魔術廻戦 作:バタービールの風呂に浸かりたい
「ハァ……ハァ……なんだこの森……」
軟禁小屋を離れてから数時間が経過した。
森を降りても降りても人里は見えず、人の代わりに現れるのは大小様々な
こちらから何もしなければ襲ってこない蠅のような魔法生物もいれば、俺を見るなり親の仇かのように襲いかかってくる危険な魔法生物もいる。俺が一体何をしたってんだ、マジで。
「うわー、マジで食糧持ってこなかったら詰んでたな。にしても結構歩いたっていうのに、街の"ま"の字も見えないんだけど!」
くそぅ……箒さえあればなぁ……。
《アクシオ》はあくまで把握してる物体しか呼び出せないし、俺の腕前が悪いのか距離制限があるっぽいのだ。
ため息しか出ない、ホンマに。
と嘆いていると、またもら目が複数ある魔法生物に遭遇した。
俺は慣れた手つきで杖を振る。
「《
魔法によって浮かされた化け物は、バタバタと足(?)を動かすものの、浮遊する経験に乏しいようで対抗手段を見つけ出すことができない。
その間に俺は魔法力を溜めた《コンフリンゴ》を放ち、化け物を爆散させた。
「っぱこのコンボが良さそうだな。狙いの定まってない《コンフリンゴ》は躱される可能性があるし」
化け物たちの討伐途中にやたらすばしっこいやつがいたのだが、そいつは俺の放った魔法をことごとく躱して襲いかかってきたのだ。
その時は小技を駆使することで何とか身動きを止めて討伐できたのだが……油断大敵だな。
その分《レヴィオーソ》は出が速い上にある程度の範囲に放てるために、大抵の化け物は初見で攻略できずに爆散して死んでいく。
我ながら恐ろしいコンボだと思うが、襲いかかってくるのが悪いので末永く爆発(物理)してください。
「やっぱり単に強い魔法を撃つのは愚策だな。実力が拮抗してればまた別だけど……コンボは必須オブ必須か」
魔法におけるコンボ。これがまた侮れない。
俺は根が良い子ちゃんなので凶悪なコンボは思いつかないものの、いくつか相性の良い魔法をピックして練習したりしている。
そもそもコンボとは何か。
今回でいう《レヴィオーソ》で浮かした無防備な相手にある程度の火力の《コンフリンゴ》を確定でぶつけるって感じだな。
原作だと死の秘宝でウィーズリーママがベラトリクス相手に、《
どちらも無言呪文で応戦していたから別の魔法の可能性もあるけど。
要はコンボとは始動技さえ当てることができればほぼ確定で倒すことができるもののことだ。実質的な即死コンボだな。
ただし実力があまりにも乖離していれば魔法の効きも悪くなると思うし、そもそも始動技に当たってくれない可能性が高い。
だから一概にコンボを絶対視するのは良くない。状況によりけりって感じ。
「んなこと考えてる暇無いな……パパっと森を脱出しねぇと」
食事を終えた俺は再び森の中を歩いていく。
道中に出てくる化け物どもを退けながらひたすらに歩く。
──そして歩くこと二時間、俺はようやく気づいた。
「……なるほど? 同じ場所に戻されてるっぽいな」
敢えて残しておいた魔法の痕跡が目の前に現れた。
つまりは一定の距離を移動したら戻るようなシステムになっている。
「……足元にポートキーでも仕掛けられてたか? もしくはそういう空間に作用する魔法……もしくは魔道具……」
善は急げだ。やってみるか。
俺は杖に魔法力を込めて発動した。
「──《
魔法を発動した瞬間、ゴゴゴと大地が揺れる音がした。
ピキピキ、パキパキ、と何かがひび割れる音もする。
警戒しながら辺りを見渡すと、徐々に
そしてその亀裂から──大仏と悪魔を足して二で割った珍妙な見た目をした生物が現れた。
〘汝、俺様の術に気づくとはやるなぁですわ〙
「語尾も語頭も迷子じゃねーか」
丁寧なのか慇懃無礼なのか分からん。
というか喋れるタイプの魔法生物もいるのね。
まあ、魔法は何でもアリだから驚くほどのことでもない。
問題は──明らかに目の前の存在が俺に敵意を向けていることだ。
〘汝、珍妙な術を使いやがるますね〙
「珍妙なのはお前の見た目だろ……」
基本ベースは大仏なのだが、黒い髪がフサフサ生えている上に真っ黒い二対の翼が生えていて、バッサバッサと揺らしながら飛んでいるのだ。
おまけに右手に錫杖を持って、左手に三又の槍を持っている。キャラが渋滞しすぎていて俺のほうが心配になる。
〘俺様の術は空間に作用するんだぜます。他者を惑わす結界の構築はお手のものでござる。そして──こんな風に空間を切り裂く刃を出すこともできるでごわす〙
フォンっという軽い音とともに俺の右後ろに生えていた樹があっという間に両断された。
……っ、当たってたら死んでたな普通に。
幸い当てる気は無かったようだし、音を聞いてから無言呪文で防御はできる。なんでわざわざ教えてくれたのかは分からないが二度目の対処は余裕。
俺が杖を構えると、化け物も臨戦態勢を取った。
〘いざ、尋常にですわ〙
フォンっと音がする。
「──ッ《
ガキッ! と音が響き、斬撃は俺の元に届くことはなかった。……良かった《プロテゴ》で防げるなら対抗はできる。
しかし安心する間もなくフォンっ、フォンっと俺の命を刈り取る音が聞こえる。
「《プロテゴ》《レヴィオーソ》」
〘おお、これは摩訶不思議なるやって感じでござる〙
「ッチ! 抜けられるか!!」
一瞬拘束はできたが《レヴィオーソ》は無効化された。
実力差だろうか。
もっと魔法力を込めてたら長時間拘束できた気はする。
「っ《プロテゴ》!! 《コンフリンゴ》!! ……避ける気はあんまり無い感じね」
ドゴォォォオオ!! と《コンフリンゴ》が着弾し爆発を起こすが、煙が晴れると化け物は無傷でその場に佇んでいた。
分かってはいたが俺が今まで倒してきた化け物とは次元が違う!!
遠距離攻撃なのが幸いだな。
近接だったらプロテゴで防ぎ切れなかった。
〘曲芸師のような技さばきでっせ。俺様には効果など及ばぬんぬかぬん〙
「クソみたいな語尾しやがって……」
化け物は俺で遊んでるようだ。
斬撃の間隔からしてそう連発はできないようだが、それでも俺の魔法が効かない以上はジリ貧でしかない。……いや、ヤツの攻撃が一度でも当たれば俺が死ぬ以上はヤツのほうが余裕はある。
──この均衡を崩すには魔法の出力を上げるしかない。
舐め腐ってるだけあって当たってくれるだろう。
ここは一発ビビらせてやろう。
「《プロテゴ》」
斬撃をガードし、その隙を狙って俺はヤツに魔法を叩き込む。
「《
〘ぬ、ぬおおおおお!!?? グハッ……!! これは……!!〙
全てを粉砕する力の奔流が化け物を包み込むと、ヤツは苦しみながら徐々に体が崩壊していった。
かなりの魔法力を込めたしな。これくらいは効いてくれないと困るが……流石に勝ったな。
なんて警戒を解いた刹那、化け物は崩壊していない手で
〘領域展開──