作者はfateガチにわかです。ガバガバ設定になると思われます。
ご注意ください。
キャラの語彙などの崩壊、ストーリー崩壊などの可能性があります。ご注意ください。
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雄英高校の食堂は、昼になると戦場になる。
香ばしい匂いが廊下まで溢れ、あちこちから「今日何食べる?」という声が飛び交う。プロヒーローを目指す生徒たちは、体を動かす分だけよく食べる。当然だ。
リアは盆を手に、カウンターの前に立った。
ランチラッシュのメニューは今日も豪華だ。定食Aは豚の生姜焼き定食、定食Bは鮭の塩焼き定食、本日のスペシャルは牛すじカレーの大盛り。
「……全部だ」
「え?」
麗日が隣で目を丸くした。
「Aと、Bと、スペシャルを」
「全部食べるの!?」
「体を動かす前に食べる。当然だ」
「当然じゃない!!」
麗日がぎゃあぎゃあ言う中、リアは定食二つとカレーを盆に乗せた。芦戸が向こうのテーブルから「え、有斗ちゃんめっちゃ食べるじゃん!!」と叫んだ。
席に着いて、最初の一口を食べた瞬間——
目が、細くなった。
「……美味い」
静かに、しかし確信を持って言った。
生姜焼きの甘辛さ、白米の甘み、鮭の塩気。全部が丁寧に作られている。前世の記憶にある「食堂の飯」とは全く違う。これは、本物だ。
「リアちゃん……めっちゃ真剣な顔で食べてる」
「食事は真剣にやるものだ」
「そうは言うけど……カレーも食べながら定食も食べてるの、なかなかの絵面やよ」
芦戸が「私もカレー頼めばよかった!」と叫びながらカウンターへ駆け戻った。
食事が終わって、リアが盆を返しに行くと、食堂の隅に轟がいた。
一人で、定食Aを静かに食べている。
リアは少し考えてから、向かいに座った。
轟が顔を上げた。特に何も言わなかった。
「体育祭に向けて、何か考えているか?」
「……特には」
短い答えだった。でも考えていない顔ではない。考えすぎている顔だ。
「右半身だけ使っているのか、今も」
轟の箸が止まった。
「……余計なことだったか」
「いや」
轟がゆっくり答えた。
「聞いてるやつはいる。答えたくないわけじゃない。ただ……まだ、分からない」
「分からなくていい。今は」
「お前は分かってるのか。自分の個性のこと」
リアは少し間を置いた。
「制御できないものを、制御できるように。それしか考えていない。答えは先にあるんじゃなくて、動いた後についてくるものだと思っている」
轟がリアを見た。
「……そうか」
それだけだった。でも、箸が動き始めた。食事を続け始めた。
それで十分だ、とリアは思った。
翌日、相澤に呼ばれた。
保健室だった。相澤は松葉杖をついたまま、ベッドの端に腰を下ろしていた。
「座れ」
リアは椅子に座った。
「USJの件の話だ。甲冑が死柄木の崩壊を受け止めた。……お前、あの瞬間何を考えていた?」
「梅雨が後ろにいた。間に合わなければ彼女の首が崩壊する。それだけだ」
相澤がしばらく黙った。
「お前の個性…その聖剣、エクスカリバーは使えなかったのか?」
「現状は制御できない。あの距離で使えば仲間が巻き込まれる。判断した」
「正しい」相澤が短く言った。「だが——今後そういう状況がまた来る。制御の問題を早急に解決しろ」
「分かっている」
「もう一つ」
相澤の目が変わった。合理的な観察者の目。
「甲冑が崩壊を受け止めた瞬間、お前の個性が微かに反応していた。モニタールームの映像で確認した。何が起きた?」
リアは正直に答えた。
「分からない。剣の周りに、風のようなものが走る感覚が二度あった。廃墟ゾーンと、死柄木の前で。制御はできていない」
「二度とも、極限状態だったな」
「そうだ」
相澤がリアを見た。
「体育祭まで2週間ある。意図的に引き出せるか試せ。何をきっかけに反応するか、ちゃんと記録しろ」
「……先生は、私の個性が何か、分かっているか?」
相澤が少し沈黙した。
「分からない。お前の個性は、俺の抹消が効く。それは確かだ。だが——出力の構造が個性とは少し違う気がしている。今は保留だ」
リアは頷いた。
「一つだけ聞いていいか?」
「何だ」
「先生は、なぜあの日一人で飛び込んだ」
相澤がリアを見た。しばらく間があった。
「一芸だけじゃヒーローは務まらない。そう言ったな」
「ああ」
「それは、自分への言葉でもあったか」
相澤がふっと息を吐いた。笑ったのか、呆れたのか、分からない。
「……鋭いな、お前は」
それだけ言って、出て行っていいと手を振った。
その夜、学園の廊下で麗日と八百万が何か話していた。
「体育祭、種目って何になるんやろ」
「昨年の実績では障害物競争と騎馬戦とトーナメントですが……今年はどうでしょうか」
「リアちゃんどう思う?」
声をかけられてリアは立ち止まった。
「体育祭は、見られる場だ。何をするかより、どう見せるかの方が重要かもしれない」
「プロヒーローへのアピールやもんね」
「ただ——」
リアは少し間を置いた。
「そういう打算で動くのは好きではない。自分の全力を出すことだけを考えたい」
八百万が頷いた。
「全く同感です。有斗さんはヒーロー名を考えていますか?」
「……まだだ」
「騎士に因んだものが良いと思いますわ。お似合いですもの」
麗日が「ナイト!とか!」と言った。
「それは英語だ」
「じゃあ……騎士王!」
「それは称号だ」
麗日がうーんと唸った。八百万が品良く笑った。
リアは少し目線を外した。
騎士王。アーサー王。剣を持って民を守った、あの人。
自分はまだ、王には程遠い。剣の「風」も制御できない、燃費の悪い光しか撃てない、駆け出しの騎士だ。
それでも——目指す姿は、ある。
「まあ、いつか決まる」
リアが歩き出すと、麗日が後ろから「一緒にシャワー浴びよ!」と声をかけてきた。
「……構わない」
「やった! 八百万さんも来る?」
「ぜひ」
廊下を三人で歩く。麗日が体育祭の話をし始めた。八百万が丁寧に考察を返す。
リアは黙って歩きながら、その声を聞いていた。
騎士は一人で戦う。でも民の声が聞こえる場所にいる。
今はその声が、笑い声だ。
それは——悪くなかった。
脱衣所の鏡に、自分が映った。
甲冑を外した自分。黄金色の長い髪。前世とは全く違う体。まだ時々、鏡を見て驚く。
でも——もう、気にならなくなっていた。
これが自分の体だ。アルトリアの力を宿した、有斗リアの体だ。
「リアちゃん、早く来て! お湯熱くなる前に!」
麗日の声が扉越しに聞こえた。
リアは鏡から目を離した。
「今行く」
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