チャラノ小路チャラ隆の野望 作:ぺこりーにょ
おそろしく遅い更新 俺でなきゃ見逃しちゃうね。
ハンターハンター更新再開を祝い
影のある男はモテる。
ティーン向けファッション誌が提唱するその絶対真理に従い、俺は昼食の味噌汁を飲み干した後から、闇属性のバイブスを纏って廊下を歩いていた。
目的は、クラスの有象無象に勉強を教えるための優秀な拡声器──光属性の勇者であるチャン平を捕獲することだ。ツンデレ隣人の堀北と共に教室へと向かっていると、幸運にも廊下に一人で佇むターゲットの姿を発見した。
「平田くん、少し話があるのだけれど。いいかしら?」
堀北が声をかけると、平田はいつもの爽やかスマイルを浮かべ、「もちろん。どうしたの?」と応じてみせた。
「単刀直入に言うわ。今のクラスの学力は危機的な状態にある。私たちはそれを改善したいの」
「……次の中間テストの対策だね」
堀北の言葉に、平田は即座に要件を察した。
なるほど、この爽やかボーイはなにげに頭もそれなりに良いらしい。ルックスと理解力を兼ね備えたその姿に、俺は一瞬、「実は俺とキャラが被っているのではないか」という一縷の不安を覚えた。
しかし、俺の高度な演算回路は一秒でその懸念を棄却した。身体能力も、知能も、そしてチャラ男としての総合力でも俺の方が圧倒的に上回っている。強いて言うなら、彼は俺の廉価版ベーシックモデルに過ぎない。俺のライバルにはなり得ないだろう。
「うん、僕も何かやらなきゃと考えていたところなんだ。喜んで協力させてもらうよ」
平田は快諾した後、少し不安げに視線を堀北から俺へと移してきた。
「……隣の綾小路くんも、そういうことでいいんだよね?」
問われた俺は、纏っていた闇属性のオーラを保ったまま、真っ直ぐに平田を見据えて頷いた。
「もちろんだ。女子の面倒だけは、俺が手取り足取りベッドで教え込むから安心してくれ。ベッドの上で、偏差値も肉体も天まで届くほど急上昇させてやる。マジチョベリグ」
「っ……」
俺が宣言した瞬間、堀北が目にも留まらぬ速さでカットインしてきた。彼女の顔からは一切の感情が消え失せ、絶対零度の冷気が漂っている。
「ええ、平田くん。見ての通り、こうなったらもう彼に人間の言葉は通じないわ。喋る観葉植物だと思って完全に無視してくれて大丈夫よ。それで、早速なのだけれど──」
堀北は俺の存在を物理的に視界からシャットアウトすると、平田を連れてさっさと歩き去ってしまった。
やれやれ。相変わらずのツンデレ娘だ。照れ隠しにしては少しアグレッシブすぎるが、それもまた一興である。
「……綾小路くんって、本当に堀北さんと仲が良いんだね」
だが、捨てる神あれば拾う神あり。
一人残された俺の背後から、鈴を転がすような声が鼓膜を撫でた。
振り返ると、天使の微笑みを浮かべた櫛田桔梗が立っていた。その瞳の奥には、真意を測りかねているような、微かに探るような光が宿っている。
しかし、俺の優れた人間観察能力は、その眼差しの正体を正確に見抜いていた。
これは純度100%の嫉妬だ。俺と堀北が連れ立って歩いている姿を見て、居ても立っても居られずに声をかけてきたのだろう。健気なことだ。
俺の脳内に、古のチャラ男の格言が閃いた。
『遠くのパイオツよりも近くのパイ乙』。
意味はよく分からないが、とにかく目の前に極上のパイ乙があるのなら、それを有効活用しない手はない。彼女と堀北の相性が悪いというエラーコードなど、知ったことか。俺と堀北という闇属性が2人いるなら、光属性も平田に加えてもう1人が必要になる。パーティーバランスの観点からも完璧な言い訳だ。
俺は直ちにスカウティングへと移行した。
右側の口角を引き上げ、彼女のブレザー越しにも分かる豊かな胸元へねっとりとした視線を送りながら告げる。
「ウェーイ、くっしー。君のその見事なパイオツ、もっと活躍させてみないか?」
