【急募】幼女アイズの幻覚見えてるんだけどどうしたらいい?【ロリコンではない】   作:透明な器

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だいぶ遅くなりましたが、書けました。


喧嘩

 

えっ?なんでここに?えなんで?

いやここにいるのは可笑しくないが、此方に話しかけてくる動機はなんだ?全然本体とは関わりがないし。

それにこの時アイズさんはベルくんをすこし追いかけて店の外に出てるはずだが、いやもう戻って来たのか?

 

まさか、夜な夜な幻覚見てるのがバレたとか!?

 

「大丈夫……ですか?」

「あっは、はい!大丈夫ッス!」

「そう……?」

 

そうこう考えていると、アイズさんのほうから話しかけてきた。どうやらこちらを心配してくれているらしい。

ありがたいことだが、もうちょっと間隔を置いてほしかったと思った。普通に感情の整理が付かない。

 

アイズさんの表情は、こちらを真に心配してくれているようで、すこし申し訳なかった。

 

「……すいません、変なこと言っちゃって」

「ううん、大丈夫……です」

 

まずは謝罪から始めるべきだったのだろうが、こっちもこっちで手一杯だったから許してほしい。

 

「……さっきの子は、貴方のファミリアの?」

「あ………はい、そうです」

 

それを聞いたアイズさんは、申し訳なさそうな顔をしながら頭を下げてきた。

それに少し驚き、動揺する。

 

「……ごめんなさい」

「い、いや別に……貴女が悪いわけじゃッ!」

「でも、私の仲間が……貴方の家族を侮辱したから」

「……ッ!」

 

その言葉を聞き、硬直してしまう。

ただそれは、その通りだと思ったわけではない。

 

自分が情けなかったからだ。

こんなことを言わせてしまう、侮辱を止める力のなかった自分に腹が立ったからだ。

確かにあの狼は、ベルを侮辱した。

しかしそれは、彼女が負うべきものではない。

負うとしたら、それはあの狼と………力なき自分だろう。

 

「……それは、違いますよ」

「……?」

「俺が弱いから……悪いんです」

「!」

 

そう正直に伝える。

だが、彼女は目を見開いていた。

それは驚きか、それとも()()()()()か。

わからないけれど、その瞳に宿っていたのは単なる驚愕だけではないようだった。

 

それを不思議に思い、すこし覗き込んでしまうが、それは唐突に中断された。

 

「おいアイズ!なに雑魚と話してんだよ!」

「「!」」

 

あの狼の声が聞こえてきた。

その声は不快感を多分に含んでおり、主に不快そうな視線は此方に向いていた。

 

「なんだぁ?こいつ…」

「……ベートさん、やめて」

「やめねえよ!こんな雑魚とお前が話すことなんてねえだろ……さっきのトマト野郎と同じファミリアだかなんだか知らねぇが、あんなゴミと仲間なら程度が知れるってもんだぜ」

 

また、侮辱が始まった。

これは俺がここにいるせいなのかは、分からないが。

ベルくんが去ったあとのこの酒場で、まだ彼の侮辱を続けようとするのだから、本当に筋金入りだろう。

 

……本当に腹が立つのは、ここまで言われようと言い返せない自分だが。

 

「どこまでいっても雑魚は雑魚のまんまだ!一生変われやしねぇ!特にお前みたいな腰抜はな!」

 

そうだな、そうだと思う。

事実自分は腰抜けだ。家族が侮辱されている時に助けてやることができなかったのだから。

何一つ間違ってはいない。

 

片手に持っていたジョッキを煽り、酒を口のなかに流し込む。

よほど酔いが回っているようで、罵倒に余念がなくなっていく。

 

しかし、そこからの罵倒は、なぜか俺の何かを変えたような気がする。

 

「プハァ!………()()()()()()()()()()()()も、変わらねえんだよ!!」

 

その言葉は、今までの何かとは違った。

 

………は?逃げた?逃げたと言ったのかこいつは。

散々貶され、侮辱されて。それでもなお立ち上がって走り出したあいつを、よりによって逃げたと称したのか?

 

元はといえば、お前等が逃がしたミノタウロスに追いかけられて起こったことだ。

それを酒の肴にして、貶めて、それで笑っていた奴が。

 

それを聞いた途端、なぜか心の底で燃えたぎるようなナニカが再燃したような気がした。

それは遠い昔に感じていたものとにていて、それでいてまったく別のもののようにも感じる。

 

確かに俺は屑だろう。

家族のことを貶されても、動かなかったクソ野郎だろうさ。

だがあいつは違うんだ。

いつも、どんなにつらくても笑って、人を助けることができるやつだ。乗り越えていけるやつだ。

 

「助けてくれた奴にビビって逃げるようなやつなんて、ホントになっさけねえよなぁ?!」

 

