続きを書くならハピエンにしたい。
⚠注意⚠
・暗い
鋭い牙。獰猛な目。大きな体躯。
他の獄卒獣のようにインペルダウンを巡回せず、常に看守長であるサディの傍に侍り、時に彼女の乗り物となり、時に彼女の武器になる“ソレ”は、クマクマの実の能力者の成れの果て──インペルダウンの、5匹目の獄卒獣である。
□■□
心根の優しい男だった。
看守長であるサディを信頼し、信奉し、愛していた。
『サディちゃんがいるなら、他に何もいらないよ』
毛むくじゃらの獣型でサディを膝に乗せながら、いつだか男はそんなことをのたまった。
妄信的で、陶酔的で、鼻で笑ってしまえるような陳腐な言葉。
けれど笑う気になれなかったサディが黙って男の膝をムチで叩くと、頭上から短く、うめき声にも似た悲鳴が聞こえて。
正に動物のクマのものであるそれが、サディの一等好きな悲鳴だった。
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──ぱち。と、目を醒ます。
夢の中と変わらない自室。
夢の中と変わらない家具。
夢の中通りにそれらに囲まれて、唯一の相違点として、随分体躯の大きくなった毛むくじゃらが、サディを腹に乗せてすやすやと寝息をたてている。
「……ねぇダーリン。今日囚人が、ん〜〜〜♡ あなたのこと、私の“元”恋人なんて言ったのよ? 失礼しちゃう」
男は何も答えず、寝息をたてたまま。
だが仮に男が目を醒ましていたとしても、男は何も答えなかっただろう。
悪魔の実に呑まれた男には言葉も自我も記憶も、きっと心すらも残ってはいない。
それでも今も男はサディを愛したままで、今はサディが唯一男に残ったもの。なのに。
『“ソレ”はもう、お前の愛した男じゃないだろう』
サディは何だか無性に腹が立って、寝転んだままで思い切り男の腹をムチで打つ。
頭上から聞こえたそれはやはり、サディの一等好きな悲鳴だった。
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何も覚えていないのね。と、君は悲しそうに言う。
覚えているよ。
分かっているよ。
自分の名前も自分の過去も覚えてはいないけど、君との思い出だけは残っているんだよ。
けれど、もう俺の喉は言葉を発せない。文字すら記憶から失せて書けやしない。
バケモノになってしまった俺には、君に気持ちを伝える術がほとんど残っていない。
……ヒトをヒトたらしめるものとは何だろう。
言葉?
理性?
記憶?
悪魔の実に呑まれた今では、その答えも出せそうにない。けれど。
「ん〜〜〜♡ どうかしたの?」
ぼんやりとしていた俺の顔を覗き込んで、サディちゃんが問いかける。
そんなサディちゃんを俺がいつもより少しだけ強く抱き締めると、サディちゃんは不思議そうな顔をして。
覚えているよ。
分かっているよ。
『サディちゃんがいるなら、他に何もいらないよ』
あの時君に伝えたこと、俺の中にはちゃんと残ってるんだ。
君がいれば、それだけで俺は幸せになれるから。
……なのに、どうしてかな。
あんなに伝えたのに。
あんなに綴ったのに。
『サディちゃん、■■だよ』
『■■■■■!』
君を