『さっさとその携帯電話の番号をメールしろ。この×××××が』
馬鹿で阿保な教え子が聖杯戦争に参戦した。
先代もこのような心境だったのか。
昨晩も興奮した様子で連絡をよこしてきたものだから説教をしたが、状況はこの一夜でも大きく変わったらしい。
「して、どうじゃったか」
「どうもこうも、どうして英霊というのはこうも規格外なのにあの馬鹿は・・」
――弟子が召喚したバーサーカーは腕時計。
――逮捕された英霊と
――そして、かつて冬木の地で見た黄金の英霊。
「これはこれは・・で、フラットは?」
「どうやら今は独房にいるらしく、それも逮捕されたサーヴァントと友達になったからだとか」
そう送られてきた写真の最後には相も変わらずな
目の前の老人は英霊などを時計塔に持ち帰ってきて、あわよくば研究対象にでもしたいと言っていたが、その未来は到底叶いそうにない。
こちらとしては胃が何個あっても足りなくなること間違いなしなので、
「その逮捕された英霊の正体は推測できるだろうか、Ⅱ世殿?」
「・・・」
――おかしい。
あくまでそれだという推測は立っている。
――写真にうつる少年の右腕の色
――フラットが言った昨夜の少年の変身
――ネットに転がる、解像度は悪いが紛れもなくドラゴンの姿
――そして纏う色
だがこれでは、腑に落ちない。
なぜ少年の姿を?
なぜ二人に分かれているのか?
この二人の差異は?
そもそも聖杯戦争では神霊を召喚できないのでは?
いやあれは神霊と呼んでもいい存在なのか?
あの少年は何だ?
召喚された理由は?
なぜ今になって―――
考えれば考えるほどドツボにはまっていく。
想定なら
現代魔術科のロードだからこそ、この現実がより一層信じられない。
「shit・・」
思わず葉巻に口にし火をつける。
こうでもしないとやってられない。
この戦争、予想通りのものだとしたらこちらの思惑から、いや世界のそれすらもとっくに――
「・・老人の身に煙は応えるのだがな」
「一本程度は許してください。 それと――」
「どうした。 先ほどから妙な方向に顔を向けているが」
食肉工場の地下で男――バスディロット・コーデリオンは偉丈夫に話しかける。
普段会話をするくらいなら自身のボスであり、唯一の忠誠を誓うガルヴァロッソ・スクラディオの名を少しでも傷つける輩を殺すことを茶飯事とする男が、だ。
だが事実、これから英雄王に襲撃を仕掛けるというのに、目の前の大男はそれとは別の方角ばかりに目をやっている。
そんなマスターの問いかけに
「遠き地の、いや、果ての大地か、妙な神性をばらまく輩がいる。 こうも隠そうとしないとは、だが妙な心地だ」
「なら問題ない。 いずれ殺すのだろう、貴様が」
――それは一種の信頼の形だろうか
己のマスターとの他愛のない会話の後、アルケイデスは体内で魔力を廻らす。
バスディロットもまた己が内で喚く泥を
すべてはこの戦争の勝利のために――
「令呪による転移はできん。 だが、貴様なら何も問題あるまい」
「無論」
――神々への復讐を誓う弓兵が野に放たれた
「・・そういえば私を
彼女らしくもない、とファルデウスは作業を続けながら彼女の語りを耳に入れる。
身近のソファに寝転ぶ彼女の顔には先ほどまで
「100年・・いやもっと近いかな? イギリスの片田舎で死にかかってる魔術師がいてさ、前にも何度かちょっかいかけてたけど死に目に会いに行ったんだよ。 そしたらさ、最後の最後に面白い置き土産していってね、あれはお腹抱えて笑ったよ!
