「娘よ。お前は今夜、地球を焼くための最後の部品になる」

父の第一声が、これである。

木星帝国の王女テテニス・ドゥガチ、16歳。趣味は引きこもりと、こっそり禁書を読むこと。3倍の重力に縫い止められた地獄の底で、彼女は“地球を焼く弾頭”として育てられた。

——けれど、たった一度齧った赤いリンゴの味が、彼女の運命を反転させる。

「こいつらの言いなりになるのが、死ぬほど嫌なだけ」。

その小さな“嫌だ”を胸に、引きこもり王女は国家反逆者になる。

シャリア・ブルが遺した「人が優しくなれる場所」を守るため。父クラックス・ドゥガチの狂気を、氷のような侍従長フォンセ・カガチの陰謀を、そして自らの血に刻まれた“検体番号1”の宿命を——彼女はたった一人で背負っていく。

トビアがくれたリンゴ。キンケドゥが守った日常。ジュドーが握らせた本物の土。無数の英雄たちと交わりながら、少女は木星の底で戦い続ける。地球を焼かせないために。誰も眠らせないために。木星に、いつか本物のリンゴが実る日を信じて。

これは、宇宙世紀の片隅で誰にも知られず“地獄の火を消し続けた”、一人のお姫様の100年の記録。