お嬢様がGBNにいるわけないだろう!   作:プラ板の削りカス

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【悲報】お嬢様、バレる

 ミィクさんとヒオリさんにバトルフェスでの宣戦布告をした翌日、私はいつも通り学園に通っていた。

 シャフリさん主導で進められている廃倉庫改造計画も滞りなく進んでるようだし、ユリカさんのバーに客が訪れたという話も聞かない。

 全てが順風満帆──と、まではいかなくても、多少怖くなるぐらい上手くいっていて、なにかの前触れなんかじゃないかと疑いたくなってしまう。

 

「今日もヤエザクラ様は素敵ですわ……」

「可愛らしくて、お人形さんみたいですわね」

「シロガネ様とアマツガ様と歩いておられると、まるで絵画から抜け出してきたようですわ!」

「お三方はこの歴史と伝統ある百合籠女学園を照らす導きの星ですわ!」

 

 ギャラリー勢が今日もなんか言ってる。

 それもいつも通りといったところで、隣を歩くルカがなんとなく退屈そうにしているのも理解できた。

 GBNから戻ってこなきゃいけない日常は、退屈すぎて欠伸が出てしまいそうになる。

 

 かといって、毎日そうぽんぽんとイベントが起こるような日常もごめんだけど。

 

「そういえばミキさん、私……ローゼン・シニスタの元の持ち主の方と出会ったんです」

「えっ?」

「まあ」

 

 ぼんやりと頭の中で思考を巡らせていた矢先に、ロミカが唐突に話題を投げてきたものだから、私は素っ頓狂な声を出すことしかできなかった。

 ローゼン・シニスタの元の持ち主って、確かGPD時代に「†黒薔薇ノ悪魔†」を名乗ってイタい……もとい個性的なコスプレしながらファイトしてた人よね。

 ツカサくんの話だと突然行方をくらましてしまったようだったけど、GBNやってたんだ。

 

「すごい確率ね……で、どんなことを話したの?」

「ローゼン・シニスタをどこで手に入れたのかとか、色々と……でも、返してくれとは言われませんでした。むしろ、使ってくれて嬉しいとも」

「お優しい方なのですね」

「はい。だから、私……その人の、デンケンさんのフォースに入ることに決めたんです」

 

 ロミカはふんす、と息を小さく荒げて、拳を握り締めた。

 いいじゃない。

 GBNは一人でも十分楽しめるけど、仲間がいるともっと楽しめるっていうのはこの前の高難度サバイバルミッションから教訓として学んだことだし、元全国クラスの腕前を持つ人がコーチングしてくれるなら、ガンプラバトルだってメキメキ上達してくだろうし。

 

「元全国大会常連のお方と交わるのも一興、というものですね。ロミカさん、機が熟したら、わたくしたちと是非フォース戦を挑んでくださいまし」

「はい……と、言いたいところなんですけど、私たちのフォースはまだ、私含めて3人しかいなくて。メンバー勧誘から始めなきゃですね」

 

 ロミカは、ルカのお誘いに苦笑を交えて答えた。

 うーん、ちょうどよく手が空いてて実力がありそうなダイバーに心当たりがあればいいんだけど。

 流石にそんな都合のいい存在が近くにいるわけ──はっ。

 

「それなら、ピケストを誘ってみる?」

「ピケストさんを?」

「まあ、最終的には本人次第だからなんともだけど……」

 

 パルくんと一緒にいることを優先したいっていうならそれまでだけど、ピケストはどっちかというと公私は切り分けて考えるタイプだし、GBNでもパルくんと極端に距離が近いようには見えなかったし。

 私がポケットからスマートフォンを取り出して、キョウに連絡を取ろうとしたときだった。

 機先を制するように、スマートフォンから無機質な着信音が流れ出す。

 

「もしもし、キョウ?」

『話は完璧に聞かせてもらった、私がピケスト先輩に渡りをつけよう』

「話が早くて助かるわ、それじゃお願いね」

『承知した、与えられた任務は完璧に遂行する』

 

 どこで聞いてたのかは知らないけど、ピケストもどこからともなく侵入して私たちの事情を把握していたんだから、キョウが同じことをできても全く驚かない。

 まあピケストならパルくんとガンプラバトルで矛を交えることになっても唆るタイプだろうし、多分大丈夫大丈夫。

 なんとかなるし、なんとかならなかったらなんとかすればいいだけの話だ。

 

 すっかり秋めいてきた少し冷たい風に吹かれながら、青空を眺める。

 遠いわね。

 ヒロトくんたちからも連絡があって、フォースを組むことになったっていってたし、さながら実りの秋ってところかしら。

 

『百合籠女学園生徒会より、呼び出しを申し上げます。高等部一年、ヤエザクラ・ツミキ様。同じく高等部一年、シロガネ・ルルカ様。至急生徒会室までお越しください』

 

 感慨に浸っていたのも束の間、全校放送で私とルカの名前が読み上げられる。

 生徒会……普段は縁がない場所だけど、なんかやらかしたっけ、私?

 ルカも困惑したような顔をしているし、困ったことに全く心当たりがない。

 

 でも、呼ばれたからにはいかないといけないし。

 私はルカとアイコンタクトを交わして、小さく頷き合った。

 ロミカも察してくれたのか、小さく手を振って私たちの隣から離れていく。

 

 生徒会……生徒会かぁ。

 私は興味ないから完全に情報とか集めてなかったけど、一流お嬢様の巣窟なこの学園の生徒会なんだから、それはもう堅物も堅物な人たちがお出ましになるのだろう。

 そんな人たちに呼び出されたってことは、十中八九なにかまずいことがある、という証明でもある。

 

「一応聞いておくけど、本当になにもやらかしてないわよね、ルカ?」

「はい……ミキも心当たりがないのでしょう? 不思議ですわね」

「まあ行ってみればわかるか……何事もなければいいんだけど」

「ですわね、なにかあったら、そのときはそのときですから」

 

 鬼が出るか蛇が出るか。

 運命の女神様が投げた賽がピンゾロを出さないことを祈りながら、私たちは普段立ち寄ることのない生徒会室へと向かった。

 そして、扉を開けて待っていたのは。

 

「ごきげんよう、ヤエザクラさん、シロガネさん。高等部3年、生徒会長のアマガセ・ミクと申します」

 

 うおっ、おっぱいでっか……じゃなくて。

 この人、記憶違いでなければ、GBNで会った個人ランキング39位の「ミィク」さんと瓜二つだ。

 いやまさか、そんな偶然があるはずもない、とぎこちない作り笑いを浮かべてやり過ごそうとするのを、アマガセ会長は見逃さなかった。

 

「それとも、『ミキ』さんと『ルカ』さんと言った方が理解が早かったでしょうか?」

 

 ひゃ、100パーセント本人じゃねーか!!!!

 ミィクさんがGBNでやたら意味深なことを言ってたのって、そういう。

 ってことは、もしかして。

 

「本日は──旧校舎音楽室を無断で使用している件について少しばかりお話したく、お呼び出しさせていただきました。さあ、座ってください、お二人とも」

 

 アマガセ会長は、笑顔で死刑宣告を読み上げて、私たちを椅子という名の断頭台へと導いた。

 ば、バレてるー!?

 私は、口から魂が抜けていきそうになるのを堪えながら、「なんのことでしょう」と唇の端を引き攣らせながら着席するので精一杯だった。




バレテーラ

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