そう語るフランチェスカの顔はどこか遠い目をしながら、まるで初恋の人との逢瀬を思うように口にする。
――フランチェスカさんでもこんな顔するのか・・
ファルデウスはどこか寒気を覚えながらその話に耳を傾ける。
「で、驚かされたのは
思わず彼女に視線を向ける。
その顔はどこまでも蠱惑的であり、それが今しがた話したことが嘘ではないということの証明だろうか。
それが意味することはつまり――
「待ってください。 その悩みの種と言うのは・・」
「そう! あの二人の少年のサーヴァント! あの子たち自身の詳しいことは私にも分からないよ? でもでも、なんで召喚されたかは
「むしろ彼の影響を考えたら
「――――――――――――――――――」
―――
真の槍兵の代理として呼ばれた存在は英霊、神魔よりか現象。
そこに意志が介在するかどうかは定かではない。
だが、一人の少年に試練を示す様は正に――――
その現象が啼く。
世界に最も近いが故に、誰にも知られることなく。
それはまるで
――――思わず口元が
そうして影法師の船長は少年の前から姿を消した。
次に現れたのは――――
「なるほど。 その縁から私も影法師に選ばれたか。 だが私は彼らほどの偉業を為したわけではないのだが・・」
享楽的に笑う船長がいつもと違う嗜虐的な笑みを見せたと思ったら消え、代わりにシグマの前に現れたのは『人間』だった。
男にも女にも、子供にも老人にも、聖人にも囚人にも見える、手術衣を着た『人間』だった。
「
! いやすまない、どうも一人で考えこんで周りが気にならなくなってしまうのが私の悪癖でね。 まあここまでわざわざ出張ってきたのだ。 少しは大目に見てくれると助かる」
だがその口調、表情、仕草が
「私もまた影法師の内の一人であり、uiinjrq命にuog敗rboxrpkuした者であり、特に
「彼? 召喚されたサーヴァントに旧知の人物がいるのか?」
「厳密に言えば私は彼を知っているともいえるし、NOともいえる。 何せ
先ほどから自身の納得のための独り言を会話としてくるこの影法師はシグマとしてもやりにくい。
物事に特に関心がない、それも聖杯への願いも飯と安眠とくるシグマでもこれには少しこたえる。
そんな様子に気づいたのか、彼も申し訳なさそうにし、そして他の影法師と同様に徐々に姿を消していく。
「結局、お前は何だ。 他の奴らと違ってそいつに注目しているようだが」
「まあ安心してくれ、他の者と同じく私は君に試練を与える者、それが一番の私の役割だ。 故に
「ところで、
「・・私もそう思う」
『よう兄弟! 災難だったな! アサシンのサーヴァント相手には善戦できたらしいがまさか吸血鬼、それにドラゴンってのは流石の俺も予想外だったぜ? そいつら化け物と戦って死人ゼロってのは充分に僥倖と言えるしな。 この経験を基にお前らの装備の力もまた引き上げてやれるってもんだ』
「・・貴様にしては随分と殊勝な心がけだな。 期待している」
このお調子者に見えてその実いまだ実力のすべてを此方に明かしていないサーヴァントのことだ、てっきり笑えない冗談の一つや二つ吐くものだと思っていたが・・
その思考を振り払って、改めて電話の向こうのキャスターに対し、署長は言った。
「それと、ドラゴンとはなんだ?」
『おいおい、いくらサーヴァントといってもこちとらただの一作家でしかないんだぜ? 相談相手を間違えちゃいないか?』
「サーヴァントである以上、私よりはそれについて詳しいと考えての相談だったのだがな」
竜種。
竜を模したモノは魔獣や神獣、幻獣といった多くの分類が存在するが、たとえ
だがその存在ゆえか、他の神秘同様現代にあるのはわずかな残滓のみで、現代の魔術師であっても詳細を知る者は限られてくる。
『何を期待してるかは分からんが別に俺が生きた時代だってドラゴンは既に空想上の生き物だったんだぜ? 話せることも限られてくるんだけどな』
「どんな些細なことでもいい。 少なくともあの老害が話すよりかマシだ」
