【リヴィア・ローゼンタール】
「それで、三条さん。
あなたは何を持って、この事件が事故であると考えていらっしゃるのかしら?」
【三条 エリス】
「まず考慮していただきたいのが、現場の状況です。
事件現場はシャワールーム。水場のため【非常に滑りやすい環境】です」
【三条 エリス】
「そのため、真壁さまはなにかの拍子に転んで頭を打ち、気を失った。
そして偶然にもうつ伏せの状態で倒れ、床に溜まった水で、その‥‥溺死、してしまった。
‥‥このような状況が考えられます」
【倉科 ミオリ】
「あーわかりますわかります。
私もよくお風呂場で配信見てて、転ぶことがありますもの! よくある事故と言えますよねぇ~」
【早瀬 アキラ】
「倉科の場合はただの前方不注意だとは思うが‥‥。
ただまあ、その流れで発生する事故かもしれない、って点には賛成だな」
【三条 エリス】
「それに現場の床の上には石鹸が落ちていました。
真壁さまは、この【石鹸を踏んで足を滑らせて】頭を打ってしまい‥‥という状況も考えられます」
【三条 エリス】
「いずれにせよ、真壁さまの事件を“殺人である”と断言するのはいささか時期尚早。
私はそう判断いたしました」
【篠宮 マコト】
(さっきのエリスさんのあの発言‥‥
証拠品とムジュンしている気がします‥‥)
【篠宮 マコト】
(気になった点があったら《反論》する。
‥‥やってみましょう)
【三条 エリス】
「まず考慮していただきたいのが、現場の状況です。
事件現場はシャワールーム。水場のため、【非常に滑りやすい環境】です」
【三条 エリス】
「それに現場の床の上には石鹸が落ちていました。
真壁さまは、この【石鹸を踏んで足を滑らせて】頭を打ちそのまま排水口の水で‥‥というパターンも考えられます」
【篠宮 マコト】
「ちょっと待ってください! シャワールームは、
滑りやすい環境ではなかったかもしれません!」
【リヴィア・ローゼンタール】
「‥‥時に、篠宮さん。
あなた、プールで泳いだ経験はおありで?」
【篠宮 マコト】
「え、ええ。それは一応」
【リヴィア・ローゼンタール】
「ならば、その時‥‥“プールサイドでは走るな”
と、教わらなかったのかしら?」
【篠宮 マコト】
「ど、どうだったでしょう‥‥」
【リヴィア・ローゼンタール】
「いずれにおいても‥‥」
【リヴィア・ローゼンタール】
「濡れている環境では摩擦が弱くなり、
滑りやすくなるというのは一般常識です」
【リヴィア・ローゼンタール】
「どうやら混乱なさっているようですし‥‥」
【リヴィア・ローゼンタール】
「もう一度事件現場で滑って頭を打ち、
諸々リセットすることをおすすめいたしますわ」
【篠宮 マコト】
(どうやら間違ってしまったようです‥‥)
【篠宮 マコト】
(もう一度、魔女図鑑の証拠品を見直さないと‥‥)
【篠宮 マコト】
(その中に、なにか、皆さんの話している状況と
ムジュンする証拠があるはずです‥‥!)
【篠宮 マコト】
「
【篠宮 マコト】
「‥‥‥‥‥‥」
【三条 エリス】
「‥‥‥‥‥‥」
【南雲 ヒナタ】
「‥‥‥‥‥‥」
【南雲 ヒナタ】
「‥‥篠宮さん、突然叫んでどうしたんだい?」
【倉科 ミオリ】
「あ、明らかに我々の知らない
言語で叫ばれてましたぞ」
【倉科 ミオリ】
「今のは一体‥‥?」
【篠宮 マコト】
「な、何なのでしょう‥‥。
‥‥私にも分かりません」
【白川 ミト】
「何それ‥‥」
【篠宮 マコト】
「“おかしいぞ!”と思った瞬間、
突然叫んでいたんです」
【篠宮 マコト】
「その‥‥“IG-ject”って
謎の言葉を‥‥」
【星谷 セリナ】
「ほ、ほんとに謎の言葉じゃん‥‥」
【朝雛 チサ】
「でも‥‥なぜか意味は分かるぞ」
【早瀬 アキラ】
「確かに‥‥奇妙なことに、
俺にもなんとなくの意味は通じる」
【リヴィア・ローゼンタール】
「一種の集団幻覚のような症状ですわね。
とても不思議な感覚」
【南雲 ヒナタ】
「‥‥‥‥‥‥」
【南雲 ヒナタ】
「‥‥《フィクスマージ語》」
【南雲 ヒナタ】
「おそらく、フィクスマージ語で
『それは違うよ』といった意味を持つ単語だろう」
【常盤 シヅハ】
「‥‥なんですか、それ」
【南雲 ヒナタ】
