転生したら犬塚キバだった件。
前世では、せっせとブラック企業の社畜として令和の時代を生きていた俺は、ある日、仕事の疲れで朦朧とした意識で帰路についていた時、トラックに轢かれて死んだ。
それで目を覚ますと学生時代に読んでいたNARUTOの世界に転生していたってわけだ。
これが俗に言う異世界転生というやつなのだろう。だがよりによって転生先が犬塚キバ。
いや、なんだろう。たぶん転生先としては比較的当たりな方のはずなんだけど……ナルトの同期の中では結構地味な部類だよね、キバ。少年編ではそこそこ美味しいポジション貰ってた気はするけど。
兎にも角にも、犬塚キバとして生を成してから数年経った頃、俺は真剣にこれから先のことを考えた。大筋は覚えているが連載が終わってから10年以上経過しているため、細かい部分はだいぶ怪しい。BORUTOの連載は社畜となってから始まったから全然追えてないし。
木の葉崩し、サスケ奪還、ペイン襲来、第四次忍界大戦……キバが確定で関わるであろう危険度MAXの出来事、確かこんな具合だったと思う。
ぶっちゃけて言うなら、令和日本の現代っ子メンタリティしかない俺は忍なんて目指さずに平和に暮らしたい。
けど木の葉に暮らしている限り、危険度MAXのイベントがあっちから近づいて来る。何より10年ちょっとで大陸巻き込んだ戦争が勃発する。逃げ場なんてあってないようなもんだし。
と言うかそもそも犬塚一族が忍の一族だし。キバの母ちゃんこえーし。たぶん、普通に忍にならないの無理だわ。
やはり死なないためには、今だけは頑張るしかない。
うん、社畜として鍛えられた集中力ぐらいしか取り柄がないけど、数年ぐらい忍としての修行を真剣にやって、そのうちしれっと裏方に徹する感じのポジションに収まるのを目指そう。
確か、キバって匂い系の感知タイプだし、その辺の才能をアピールすれば裏方に回してくれるんじゃないか。
じゃあ、さっそく今日から母ちゃんに修行付けてもらおう!
「――よし、行くぞ!
「あぁん?」
……キバの愛犬ってこんなに野太い吠え方するんだっけ?
♢
齢3歳の時に忍として生きる決意を固めた俺であったが、あれから10年弱が経過し、いよいよアカデミー卒業の日を迎えた。
幼い頃から努力する日々を続けてきた俺はなんと! 首席でアカデミーを卒業することが出来た。
クールボーイのサスケ君や主人公だけど現状はまだ卒業資格のないナルト君が悔しげにこちらを見つめる中で、僅かながら悦に浸る俺であったが――途中で我に帰った。彼等は心身ともに日本でいう小学校6年生ぐらいの歳。対して自分は前世はアラサー、今世も合わせるな四十を越える精神年齢。
遊びたい盛りの彼等より自分が努力できるのは当然だし、この先、真っ当な努力を積んだ彼等に呆気なく追い抜かれていくだろう。
自分は凡人であることを忘れてはいけない。
だから生き残るために少しでも努力を積み重ねないと。
よし、卒業式が終わったら日課の滝登り修行をしよう!
「行くぞ、
「待たんか、おんどりゃあ」
なんで広島弁で話すようになったんだろ、このワンちゃん。
下忍となったが、原作通り紅班に班分けをされた。班員も原作通り、油女シノと日向ヒナタである。
下忍に言い渡される最初の任務はやはり迷い猫の捜索であったが、探知力に優れたメンバーのおかげで捜索は容易だった。
俺も何とかアカデミー首席としての意地を見せなければと言う思いもあり、多少は自信のあるスピードを活かして迷い猫を捕獲しまくった。何故か二人には呆れられてしまった。
そんなこんなで第八班として日々任務に励んでいくなかで、紅先生が俺たち3人に話があると切り出した。
「――もうすぐ中忍選抜試験が行われるわ。私としてはぜひ参加してほしいと思ってる。けどこれは
「はい」「……はい」
? 充分、今のままでも2人共優秀な下忍だと思うんだが……。
「うん、じゃあこれから中忍試験までの間、私が2人に修行を付けるわ」
「……あの、先生俺は――」
「キバは見学よ、いいわね」
すっごく怖い笑顔でそう言う紅先生にビビって何も言えませんでした。
さすがに2人が試験に向けて頑張ってるのサボれないな。夜の修行を倍にしてやろう!