「……え、え?ごめん、いま、なんて」
「君のその見事なパイオツもっと活躍させてみないか」
「に、二回言うんだ……」
教室に戻った俺は、平田と堀北の元へと歩み寄り、背後に従えた極上のパイ乙を指差しながら、いつものフラットボイスで事後報告を行った。
「ウェーイ。そういうことだから、くっしーも俺たちのスタパ*1に協力してくれるって☆。マジでバイブスぶち上げっしょ」
事の経緯など一切説明しない俺の乱暴な報告に対し、平田は「本当? ありがとう、櫛田さん! すごく助かるよ」と、一切の疑いを持たない百点満点の歓迎スマイルを浮かべた。
一方で、俺の隣に立つ堀北鈴音はといえば、まるで理解不能な地球外生命体でも見るかのような、到底言葉にしがたい表情を浮かべて固まっていた。無理もない。
というわけで、現在は教室の教壇において、平田と櫛田による『放課後勉強会』の開催告知が行われている真っ最中である。
クラスの二大光属性が並び立ち、「僕たちでサポートするから、クラスみんなで一緒に頑張ろう!」と爽やかに呼びかけるその姿は、絶望に沈んでいたDクラスの有象無象たちにとって、まさに一条の光であった。
反応は上々だ。
当然だろう。この高度育成高等学校において、中間テストで一度でも赤点を取れば、即座にレッドカードを突きつけられ退学となる。その事実が昨日、担任の茶柱から無情にも宣告されたばかりなのだ。
もし自分の学力に自信がないのであれば、両手を挙げてこの救済措置に賛成し、すがりつくのが生物として正常な生存本能である。高円寺や俺のように、どれほど難しいテストを出されようとも赤点など取るはずがないという、絶対的な自信と実力がある場合を除いては。
しかし、この世には常にイレギュラーが存在する。
やる気のない三馬鹿──池寛治、山内春樹、須藤健の三人だ。
彼らは、自分たちの学力が深海魚レベルであるという現実を突きつけられているにもかかわらず、教壇で平田たちが垂らしている蜘蛛の糸を前にして、そっぽを向いていた。
いや、そっぽを向いているだけならまだいい。彼らはそのまま、助けを拒絶して断崖絶壁へと向かって全力ダッシュを始めている状態なのだ。
彼らには、もはや鳥類以下の危機感すら備わっていないらしい。
俺は腕を組みながら、その異常なまでの危機意識の欠如にある種の感心を覚えていた。ここまで自分の現状を客観視できないとなると一種の才能である。このまま放っておいて、彼らが自らの意志で崖からフライアウェイ*2し、無様に学園から消え去っていく瞬間を特等席で観戦するの極上のエンタメとして悪くない気分だ。
消費カロリーゼロで不良品の在庫処分ができるのだから、効率の面でも文句はない。
とはいえ、そのような残酷なエンタメを最後まで鑑賞することは叶わなかった。
教壇での告知を終えた櫛田が、あろうことか自ら進んで崖っぷちの三馬鹿の元へと歩み寄っていったのだ。
「あのね……池くん、山内くん、須藤くん……」
櫛田は、少しだけ上目遣いになり、両手を胸元でギュッと握りしめるという王道ヒロイン・プロトコルを発動させた。
その顔には、彼らを心から心配するような、切実で潤んだ瞳がセットされている。
「もし……もしもだけど。三人のうち誰か一人でも赤点を取って、退学になっちゃったりしたら……お別れになるなんて、すごく悲しいよ……」
……完璧だ。
俺の脳内スーパーコンピューターが、その破壊力を瞬時に弾き出す。
圧倒的な黄金比率を誇る胸元の起伏が、握りしめた両腕によってさらに強調されている。これほどまでに直接的かつ強力な雌のフェロモン攻撃を受ければ、思春期の雄の脳細胞など一瞬にしてメルトダウンを起こす。
「お、俺たちに任せとけ、櫛田ちゃん!!」
「そ、そうだよ! 勉強くらい本気出せばヨユーだし!!」