「図書室で見つけた本の文章中に
用いられていた言語だよ」
【南雲 ヒナタ】
「もっとも、本当にそんな名前の
言語かどうかもわからないけど」
【黒部 ナノカ】
「それで‥‥
その《フィクスマージ語》とは?」
【南雲 ヒナタ】
「かつて魔女たちが用いていた
言語だと考えられるものだよ」
【南雲 ヒナタ】
「魔女たちの絶滅と共に、
その存在は事実上消滅したようだけど‥‥」
【鳳月 カナデ】
「けれど、篠宮さんはそのフィクスマージ語を
突然叫んだ‥‥なぜでしょう」
【南雲 ヒナタ】
「それは分からない」
【南雲 ヒナタ】
「僕たちの中にある魔女因子が、
もしかしたら反応したのかもしれないね」
【リヴィア・ローゼンタール】
「ここはかつて魔女たちが
住んでいたとされる監獄島‥‥」
【リヴィア・ローゼンタール】
「‥‥何かしらの形で共鳴したとしても
おかしくはありませんね」
【南雲 ヒナタ】
「ともかく‥‥」
【南雲 ヒナタ】
「篠宮さん。君は三条さんの意見に、
なにか疑問があるようだね」
【篠宮 マコト】
「は、はい。その通りです」
【南雲 ヒナタ】
「聞かせてくれるかな。君の反論を」
【篠宮 マコト】
「も、もちろんです!」
【篠宮 マコト】
「‥‥‥‥‥‥」
【篠宮 マコト】
(なんでしょう、この感じ‥‥
気がついたら思わず叫んでいました!)
【篠宮 マコト】
(‥‥“IG-ject”と‥‥)
【篠宮 マコト】
(それもお腹の底から、大声で。
人さし指までつきつけて!)
【篠宮 マコト】
(感じます‥‥体中に力が
みちていくのを!)
【篠宮 マコト】
「‥‥エリスさんッ!」
【三条 エリス】
「なな‥‥な、なんでしょうッ!」
【篠宮 マコト】
「あなたはさっき、こう発言しました。
“被害者は石鹸で足をすべらせた“‥‥と」
【篠宮 マコト】
「‥‥本当に、そのような現象が
起こり得たのでしょうか!」
【三条 エリス】
「げ、現場には石鹸が落ちていました」
【三条 エリス】
「状況的に考えて、真壁さまは、石鹸を踏んで
足をすべらせたと思うのですが‥‥」
【篠宮 マコト】
「
【篠宮 マコト】
「確かに、その点は事実です。
しかし‥‥問題なのはその石鹸の“状態”です」
【篠宮 マコト】
「この石鹸は、《裏面》しか濡れていません。
これは明らかにおかしいのです!」
【三条 エリス】
「ど、どういうことでしょう!?」
【篠宮 マコト】
「床に落ちていた面‥‥すなわち《裏面》が
濡れているのは理解できます」
【篠宮 マコト】
「現場はシャワールーム。
当然床はある程度濡れているはずです」
【篠宮 マコト】
「すなわち、床と接する裏面が
濡れることは必然と言えます」
【篠宮 マコト】
「問題となるのは反対側‥‥
被害者が踏んだと思われる《表面》です」
【篠宮 マコト】
「被害者がシャワーを浴びている時に
石鹸を踏み、転倒した‥‥」
【篠宮 マコト】
「それならば‥‥この石鹸の状況は、
決定的に“ムジュン”しています!」
【黒部 ナノカ】
「‥‥なるほど」
【黒部 ナノカ】
「その場合、濡れた被害者の足で踏まれるから、
表側も濡れないとおかしい‥‥ということね?」
【篠宮 マコト】
「今の指摘のとおりです」
【篠宮 マコト】
「足元が濡れていたはずの被害者が
石鹸を踏んで転倒したならば‥‥」
【篠宮 マコト】
「その石鹸は“全体”が
濡れている必要があります!」
【篠宮 マコト】
「しかし‥‥
実際の石鹸は《裏側》しか濡れていません」
【篠宮 マコト】
「これは‥‥明らかに
ムジュンしています!」
【三条 エリス】
「た、たしかに‥‥そのとおりです!」
【早瀬 アキラ】
「筋としては通っているが‥‥
じゃあ、つまりどういうことなんだ?」
【篠宮 マコト】
「もしも事件発生前から、
この石鹸が現場にあったとした場合‥‥」
【篠宮 マコト】
「被害者が石鹸を踏んだ事実の有無にかかわらず、
当然、石鹸は濡れているはずです」
【鳳月 カナデ】
「石鹸があったのはシャワールームですから‥‥
至極当たり前の話ですね」
【篠宮 マコト】
「しかし、石鹸は片側しか濡れていなかった。
これが意味することは‥‥1つ」
【篠宮 マコト】
「石鹸は、つい最近現場に持ち込まれた!
