「──お、ま〜お、授業終わったよ?」
「ん…?あれ、昧《まい》?」
ごしごしと目をこすりながら机に突っ伏して寝ていたらしい身体《からだ》を起こす。
「ずいぶん幸せそうな寝顔でしたなぁ。
よほどいい夢をみたと存じ上げますが」
ニマニマとそう言ってくる昧《まい》だったが
「まぁ、うん。お母様の夢をね」
というと少し申し訳なさそうになる。
「舞桜《まお》のお母さん。すっごくいい人だったもんね…」
お世話になった時のことを思い出しているのか、私から少し目を逸らし、しんみりとした顔になってる。
「そんな顔しないでよ。
完璧に整理がついたって言ったら嘘になるけど、ある程度は受け入れたんだから。
昧《まい》が気にすることじゃないよ」
「そう...だね!よし!とりあえずお昼食べよ!」
今の一瞬で気持ちを切り替えたらしい昧《まい》が「おー!」と右拳《みぎこぶし》を上へ突き上げる。
昧《まい》のこういう切り替えが早いところは素直に尊敬できるんだよね。
色々なことを引きずりがちな私にとっては...。
「あ、ごめん。先に屋上行ってて。
今日お弁当作り忘れちゃって。食堂寄ってくから」
本当は休もうと思ってたから作ってないだけだけどね...。
「へぇ~珍しいね。分かった。ほら!行くよ阿津斗《あつと》!」
そう言いながら静かにパソコンを打っていた阿津斗《あつと》を無理矢理《むりやり》引っ張っていく昧《まい》。
そんな微笑《ほほえ》ましい?光景を横目に食堂へ向かおうと教室を出ると
「よ」
と天宮《あまみや》が出待ちをしていたらしく声をかけてくる。
「......何の用?こっちは急いでるんだけど?」
はぁ、とため息混じりにそう言う。
それとほぼ同時にポイ、と私に向かって何かを投げてくる。
反射的にそれを受け止めて見てみると
──アンパンだった。
「結果として体調悪いやつを無理矢理《むりやり》登校させたからな。
それでチャラってことにしてくれ」
「昨日のことあるしこんなことしなくても...」
なりゆきとはいえ一緒に昧《まい》を助けてくれた恩がある。と言うと
「それはそれ。これはこれだ。デカいやつはデカいやつで、返してもらうさ。
──俺は欲張りなんでな」
ニヤリと不敵に笑う。
何やら面倒くさそうなことを考えていそうなんだけど…。
まぁ、実際《じっさい》に助けてもらったわけだからできることはするつもりではあるし。
うん。諦《あきら》めよう。
「...分かった。それなら遠慮《えんりょ》なく貰っておくね」
というか、きちんと私の好きな餡子《あんこ》を買ってくるあたり、かなり詳しく調べてるよね...。
あんまり知らないっていう言葉はどこへやらだ。
「んじゃま放課後楽しみにしてるぜ」
と言って何処《どこ》かに行ってしまう。
私も昧《まい》と阿津斗《あつと》を待たせてるし、早く行かなきゃ。
そう思い少し駆《か》け足で屋上へ急ぐのだった。