黙れ。これ以上喋るな。

あいつの無垢な思いを穢すな。

力がない者が悪いのだと言うならば、昔のお前はどうだというのか。

誰もが最初は弱いんだ。モンスターのようにはじめから強者として生まれたわけではない。

なのにお前は、それだけで驕り高ぶっている。

 

許されないことだろう。

 

そうして、この狼は止まらずに進み続ける。

もはや発破という目的すら見失って、粗暴な仮面をかぶり続けたただの獣として、言ってはならないことを言ってしまった。

 

「ダンジョンで野垂れ死ぬのが精々だろ……なあ?」

 

それは、彼の傷がそう言わせたのかもしれない。

けれども、彼は決してその言葉を言ってはならなかったのだ。

『弱いものがこれ以上傷つかないように遠ざける』と、そう思った信念すらも否定するような言葉だけは。決して。

 

「ベートさん、いい加減に────」

 

そうアイズ見兼ねてが注意をしようとした、その時だった。

 

少年の目線が、こちらを向いた。

その瞳は、なぜかこう語っているように見えた。

 

『ごめんなさい、貴方の仲間を傷つけます』と。

 

そうして少年は腕を触ってから拳を振りかぶり。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

◆◆─────────────────◆◆

 

 

「……え?」

 

パラパラと、店の壁だったものの残骸が落ちてくる。

先ほどまで喧騒に包まれていた酒屋は静まり帰り、ただ一人の人物に向けて視線が注がれていた。

 

いま、なにが起こったのか分かるものは殆どいなかった。

少なくとも、酒場の下級冒険者はそうだ。

捉えられたものは、ロキ・ファミリアと酒場の店員たちだけ。

しかし彼らも困惑を隠せないでいた、なぜなら────

 

「……立てよ、起きてんだろ?犬」

 

この都市で誰もが知っている第一級冒険者のベート・ローガーが無名の冒険者に吹き飛ばされたからだ。

それはあり得ないことだ。同じ第一級冒険者ならまだしも、聞いたこともないおそらくは無名のLv1の冒険者が力で勝るなどあってはならない。

 

しかし、それは現実として起こっている。

 

「……なにが……?」

「今の……見えました?」

「いや、見えなかったな」

 

ロキ・ファミリア内でも、動揺が広がっていた。

当たり前だ、ファミリアでも上位の戦士である彼が吹き飛ばされたのだ。

普通に考えれば、現実かと疑う方が自然だろう。

 

「……てめぇ、何もんだ」

「お前がさっき言っただろ……ただの腰抜けだ」

「ふざけんな、テメェみてぇな得体のしれない腰抜けがいるかよ」

 

その言葉に対して、少年は笑って答える。

それはどこか馬鹿にしているので、自嘲しているようでもあった。

そして、すこし()()()()()()()()()()から答える。

 

「こんな借り物の力で強くなれるなら世話ねえよ」

「……あん?」

「ズルして強くなったやつに負けてる負け犬ってことだよ、お前は」

 

それを聞いた途端、外まで吹き飛ばされていたベートは一瞬にして距離を詰め蹴りを繰り出す。

普通の冒険者ならば反応すらできない一撃、そして少年に当たれば木っ端微塵になるような攻撃。

 

ハッとし、急いで止めるためにアイズは駆け出そうとする。

しかしこのままでは間に合わない。そのままその一撃は少年に命中し─────

 

しかし、それは少年に躱された。

決して反応できる攻撃ではなかったはずだ。

だが現に避けられたのだ、さらにベートと位置を入れ替えるようにベートに劣らない身体能力で店の外へと出ていく。

 

だが体の動かし方はお粗末であり、すこし速度に対してふらついている。

 

「ぐっ……?!」

 

それに、なぜか()()()()()()()()

耐え難い激痛を押し込むように、体を叩いて無理矢理抑えた。

 

(痛い痛い痛い痛い!!クソ!ホントに役に立たない()()だな!!)

 

内で思考し、そう吐き捨てる。

本当に役に立たない特典だとは思うが、もっと使いやすいものがよかったといつも思う。

 

(怖い………怖いなクソ、喧嘩売ったってのに情けない)

 

第一級冒険者の恐怖を身に染みて感じる。

これが人類を仇なす怪物を狩ってきた、英雄候補なんだと思い知る。

だが、絶対に引くことはない。

もう引けないところまで来てしまったし、それにもともと引く気もない。

 

ああ、心底腹が立つ。

あの狼に、そして言い返さなかった自分に。

家族を大切にできなかった、昔の過ちを繰り返そうとしていた俺に一番腹が立つ。

 

「……そうか、テメェの能力……代償があんだろ?」

「ッ!」

「ここまでの能力だ……よほど規格外の代償なんだろう、なッ!!」

 

そう言って、ベートは突っ込む。

発動条件も相当無理があるものだろう、故に反応できない速度で潰す。そう考え、先ほどよりもさらに速く蹴りを放った。

 