それ以外に考えられません」
【篠宮 マコト】
「つまり、被害者は石鹸で転んでいなかった!」
【篠宮 マコト】
「そして現場に落ちていた石鹸は、事件の後に
“偽装工作”として置かれた可能性がある‥‥」
【篠宮 マコト】
「これが‥‥私の主張です!」
【リヴィア・ローゼンタール】
「‥‥一理ありますわね」
【常盤 シヅハ】
「
【白川 ミト】
「‥‥シヅハさんも、叫んでる。
フィクスマージ語‥‥」
【常盤 シヅハ】
「‥‥私も、思わず叫んでしまいました。
何なのでしょう、これは」
【南雲 ヒナタ】
「‥‥これはもう、“そういうもの”として
受け入れるしかないみたいだね」
【南雲 ヒナタ】
「それで常盤さん。
なにか反論があるみたいだけど?」
【常盤 シヅハ】
「‥‥ええ。篠宮さんの言う事には
まだ反論の隙があります」
【常盤 シヅハ】
「今指摘があったように、
状況的に石鹸で滑った可能性は低いようです」
【常盤 シヅハ】
「ならば‥‥さっき三条さんが言ったように、
被害者は、床が濡れていたから滑った‥‥」
【常盤 シヅハ】
「そのように考えるのが
自然なんじゃないでしょうか」
【白川 ミト】
「‥‥私もそう思う」
【南雲 ヒナタ】
「状況を自然に観察するなら、
その可能性があることは否定しきれないね」
【早瀬 アキラ】
「いや、俺はそれに反対だな。
今篠宮が言った意見には筋が通っている」
【早瀬 アキラ】
「石鹸の存在が、第三者の意図的な
“作為”を表していると言える」
【早瀬 アキラ】
「俺は、今回の事件、誰かしらの介入が
発生しておきた事件だと考えるぜ」
【リヴィア・ローゼンタール】
「わたくしもそう考えますわ。
気が合いますわね、アキラ?」
【早瀬 アキラ】
「うるせえ、黙れ」
【リヴィア・ローゼンタール】
「まあ怖い」
【鳳月 カナデ】
「‥‥いずれにせよ」
【鳳月 カナデ】
「現状ではまだ真壁さんの死が事故なのか、
それとも殺人なのか‥‥」
【鳳月 カナデ】
「どちらか判別できない状態に変化はない‥‥
ということですね」
【白川 ミト】
「‥‥そうみたいだね」
【星谷 セリナ】
「じゃあ次は、リクアっちが濡れた床で
転んで気絶したか、検討するべきってわけね」
【南雲 ヒナタ】
「篠宮さんの発言のおかげで、
議論が進行したようだね」
【篠宮 マコト】
「え、ええ。そのようです」
【南雲 ヒナタ】
「この調子で議論を続けていけば、
いずれ真実が見えてくる‥‥僕はそう思う」
【南雲 ヒナタ】
「引き続き、みんなの発言を
聞き漏らさないようにしよう」
【南雲 ヒナタ】
「どんな小さな発言でも、気になる点があったら
《反論》してみるんだ」
【南雲 ヒナタ】
「議論の流れに、
なにか変化があるかもしれない」
【南雲 ヒナタ】
「あるいは‥‥なにか気になった点があるなら、
《指摘》してみるのもいいかもしれない」
【南雲 ヒナタ】
「何気ない呟きが真実につながっていることも
あるかもしれないからね」
【篠宮 マコト】
「何気ない呟きを指摘‥‥わかりました」
【篠宮 マコト】
「気になる呟きがあったら、
《指摘》してみることにします」
【篠宮 マコト】
(そう‥‥1人ひとりを証人尋問する
普通の裁判と比較するならば‥‥
【篠宮 マコト】
(この魔女裁判の形式は
いわば、“群衆尋問”)
【篠宮 マコト】
(ある人の意見を聞いて、別の人が新しい意見を
思いつくなんてことが、十分起こり得ます)
【篠宮 マコト】
(皆さんの意見‥‥
1つも残さず拾い上げましょう‥‥!)
