【南雲 ヒナタ】
「早瀬さんが気になっている点を確かめる前に、もう一度事件の流れを整理しておこうと思うのだけど‥‥異論はないかい?」
【早瀬 アキラ】
「ああ、問題ない。続けてくれ」
【南雲 ヒナタ】
「では早速‥‥。被害者は真壁リクアさん。
死体が発見されたのは16時半頃。死因はおそらく溺死。殺害方法は、おそらく排水口に顔を押し付けた、という方法だと考えられる。
ここまでの認識、全員相違ないかな?」
【倉科 ミオリ】
「改めて考えるとなかなか酷い殺し方ですな‥‥。
息のできない辛さ‥‥リクアさんの苦しみを考えると‥‥うう、耐え難い‥‥キツイしんどい‥‥」
【三条 エリス】
「く、倉科さん!
あんまりそういうことを仰られると、あたしも感情が‥‥」
【鳳月 カナデ】
「‥‥辛いのは皆同じです。今は事実関係を整理していきましょう。
それで早瀬さん。あなたが気になった点というのは一体何でしょうか?」
【早瀬 アキラ】
「俺が気になったのは被害者の抵抗の有無だ」
【早瀬 アキラ】
「一発で致命傷に至る可能性のある刺殺や撲殺なんかと違って、今回の殺害方法は“溺死”だ。
【死亡するまでに少なくとも3分はかかる】。まず、そんな状況で被害者が暴れたら‥‥誰かが音で気づくんじゃないのか?」
【常盤 シヅハ】
「シャワールームはプライバシーの都合か、防音性が高いです。その点については問題ないかと‥‥」
【早瀬 アキラ】
「それを抜きにしても問題はまだ残る。
被害者はシャワーを浴びていたわけだが、殺すためには身体を取り押さえて排水口に顔を押し付ける必要がある。つまり‥‥」
【南雲 ヒナタ】
「殺害を実行するまでに、背後に忍び寄る、取り押さえる、排水口に顔を押し付ける‥‥この3つのステップが必要。ということだね?」
【早瀬 アキラ】
「ああ。その通りだ。問題は“背後に忍び寄った”という点だ。
シャワーの音で多少は足音がかき消せたとしても、ギリギリまで忍び寄られたら気づかれる可能性が高い。
それに、排水口まで移動させるまでの間、まず間違いなく抵抗される」
【星谷 セリナ】
「いくら防音といえど、流石に気づかれそうよなー」
【早瀬 アキラ】
「ああ、そうだ。襲われそうになったとあれば、大声の1つも上がるだろう。誰かが気づく可能性はゼロとは言えない。
犯人は一体どうやって、被害者の抵抗を最小限に抑えて排水口まで顔を持っていったか‥‥そこが一番の問題だ」
【常盤 シヅハ】
「頭や首のあたりをトン、と【殴って気絶させた】‥‥なんてのはどうでしょう。
よくドラマや漫画であるような‥‥」
【倉科 ミオリ】
「あるいは、【薬液を染み込ませたハンカチを口元に当てて】、スッ‥‥と意識を奪うなんていうのもありじゃないでしょうか?」
【鳳月 カナデ】
「シンバルのような【大きな音を耳元で鳴らし】て、その衝撃で気絶させる‥‥という可能性もありそうです」
【リヴィア・ローゼンタール】
「あるいは‥‥そもそも【被害者は接近に気が付かなった】、という可能性もありえますわね。
もっとも、あまり考え難い説であるとは思いますが」
【三条 エリス】
「ど、どれが正解なんでしょう、かかかか‥‥」
【南雲 ヒナタ】
「あり得ようがあり得まいが、可能性は1つ1つ検討していく必要がある‥‥時間の許す限り、ね」
【篠宮 マコト】
(リクアさんを取り押さえて排水口に
顔を押し付けるまでの過程‥‥)
【篠宮 マコト】
(‥‥いくつかのパターンが考えられそうですね)
【南雲 ヒナタ】
「色んな意見が飛び出してきたみたいだ、
篠宮さん。1つずつ考えていこう」
【南雲 ヒナタ】
「間違っている意見は、大概何かしらの
証拠や事実と“ムジュン”する」
【南雲 ヒナタ】
「丁寧に照らし合わせていけば、
きっと答えは見つかるさ」
【篠宮 マコト】
(証拠と意見の照らし合わせ‥‥もう一度、
魔女図鑑をきちんと確認しておきましょう‥‥!)
