は時間ぴったりに食堂に現れました。

 

 「‥‥ご飯ないッ!」

 

 食堂の異変に真っ先に気がついたのは、案の定チサさんでした。確かに、いつも食事が並べられている大机には何も置かれていません。見事にもぬけの空です。

 

 「もしかして、今日は朝ご飯抜きなのか‥‥そんなのやだーッ!」

 

 これまた案の定、チサさんが暴れ始めました。さながらスーパーでお菓子を買ってもらえなかったことに文句をつける子どものようです。

 ‥‥一応中学生なのですよね、彼女?

 

 セリナさんが慌ててなだめようとします。なぜか同室のアキラさんは不在です。ついでに私たちをここに呼び出したリクアさんも。2人はいったいどこに行ったのでしょう?

 その答えはすぐに出ました。

 

クア

 「まったく、朝から元気なものだ‥‥。朝雛クンがお待ちのものはこれかい?」

 

 リクアさんが奥の厨房から出てきました。両手にトレーを乗せ、その上には‥‥湯気を上げる出来立てであろうパンが大量に乗っていました。

 

 「ご飯ッ!」

 

 床に寝っ転がってバタバタしていたチサさんでしたが、パンの匂いを嗅ぎつけた途端、素早く立ち上がるとトレーの方へと駆け寄っていきました。

 

キラ

 「朝雛ァ、まだだ。ステイ」

 

 奥から続けて大鍋を抱えたアキラさんが現れます。リクアさんの腕を掴んで離そうとしないチサさんを、がなりを効かせた低い声で静止させます。

 

 ほんの一瞬、彼女はセリナさんの方に視線を送ると申し訳なさそうに頭を下げていました。見かけによらず責任感の強い彼女ですから、同室ではない彼女に世話を任せていることを申し訳なく思っているのでしょう。

 

クア

 「集まってくれてありがとう。まだ炊事当番は明確に決めていないが、試験的に今日は私たちが朝食を作ってみた。早瀬クンには感謝しているよ」

 

 早瀬さんは「これくらいなんてことねぇ」と言って大鍋を鍋敷きの上に置きます。

 

 どうやらリクアさんが前日の夜にゴクチョーさんにコンタクトを取り、今日の朝食を看守の代わりに作ってもいいか許可を取っていたようです。

 リクアさん曰く、「仕事が減るからむしろ助かります‥‥」と二つ返事でOKが出たようです。

 

クア

 「と、いうわけだ。みんな是非食べてみてくれ」

 

 真っ先に駆け出したチサさんを先頭に、皆さん列をなして朝食をトレーに盛っていきます。

 メニューの内容自体はビスケットがパンに変わった程度で変化はあまりなく、なんなら謎の“緑色のペースト”と“ケミカル虹色ゼリー”が消えた分、品数は減っています。

 

 ですが、メニューのクオリティ自体が向上していることは誰の目に見ても明らかでした。それだけで自然とテンションが上がっていきます。

 

 私も逸る気持ちを抑えて食事をトレーに盛っていくと、着席後すぐにパンを一欠片、口に運びます。

 

コト

 (おいしい‥‥!)

 

 焼き立てのパンはフワフワで小麦の風味がしっかりとしていました。昨日までのモサモサのビスケットとは全く違います。

 

クア

 「その表情だと、気に入ってもらえたようだ。喜んでもらえてなによりだよ」

 

 リクアさんが近くの椅子に腰掛けました。珍しく笑顔を浮かべています。彼女が笑っているところを見るのはなにげに初めてかもしれません。

 

クア

 「イースト菌は見つからなかったから、代わりにベーキングパウダーを使ってみたんだ。物置に置いてあったのを見つけてね」

 

クア

 「分量は正直勘で決めたんだが‥‥ちょうどいい量を測れたようだ」

 

 リクアさんもパンを一欠片、口に放り込みます。味を確認し、満足そうに頷きます。

 

コト

 「か、勘で決めたんですね‥‥」

 

クア

 「実験的にはあまり正しくないが‥‥まあ、たまにはいいだろう。それよりもスープも飲んでみてくれ。そっちは早瀬クンが作ってくれたんだ」

 

 促されるままスープをひとくち飲んでみます。

 

コト

 「あ、“味”がちゃんとある‥‥」

 

 たったそれだけのことですが、それだけでも大きな変化でした。昨日までのスープのような水とは大違いです。

 

クア

 「早瀬クンには無理を言ってしまった。早起きする義理なんて無いのに、頼んだら引き受けてくれて‥‥感謝しているよ」

 

 リクアさんもスープを一口飲みます。スープの温かさに加え、アキラさんの優しさも相まってか、リクアさんはホッと一息緩んだため息をつきます。

 

ヴィア・ーゼンタール

 「ふむ‥‥中々よくできていますね。褒めてあげますわ、アキラ」

 

キラ

 「作ってもらった側の言い草じゃねえだろ‥‥」

 

ヴィア・ーゼンタール

 「あら、嬉しいくせに?」

 

キラ

 「それ以上言うとその口縫い合わせてぶっ殺す」

 

ヴィア・ーゼンタール

 「まあ怖い。殺されてしまいますわー」

 

 向こうではリヴィアさんとアキラさんが物騒な軽口を叩き合っています。

 あの2人はもうあれがデフォルトなのでしょうか。‥‥いっそあれがある種の愛情表現とか。

 今まで会ったことも無いようなタイプの人達なので、感覚が違うのかもしれません。

 

 周囲を見回すと、皆さんにこやかな顔で食事を摂っています。思えば私たちは全員初対面の間柄でした。多種多様な性格や価値観の人たちがこの場に一斉に集められています。

 それでも美味しい食事1つあれば、こうして和気あいあいとした雰囲気でいられる‥‥リクアさんの言っていた生活環境改善とは、こういった光景を目指したものなのでしょう。

 

クア

 「みんな注目。今日の流れについてだが‥‥」

 

 相変わらず真っ先に食事を摂り終えたリクアさんが、いつものように両手を鳴らして皆さんに呼びかけます。

 今日の作業は昨日の照明班が家庭菜園の農地決めに動き、寝具班が今日の作業が終わり次第合流。掃除班も頃合いを見計らって合流とのことでした。

 

 いよいよ家庭菜園の計画が本番に移るようです。その日、初めておかわりをした私は、今日の作業に向けて改めて気持ちを入れ直しました。

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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