私が髪飾りを外すと同時に右目が緋色に染まり、
「あっち!」
反射的に飛び退く
「──さぁ、
ブワッ!と私の出した
「あんまり見せたくなかったんだけどな...」
「えっ、」と思わず声が漏れる。
なぜなら漣に私の焔が触れる瞬間、すっと霧散《むさん》して消えてしまったからだ。
術が弾かれた感覚でも、相殺された感覚でもない。
ただ「存在ごと抜き取られた」みたいな、変な消え方。
「悪いな。俺に術は効かねぇんだわ」
耳元で
体が後ろに吹き飛ばされる。
とっさにさっきやったような空気の層を作りブレーキをかけようとする。
......だめだ、減速が間にあわない。
──ドガンッ!
そのまま十分なスピードを保ったままガラスの壁にぶつかる。
「かはっ!!」
とっさのことで受け身が取り切れず、衝撃で視界がグラつく。
「こうすりゃお前はただの女の子だ」
私が動けない隙に私の両手を頭の上にやって右手で固定し、動けなくされた。
このくらいなら、と腕に力を込めようとするが力が入らない。
...いや、霊力が使えない!?
何かにじわじわと吸われていくような、そんな感覚。
ググッと無理やり抜け出そうとするが男と女では勝負にならない。
そもそも私はほとんど無意識に霊力で身体能力を底上げしているだけだ。
それがなければ一般的な男性よりも強い程度の力しか無い。
足の方は自由なのだが、この体勢だと蹴ろうとしても止められるのがオチだ。
っていうか、顔、近い。
ドクドクと心臓がうるさくなる。
顔が熱い。
近くで見るとよく分かる、意外と整ってる顔や私とは違うゴツゴツとした身体。
こうして押さえつけられて私は何をされても抵抗できない状態にされている。
そして、その事実が私が女で
──って!何考えてるの!?私!?
ただでさえ速い鼓動がさらに速くなる。
「...目、綺麗だな」
「なななっ!何言ってんの!?」
ドクドクどころかバクバク鳴り始めた。
昔から気味悪がられていたこの
…頭がおかしいと思う。
本当におかしい......よ。
褒められた嬉しさと気恥ずかしさで真っ赤になった顔を斜め下にずらして
あぁ、もう!こいつといると
知らない感情に振り回される。
「とりあえず、今回はお前の負けだな」
そう言って腕を解放してくれる
「約束、ちゃんと守ってもらうからな」
ひらひらと背中越しに手を振って
それに続いて観客達もゾロゾロと外へ流れていった。
私は
バクバクとうるさい胸をぎゅっと強く握る。
変に嬉しくて、とても恥ずかしくって、そして......とても、とても優しい気持ち。
「ま〜お〜っ!!」
ガシッ!と叫びながらいつの間にか来ていた
痛い痛いっ!平気なふりしてるけど昨日の肩と胸の傷完治してないからっ!
「怪我ない!?痛いところは!?あいつに変なことされてない!?」
まくしたてるように話す
怪我してるし痛いところも
...とは流石に言えないため
「だ、大丈夫だから。一旦離れて」
「あ、ごめん」
そう謝ってパッと離れてくれる。
......あれ?
さっきまでのあの変な熱が消えている?
「
「何でもない。帰ろっか」
パン、パンと土を払いながら立ち上がる私。
「ねぇ
「別に...。特別なことはなにも」
「嘘。何かあったはずだよ。」
即座に否定してくる。
「声は聞こえなかったけどあいつに見せたあの笑顔。
真剣な顔の
「...あいつとは一緒に仕事をするって約束しただけだよ。それ以上でも以下でもない」
「......私達なら足手まといってそう言って断るくせに」
ボソリとなにかを呟いた。
「何か言った?」
「うんん。何でもない。
......そうだ、どうせなら私達も含めて4人でパーティ組もうよ。その方がいいでしょ?」
ニコッと笑う
...どこがいつもの笑顔とは違う気がした。
「それは...考えとく」
「うん。ちゃんと考えといてね」
私に背中を向け笑顔でそう言う。
拳をギュッと握ったのが見えた。
『あぁ~あ、ぽっと出の変なやつに
これでもなんとか
──でも、うん。仕方ないよね。
知りたくなんてないのに見えてしまう。
日が落ち始めた空をゆっくりと見上げる。
──あぁ、やっぱり、わたし、この目が嫌いだ。