【早瀬 アキラ】
「一発で致命傷に至る可能性のある刺殺や撲殺なんかと違って、今回の殺害方法は“溺死”だ。
【死亡するまでに少なくとも3分はかかる】。まず、そんな状況で被害者が暴れたら‥‥誰かが音で気づくんじゃないのか?」
【常盤 シヅハ】
「頭や首のあたりをトン、と【殴って気絶させた】‥‥なんてのはどうでしょう。
よくドラマや漫画であるような‥‥」
【倉科 ミオリ】
「あるいは、【薬液を染み込ませたハンカチを口元に当てて】、スッ‥‥と意識を奪うなんていうのもありじゃないでしょうか?」
【鳳月 カナデ】
「シンバルのような【大きな音を耳元で鳴らし】て、その衝撃で気絶させる‥‥という可能性もありそうです」
【篠宮 マコト】
「い、いいえ。被害者が亡くなるのに
“3分”もかからないはずです!」
【篠宮 マコト】
「水を吸い込めば、もっとすぐに‥‥!」
【黒部 ナノカ】
「
【黒部 ナノカ】
「それは誤解よ、篠宮マコト。
“すぐに”亡くなることはありえないはず」
【黒部 ナノカ】
「普通、まず呼吸困難が起こる」
【黒部 ナノカ】
「その後喉頭けいれんで声が出にくくなって、
意識がなくなるまで数十秒から1分前後」
【黒部 ナノカ】
「そこから低酸素状態になるまで
数分はかかるはずだわ」
【リヴィア・ローゼンタール】
「要するに、“失神”と“死亡”を
ごっちゃにしているのよ、篠宮さん」
【リヴィア・ローゼンタール】
「“絶命まで3分程度はあり得る”という
アキラの指摘は、むしろ妥当ですわ」
【南雲 ヒナタ】
「うん。篠宮さんの反論は不成立だね」
【南雲 ヒナタ】
「“時間はかかる”前提は維持で、別の観点‥‥」
【南雲 ヒナタ】
「すなわち、どうして外に被害者の抵抗が
伝わらなかったのかを考えよう」
【篠宮 マコト】
(‥‥どうやら、“すぐ死亡”は
飛躍だったようです。
【篠宮 マコト】
(もう一度考え直しましょう)
【篠宮 マコト】
「シヅハさんの意見、一理あると思います」
【篠宮 マコト】
「実際、私もテレビでそういうシーンを
見たことがあります」
【常盤 シヅハ】
「うん。この方向性で
間違っていないと私は思う」
【倉科 ミオリ】
「異議あり! 裁判長!
その発言は決定的に“ムジュン”しています!」
【早瀬 アキラ】
「‥‥“サイバンチョ”?」
【倉科 ミオリ】
「被害者の検視記録を見てください!」
【倉科 ミオリ】
「ここには、首元や頭部に殴られた痕跡が
あるとは記載されていません!」
【倉科 ミオリ】
「被害者が気絶するほどの勢いで殴られたのなら、
その痕が残るのは必然‥‥」
【倉科 ミオリ】
「つまり、今のおふたりの証言は
ムジュンしているのですよ!」
【篠宮 マコト】
「ぐ、ぐうっ!」
【鳳月 カナデ】
「なんであなたまで
オーバーリアクションになるんですか」
【南雲 ヒナタ】
「けどまあ、
今の指摘は間違っていないね」
【南雲 ヒナタ】
「さっきの転倒事故の話もそうだけど‥‥
被害者の外傷は極めて少ない」
【南雲 ヒナタ】
「殴打による跡や傷が残っていない以上、
常盤さんの推理は通らないみたいだね」
【常盤 シヅハ】
「‥‥残念です」
【篠宮 マコト】
(逆にムジュンをつかれてしまったようです‥‥)
【篠宮 マコト】
(もう一度考え直してみましょう‥‥
魔女図鑑に乗っている証拠品を確認し直さないと)
【篠宮 マコト】
「ミオリさんの意見‥‥
一番現実的に聞こえます」
【倉科 ミオリ】
「おお、分かってくれますか同士よ!」
【倉科 ミオリ】
「この手のミステリ・サスペンスにおいて
背後からのハンカチスッ‥‥」
【倉科 ミオリ】
「‥‥からの意識もスッ‥‥
というのは定番の流れですからな!」
【倉科 ミオリ】
「医務室にはいろんな薬品が
置いてありましたし‥‥」
【倉科 ミオリ】
「その中に意識を奪うレベルの
強力な薬がある可能性も十分ありえます」
【倉科 ミオリ】
「一番有り得そうなのは
この説以外ありえない!」
【三条 エリス】
「ちょ、ちょっと待ってください!