池と山内が、秒で陥落した。
さっきまで「平田に教わるなんてダセエ」と息巻いていたプライドなど塵一つ残っておらず、鼻の下を限界まで伸ばしてブンブンと首を縦に振っている。須藤に至っては「ちっ、しゃーねえな」などと一丁前に不満げな顔を作っているが、鼻息が荒くなっている。
チョロい。あまりにもコロリと落ちすぎだ。世の中で生きていくうえでホワイトルームでの人身掌握術や心理学など欠片も必要なかったのではなかろうか。可愛くて胸が大きければ万事良し!とはホワイトルームの敗北だな。
教室の後方、ボッチ×ボッチである俺と堀北は、その惨状……もとい、鮮やかな救済劇を並んで静かに観察していた。
やがて、隣の席から、地を這うような重く冷たい声が響いた。
「……あなた」
堀北は、前方の櫛田たちから一切視線を外さぬまま言葉を紡いだ。
「つい先刻、自分の口から『櫛田さんと私は相性が良くない』と言って、さらに『私は嫌われている』と肯定した出来事は覚えているかしら?」
ごもっともな指摘である。
つい十数分前の昼食の席で、俺自身がその隠された事実を提示し、彼女を驚かせたばかりなのだから。
「もちろんだ。正確な時刻で答えるならば、12分と30秒前のことだな」
俺のホワイトルーム仕込みの体内時計は、狂いなく直近の会話からの経過時間を弾き出した。
その正確無比な回答を聞いて、堀北は深々と、そしてひどく絶望的なため息を吐き出した。
「……そう。記憶メモリが破壊されているわけではないのね。不具合箇所は海馬ではないということはわかったわ」
堀北はついにこちらへ首を向け、まるで救いようのない産業廃棄物を見下ろすような、絶対零度の瞳で俺を睨みつけた。
「ならば、あなたのその機能不全を起こしている論理回路はどこにあるのかしら。私のことを嫌ってると知ったうえで、なんの悪びれもなく彼女をこの勉強会に連れ込んできた、そのふざけた言い訳を聞かせてもらいましょうか」
「簡単なことだ」
俺は一切の躊躇なく、真顔のまま言い放った。
「エラーコードより、俺のバイブスが彼女の太ももを求めた。ただそれだけだ。マジ太もも」
放課後の図書室。
私の目の前に並んで座る三人の男子生徒──池くん、山内くん、そして須藤くん。彼らがノートに向かう姿を観察し始めてから、私のこめかみには、ひどく鈍い痛みが走り続けていた。
この学校に入学して以来、幾度となく経験してきた頭痛だ。普段原因となっている隣人の男とはベクトルの全く異なる痛みだが、私の平穏な精神をゴリゴリと削り取っていくその不快感はよく似ている。
……眩暈がする。
彼らのあまりの馬鹿っぷりと、絶望的なまでの集中力のなさに、私は密かに天を仰いだ。
当初の予定では、初日は二時間を目安にこの勉強会を進行するつもりだった。中間テストの範囲を網羅し、彼らに最低限の基礎学力を叩き込むためには、それくらいの時間は絶対に必要だと計算していたからだ。
しかし、その計画は開始からわずか二十分で無惨にも瓦解した。
解散を決めた理由は明確だ。私自身の精神力の限界。そして、これ以上今日この場でどれほど時間を浪費しようとも、全くの無駄であるという諦めと悟りの境地に達したからである。
もし、入学前の私であったなら。あるいは、この学校での最初の一週間の私であったなら。
この信じ難い愚かさを前にして、間違いなく冷酷な罵声を浴びせていただろう。「あなたたちの脳はただの装飾品かしら」「呼吸をするように無知を晒すのはやめてちょうだい」と、彼らの自尊心をナイフで切りつけ、即座に見限って席を立っていたはずだ。
だが、奇しくも私は、この一ヶ月間の学園生活を通して、ある種の
どれほど鋭い言葉の刃を突き立てようと、どれほど冷酷に罵ろうと、それを文字通り馬耳東風として受け流す相手が隣の席にいるからだ。渾身の罵詈雑言を、まるで春のそよ風のように「ウェーイ」と受け流し、平気な顔をして次の日も、その次の日も「おケマル水産」などと声をかけてくる異常者。