『兄弟がそこまで言うんじゃあ仕方がねえな。 ならお前さんはドラゴンについてどう考えている? そもそも古くからドラゴンってのは世界中にいたんだぜ。 それこそお前さんたちが倒そうと思ってる王様だってその原型の
「・・では君は、あのサーヴァントを何と見る」
『あのドラゴンに変身したツンツン頭のことか?』
警察署が半壊したのは構わない。
もとよりその程度の被害など想定内でしかない。
仮想敵のサーヴァントは前に砂漠にクレーターを作れるほどの宝具を持っている。
ではなぜその少年に修理費の請求などをちらつかせたのか。
「仮にあれを何らかの竜にまつわるサーヴァントだとしよう。 だが
『お生憎様、さしもの俺でもあいつの正体は掴めねえな。 隻腕かつ竜にまつわるやつなんていればあんたでも分かるもんだろ?』
一通り話してみても少年の正体には近づけず、署長の顔にも少しばかり疲労の色が見える。
だがキャスターは話を続ける。
『ま、少しは肩の力を抜いたらどうだ兄弟! 会ってみて分かったけどあいつは話の通じるやつだ。 何より現代の料理の話もできるやつだ! サーヴァントの中じゃそれすらできないやつなんていくらでもいるんだからよ!』
「待て、貴様今なんて――」
ツーツーツー
妙にご機嫌なサーヴァントはそのまま一方的に通話を切る。
しかもこちらの指示から大きく逸脱した行為にマスターは頭を抱える。
聖杯戦争ではよく見られるマスターとサーヴァントのやり取りがそこにはあった。
「・・と、まあこんなもんか」
マスターとの電話をいい加減に切ったキャスターは
そこには二人の少年と悪魔が牢屋で、およそその場に相応しくない料理――ジャンクフード、宮廷料理、家庭料理になぜか懐石料理も――を口に運んでいた。
「うまい・・!! 何気にここにきて初めての飯がこんなにうまいだなんて・・! というかなぜか普段から誰かのせいであまり飯を食えてなかったような気がするから尚更・・!」
『本当にどんな人生を歩んできたんだ君は・・ ほらマスターも君も食い意地を張りすぎだ。 ほら、口が汚れてしまっているではないか』
「ふごふご・・ ありがとうございますジャックさん! にしても本当に美味しいですね~
「時計塔・・イギリス・・音速・・空から紐なしバンジー・・ うっ、頭が!」
『・・もはやつっこまないぞ』
「いーや、ぜひとも聞かせてほしいなぁ。 お前さんの足跡を」
そういいながらキャスターは隻腕の少年の顔を覗く。
――なるほど、確かにこれは不完全だ。
「? 俺の顔に何かついてます?」
「強いて言わなくても口の周りにソースまみれだぜ」
マジか!と言いながら口を拭く様は正しく少年。
隣の魔術師の少年もそうだが、
少年の世話をしている片翼の悪魔や
お歯黒ドミノな丸刈り頭のキャスターでも例外ではない。
「誰かは知らないけどありがとな。 こんなに料理を振る舞ってくれて」
「そいつはどうも。 でだ、お前さんを見て馴染みのありそうな料理をセレクトしてみたが、何か思い出したか? 食事ってのは人間の根本にある欲望に最も近いものの一つだ。 そこから何か記憶の手がかりがあるんじゃないのかって寸法よ!」
「それでも、宮廷料理はさすがに・・」
「そいつは俺の趣味だな」
確かに家庭料理とは思ったが、フラットからすればそれは和食だった。
服装、訛り、顔立ち、そこからキャスターは考察し、見事的中させた。
家庭料理と言っても、いわゆる母の味だけでなく、どこか学生の手作り感あるものもあった。
この男はそこすら見込んだのか、やはり見た目というのは当てにならない。
「・・断片だけならなんとか。 『巫女』『吸血鬼』、『ウィンザー城』、『天使』『ベランダ』・・?」
「うーん、まとまりがあるとは言えないですねー」
『「ウィンザー城」ということは、イギリス王室と何か関係が? それに「天使」だとは・・』
「『吸血鬼』・・魔術的には『死徒』っつーのか。 その言いようじゃ『巫女』ってのは日本の神社にいるあの『巫女』さんで・・それがなんで『吸血鬼』と並ぶのか見当がつかんけどな」