今のお話ですが、少し問題があります」
【三条 エリス】
「私は医務室の薬を管理していたのですが、
直近、薬が使用された形跡はありませんでした」
【三条 エリス】
「医務室のお薬の中には、軽めの睡眠薬や、
胃薬といった安全なお薬が大半です」
【三条 エリス】
「ですが、中には瞬時に意識を奪う
危険なお薬なんかも置いてあるんです‥‥」
【三条 エリス】
「‥‥捜査中に調べた限り、
それらが減っている痕跡はありませんでした」
【三条 エリス】
「つまり、薬による気絶というのは
考え難いということになります」
【南雲 ヒナタ】
「僕も追加でいいかな」
【篠宮 マコト】
「ひ、ヒナタさんまで‥‥」
【南雲 ヒナタ】
「ごめんね、篠宮さん。
気になった点は潰しておかないと」
【南雲 ヒナタ】
「今の篠宮さんと倉科さんの意見が
もし事実だったとしよう」
【南雲 ヒナタ】
「すなわち、被害者は薬で眠らされた」
【南雲 ヒナタ】
「そうなると、
別の証拠品ともムジュンするんだ」
【倉科 ミオリ】
「む、ムジュンですと!?
それは一体‥‥?」
【南雲 ヒナタ】
「被害者の顔についた痕だよ」
【南雲 ヒナタ】
「排水口の溝に酷似した顔の痕‥‥被害者が
押さえつけれなければ残ることはない。
【南雲 ヒナタ】
「もし被害者が睡眠薬で気絶した状態で
溺死させられたとしたら‥‥」
【南雲 ヒナタ】
「‥‥そもそもあんな痕跡は残らないんだ」
【南雲 ヒナタ】
「いずれにせよ‥‥」
【南雲 ヒナタ】
「被害者が気を失っていたと仮定すると、
死体の顔に痕が残るのはムジュンしているんだ」
【南雲 ヒナタ】
「‥‥異議はあるかい、倉科さん?」
【倉科 ミオリ】
「い‥‥異議なあああし!」
【篠宮 マコト】
(どうやら違っていたようです‥‥
一番有り得そうだと思ったのですが‥‥)
【篠宮 マコト】
(もう一度、魔女図鑑の証拠品を
確かめる必要がありそうですね‥‥!)
【篠宮 マコト】
「被害者が大きな音で気絶した‥‥
十分ありえる話です」
【鳳月 カナデ】
「そうですよね」
【鳳月 カナデ】
「私もコンサートで時々シンバルの音を
聞くのですが、毎回驚いてしまうんです」
【鳳月 カナデ】
「あれを耳元で鳴らされたら、
意識の1つくらい飛びそうな気がします」
【黒部 ナノカ】
「
【黒部 ナノカ】
「‥‥でも、少しおかしくないかしら」
【篠宮 マコト】
「ナノカさん‥‥!」
【黒部 ナノカ】
「人が気絶するくらい大きな音って、ジェット機の
すぐ側の音量と同じだと聞いたことがあるわ」
【黒部 ナノカ】
「そんな大きさなら‥‥いくら防音性が高くても、
音が聞こえるんじゃないかしら」
【早瀬 アキラ】
「そもそも、
そんな音をどうやって鳴らすんだ?」
【早瀬 アキラ】
「この牢屋敷にはそんなでかい音を
出せる装置や道具はないはずだぞ」
【南雲 ヒナタ】
「なくはない説のようだけど‥‥
少々無理があるみたいだね」
【鳳月 カナデ】
「そうですか‥‥
あてが外れてしまったようですね」
【篠宮 マコト】
(どうやら間違ってしまったようです‥‥)
【篠宮 マコト】
(もう一度、魔女図鑑の証拠品を
確かめる必要がありそうですね‥‥!)