それからあっという間に中忍試験当日となった。
俺たち紅班は3人で試験の開始を待っていると、メチャクチャ見覚えのある3人組を見かけた。
その中心にいる人物が、俺の横にいる2人には見向きもせずに近づいてきた。
「お前が、あの犬塚キバだな。俺は日向ネジだ、よろしく」
「あ、ああ」
思わずチラッと横にいるヒナタに目を向ける俺。その視線に合わせてネジもヒナタへと目を留め――。
「良かったですね、ヒナタ様。有能な班員に恵まれて、貴方はつくづく幸せ者だ」
それだけを吐き、ネジは班員のもとに戻っていく。彼の隣に立つ緑タイツの彼が俺に向けて声をかける。
「キバ君! ボクも君と相見えること、天才を越える努力があると証明する事が出来ることを楽しみしているよ!」
努力の天才 ロック・リーがサムズアップしながらこちらに宣戦布告をした。
リーに比べれば俺の努力など些細なものだろう。彼に比べれば幾分か才能を貰っている身だが、それでも俺は凡人だ。
だが凡人なりに積み重ねてきた努力に対する自負はある。リー、お前の気持ち、痛いほどよく分かる。
「頑張ろうぜ、ロック・リー!」
そう返すとリーからの視線が更に鋭くなった、なんで。
「あほんだらぁ」
足元にいる広島犬は呆れたようにそう吠えるのであった。
♢
なんだかんだあって第三次試験までなんとか到達する事ができた我が第八班。
第一次試験は残ってりゃ合格的な条件を覚えてたので完全に油断して居眠りしてた。昨日も遅くまで修行して疲れ溜まってたんだな、反省反省。
第二次試験の死の森サバイバルは少しだけヤバい瞬間があった。途中でたまたま出会った草隠れの大蛇を使う忍がメチャクチャ強かった。奥の手まで使って何とか逃げ仰せたが、マジで死ぬかと思った。今も思い出すと心臓バクバクする。つかあんな強キャラ原作に居たっけ。
「あの蛇は所詮、先の時代の“敗北者”じゃけぇ」
なに言ってんだ、このワンコロ。
蛇女?蛇男?分かんないけど、そいつと会った事以外はピンチと言うピンチは特になかった。そもそも探知タイプが揃ってるメンツなので危険な状況も事前に神回避できる。
なんか弱そうな忍から合格に必要な巻物奪って、ゴールまで一直線って感じだった。
第三次試験は個人戦だ、と言うか思ったより本戦に進む合格者が多かったため、急遽間引くための予選をするとか言い出した。
原作でも人気の好カードが組まれてる印象のある試験だったけどそんな理由で予選してたのか。サバイバル終えたばかりで、それは普通に可哀想だろ。
次々と試合が消化されていく。サスケ、シノ、カンクロウ、テマリ、シカマルとよく知っているキャラ達が次々と合格していく。
確かキバはナルトと戦ったんだよ。なんかすんごいこの時のキバはライバル感あった覚えがある。
この時のナルトも結構成長してた気がするんだよな。まあそりゃ、再不斬とか白とか言う下忍なりたてが会敵しちゃダメな連中と対峙してるんだもん、成長するよな。つか冷静に考えて何で生き残ったん。やはり天才か。
まあ俺も努力してきたつもりだし、今の実力を試すには丁度良いのかもしれ――――。
「次! うずまき ナルト対日向 ヒナタ!」
うぇ? ど、ど、どうなってるんだってばよ?