以下、作者後書き
作者は常々思うのです。議論ミステリゲー、あるいは裁判ゲー、はたまた法廷バトルと呼ばれるようなジャンルのゲームにおいては‥‥いわゆる《決めゼリフ》が必要であると。それも、大声で叫べば叫ぶほどよいとされるような。そんなシロモノが。
まのさばの先輩たる逆転裁判とダンガンロンパにはこれに相当するものがあります。
それぞれ、「異議あり!」と「それは違うよ!」ですね。
特に前者はリアイベのシメの一言として一本締め代わりにも用いられているなど、汎用性が非常に高いです。
一方まのさばはというと、いわゆる「ちょっと待って!」が代表格かと思われますが、シリーズ全体の決めゼリフというよりかは、“桜羽エマの決めゼリフ”としての側面のほうが強いと言える存在であって、まのさば全体を見たときにこれだ! という決めゼリフは正直存在しないと言える状況にあると言えます。
既にお察しかと思われますが、作者は法廷バトルものについてはある種の“強い思想”を抱える厄介な人間です。
法廷バトル、裁判ゲーたるもの、なにか決めゼリフがないとカッコがつかない! けれど原作にはこれといった決めゼリフがない‥‥。作者は悩みました。
その末に思いついたのが《フィクスマージ語》の存在でした。
主題歌の歌詞にゴリゴリ使われているのに、本編ではほぼ一切出てこなかった謎の独自言語‥‥。
実は作者はまのさばクラファン勢で、設定資料も持っているのですが、資料の巻末に記載の大量のフィクスマージ語はおそらく考案されるだけされて、ほとんどが主題歌にも使われていないと考えられます。
また、次回作たる「まのむら」は、作品世界観的に英語混じりのフィクスマージ語は用いられる可能性が低いと言えるでしょう。
これは実にもったいない!
その時、作者の欲求とフィクスマージ語がぴたりと一本の線で繋がりました。フィクスマージ語で「異議あり!」に相当する単語を作ってしまえばよいのだと。
フィクスマージ語辞典には「wE-MitTa(ウェミッタ)」という単語がありました。公式が提示している意味は「ちょっと待った」だそうです。
しかも辞典での分類は名詞や動詞ではなく、「その他」に設定されています。
これは、この単語を決めゼリフとして用いようとした名残なのではないか? 作者はそう考えました。
そこからは実に早かったです。フィクスマージ語は日本語と英語の組み合わせです。それぞれの対応する単語を持ってきて、うまい具合に組み合わせればすぐに出来上がります。
そんなこんなで、「IG-ject」とかいう訳の分からないオリジナルのフィクスマージ語が誕生するに至ったのです。実に二次創作していますね(?)
でも使わないともったいないじゃないですか!
せっかく世界観を広げうる設定だというのに原作ではほぼ活用されていない! ということで、勝手に作ってやりましたとも!
探索パートの図書館でのシーンでフィクスマージ語について触れていたのは、このためだったのです。
おかげで裁判パートの執筆は随分と楽になりました。
長らく逆転裁判の沼に浸っていた作者は「異議あり!」がないと議論が書けないという致命的な病に侵されているのです。これがあるだけで議論のテンポ感が掴めるし、対決している感も大いに演出できます。いやあ素晴らしい。我ながら中々の発明です。
ここにたどり着いたまのさば二次創作は本作が初めてでしょう(自画自賛?)
と、いうわけで今後はマコトさんたちがやたらめったらに「異議あり!」とフィクスマージ語で叫びまくりますが、ユーザーネームを見ていただいたら分かりますように、作者はもとより逆転裁判の人間ですので。どうかご容赦ください。ここまでついてきてくださった方なら受け入れてくださると信じております‥‥。
まのさばの二次創作で「マコト」という名前のキャラが「異議あり!」と叫ぶ。うーむごった煮だ。
あ、そういえばカットインはいかがでしたか? 気合を入れて描いていただきましたよ。指差しの角度には随分とこだわりました。腕の伸ばし方、手首の角度、指差しの角度1つとっても個性は色々出せますからね。なるほどくんスタイルをベースに描いていただきましたよ、ええ。
やはり議論ミステリの主人公は指を指してナンボですもの。つきつけてやるのですよビシっとね。
ああ、それとそれと、ゲームブックはいかがでしたでしょうか。昔取った杵柄といいますか、拙作(未完)の法闘録でやっていたことをちょびっとだけ進化させただけですが。
遊べるまのさば二次創作という形で売り出していきますよ(拙作投稿開始前に2作品ほど似たような試みを始めた作品が出たときは肝を冷やしましたとも)。
審問パート以外にも色々と用意しておりますので、お楽しみに‥‥。
長々と失礼いたしました。では。