しかしこれも当たらない。

いや、先ほどよりも動きに余裕がなくなっていることはわかるのだが、それでも躱してみせた。

それに対して、苛立ちを募らせるベート。

 

()()()()()()()()()()()()()()()

そして同時にその足で地を蹴り物凄い勢いで後退し、再び店の中へと戻る。

ベートはそれを逃さぬように追走、飛び蹴りを放つ。

 

「くっ!」

 

痛みに喘ぐ暇もない。

今も激痛が全身を走るが、それでも動きを止めない。

椅子を引っ掴み、ベートに向かって投げる。

本来ならそんなことはできないが、これでもファルナを授かった冒険者だ。常人以上の怪力ではある。

 

蹴りと接触した椅子が粉々に砕け散る。

第一級冒険者の攻撃には耐えられず、粉砕された。

そして粉が舞い、一瞬だがベートの視界を遮る。

それをチャンスと捉え、拳をベートの顔面に向かって放った。

 

当たると、そう素人目にも直感できた。

 

「────狙いが甘ぇんだよ!!」

 

その直後、上段蹴りが少年の腹に突き刺さった。

 

「ごはっ!!??」

 

息を強制的に吐き出され、苦悶の声が漏れる。

いくつかの骨が粉砕し、とんでもない激痛が駆け巡っていく。

その場にいた全員は、終わったと思った。

第一級の、しかも上位の実力者の攻撃をもろに食らったのだ。

もはや生きているかすら怪しい。

 

天井に叩きつけられ落下した少年を、ベートは足蹴にする。

頭を踏みつけ、立ち上がれないようにしながら声をかける。

まるで現実を突きつけるように。

 

「テメェのは所詮借り物だ、まだ使いこなせちゃいねえ」

 

ああ、そのとおりだと少年は思う。

わかっているとも、この力は使いこなせば誰にも負けない力になると。でもそれは無理なのだ。

結局のところ代償が大きすぎて、まともに扱えなかった。

自己の欲のために使うには、とてもではないが払えない。

 

だからこそ負けた、純然たる戦略の勝負でも。

第一級冒険者としての経験を上回れなかった。

だから敗北した。それだけのこと。

 

「借り物の力でオレに勝てると思ったのか?そんなわけねぇ」

 

「テメェは弱い、それだけだ」

 

そう言い放つ狼は、この場では紛れもない王者だった。

弱き者を降し、勝利に酔い、そして勝ち誇る。

紛れもなく強者だった。

 

だが、納得などできるはずもない。

自分が貶されるだけならば、苦痛は感じようと納得しただろう。

あの少年を正史通りに貶すのも、彼の成長のためだと思えばほんの少しは納得できるだろう。しかし─────

 

逃げたという侮辱だけは、なんとしても許せない。

そう、それは俺の気持ちの問題だ。

さっき庇わなかったくせに、なにを都合のいいことを言っているのかと思うが、それでも許せなかった。

きっとあいつは、これから俺が何もしなくても駆け上がるだろう。アイズ・ヴァレンシュタインに近づいていくだろう。

俺なんか居なくとも。

 

だからこれは、俺のわがまま。

やつに思い知らせてやりたいという、ただの意地。

だからこそ、好きにやってやるさ。

この狼に、弱者の一撃を食らわしてやる。

 

「……そう、だな……俺は弱い……だからこそ」

「あ?」

 

「────お前の意表をつける!」

 

足蹴にされていた足をつかみ、特典を発動させる。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

ベートの動きが止まる、まるで凍りついたように。

この世であり得からざる事象を発生させて、その少年は足を退け、拳を握る。

そうして手に、特典を発動する。

 

狙うは一点。確実に意識を喪失させる場所。

人間の急所であり、最も守られているところ。

 

即ち──────

 

「うらあああああァァァァァァ───────!!!!」

 

────頭部。

 

凄まじい勢いと共に直撃したその拳は、ベートを吹き飛ばした。

先ほどの焼き直しのように、天井に激突する。

脳を揺らされたのか、意識を喪失し倒れ伏す。

 

だが、少年も無事ではない。

やったと一瞬思った少年だったが、自身の腕に違和感を感じる。

それは、半ばから出血し確実に折れているだろう右腕だった。

 

「……クソッ……が………」

 

さらに加えて、襲ってくるのは常軌を逸する激痛。

常人ならばショック死でもしそうなほどの、耐え難い魂にまで響く苦痛だった。

そうして、耐え難い激痛を味わいながら、少年の意識は暗闇に沈んでいった。

 

 

◆◆──────────────────◆◆

 

 

次に目を覚ました時、俺は。

 

『…………』ひしっ。

「あの……アイズさん?」

 

泣き腫らした顔の幼女アイズさんに引っ付かれていた。

 




主人公の転生特典は、少し使うだけで常人なら失神するほどの激痛を齎します。
ほんとなら異世界チートさえできるはずの能力なんですけどね。

感想お待ちしております。
ちょっとベートさんを悪役にし過ぎましたかね?
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