「自分で言っといて何だけど俺にもさっぱり・・」
三人寄らば何とやらとはよく言うがいくらなんでもキーワードが曖昧すぎる。
とてもじゃないが四人でも、たとえ名探偵でも結論どころか手がかりすら掴めないだろう。
最も彼でなくば話は別だろうが。
「まあ少しでもヒントが出たことを喜ぶとするか。 じゃあ本題だ、
「・・飯をくれたことは感謝している。 この独房も学生寮みたく改装してくれたことも。 あんたがサーヴァントだってことも、俺たちに悪意がないってのも分かっている。 けどよ、こちとら一度暴走した身だぜ? はいそうですかってすぐには・・」
「あー、そこらへんは安心してくれていいぜ、なあ坊主?」
そう言ってキャスターは視線を横にずらすと、そこにはニコニコ笑顔のフラットがいて――
「多分大丈夫ですよドラゴンさん! さっき食べてるとき勝手に解析しちゃいましたけど、中の感じは前より安定はしてはいるんで・・可能性で7:3ってところです!」
「おう! 相も変わらぬ俺の人権0で有益な発言ありがとうフラットくん!! もうお兄さんなんでもできるもんねー!!! というか俺の名前ドラゴン確定なの?! 男子小学生でもつけないレベルの安直さ!」
『・・・』
「せめて何か言ってくださいましバーサーカーさん! 私もうメンタがル耐えられそうにないですの!」
そんなこんなで騒ぐドラゴンを説得して小一時間。
とりあえずみんなが離れたのを確認してその右腕を出す。
『見たところ不審なところは見受けられないな』
「最初に会ったときも別に平気でしたもんね」
「確かに驚きはしたけどあのよく分からんやつに攻撃されるまでは意識はあったもんな・・ってキャスターさんそんなに近づかれるとなんかこそばゆいというか・・」
「おっと悪い悪い、いやしかし・・おかげである程度タネは分かったが、さてどう描いたものか・・」
「え!? 何か分かったんですか?」
驚くフラットらを余所にキャスターは右腕の観察を続ける。
「さっき俺のマスターとも話したんだけどな、
「・・・」
「その様子じゃ薄々気づいてたか? 可能性として考えられるのは未来の人物か異なる世界線の存在辺りだろうな。 それともちょくちょく創作でもあるマジの異世界からかもな!」
「なるほど並行世界ですか~ それについて詳しい人知ってます! 今なら電話できますよ! でも凛ちゃん機械音痴だし出られるか分かんないな・・」
「ちょっち待ってくれバーサーカーのマスター。 話はそこじゃあないんだ」
今にも電話に出ようとしているフラットをバーサーカーが止め、キャスターは先ほどから黙っているドラゴンに目を向ける。
「そこも俺としては気になるもんだが、今は聖杯戦争だからな。 問題はその右腕、そしてドラゴンだ」
「これが、か」
「暴れているところも生中継で見させてもらったが、やっぱり実際に触ったりしてようやく分かったぜ。 この違和感がよ」
「・・あ! それってもしかして」
「実際に干渉したあんたでも気づいてたか。 そうだ、この右腕は、あんたのドラゴンは
そう言われたドラゴンは自身の右腕を見やる。
そもそも魔術について知らない――いや、覚えはあるが穴が空いたような感覚が魔術という言葉にはある。
でもこの右腕はたしか――
「僕もあの時、少なくとも僕の知る異能じゃないなって。 同じ魔術でも士郎くんみたいな特異なやつでもなさそうですし。 何よりドラゴンさんを見ているとなんでか
「三角柱・・」
どうしてか、今一瞬おどおどした眼鏡の女の子の顔が浮かんだような・・
少年が人知れず記憶を思い浮かべているとは露知らず、キャスターは話を進める。
「そいつについては後で調べるとして、それとドラゴンについてだが――――」
――瞬間、全員が身構える。
量と質、速度も洒落にならないが何よりそのおどろおどろしい魔力が遥か上を通過した。
キャスターはすぐに手前の魔改造PCに目をやる。
