元SyngUp!の三人が、ファミレスでわちゃわちゃする話です

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月村手毬STEP3の時間軸を想定しています


第1話

「ねぇ燐羽、いつ戻ってくるの?」

 向かい側に座っている手毬がコップを口に運びながら見つめてきた。その上目遣い、いつも言いづらそうなときにやる仕草だ。

 私は小さくため息をつきながら首を横に振る。

「なんで戻ってくるの前提なのよ」

「……だって」

 手毬がちみちみと水を飲みながら視線が下に向く。それに釣られたかのように私も視線を逸らす。まるで私が悪いみたいじゃない。

「ねぇ燐羽、今度はいつ初星学園にくるの?」

「なんで来ること前提なのよ」

 手毬に向き直ってあきれたように笑う。

 今日だって手毬の特訓とやらで急に初星学園に呼び出された。まぁ私としては、今の手毬の実力を知る意味でも悪くはないと思ってきたんだけど。

 それでレッスンも終わり、こうしてファミレスにいるわけで。

「ねえ燐羽――」

「今度は何?」

「いつ頼むの?」

「なんで私が取るの前提なのよ!」

 そう言いつつタブレットに手を伸ばす。

「まぁ。だってりんちゃんが一番近いじゃないですか」

 さっきからずっと隣で黙っていた美鈴が笑う。近さで言ったら美鈴はともかく、手毬は大差ないでしょ。

「で、何食べるの?」

 とりあえず適当に触って手毬のほうへ向ける。ハンバーグやらステーキやら映っていた。

「じゃあハンバー……」

 急に言いよどむ手毬。そしてぎゅっと顔をしかめた。

「ぐっ……」

「手毬はハンバーグ定食ね」

「なんで!?」

「自分で言ったじゃない」

「まだ言い切ってない!」

「えー……」

 じゃあなんの「ぐ」なのよ……

「まりちゃん。ダイエット中なんですか?」

「……うん、ライブちかいから……」

 美鈴の質問にしょんぼりしながら答える手毬。

 なんとなく予想はついていたけど。

「……いいんじゃないの? 今日ぐらいは」

 ため息交じりにいいながら美鈴に目を向ける。美鈴は口に手を添えながら微笑んだ。

「まぁ。りんちゃん、悪い人ですね」

「今更? あと人のこと言えないでしょ?」

 私が言わなかったらあなたが言ってただろうに。

「でも、プロデューサーにバレたら……」

「まぁ。大丈夫ですよまりちゃん」

 そう言ってスマホをテーブルに置く美鈴。手毬と一緒にのぞき込むと、チャットの画面で相手は手毬のプロデューサーだった。内容は――。

『今日のまりちゃんのお昼はハンバーグ定食です。』

 と書かれていた。……なんで手毬のプロデューサーとチャットしているのよ。

 すぐさまシュポっと音が鳴る。返信はや。

『……わかりました。レッスンの調整はこちらでやります』

「怒ってるじゃんプロデューサー!」

 泣きそうな声をする手毬。あ、プロデューサーとのやり取りはいいのね。

「まりちゃんのプロデューサーは心配性ですね。安心させましょう」

 そう言ってスマホを触りだす美鈴。変なこと書くんじゃないでしょうね……。再び美鈴がスマホを置く。

『安心してください。付け合わせのにんじんも食べるって言ってます』

「えぇ!? 美鈴今日は食べてくれないの!?」

「いやそこじゃないでしょ……」

 そんなので安心なんか――。

『それはだいぶ成長しましたね。今回は大目に見ましょう』

「ええ……」

 手毬に甘すぎるでしょこのプロデューサー。

「やった! 私ハンバーグ定食!」

 当の本人はきらきらと目を輝かせながら注文リストに入れていた。そのままくるっとタブレットをこちらに向けながら笑いかけてくる。

「二人は何食べるの? ハンバーグ?」

「なんでよ。適当に頼むわ」

「りんちゃん、私は日替わり定食を」

 タブレットを操作していく。私は何にするか。そんなにお腹は空いていないしパスタでいいか。

「燐羽燐羽、ペペロンチーノ、一口頂戴ね」

「はいはい」

 手毬をあしらいつつ操作を続ける。デザートの画面までいき、バニラアイスを3つ注文リストに入れると手毬があきれた声を出してきた。

「燐羽アイス3つも食べるの? お腹壊すよ?」

「あなたねぇ……」

 そこ、美鈴も笑わない! まったくもう……。

「……手毬と美鈴の分も頼んだの」

「2つも食べていいの!?」

「あなたねぇ……」

 私の分がないじゃない、別にいいけど。

「まりちゃん、私の分もいいですよ」

「そこ、甘やかさない。大人しく一人一個よ」

「まぁ」

「はーい……じゃあ、いろんなアイスにしたい」

「はいはい、どうぞ」

 タブレットを渡すと嬉しそうにアイスを決めだす手毬。この子の中ではすでに一口ずつもらうことが確定しているらしい。私も美鈴もわかっているから何も言わないが。

「美鈴、アイスは内緒よ」

「まぁ」

 スマホを持ってる美鈴の手が止まる。

「せっかくこれを機にあちらのプロデューサーに私のことも……」

「何? プロデューサーが欲しいの?」

「いえ、冗談です」

「どうだか」

 本当、油断も隙もない。

「はい、燐羽」

 なぜかタブレットを返される。私は他に頼むつもりもないし。困惑している私に手毬が満面の笑みで続ける。

「送信、押させてあげてもいいよ」

「……なんで?」

「だって最後はやっぱり燐羽だもん。ね、美鈴」

「まぁ」

 美鈴もふふっと笑っている。

 はぁ……相変わらず、面倒くさいわね。

「……本当、苦手」

 そう笑って私は送信をタップした。


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