あの男によって強制的に鍛え上げられた私のストレス耐性が、今、図らずもこの三馬鹿に対する防波堤として機能してしまっているのだ。なんという皮肉だろうか。
世の中の常識が通じない相手には、何を言っても無駄。言葉で殴るのではなく、アプローチの根本を変えなければならない。
それにしても彼らの学力は私の想定していたさらに下をいっていた。
百歩、いや千歩ほど譲って、連立方程式が理解できていないことには目をつぶろう。本来であれば中学一年生や二年生で解けるようになるべき基礎中の基礎だが、彼らがこれまで勉学というものを親の仇のように避けてきたことは容易に想像がつく。
けれども現実はさらに残酷だった。彼らは数式を解く以前の問題として、『問題文を正しく把握すること』すらできないのだ。日本語で書かれた文章題を読ませても、主語と述語の関係性を理解できず、何を問われているのかすら導き出せない。
私は彼らが現代国語の文章を正しく読めているのかどうかすら、本気で不安になってきた。
中でも特に問題なのは、須藤くんだ。
彼はなまじスポーツに自信があるためだろう。「最初から勉強なんてできなくても、バスケさえあれば生きていける」という極めて浅はかな考えを持っている。それが彼の行動と言動の端々に如実に現れており、少しでもつまずくとすぐに苛立ち、ペンを投げ出そうとする。
彼らが交わす会話の知的レベルは、悲惨の一言に尽きる。「わかんねー」「腹減った」「帰りたい」の無限ループ。知性を伴うコミュニケーションが一切成立していない。
ふと、その隣人の顔が脳裏を過る。
綾小路清隆。彼の言動も行動も、控えめに言って完全に狂っており、理解不能の極みだ。しかし、目の前の三匹の単細胞生物とは対照的に、彼の勉学や論理的思考力に関しては全く問題がない。
断腸の思いで。
本当に口惜しいけれども。
至極残念なことに。
これほど理不尽で腹立たしいことはないが──彼の知的レベルは一般的な高校生よりも高い。私と同等か、あるいはそれ以上かもしれないとさえ感じてしまうときがある。
ただし、その優れた演算能力で導き出される言葉が「ベッドでの実技体育」だの「股間のコンパス」だのと、反吐が出るほど品性がないという致命的な欠陥を抱えているのだが。
「……ふぅ」
私は小さく息を吐き出し、手に持っていたシャープペンシルを静かにノートの上に置いた。
二時間の予定は、二十分に短縮された。ここが私の限界だ。
「今日のところは、このくらいで終わりにしましょう」
私が極めて平坦な声でそう口にした瞬間。
「マジで!? よっしゃあ!!」
「勉強会ってチョロいな!」
「けっ、さっさと部活に行かせろよ」
彼らの顔に、今日一番の満面の笑みが浮かんだ。赤点による退学という崖っぷちに立たされているというのに、目先の苦痛から解放されたことだけを無邪気に喜ぶその姿は、ある意味で清々しいほどだった。
三人がそそくさと荷物をまとめ、嵐のように図書室から去っていく。
残された私は、誰もいなくなった三つの空席を見つめながら、今日何度目か分からないため息を一つ、静かに落とした。
あぁ~この勉強会ぐらい終わらせたかった~。でもここまでが元の海
でも、いよいよ勉強会が終わる…終わるとどうなる?だいたい一巻分が終了!(ほんとにそうか…?)
先に言っておきますが、、、絶対に二巻はもうこんなタラタラたらしまへん!
もう三行ぐらいで終わらせるつもりでかっ飛ばして逝ってもいいとオモテおります
感想をくださるみなみなさま、ありがとうございまするるる。
感想のグッドボタンが30とか押されてるのみて、30人も読者は確定でいることに驚きまする。グッドついでに感想おくんなましよ。