【リヴィア・ローゼンタール】
「あるいは‥‥そもそも【被害者は接近に気が付かなった】、という可能性もありえますわね。
もっとも、あまり考え難い説であるとは思いますが」
【篠宮 マコト】
「
【篠宮 マコト】
「‥‥‥‥‥‥」
【篠宮 マコト】
「‥‥《魔法》」
【常盤 シヅハ】
「えっ‥‥?」
【篠宮 マコト】
「私たちは、《魔女候補》‥‥
なら、全員何かしらの魔法が使えるはずです」
【篠宮 マコト】
「魔法の力を使えば‥‥被害者に気づかれずに
接近することができたかもしれません!」
【早瀬 アキラ】
「
【早瀬 アキラ】
「魔法‥‥か」
【早瀬 アキラ】
「フッ、外の世界なら荒唐無稽な話だと
切り捨てられるんだろうが‥‥」
【早瀬 アキラ】
「‥‥この牢屋敷なら、話は別だな。
可能性としてはあり得る」
【三条 エリス】
「で、ですが、一体誰の魔法なら
そのような芸当ができるのでしょう」
【倉科 ミオリ】
「リクアさんを除けば
12人も候補がいますからな‥‥」
【倉科 ミオリ】
「絞り込むのは容易ではなさそうですぞ」
【南雲 ヒナタ】
「みんなの魔法を1人ずつ検討して、
可能かどうだったか確認していこう」
【南雲 ヒナタ】
「それが一番、確実な方法で‥‥」
【???】
「
【篠宮 マコト】
(い、今のは‥‥)
【リヴィア・ローゼンタール】
「‥‥分かりましたわ」
【篠宮 マコト】
(リヴィアさん!)
【星谷 セリナ】
「お嬢サマ‥‥“マ”?」
【リヴィア・ローゼンタール】
「“マ”でございますわ」
【鳳月 カナデ】
「そ、そんな魔法の持ち主が
存在するというのですか?」
【リヴィア・ローゼンタール】
「ええ、もちろん。
おひとり、いらっしゃるではありませんか」
【リヴィア・ローゼンタール】
「‥‥“背後からの接近に長けた魔法”を
お持ちの方が」
【篠宮 マコト】
「リヴィアさん‥‥」
【早瀬 アキラ】
「またトンチンカンなことを
口走るんじゃないだろうな」
【リヴィア・ローゼンタール】
「あら心外な」
【リヴィア・ローゼンタール】
「これはれっきとした考えに基づいた、
いわば“告発”でしてよ」
【リヴィア・ローゼンタール】
「根拠もなしに発言するはずがありません」
【鳳月 カナデ】
「こ、“告発”‥‥。
‥‥一体誰のことでしょう」
【リヴィア・ローゼンタール】
「それはもちろん‥‥」
【リヴィア・ローゼンタール】
「‥‥《透明化》の魔法を持つ、
白川ミトさん。あなたですわ」
【白川 ミト】
「わ、私‥‥?
