【鳳月 カナデ】
「裁判をする‥‥と言われても、
何から始めればいいんでしょう」
【リヴィア・ローゼンタール】
「あら? 先ほどゴクチョーさんから
説明があったではありませんか」
【リヴィア・ローゼンタール】
「魔女‥‥すなわち、
この事件の犯人を探すこと」
【リヴィア・ローゼンタール】
「それがこの裁判の目的にほかなりませんわ」
【三条 エリス】
「え、えっと、まずその点について
疑問があるのですが‥‥」
【三条 エリス】
「今回の事件って、そもそも本当に‥‥
“殺人”と呼べるものなのでしょうか」
【リヴィア・ローゼンタール】
「あら? どういう意味かしら」
【三条 エリス】
「言葉通りの意味でございます。
事件現場の状況‥‥」
【三条 エリス】
「要するに真壁さまが亡くなられていた
その状況に、違和感があるのです」
【星谷 セリナ】
「違和感?
あーしは特に何も感じなかったけどな‥‥」
【朝倉 チサ】
「アタイも‥‥」
【早瀬 アキラ】
「まあ‥‥
2人とも捜査どころじゃなかったしな」
【鳳月 カナデ】
「それで三条さん。
現場にある“違和感”とは一体‥‥?」
【三条 エリス】
「みなさんは今回の事件を、
“殺人”と断定されていますが‥‥」
【三条 エリス】
「私は今回の事件に、
“事故”に思える点があると考えています」
【倉科 ミオリ】
「ちょーっと待ってください!」
【倉科 ミオリ】
「リクアさんがただの事故で死んだなんて考え、
あたしには到底受け入れられないです!」
【倉科 ミオリ】
「あの人は、そんな不注意で
命を落とすような人じゃないですよ!」
【白川 ミト】
「う、うん‥‥倉科さんの言うこともわかる。
真壁さんって、几帳面だったから‥‥」
【白川 ミト】
「彼女が水場で足を滑らせるなんて、
ちょっと信じられないかな」
【常盤 シヅハ】
「‥‥私は事故死だと思います」
【常盤 シヅハ】
「最初に現場を見た時、
直感的に事故だと思いました」
【常盤 シヅハ】
「現場は結構滑りやすそうな環境でしたし」
【黒部 ナノカ】
「‥‥議論していく上で重要な話ね」
【黒部 ナノカ】
「現場を“事故死”と見るか“殺人”と見るかで、
議論の方向性が大きく変わるはずだから」
【早瀬 アキラ】
「ひとまずのテーマが提示されたみたいだな。
俺達が最初に話し合うべき内容‥‥」
【早瀬 アキラ】
「それは、真壁の死が“事故”だったのか、
それとも“殺人”だったのか‥‥という点だ」
【早瀬 アキラ】
「俺自身、この中に殺人鬼がいるなんて
信じたくないからな」
【早瀬 アキラ】
「まずはその点をはっきりさせたほうがいい」
【早瀬 アキラ】
「こちらとしても‥‥
そのほうが《覚悟》が決まる」
【リヴィア・ローゼンタール】
「あら? “殺人鬼がいると
信じたくない”だなんて‥‥」
【リヴィア・ローゼンタール】
「‥‥随分と優しいのですね、アキラ?」
【早瀬 アキラ】
「チッ‥‥。
いちいち煽ってんじゃねえ」
【鳳月 カナデ】
「ふ、2人とも落ち着いてください。
まずは‥‥話し合いましょう」
【鳳月 カナデ】
「この先の裁判の方針を決めるために‥‥!」
【篠宮 マコト】
(‥‥これから、裁判が始まります)
【篠宮 マコト】
(私達の中に紛れ込む殺人鬼を
炙り出すための‥‥避けられない儀式が)
【南雲 ヒナタ】
「‥‥大丈夫かい、篠宮さん」
【篠宮 マコト】
「ひ、ヒナタさん。ええ、大丈夫です」
【南雲 ヒナタ】
「また体が震えている。ほら、深呼吸だ。
初日に真壁さんに教えてもらったやり方で」
【篠宮 マコト】
「は、はい」
【篠宮 マコト】
(4秒吸って、4秒止めて、
8秒かけて吐き出す‥‥)
【篠宮 マコト】
(‥‥落ち着きました。
これでもう大丈夫)
【南雲 ヒナタ】
「よし。大丈夫だね」
【南雲 ヒナタ】
「それじゃあまずは‥‥
事件の概要から確認していこうか」
【南雲 ヒナタ】
「被害者の亡くなった状況について、
議論の前に情報を共有すべきだからね」
【篠宮 マコト】
「あ、ではその点は、
私から報告させていただきます」
【星谷セリナ】
「お、マコトっち‥‥
もしかして検視とかできる感じ?」
【篠宮 マコト】
「え、ええ。
少し齧った程度ですが、知識はあります」
【朝雛 チサ】
「ん? 検視を”カジる”‥‥?