そこにいたのは、あの金色の英霊とマスターと思われる少女。
先ほどの魔力の奔流はマスターを狙った凶弾だったのか、少女の目の前には盾がある。
「こいつはやばいな・・ フランチェスカの嬢ちゃんが言ってたのはこれか」
「それにこの金ぴかの人ってアーチャーですよね? でも今の攻撃って多分弓矢じゃないですか!?」
『おそらくその通りだな、だがなぜ―― ! 待ってくれドラゴン!』
――気づいたときには少年は部屋から出ようとしていた。
確かに彼女にはサーヴァントがいる。
あの攻撃に反応できるほどだ、きっと心配はいらないのだろう。
だけど、こんなにも幼い子どもを狙ったやつがいる。
その事実だけで体が動いていた。
先を急ごうとする少年をバーサーカーが数で抑えている最中、キャスターが口をはさむ。
「ぶっつけ本番だがしょうがねえ。 なあドラゴンさんよ、同盟者でもない俺が言うのもなんだが、そのままじゃあまた暴走しちまうぜ」
「・・それでも、このままじゃ誰かが!」
「分かっている。 だけどな、今のあんたの力じゃ攻撃したやつにもこのアーチャー相手でもどうもできないぜ。 それほどにこいつらは強い。 夜に戦った警官らとは悔しいが格が違う。 それがサーヴァントってもんだ」
「それじゃどうしろって・・」
「そこで提案だ! あんた、ホントは本調子じゃねえだろ? そして取り戻すための対策もすでに心当たりがありそうだしな。 それまでのサポートを俺にさせてくれねえか? ただ強くするんじゃねえ。 むしろその力を安定させるためだ」
それを聞いてドラゴンは動きを止め、キャスターを見る。
既にその右腕は竜のかぎ爪とも言えるほどに形を変えている。
「・・どうやって?」
「言ってなんだが俺としても確証はない。 だけど坊主の話を聞いて、俺の考察は少なくとも間違いではないと思ってだな。 上手くいけばあんたは俺が仕込んだその場しのぎで戦える。 ここで話してみて悪人ではなさそうだしな。 あんたの信念を俺は信じる」
キャスターは自身ありげに言う。
詳しいことなんてわからない。
そもそもキャスターとは知り合ってすぐの関係だ。
だけど、その目には確かに嘘はなくて、目の奥には何か炎のようなものが見えて。
気づいたときにはキャスターに右腕を出していた。
「なら、頼む。」
「あい分かった。 おれも全身全霊でサポートさせてもらう」
「詳しいことは後で話すが、その右腕の曖昧さを俺は自由だと捉えさせてもらったぜ。 なら後は筋道を立ててやるだけだ」
『
そう言われたとき、少年の意識は既に闇の中に――――
「本当に大丈夫だったんですか?」
「さあな、どうなるのかは俺には分からん。 俺はまだ観客だからな。 演者に向けて花束しか送れん。 だけどこの様子じゃ、俺も舞台に上がる羽目になりそうだぜ」
そうぼやくキャスターたちの頭には、青空が広がっていた。
「あいつ、まさか・・」
「どうしたのドラゴン?」
「君も感じたかな、
「・・いや、問題ないだろ。 それよりランサー、俺たち夕方にはここから出ようと思うんだが」
「昨夜から感じるこの視線についてかい?」
「それもあるけど、この戦争に知り合いがいる気がしてな。 そいつを探しに行こうと思う」
「え、あんまここから動きたくないんだけど」
「その子のこと気に入りすぎじゃないか、アヤカ? 主にその毛並みの触り心地に」
「大丈夫、僕のマスターの毛並みは最強なんだ!!」
「あんたがボケに回ったら大分つらいんだけど・・」
「――――――――」
銀狼の遠吠えは森に消えていった。
どこか遠い場所にて、少女と白い女は歩いていた。
ふと気づいたように女は街の方角に目をやる。
「・・この気配、いや生前ではない。 どこかの時空の私は知ってるのかしら?」
「どう・・したんですか? フィリアさん?」
「ふふ。 ねえハルリ? 確か聖杯戦争じゃあ神霊は召喚できないのよね?」
「はい、呼び出せるのは神性を持った英霊くらいのはずですが・・」