ち、違う‥‥私、やってない!」
【リヴィア・ローゼンタール】
「
【リヴィア・ローゼンタール】
「今までの推理を成り立たせる魔法は、
あなたの魔法くらいなものですわ」
【リヴィア・ローゼンタール】
「それに‥‥わたくし、
以前2階の廊下で見かけましたの」
【リヴィア・ローゼンタール】
「音楽室から出てきた白川さんが、
魔法を使って忽然と姿を消した瞬間を‥‥」
【リヴィア・ローゼンタール】
「あれは殺人に非常に有用な魔法ですわ。
犯人‥‥あなたなのではなくって?」
【白川 ミト】
「ち、違う‥‥違う!」
【篠宮 マコト】
(透明化の魔法で背後から忍び寄り、
被害者を押さえつけた‥‥)
【篠宮 マコト】
(理屈としては通っていますが‥‥
どこかおかしいような)
【鳳月 カナデ】
「
【鳳月 カナデ】
「い、いきなり白川さんを
犯人とするだなんて‥‥横暴です!」
【鳳月 カナデ】
「根拠もなしにそんなことを‥‥」
【早瀬 アキラ】
「
【早瀬 アキラ】
「だが、透明化の魔法は犯行を行うのに
最も適した魔法の1つだと言える」
【早瀬 アキラ】
「疑う根拠は十分にあるんじゃないか?」
【三条 エリス】
「た、たたた、
確かにそうかもしれません‥‥!」
【三条 エリス】
「もしかしたら、白川さまなら、
容易に犯行を行えたんじゃ‥‥」
【倉科 ミオリ】
「全くあり得なくはないですな‥‥」
【常盤 シヅハ】
「なら、もう投票しちゃっていいんじゃ‥‥
明らかに怪しい魔法ですし‥‥」
【黒部 ナノカ】
「そうね‥‥現状一番犯人としての
可能性が高いのは、彼女かもしれないわ」
【南雲 ヒナタ】
「
【南雲 ヒナタ】
「みんな待つんだ。
勢いだけで議論を進めるのは良くない」
【南雲 ヒナタ】
「まずは一旦、全員の意見を
しっかりとすり合わせるべきだ」
【星谷 セリナ】
「そ、そうっしょ!」
【星谷 セリナ】
「なんか今の状態‥‥
ウチらの間に溝ができてるぞ!」
【朝雛 チサ】
「そうだぞ! 真っ二つだぞ!」
【ゴクチョー】
「お待ちなさい‥‥!」
【ゴクチョー】
「朝雛チサさん。今‥‥
“真っ二つ”‥‥と、おっしゃいましたね?」
【朝雛 チサ】
「んあ?
そうだけど‥‥それがどうかしたか?」
【ゴクチョー】
「皆さんの意見が割れている‥‥
そういうことでよろしいですね?」
【朝雛 チサ】
「だからなんだってんだよ!」
【ゴクチョー】
「意見が対立した‥‥そういうことであれば。
‥‥“アレ”の出番ですね」
【星谷 セリナ】
「“アレ”‥‥?」
【篠宮 マコト】
(意味深なことを呟いたゴクチョーさんは、
おもむろに羽を挙げました。すると‥‥)
【篠宮 マコト】
「‥‥な、なにか様子が
おかしくありませんか?」
【南雲 ヒナタ】
「こ、これは‥‥」
【三条 エリス】
「ゆ、ゆゆゆ、揺れています!