‥‥検視ってもしかして新手の食い物か?」
【早瀬 アキラ】
「んなわけねえだろ」
【早瀬 アキラ】
「検視ってのは、簡単に言えば
死体の状況を把握する作業のことだ」
【朝雛 チサ】
「なんだ、食べられるものじゃないのか」
【篠宮 マコト】
「え、ええと。話をさせてもらいますね」
【篠宮 マコト】
「‥‥今回の被害者は真壁リクアさん。
死因は窒息によるものです」
【篠宮 マコト】
「死体の目の充血具合や、
唇に現れた青紫色の変色‥‥」
【篠宮 マコト】
「いわゆる、“チアノーゼ”がそれを示しています」
【篠宮 マコト】
「現場がシャワールームであったことから、
恐らく溺死させられたと考えられます」
【リヴィア・ローゼンタール】
「“息”について一家言を持っている彼女が、
息ができずに亡くなってしまうとは‥‥」
【リヴィア・ローゼンタール】
「‥‥実に皮肉な話ですわね」
【篠宮 マコト】
「死体の発見時刻は14時半。死亡推定時刻は、
発見時からおよそ30分の間です」
【白川 ミト】
「つまり、真壁さんは14時ごろに
殺害された‥‥ということになるね」
【篠宮 マコト】
「あくまでも素人の真似事ですので、
死亡推定時刻にある程度の幅はあります」
【篠宮 マコト】
「ですが、概ねこれであっている‥‥はずです」
【篠宮 マコト】
「以上が、被害者の検視の結果になります」
【南雲 ヒナタ】
「ありがとう、篠宮さん。
‥‥じゃあ次に進もうか」
【南雲 ヒナタ】
「三条さん。君が事件について抱いた
違和感について、話してもらえるかな?」
【三条 エリス】
「しょ、承知しました。‥‥うう、緊張する」
【篠宮 マコト】
(‥‥どうやら裁判が本格化するのは、
ここからのようですね)
【篠宮 マコト】
(うう。さっき深呼吸したはずなのに、
また緊張してきました)
【篠宮 マコト】
(エリスさんの魔法を通じて、彼女の緊張が
こちらに伝わっているのかもしれません)
【南雲 ヒナタ】
「篠宮さん、落ち着いて」
【南雲 ヒナタ】
「‥‥僕が思うに、これから皆の間で
事件についての《議論》が始まるはずだ」
【南雲 ヒナタ】
「けれども僕を含めて、
みんな、犯罪捜査のプロじゃない」
【南雲 ヒナタ】
「だから、みんなの話を聞いていく中で
発言に“気になるところ”が出てくるはず」
【南雲 ヒナタ】
「もし、証拠品なんかとムジュンする明確な
“気になるところ”を見つけたら‥‥」
【南雲 ヒナタ】
「その発言に《反論》してみると良いと思うよ」
【南雲 ヒナタ】
「もし“気になるところ”を放置したままじゃ、
議論はおかしな方向に向かってしまう」
【南雲 ヒナタ】
「それを正すためにも、ツッコミを入れられそうな
発言がないか注意を払うべきだと思うんだ」
【南雲 ヒナタ】
「これは僕の無責任な勘に過ぎないけれど‥‥」
【南雲 ヒナタ】
「篠宮さんなら、きっと皆の議論を
正しい方向に導ける。そんな気がするんだ」
【篠宮 マコト】
「ヒナタさん‥‥」
【篠宮 マコト】
(ヒナタさんの言うとおりです)
【篠宮 マコト】
(なにか気になる点があったら、
《反論》してみましょう)
【篠宮 マコト】
(魔女図鑑の証拠品も
きちんと確認しないといけませんね‥‥!)