「大丈夫でしたか!体力は減ってないですか!」
「むしろ君がガブガブ噛まれてたよね、狼に」
「あの程度ならリジェネで大丈夫です!」
「感染症になるよ?」
「そんな状態異常…………あるかも。この運営ならやりかねない」
第一印象として、大丈夫かこの子という感想が出てきてしまう。
「大丈夫かお前」
失礼、口に出た。
見た目こそ美少女であるものの、妙に統一感のない服装や若干サイズがあってないんじゃないかというアクセサリーがちらほら散見するような奇抜と言わざるを得ない姿。
妙に残念感が漂うのは何故だろうか。
「お兄さん、名前は何ですか?」
「なに、いきなりナンパされてるの俺?」
「いえいえいえ!人助けリストに記入するので」
「先に謝っておくね、キモい」
つい女性に言うような言葉ではない言葉を投げかけてしまったが、目をキラキラさせながら妙に恐怖感を煽ってくる美少女はいろんな意味でドン引きをせざるを得ない。
神を殺す兵器とか関係なしにやべー人間はやべーと判別しちゃうのよ。
「じゃあ私から自己紹介しますね!私はヘイル・プー・ミー。皆からはヘイルって呼ばれてます!」
「…………お、俺はレイ。レイだ」
「レイさんですね!マーカーがついてないあたりNPCなのかなぁ?」
小さな声で喋っていたが、俺には丸聞こえだった。
さっきから妙な違和感が続く。空から見た街並みとかは完全にファンタジー寄りだったのに、彼女の言動は明らかにゲーム脳な考えばかりだ。
また俺の知らない異世界に飛ばされたのかと思ったが、相手がゲーム脳すぎる言動ばかりで困惑しちゃう。
…………いや、違う。彼女がおかしいんじゃなくて。
「まあいいや、報酬もなさそうだし後のイベントに繋がるかも。それはそれとしてどうしてここに?」
「えっ?あ、ああ、世界各地を回ってたんだけど近くに街があるって知ってショートカットしようとしたら迷子になった」
「あー、確かに迷いやすいですもんねここ。たまに捜索クエストでるし」
適当な嘘をついたがあっさりと信じてくれた。
そして、先ほどの言葉もしっかりと聞き逃していなかった。
クエスト、イベント、NPC、彼女がゲーム脳で単語を使っているのではなく本気で用語を使用している。
先ほどは口に出さなかったが狼も生命にしては不自然に感じていた。
行動ルーチンも妙にワンパターンな行動ばかりしていて知性を感じつつもどこか機械的な部分があった。
それだけじゃない、この森の木々が風でなびくときの動きも若干の統一性を感じるし、葉っぱの模様も無駄に統一感がある。
このような考えを口に出したら頭がおかしくなったんじゃないかと言われそうだが、俺は既に異世界を経験してなおかつそもそも人間じゃないという根本的な話により俺は可笑しくなっていない。
そもそも神々も俺が精神操作されてはいけないからといって発狂することは出来ないんだけどな。
怒りは別だ、普通に神々に殺意を持ったから殺しただけで狂ってはいない。
初めからどこか狂っていただけた。
それはさておき、ヘイルと名乗る少女が口にした単語や周囲の無駄に整った環境からこの世界は本当にゲームの中であるという疑念、いや確信が生まれた。
あり得ない、なんてことはない。
昨今の小説ではゲーム世界に転生やら転移やらで奮闘するものもあるし、そもそも俺自身がある意味転移者かつ転生者みたいなものだ。
「よかったら街まで連れて行きますよ!」
「言っとくが、金も何もないよ」
「まあ、そこら辺は人脈形成ということで」
「急に社会に適応したようなことを言うな」
思っている以上に真面目なことを語りだしたヘイルにツッコミを入れながらもついていこうとしたレイ。
「じゃあクイックワープ使いますね」
目の前からヘイルが突如消え、そして取り残された。
「……………………はぁぁぁ」
まさか一人で取り残されるとは思いもしなかったレイは思わずため息を吐きながらしゃがみ込む。
「確かにさぁ、移動が面倒だったらショートカット使うだろうけどさぁ、こっちが現地人かもしれないことを考えたら普通に瞬間移動はダメだろ…………」
肉体は雷、最高速度は通常時でも光の30分の1という破格の性能ではあるが本気で走ると周囲に被害が及ぶため滅多に本気で走るつもりは無い。
しかし、被害を出さずとも生物、いや機械の目にすら留まらぬ速度で移動は出来る。
だが、一瞬のうちに消えてしまったヘイルを追いかけるのは至難の業。
クイックワープという単語を使ったという事は空から見えた街に移動したという推測からレイは1つの方向を見定める。
ゲームの世界と理解していても、妙に生物の『電磁波』を感じている違和感はぬぐえない。
ゲーム、といったらはテレビゲームや携帯機のような現代的なものばかりが彼の記憶に浮かび上がる。
レイはこの世界について何も知らない、さっきのヘイルもテレビ画面越しにしては妙にリアルに身体が動いたり表情も変わったりするなと思っていた程度である。
このゲームの世界と理解していても、それを外から眺める世界の技術がレイの知っているそれよりも進歩しているという事。
フルダイブ型VRゲーム、レイにとって異世界の次にファンタジーなものが存在していることを知らない。
知ったとしても、異世界経験者なので容易く受け入れるが。
「よし、こっちだな」
ヘイルの生体電磁波を記録していたレイは僅かな痕跡から街への位置を特定する。
そして体をゆっくりかがめ、いつでも張氏出せるように態勢を整え。
「ようい、どん!」
音を置き去りにして走り出した。
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