「――――勝者! うずまき ナルト!」
あのヒナタがナルトを殴る蹴る出来るはずもなく、呆気なく勝者が決まった。
ちなみに彼女のお兄さんはメッチャ複雑な表情でヒナタを睨んでましたね、怖すぎ。なんか色々あったってことだけは覚えてるけど、ナルトのメンケア入る前のネジさんには余り近づかんとこ――――。
「次! 日向ネジ対犬塚キバ!」
わおーん。
♢
フィールドに降り立って、改めて正面からネジと対峙する。
すっごい殺気を放ってくる。こわい。
「……まさか、お前と当たることになるとは、犬塚」
「お、おう」
「犬塚、俺はお前のことを買っているつもりだ。だが、お前の班員はどうだ。流されるまま試験を受け、恥を晒し、一族の顔に泥を塗っている。お前も一族を背負う身として思うところがあるんじゃ無いか?」
きゅ、急にどうしたんだってばよ? 俺は分かるってばよのナルト先輩じゃないぞ。メンケアとか無理だぞ。
と言うか一族背負っているつもりも無いし、そう言うのは姉ちゃんがそこら辺何とかしてくれると思うし。と言うかそこそこ美人で家庭的な女の子がいたら迷いなく婿に行きたいぐらいだし。
さてどうしたものか……と言うか紅先生、メッチャ怖い顔でこっち見てますやん。これ、俺が返事ミスったら鉄拳制裁受けそう。
「……俺もシノもヒナタには何度も助けられてきたぜ。アイツのことを恥だなんて思ったことは一度もねぇよ。つーか――」
たしかキバってこんな感じだったよな、と言動を意識して――。
「ゴチャゴチャ言ってねぇで、とっとと掛かってこいよ、天才クン。もしかしてビビってんのか?」
「貴様……!!」
へへーん、ピキってやんのー! ってあれ白眼か。
「戦闘開始!」
「今の言葉、後悔させてやろう」
審判の合図と共にネジが仕掛けてくる。
「行くぜ、赤犬っ!」
「バカタレがぁ。アレだけ格好つけたんじゃけぇ、一人でやるもんじゃろうがぁ」
そう言ってこの広島犬は、足組みながらどっさり座って、どこから取り出したか分からん葉巻を吸い始めた。
「こんの、ワンコロが!」
「ッ――!!」
迫り来る柔拳の嵐を俺は紙一重で回避していく。
鼻先にチャクラを集中させ、相手の匂いを細部まで拾う。そうして嗅覚への集中を高めていくと相手の感情や考えを拾えたり、動きを読むのに役立つ情報が得られる。
精度を高めていくと、相手の動きに自分の攻撃を確実に入れられるタイミングを見出す事ができる。こんな風に――見えた、隙の糸!
「おりゃッ!!」
「ッ――!?」
チャクラを込めて、その場で全身を捻りながら一回転する。
日向家の“回転”に近い要領でネジを吹き飛ばすことに成功する。カウンター気味に入ったので、思ったよりもダメージが入った感触があった。
「ふぅぅ……」
距離を離されたネジは呼吸を整えるように大きく息を吐いた。
心なしか全身が震えているように見えた。もしかして日向家の技っぽいのを見せたから怒ってる?
「なるほど……今のが通牙と言うやつか。なかなか威力だな」
……?
「いや、その、今のは体を回しただけと言うか……体術の一環のつもりだったんだが……」
「な、なに……!」
ネジが大きく驚いた様子を見せた。
もしかして加減したように見えたのかな。確かにそう思ったなら、プライドが傷つくよな。申し訳ないことをしたな。本気でやろう!
「じゃあ、見せてやるぜ! これが“通牙”だッ!!」
チャクラを込め、全身を捻る。
イメージするのは弾丸。ライフルの弾丸。どこまでも貫かんとする究極の一撃。
回転を乗せた特攻がネジに突き刺さり、その勢いのまま試験会場の壁を破壊して、屋外にある死の森の大木をも穿った。
あれ、この試験って場外負けってあったっけ?
「あほんだらぁ」
呆れたような相棒の声音が聞こえた。
♢
犬塚キバは後に、木の葉の“尾の無い尾獣”と後に呼ばれることになる。
彼は後に言う。
「なんで七代目火影を辞退したのかって? ああ、そんな事もあったな。まあ、俺みたいなのが火影なんてガラじゃねぇしな」
更にこんな事も、かの伝説の忍に言ったとか言ってないとか。
「ふん、今のが“牙狼牙”か。このマダラの写輪眼を持ってしても見切れんとは大した速度ではないか」
「あ?何言ってんだ。今のは牙狼牙じゃねぇ通牙だぜ 」
「マダラも所詮、先の時代の“敗北者”じゃけぇ」
この話を書き始めた時、普通に間違えて赤丸を赤犬と私が呼んでいたので、赤丸は赤犬の性格になりました。
この転生キバもNARUTO知識が曖昧なので呼び間違えてそのまま来てしまったという感じです。