裁判所が!」
【ゴクチョー】
「あー、揺れてるついでに
説明しておきますと‥‥」
【ゴクチョー】
「“この監獄島”では、皆さんの証言台を
自由に動かすことが出来るんですよ」
【ゴクチョー】
「処刑台によっては、証言台が邪魔になるくらい
大きなものがあったりしますので‥‥」
【ゴクチョー】
「証言台を動かせるようにしておかないと
何かと不便なんです」
【ゴクチョー】
「その副産物といいますか‥‥
皆さんの意見が真っ二つに割れた場合‥‥」
【ゴクチョー】
「こうしてチームに別れて、お互い正面から
向かい合うようにしているんです」
【ゴクチョー】
「そのほうがお互い話しやすいだろうと、
上からの意見でしてね‥‥」
【ゴクチョー】
「私としては面倒くさいんで
やりたくないんですが‥‥ハア‥‥」
【篠宮 マコト】
(ゴクチョーさんがぶつくさと
説明をしている間にも‥‥)
【篠宮 マコト】
(輪を描いていた証言台は
真っ直ぐと並べられていき‥‥)
【篠宮 マコト】
(やがて私たちは2つのチームに別れて、
お互いに向き合う形になっていました)
【倉科 ミオリ】
「これでは‥‥まるでラグビーやアメフトの
《スクラム》ですなぁ‥‥」
【星谷 セリナ】
「えーっと‥‥これで結局、
何をすればいいわけ?」
【リヴィア・ローゼンタール】
「わたくしたちの意見は真っ二つ‥‥
だから、この陣形を組まされているのです」
【リヴィア・ローゼンタール】
「であれば、やることは1つ」
【リヴィア・ローゼンタール】
「すなわち‥‥《白川ミトは犯人か?》」
【リヴィア・ローゼンタール】
「わたくしたちはそれについて、
意見をぶつけ合う必要があるようです」
【早瀬 アキラ】
「おい、ゴクチョー。1ついいか?」
【ゴクチョー】
「何でしょう。手短にお願いしますね」
【早瀬 アキラ】
「この向かい合っている状態は、俺たちの意見が
1つになったら解消されるんだよな?」
【ゴクチョー】
「ええ、その通りです」
【鳳月 カナデ】
「なら‥‥やるしかないようですね」
【鳳月 カナデ】
「私たちは白川さんが“犯人ではない派”」
【リヴィア・ローゼンタール】
「そしてわたくしたちが、白川さんが
“犯人である派”‥‥ということですわね」
【篠宮 マコト】
(どちらかの意見が採用されれば、
この状態は解消される‥‥)
【篠宮 マコト】
(もし向こう側が勝ってしまえば‥‥)
【篠宮 マコト】
(議論の流れは、ミトさんが
疑われる展開になるでしょう)
【篠宮 マコト】
(そうなってしまえば、十分な議論無く
ミトさんが犯人とされるでしょう)
【篠宮 マコト】
(‥‥そうなることだけは、
避けなければなりません)
【篠宮 マコト】
(なんとかして‥‥向こう側の皆さんを
説得するしかないようですね‥‥!)
【南雲 ヒナタ】
「篠宮さん。きっとこれから、向こうのチームが
意見をこちらにぶつけてくるはずだ」
【南雲 ヒナタ】
「こちら側も向こうのチームに対して
意見をぶつけ返そう」
【篠宮 マコト】
「意見をぶつける、ですか‥‥?」
【南雲 ヒナタ】
「焦る必要はない」
【南雲 ヒナタ】
「1つ1つ丁寧に、相手の意見に関連しそうな
こちらの意見をぶつけるんだ」
【南雲 ヒナタ】
「具体的に説明するなら‥‥」
【南雲 ヒナタ】
「例えば相手チームの誰かが
『バナナはおやつに入らない』 と発言をする」
【南雲 ヒナタ】
「その一方で、こちらのチームには
“遠足・クラスメイト・お弁当・おやつ・水筒”」
【南雲 ヒナタ】
「このように分類できる、5つの意見がある」
【南雲 ヒナタ】
「この場合、僕たちのチームの意見の中で、
相手のチームの意見と関連のあるのは‥‥」
【篠宮 マコト】
「“おやつ”‥‥ですね」
【南雲 ヒナタ】
「そのとおりだ」
【南雲 ヒナタ】
「だから、“おやつ”について
話している人を指名して反論してもらう」
【南雲 ヒナタ】
「相手チーム全員分の意見に対して
反論し終えるまでこれを続ける」
【南雲 ヒナタ】
「‥‥どうだろう。
これで何となく流れはつかめたかな?」
【篠宮 マコト】
「つまり、相手の意見のキーワードと合致する、
自チームの意見をぶつければいいんですね」
【南雲 ヒナタ】
「ああ、そうだ。
みんなの意見を合わせて、この場を乗り切ろう」
【南雲 ヒナタ】
「このままだと‥‥
議論は間違った方向に進んでしまいかねない」
【篠宮 マコト】
(どうやら‥‥ここが1つの正念場のようです)
【篠宮 マコト】
(相手チームの皆さんを‥‥
なんとか説得してみせます!)