そう、と言いながら目の前の女は笑みを絶やさない。
それを見るだけで意識が持ってかれそうになる。
一体このホムンクルスはなんなのだろうか。
思案するハルリとは別に、フィリア――中身は既にイシュタルと呼ばれる女神なのだが――はその歩みを止めない。
今はまだだ。
まだあの二人を仕留めるにはまだ早い。
あいつらには思いっきりの絶望がなくては。
それまではまだ、まだだとも。
女神はスノーフィールドを闊歩する。
たとえどんな障害が――たとえ自身と同じく神そのものだとしても――目の前に立ちふさがろうとも、その歩みを止めることはないだろう。
くらい、くらいところで
だれかははしっていて
とうめいなかべにぶつかって
なぐってもけってもどうしようもなくて
そのてをおろすけど
ひかりがこっちだよって
むこうをゆびさして
ひかりといっしょにだれかは
ねむれるしょうじょへとはしっていく
「ああ、そうだ。 我が骨肉、我が魂こそは、
「そうか……貴様はもはや、
「王たる
アルケイデスは泥を、ヒッポリュテは神気を高め魔力の純度を高め、今まさにぶつからんとしている。
最古の王たるギルガメッシュは
全員がそれぞれ神話を生きた大英雄。
ひとたび巻き込まれれば、生きて帰ることはないだろう。
だが、そこに狂人が割り込む――――
『はい、おしま・・え!! なに!?』
だけでなく、更に闖入者が一人。
だがそれは人というか正しく――――
「あれは・・竜!?」
「なに?」
「ほう……」
「……」
「――――――――」
竜が吼える。
割り込んできたキャスターと思われるサーヴァントによってか周りの風景は大渓谷から雪が降りしきる見渡すかぎりの大森林になったこともあるが、その仕掛人にとってもこの竜はイレギュラーなのか、その声には驚きが見える。
瞬間、ギルガメッシュの握る
「わわ!! いきなり危ないなー まだ僕は何もしていない善良な英霊だよ?」
「貴様のような狂人は、何かしでかす前に叩きのめすのが一番だからな」
ヒッポリュテはその身を殴るが、たちまち少年の姿は霧散する。
舌打ちするヒッポリュテの眼前には既に禍々しい矢が迫る。
それらを拳ではたきおとし、矢を放った相手に目を向ける、が、彼はそこにはおらず、すでにもう一人の乱入者である竜へと迫っていた。
「――――――――」
その風体は竜というよりかは
しかしその大量にある目には青と黄色が垣間見える。
いや違う、とギルガメッシュのマスターであるティーネは目を見開く。
「あの神性は……!! 先ほどのサーヴァントと同程度・・いやそれ以上!?」
ヒッポリュテは王と同じく半神だ。
その身に纏いし神性にもある程度の説明がつく。
だがあの蛇は?
突然乱入してきたのも驚きはあるがこれは聖杯戦争、まだ事態として呑み込める。
だがこの神性はどう見ても「神」のそれだ。
「聖杯戦争で神霊は召喚できないはずでは・・?」
「大方召喚された後に付いて回った代物だろうな。 でなくばあの復讐者が放っておくまい」
そう笑うギルガメッシュにも泥にまみれた矢が飛来する
が、
「邪魔をするな
アルケイデスはより濃い殺気を滲ませ矢をこの場にいる誰も彼もに放つ。
その数が最も多いのは金色の王でもアマゾネスの王でもなく、目の前の竜であった。
その矢の大群はたちまち鳥の姿を取り――――
「あれは…ステュムパリデスの怪鳥か!」
眼前の大蛇へと迫る。
その魔力の量質ともに並の英霊ならば必殺の宝具と呼んで差し支えない威力。
だがそのことごとくを大蛇は叩き落す。
その外皮に傷はなく、正しく神と言うべきものがそこにはあった。
「しかして
しかし動きは鈍る。
ギルガメッシュはすかさず
宝具はどれも竜殺しとも呼べる原典の数々。
だがそれでも大蛇は応戦し、あるいは避け、いくつかは嚙み砕く。
その隙をアルケイデスは突かんと弓矢を引き――――
「貴様、私を見落としてはあるまいな?」
ヒッポリュテの拳が叩き込まれる。
防御の姿勢を取ったが、なるほど、先ほどとは神性も魔力も何もかもが違う。
だからこそ殺すのだ。
神々への復讐者たるアルケイデスがその弓を引くのはそれだけだ。
「星々が巡らす因果だろうか。 半神二人だけでなく、神そのものもこの身で堕とせるとは!」
『
それは純粋な神殺しの九つの矢。
膨大かつ禍々しい魔力が森林を廻る。
彼の人生で神殺しを為したことはない。
だが神を倒した、神性を孕む怪物を討伐した経験から放たれる矢には泥の性質も相まって恐ろしいまでの殺気が込められる。
4つは竜に、2つは金色の王とその従者に、2つはアマゾネスの女王に、そして1つは――――
「おっと危ない。 いや~僕のかくれんぼも看破するとは! 流石はヘラクr」
『
自身の忌み名を口にせんとする狂人へと再び宝具を放つ。
フランソワは己の魔術を行使し防ぐ、というよりかは誤魔化す。
その隙に再び大蛇を射落とさんと気配を頼りに体をそちらに向けて――――
「私の目の前で一度だけでなく二度も幼子を狙うか貴様!」
怒りを胸にヒッポリュテは仇敵へと成り果てた男に先制を仕掛ける。
するとアルケイデスも彼女と同じく徒手空拳にて迎い打つ。
その殴打の応酬を経るごとに激しさもまた増していく。
「――――――――」
しかしてそれも終焉を迎える。
大蛇は真っ先に復讐者に突撃し、口に銜え空へと昇る。
そして空中にて彼を嚙み砕かんとより力を入れる。
だが、彼はギリシャ随一、いや世界一とも呼べるほどの英雄。
たちまち竜の表皮に2、3本の矢が貫かれる。
『
たちまち竜も口を開き復讐者は地に墜ち立つ。
先ほどまで射た計18の矢が竜に迫る。
各々が叩き落した矢はその攻撃自体がブラフ。
その後森の木々の間を
まさに、射落とす百頭。
残りの矢も揃って竜に迫る。
竜は気づくもそれに対処する姿勢を取れずにそのまま――――
「
矢はそのことごとくをライダーの矢によって相殺される。
確かに矢には神殺しの殺意が練り込まれてはいたが、長く森の中を回ったからか勢いはそれほど。
だがアルケイデスが射た矢は並大抵のものではなく、
証拠にそれを射落としたヒッポリュテの魔力は先ほどよりもその純度を濃くしている。
それを見てギルガメッシュは笑う。
「小娘よ、それほどの神性、いくら半神の身でもいくらか厳しいのではないか?」
「……」
確かにギルガメッシュの言う通り急な魔力の変化に体が追い付いていない。
元々は段階を経てその神性を上げていくつもりだった。
だがそれがどうした。
マスターの言う通りならこの竜は今自身が
それを目の前で害されるのならこの程度の軋みならそよ風に等しい。
「それがこの男が為す惨劇を見過ごす理由になろうとも?」
再び場は整う。
三基はそれぞれ武器を構え、乱入者の狂人は当初の目的を忘れて嗤う。
だが竜の様子が変わる。
神霊そのものとも呼べるほどの神性が、似通った、いやまるで別物で異質なナニカへと変わっていく。
そしてその跡には一人の少年が立っていた。
「あんたらが誰かなんて知らない」
王は先ほどまでの笑みとは裏腹に目を細め、その表情を固くする。
「願いなんて知らないし興味もない」
女王は真剣な眼差しで少年を見、復讐者は黙って耳を傾ける。
「けどよ、そんな子どもを連れだしたり、狙ったりするほどの願いだなんて言うんだったら――――」
狂人は相変わらず笑い声を響かせ、少女は先ほどのライダーの言葉を思い出す。
「――こいよ、その
たちまち少年はその腕から出る神性モドキを身に纏い、目の前の復讐者へと迫る。
少年の戦いが始まろうとしていた
老害「横槍、失敗しちゃった♪」
署長「胃腸薬をくれ」
ドラゴンドラゴン書いているせいか、全年齢ドラゴンが頭をよぎりまくる
世俗も肉欲も乗り越えなくては・・
あと影法師に彼をセレクトしてみました
彼やとあるを型月なりに解釈してみようと思います(若干オリキャラくさいかも・・)
相変わらずガバガバなので矛盾や間違いがあったら指摘してください
あの竜さんに成ったら成ったで暫く暴走状態になるクソ仕様